完璧! ツンデレ女!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
0.9万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
07/22〜07/24
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●本文
ところで───とスタッフから台湾の某監督に疑問の声が挙がった。
「今回のシナリオはついにタイトルすら書いていませんが」
監督は黙ってサインペンを胸ポケットからだし、小首を傾げると一言‥‥。
「ナイトウォーカー対策っていう事じゃダメカナ?」
「ダメダヨ☆」
「ならば仕方あるまい、とぉぉりゃぁ!」
表紙にサインペンで墨痕淋漓と書かれた文字は『完璧! ツンデレ女!』であった。
「よし、これをネットの情報網に流せ、テレビのガイドサイトに回すぞ!」
「いいんですか? スタッフ殆ど半死半生ですよ」
「いいかAD、漢には負けると判っていても戦わなければならない時がある───」
「それ以上は著作権に関わる様な気がしますが」
「と・に・か・く。使えるスタッフ、特に俳優を集めてこい! 駄目なら以前のツンデレ女が放送事故という事で流される」
「前より酷くなっていませんか? それ?」
「うるさい、反論は封じる」
カット65スタート。
●リプレイ本文
「『完璧』ですか。確かに完璧な丸投げですね」
と、脚本家の巻 長治(fa2021)は、クライアントである監督の精神に致死量寸前の毒を滴らせる。
急ピッチで完成させた『完璧! ツンデレ女!』の脚本を関係各位に配りつつマキさんは関係各位の意思確認を行う。
とある喫茶店でアルバイトしている涼子は、才色兼備で、何でもそつなくこなしてしまう、まさに『完璧』な女性。
ところが、そんな彼女にもたったひとつだけうまくいかないことがあった。
それは、彼女が想いを寄せているバイト仲間の青年『始』のこと。
もともとそれなりに親しい間柄の二人だったが、彼への好意を自覚して以来、涼子はついツンとした態度を取ってしまう。
しかし、始は慌てるでも落ち込むでもなく、笑って受け流してしまう。
そんな彼の態度に「ただの友達としか見られていないのでは?」と悩む涼子は、ある日、始が別の女性(律)に告白されていると思しき場面を見てしまう。
動転した涼子は始のところへ飛び出し、そのまま勢いで自分の気持ちを告白する。
ところが、帰ってきたのは『知ってるよ』の一言。
始も実は涼子が好きで、彼女が『こういう愛情表現の仕方』をすることはとうに知っていた。
だからこそ、彼女がツンツンしていても笑顔で対応していたのだ。
両想いだった嬉しさを隠す照れ隠しと、実は何も悩む必要はなかったと知った怒りとで、いつにもましてツンとした態度を取る涼子だが、始はやっぱり笑って受け流す。
完璧なはずの涼子の、唯一の『弱点』。
この力関係だけは当分変わりそうもない。
キャスティングとしては───。
・涼子:ブリッツ・アスカ(fa2321)
・始:九条・運(fa0378)
・律:七瀬紫音(fa5302)
・鳴:メル(fa5775)
となっている。
一同がバイトしている喫茶店で接客中、鳴は店に入って来たマキさん演じる所の謎の外国人に水とメニューを持って行く。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりましたら、お申し付け下さい」
『何を言ってるか判らない。言葉のわかる人間を連れて来い』
「え? ええと‥‥あの‥‥」
突然の事に狼狽え、どうして良いか判らずにオロオロ。
そこへ、ショートカットの涼子がすかさずフォローしに来てくれる。
「あ、涼子さん。すみません、お客様の仰っている事が分からなくて‥‥」
『大変失礼しました。メニューが決まりましたら、お申し付けください』
『なんだ、判る人もいるじゃないか』
外国語会話も完璧にこなし接客する涼子に、尊敬の眼差しを向ける。
「はぁ〜、外国語会話も完璧にマスターしているなんて、やっぱり涼子さんは凄いです。ミスした所は一度も見た事がないですし。まさに才色兼備、完璧な女性ですね」
「少し努力しただけです。鳴さんも習えばできますよ」
「ううん、習おうと思い立ったところがすごいです。やっぱり涼子さんは完璧な人です」
「だってさ? 完璧超人」
始が笑って、涼子の髪の毛を直上からもみくちゃにする。
「なれなれしいです。始、女性にはマナーを守って振る舞ってください」
「オーケー、オーケー。『今度から』そうさせてもらうよ」
「判ったなら手を離しなさい!」
「こりゃ失礼」
そして、バイトの引け時、律は始がひとりの時を見計らって、自分の告白の仲立ちをしてくれる様に頼む。
涼子が入り際に立ち去るふたり。
そして喫茶店の裏で。
「彼に告白しようと思うんですけど、始さん、力を貸してくれませんか?」
始は友人に彼女がいる事を知っていた為───。
「ごめん。他に好きな人がいるから」
と主語を抜かして答えられ、ショックで立ち去る。
そこで涼子が呆然とする。
(他に好きな人がいる? ‥‥そんな)
BGMに響くは切ないピアノのメロディー。
そのまま、涼子は始の前に詰め寄る。
「おい、どうしたんだ?」
心臓の鼓動のエフェクトが涼子の緊張感を際だたせる。
「いつも、つい乱暴な態度とっちゃうのだって‥‥本当は、好きだからに決まってるじゃない!」
「知っていたよ」
「え?」
返事に唖然とする涼子。。
実は両想いだったと知って喜ぶも、これまで悩んでいたのは何だったのかと思い、照れ隠しも兼ねて普段以上にツンツンした様子でまくし立てる。
「知ってたんなら知ってたって早く言いなさいよ! さんざん悩んで損したじゃない!」
「おや、そんなに悩むほど、好きだったのか? 男冥利につきるな」
始はニヤリと笑う。
それでも、と涼子は、やっぱり受け流す彼にため息をついた後、聞こえないようにぽつりと一言。
「‥‥ま、いいか」
「なんか言ったか?」
涼子の肩に始が手を置く。
「なんでもないっ!」
ふたりの関係は当面変わりそうになかった、当面の所は───だが。