妖怪! ツンデレ百物語アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.1万円
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参加人数 |
14人
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サポート |
0人
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期間 |
08/14〜08/16
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●本文
夏である───かといって、台湾の某監督の脳が活性化する訳ではなく、熱でオーバーヒート寸前であった。
「監督、脚本は!?」
「監督! 監督!!」
「ええーい、黙らっしゃい」
スタッフ達のコールを前に某監督はテーブルをひっくり返した。卓袱台でないのが惜しまれるところではある。
「俺は今後の事を考えて、ツンデレシリーズを百本考えていたんだ! それを統合すれば───まああ、出来なかったけど‥‥‥‥」
「それじゃ、何の意味も無いじゃありませんか! 時間は残り192時間ですよ?」
「細かいやつめ───今まで何度、その危機をくぐり抜けた? 落としたのは一本だけだぞ※1」
※1:一本でも十分信用問題になります。
「では、またデスマーチを?」
「応ともよ! 地獄から生還できる自信のあるタフガイ、ハードレディを連れてこい! やるぞ皆!」
意気は上がれども打ち合わせに使える時間が増える訳ではない。
こうして毎度おなじみのあれが始まった。
───カット66スタート。
●リプレイ本文
曰く巻 長治(fa2021)は───。
「業界の魑魅魍魎に関する話なら、すぐに百や二百は集まりそうですね」
「本当か! ならメールで送ってくれたまえ!!」
(ほら、ここにも魑魅がひとり)
ともあれマキさんのまとめたシナリオは───。
『一人前と認められるためには、百の物語を集めなければならない』
鬼の一族には、そんな試練がある。
鬼の青年、エニシは目下その試練に挑戦中だったが、ついにそれも最後の一話を残すのみとなった。
最後の物語を求めて向かった先は、とある村にある神社。
妖が見えるという人間の少女・シンに話を聞こうとするエニシだが、シンは不機嫌そうな様子で適当な話をして追い返そうとする。
そんな適当な話では数に入らないため、一度は腹を立ててその場を離れたエニシだったが、少し頭を冷やした後、やはりシンの様子が気になって神社へと戻る。
エニシはそこで彼女と仲のいい猫妖怪たちから話を聞き、
シンの村で病が流行っていることや、そのせいで不思議な力を持つ彼女への風当たりが強くなっていることを知る。
戻ってきたシンに病の本当の原因を教え、薬を渡すエニシ。
それがシンから村へと伝わり、流行り病は沈静化へと向かう。
結局この事件自体が『物語』とカウントされ、エニシの試練は晴れて終了。
シンと和解したエニシは彼女に一緒に来るように誘ってみるが、シンは『私はここで頑張る』とやんわりとそれを拒否し、ふたりは再会を誓って別れる。
後はこの草稿を元に、七瀬紫音(fa5302)が音声の演出プランを決める。
極力、人工の音は排除して、山の中の静謐を視聴者に味わわせたい。
そんな想いが彼女をして、コンピュータを前に修羅と化させる。
そして、オンエア。
真っ暗な中、ピンポイントスポットが当たり、そこには青年、アルヴァ・エコーズ(fa5874)が、椅子に腰掛けテーブルに肘をつきながら、視聴者に語りかける。
「初めまして。ああ、お暇でしたら一つ、お話聞いて行きませんか? とある妖怪と、とある少女のお話ですけどね‥‥」
そして物語へと‥‥。
エニシ(Iris(fa4578))は人の病の気より生じた鬼の妖───外見は人間と変わりないが長命。
翼と角を出し、巫女装束に身を包んでいる。
生気の抜けたような透けるような肌と、目尻と唇に赤い紅。
彼に最後の試練について言い渡す妖しの長シズク(茉莉枝(fa5703))。
それは鬼の一族で一人前と認められる時に課せられる試練で、百の物語を集めきって初めて、独り立ち出来るというもの。
今回がその百個目の物語を集める、最後の試練だということを伝える。
「これが最後の試練じゃ。わかっておろうな」
と言い放つ。
試練に向かう背中を目を細めて見送り。
「これもお前に必要なことなんじゃよ、エニシ」
