V! ツンデレ少年!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 成瀬丈二
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 0.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/08〜07/10

●本文

「まず、お前らに言っておく事がある」
 台湾で某監督がタイトルにV! ツンデレ少年! とだけ書かれた白紙のシナリオを握り締めて宣告した。
「このタイトルのVは意味は考えていない───勢いでつけただけだ」
 周囲から巻き起こるスタッフの非難囂々たる声。
 白紙のシナリオなら今まで命がけで撮影してきたスタッフも、今までのタイトルは単語の体をなしており、一応は理解は可能───という事にしておこう───の範疇であったが、アルファベットひと文字では、あまりにかっとび過ぎている。
「監督───ひとつ伺いますが、もしこの撮影が失敗したら‥‥いえ、失敗は許されないんでしたよね! ね? 監督!?」
「判っている様だな、考えるんじゃない、感じるんだ!」
 相も変わらず脳味噌が半ば桃源郷に行っている某監督はスタッフの言論を意味不明の単語で謀殺すると、一同にとにかくアテがあるなら誰でも良いから呼んでこい! と、命じた。
 残り192時間。
───カット64スタート。

●今回の参加者

 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa4614 各務聖(15歳・♀・鷹)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)
 fa5019 大河内・魁(23歳・♂・蝙蝠)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)
 fa5615 楽子(35歳・♀・アライグマ)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)

●リプレイ本文

『V! ツンデレ少年!』
脚本:巻 長治(fa2021)
メイキャップ:楽子(fa5615)

杏/ヴォーカル:姫乃 舞(fa0634)
『V』
拓/ギター:倉瀬 凛(fa5331)
潔/ベース:タブラ・ラサ(fa3802)
繭/キーボード:各務聖(fa4614)
類/ドラム:大河内・魁(fa5019)

航/ギター:メル(fa5775)
燐/キーボード:葉月 珪(fa4909)
花梨/ドラム:椎名 硝子(fa4563)

 マキさん曰く───。
「勢いで『V』ですか。VoidのVにならなくてよかったですね」
「しかし‥‥このままだと、そのうちVはVでもVacuum(孤立状態)になりますよ?」
 等と毒を吐きながらまとめた、あらすじは以下の通り。

アマチュア・ヴィジュアルバンド『V』のリーダー・拓。
『V』はギタリストの拓を筆頭に、キーボードの繭、ドラムの類、そしてベースの潔で構成されており、専任のヴォーカルは不在となっている。
 そこで拓は知り合いでかねてより想いを寄せていた杏を誘いたかったのだが、ツンデレなため、いざ本人の前に出るとなかなか素直に誘えずにいた。
 そんなある日、ライバルバンドの航が杏をスカウトしているところに遭遇。
とっさに『杏は自分達のバンドに入る事になっている』と割って入る。
 しかし航も譲らず、騒ぎになりかけたところで繭が音楽での対決を提案。
『V』のメンバーや、ライバルバンドのメンバーである燐や花梨も了承し、杏に両方の演奏を聴いた上で、どちらに入るか決めてもらうことになる。
 先にライバルバンドの『I need you』。
 続いて『V』の『パッション』。
 なじみのライブハウスでの双方の熱演の後、杏は『V』を選ぶ。
 喜ぶ拓と『V』のメンバーたち、そして悔しがる航とそれを宥める燐。
 やっぱりツンデレなので、相変わらず自分が喜んでいた本当の理由は言えない拓だったが、それでも、その気持ちは少しだが確実に杏に届いていた。