エニシは百物語の最後の試練として、見鬼の娘、シン(朱里 臣(fa5307))の噂を聞き最後の話にちょうど良いと向かう。
エニシの出現に、強風で森がざわめいている───泣いている、いや哭いているのだ。
村に集まる皆の前に姿を現し、試練について話すとシンに───。
「お前の話を聞かせろ、これで最後なんだから、さっさと話せ」
と、偉そうに告げる
「あんたの知ってる以上の事はない。さっさと帰れば?」
この力のせいで理不尽な目にあっているのに話す事など何もない。
「そこにも何かいる───」
シンが指さした神社の裏から、額から一本の角を生やした鬼エニシの弟分ヤト(十軌サキト(fa5313))が頭を掻きながら姿を現す。
「やれやればれたか」
そこでシオが人々のざわめきのSEを入れる。
強引に聞き出そうとして適当に返され自分の態度は棚上げでシンに腹を立てる。
「可愛くねーな」
苛立ちのままその鬼達は場を一度離れる。
口ではそう言うが人間のくせに自分を恐れないシンが内心気になっている。
村人もシンを避けながら三々五々散っていく。
シンも踵を返し、両親は既に鬼籍にある為、住まわせてもらっている親戚の家に戻るでもなく、神社に巣くう猫妖達と共にいることを選んだ。
短い丈の着物のそでは腕まくりあげ、下にはくたびれた半ズボン。裸足がデフォ、真白な耳と尻尾を出している、ドジでおっちょこちょいの八嶋(倭和泉(fa5320))の、天然猫娘である翠(アイリス・エリオット(fa5508))に対する気持ちに気付いており応援。ふたりと過ごす時間が唯一自分らしくあれる時。
「皆、私を鬼だ邪だと言うけど、いっそ本当にそうなら‥‥」
「シン泣くのは良くないのにゃ」
「元気出して。お茶請けに煎餅出すから☆」
シズクはエニシたちが一度里に戻ってきたとき出迎える
「腐心しておるようじゃの」
達観した口調で───。
「言ったじゃろう、これもお前に必要なことじゃ。だが、あの村がどうなっているかは知りたかろうな」
うなずくエニシ。
長が水盤に水を静かに注ぎ込む。波だった水面もやがて静まり───村で人々が病に倒れている様を見る」
「兄貴何が見えるんで」
と、ヤト。
「これは───シズク様、万病に効く、選病丹を‥‥ちくしょう、わーかったよ、試練の為だからな!」
「良かろう、大地の汚れにはこれが一番」
「行くぞヤト」
エニシの背中を遠く見守りながら───。
「‥‥お前には、可能性があるんじゃよ」
───と微笑む。
●再び神社へ
戻ったがシンの姿は無く八嶋や翠の慌てた様子を変に思う
「何だ?どうしたお前ら」
事情を聞きシンが村で孤立している事、今それが悪化しつつある事が現実であると知る
「判った、シンの家はどこだ?」
現れたシンに駆け寄りその悲壮な様子に一瞬驚く
エニシが一度去った後、村で原因不明の病が流行る。
不幸な事態に村ではそれがシンのせいだと思う人が増え益々孤立しており、親戚の家からも追い出されたのであった。
自分だけ病気にならない事が噂を煽り家にも帰れない。
暗くなってから夜を過ごそうと神社に行き、エニシと再会。
「何しに来たの。出てけって言ったじゃない! 私なんかに構ってるとどうなっても知らないから」
邪険に扱われても今度は引かず、シンに薬入りの袋を押しつける。
「‥‥やるから医者に渡せ! 病気はお前のせいじゃない、土が汚れたせいだ」
そして、エニシは真剣な表情で。
「お前の為じゃないんだからな! 話聞けないと困るから‥‥!」
後悔は無いが人間を助ける事になるとは‥‥という気持ち。
シンは薬を渡されキョトン。半信半疑だが村に戻る。
夜明けを境に医者が治り、後は芋づる式に治っていった。
シンは後日神社でエニシに礼を言い、自分のこれまでを話して聞かせる。
「こんな力なければと思ったこともあるけど、これで良かった。エニシにも会えたし」
「辛かったんだな‥‥」
そっと手を繋ぐ
一緒に来るか? と訊ね、返答に一瞬落ち込むが続く言葉に笑って。
「ここで頑張る。私も壁を作ってたと思うから」
「サヨナラじゃなく、また会おう」
エニシも頑張れと気持ちを込め。
ギャラリーに気付くと赤面して急いで手を離す
「シンがいる限り会いに来る」
そんな中、ヤトは八嶋と緑のしっぽをつかんで、退場させるのであった。
「あ、後はごゆっくりどうぞ」
そして、再びピンポイントスポットライトに照らされたセットに齧ハは転換し───。
「こうして村は落ち着き、エニシとシンの“試練”は無事に終わりました。けれど二人の“物語”はまだまだ続く事でしょう」
満足そうに笑み、ぺこりと一礼をした後、ふっ‥‥と照明が落ちる。