「音合わせから入ろう」
 繭が、リーダーでギターである拓がヴォーカルを連れて来るのを待ちつつ『パッション』を練習の日々を送る。
 そんな日々の中───。
「俺等のバンド、ヴォーカルが抜けてしまって結構経つから、そろそろ新メンバーを募集しようと思ってるんだよな。杏、誰かいい人いたら紹介してくれよ」
 と、拓が杏にストレートに『お前に入って欲しい』と言えずに遠回しに切り出す。
「それなら、私も歌えるから‥‥」
 と、言いかけるが、杏は突き放した様な拓の素っ気ない態度にしゅんとなる。
「べ、別に、お前に言っている訳じゃねーよ! 『誰かいい人がいたら』って言ってるだろっ」
「‥‥そうだよね。ごめんなさい、今のは忘れてね」
「ああ、そうだな私も、なんてレベルじゃうちのヴォーカルは務まらないぜ」
 杏はその場を小走りに去っていく、
(やっぱり拓さんに嫌われているのかな‥‥)
 一方、航がライブハウス“アンリミテッド”で、うちひしがれた杏に声をかける。
「ねぇ杏ちゃん。僕達のバンドに入らない? キミ歌も上手いし声も綺麗だから、僕達のバンドにぴったりだと思うんだよね」
 本当は杏の外見に惹かれての勧誘だが、その事は本人には言わない。
「メンバー増やすのね。ヴォーカルがいないと締まらないし、良いんじゃない?」
 と人事の様に花梨。
「一寸待った! 杏はウチのバンドに来る事になってるんだ。勝手に誘ってるんじゃねーよ」
 拓がバンドの皆と合流しようと“アンリミテッド”に立ち寄った所で、航の言葉に異を唱える。
「えー? 杏ちゃんはそんな事言っていなかったよー? 誰が杏ちゃんが拓君のバンドに入るって言ったの? いつ? 何時何分何十秒、地球が何回回った日?」
 一歩も退かずに拓を睨み付ける。
 繭は騒ぎを見て呆れつつ止める前に───。
「なんで、バンドするヤツってのは血の気が多いのかね?」
───と潔に話かける
 潔は銀髪に青目、体格からは小学生にしか見えないが、れっきとした中学生である。
 それでも、小学生のような幼い外見ながら、実は作詞もこなしている。
 普段は無表情で無口、時折作りかけの詞をぽつりと呟く不思議系。
 実はカンが鋭く、いろんなことを雰囲気から察知してしまうタイプであった。
「繭さん、自分もバンドに入っているという自覚あります‥‥?」
「潔、お前もな───あんたら、いい加減にしな!!」
 と拓と航を止めに入る繭。
「彼女を手に入れたいなら、音楽で勝負すりゃいいだろう」
「音楽のことは、音楽で決める‥‥それでいいと思うよ」
 と、潔はぽつりと。
 花梨も頷いて───。
「話し合いで決着がつかないなら、それも良いかもしれないわね」
「やってやろうじゃねーか!!」
 拓はシャウトし、バンド対決に入るのであった。
 類が喧嘩ドラムの異名を取る負けず嫌いさを発動させ、口癖の───
「何の勝負だろうと、負けるなんてムカつくからな‥‥気合い入れていこうぜ」
 言ってスティックを振りかざす。
「OK。今日こそ僕達のバンドの凄さを思い知るといいよ」
 不敵に航は笑う。
 燐は、航と拓のヴォーカル争奪戦に半ば巻き込まれた形となったが、ヴォーカルが必要な事は事実で、それ相応の実力者が加わるのは歓迎すべき事であり、バンドの為に全力を尽くすつもりであった。
「何だか、お話が妙な方向に行ってしまってる気もしますが、確かに実力のあるボーカルを迎える事が出来るのはバンドの為でもありますよね。頑張りましょうね」
「あ、あの‥‥」
 ふたりの険悪な雰囲気にどうする事も出来ずオロオロする杏であった。
 見守る彼女の衣装は、シンプルな白のシャツにデニム。
 化粧っ気はなく無垢なイメージで、大きな目が強い印象を与える。
『V』の面々は、黒を基調に統一しつつも其々に個性のあるコーディネート。
 拓はツンツンと攻撃的にセットした赤髪に大きく黒で縁取った緑の目、唇と耳のピアスを結ぶチェーンが揺れて、煌きをあげる。
 繭の瞳を縁取るくるんとカールした青い睫が悪戯っぽく、背中には真珠とレースをあしらった古の天使を思わせる翼飾りであった。
 そして、類は高身長と共に威圧感を生むロングコートには複数のベルトを帯び、眉上と背中の黒い翼飾りには揃いの銀のピアスとなる。
 一方、幼い潔は柔らかな銀髪は後ろのみ細かにカールし、フェミニンな雰囲気。
 白い狐のような耳と尻尾がピョコリ。耳の間には輝く小さな王冠。

片や航側は、白を基調に統一された煌びやかなコーディネート。
 航は、真直ぐに整えた金髪の間に竜の角のような装身具。
 優雅なコートは足元まで届き、白い肌の中、青い瞳と赤みを添えた目尻が艶っぽかった。
 燐を縁取るのは何処かの国のプリンセスのようなふんわり巻き毛。
 目元には虹色のライトストーンが散りばめられている。
 最後に花梨は、スッキリと流れるストレートヘア。切れ長にラインが引かれた目元には、涼しげな青い石。

 航が先番を取り、ステージに上がる。
 バンドメンバーで曲を演奏。
 タイトルは『I need you』
 いかにも女性の好みそうな、甘く切ないバラードであった。
(会心の出来、これで杏の女心もばっちりキープ!)
「バンドの命運が掛かってるんだ、気合い入れてやろうぜ!」
 拓が黒衣に包まれた拳を振り上げる。
 対する拓達はメンバー達とアップテンポで情熱的な曲、『パッション』を演奏する。
 白と黒の思いの丈をぶちまけたバトルであったが、杏が拍手を送ったのは『パッション』であった。
「よっしゃ、まさにV! だな!」
 と盛り上がる拓に対し、類は───。
「最初から勝つと決まってた様なもんだな」
───と上機嫌。
「まぁ仕方ないわね。また別の候補を探せばいいんじゃない?」
 花梨は負けた事にもそれ程悔しそうな表情はせず、あっさりとしている。  
「そんな〜。杏ちゃんみたいな可愛い子がメンバーに増えれば、僕のハーレムがより完璧なものになったのにぃ〜。僕達の演奏の何処が悪かったの?」
 燐は問題発言をスルーしつつ。
「今回は私達の負けの様ですが、もっと私達のバンドに合ったヴォーカルがきっといますよ。だから、そんなに気を落とさずに、次の機会に賭けましょう?」  
 航が周囲から暖かい目で見られ始めているのに対して、杏は───。
「航さん達の曲、とても素敵だった。でも、ごめんなさい。私、拓さん達のバンドに入りたいの。情熱的で、凄く心の籠もった演奏だったから。私も一緒に歌いたいなって思ったの。拓さん、有り難う。良い演奏だった」
 礼を言うが、拓は相変わらず冷たい態度。
「べ、別に杏に入って欲しくて頑張った訳じゃねーよ! バンドの為だバンドの!」
「本当は最初から狙ってた癖に」
 と笑みを浮かべる繭
 拓の態度に類は───。
「お前のそういうとこ素直じゃねェよな‥‥」
───と呆れ半分にからかう。
 でも、杏は拓のその表情から少しだけ彼の本当の気持ちが分かった気がして、ふわりと微笑む。
「皆、これから宜しくね」  
 潔が判るか判らないか微妙な笑みを浮かべて───。
「ようこそ、『V』へ」
 と潔が漏らすと、即興で出てきたフレーズを口ずさむ。
「♪ 例えどんなに言葉がウソを語っても、歪まないホントウの想いよ、あなたに届け‥‥‥‥か」