鏖! ツンデレ少年アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 成瀬丈二
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 0.9万円
参加人数 7人
サポート 0人
期間 10/03〜10/05

●本文

 台湾のとある打ち寂れたバーにて───。
「ママ、駄目だよ‥‥」
「あら、どうしたの某ちゃん」
 と、バーのママに呼ばれるはツンデレを連作で作り続けた某監督。名前を出さないのは仕様である。
「またさぁ、脚本家に逃げられたんだよー! うぉぉーむッ! ばるるッ!!」
「駄目よ某ちゃん、あんまり痕をつめちゃ、後何日余裕があるの? 前向きに、ね☆」
「う、う、う───ありがとうママ!」
 監督がアルコール漬けへの果てない進化の道を辿っている間、スタッフ達は懸命に、世界中に電子媒体のネットワークを築きつつあった。
「で、鏖って、なんて読むの?」
「日本じゃ皆殺しと読むんだそうだ」
 こうして、タイムアタックの扉は開く。前回高い評価を得られなかったツンデレ者の起死回生の一本となるであろうか?
 ドラマ放映までの短い間に、話は落ちる‥‥? 
 タイトル以外全く決まっていない、作品のそれは192時間後に明らかとなる。
───カット69スタート‥‥‥!

●今回の参加者

 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5486 天羽遥(20歳・♀・鷹)
 fa5556 (21歳・♀・犬)
 fa6029 真白(16歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「『鏖』ですか‥‥これまで逃げられた相手に対する正直な気持ち、ではないですよね?」
 マキさんこと巻 長治(fa2021)が、某監督に向けて、その獣人としてのスタイル『アメリカドクトカゲ』さながらの辛辣な言葉を投げかける。
 無言を以て返答とする某監督。
「否定はしないのですか? 毎度のことですが、スタッフが『鏖』になりそうな過密日程ですね」
 と言って某監督に向かいシナプスをマキさんは開陳した。

 スラムに住む少年、彌白(みしろ)はある時上層階級の人々が住む区画へ忍び込み、そこで出会った少女の玲と恋仲になっていた。
 その後も度々彼女と会っていた彌白だが、ある時ふたりの密会が玲の姉である沙羅に見つかってしまう。
 ふたりの交際を認めない沙羅はすぐにでも玲を嫁に出してしまおうと考え、大急ぎで縁談を進める。
 やがて、その話が彌白の耳にも入り、彌白は玲と一緒に逃げようと考えて彼女のもとへ。
 彌白を慕う少女の忍はそれが面白くなく、彌白の後をつけて屋敷へ潜入するが、普段とは全然違ったデレデレした彌白の様子に幻滅してその場を去る。

 玲を連れて逃げようとする彌白の行く手に、屋敷の使用人や警備員などが立ちふさがるが、彌白はそのことごとくを排除し、玲とともにいずこかへと去っていく。
 そこへ‥‥。

「疲れましたー! さすがアコガレのツンデレ☆ 数字で書くと37564ね♪」
 武越ゆか(fa3306)がロケハン探しの小旅行から帰ってきて、バタンと倒れ込む。
「愛とバイオレンスとか言った手前、日本か台湾の無国籍風で。無ければ切り貼りね。
 逃避行の経路も、見栄えのよさ優先で良かったわね?
 スラムは不法占拠中の廃ビルに、汚れた路地と闇商店街、薄暗く狭い階段坂‥‥雑然とゴチャつく抜け道多数っぽい、灰色と極彩色の渦な所が理想ねぇ。ガス水道電気も無理やり引いてる感じの。
 お屋敷は宮殿みたいなお屋敷ね。外面だけ撮影許可とって、内部はアリモノのセット借りるでオッケー?
 バロック内装の廊下と居室、侵入経路の裏口と換気ダクトも忘れずに!
 チャペルは電撃政略結婚のお見合い会場ね。これも外面と一室だけ借りてきたわ。
 逃避行は、裏口やダクト→居室&廊下→庭園→抜け道→スラムの路地や階段や闇商店店内目まぐるしい視覚効果狙いね☆」

 生まれも育ちもスラムの生粋な名護 彌白(なご・みしろ)少年(百鬼 レイ(fa4361))は、毎夜、玲(虹(fa5556))の所に忍び込んで密会。
「‥‥ぐっ、偶然通りかかっただけだからな! 勘違いすんなよ?!」
「あ。彌白くん‥‥」
 玲は会いにきてくれた少年に嬉しそうにパタパタと駆け寄り、はぐっ、と抱きつき姉の沙羅に目撃されてるとは知らず、幸せそうな顔。
 上流階級の娘らしく品のある装いに動作はかわいらしく‥‥如何にも苦労知らずに育った心優しいお嬢様であった。
 スラムから来た彌白に出会い、彼の強い生き方に好意を覚え、それが恋心となった‥‥しかし、それを肯定ばかりする者では無かった。
「なんて事でしょう、よりにも依ってスラムの人間と仲良くなろうなんて以ての外です」
 その光景をノクトヴィジョンで監視する玲の姉である沙羅(都路帆乃香(fa1013))がそうである。彼女は一度結婚したものの、夫を亡くし、現在は昔暮らした屋敷に戻っている。
 玲にも家柄等がしっかりした相手と結婚して、幸せな暮らしをすることを望んでいた、しかし、ツンデレ少年の彌白が屋敷に無断侵入。その上、玲と一緒にいるところを見て、パニックを起こし、早く妹を結婚させて安心出来るように婚約者を捜し出して、玲に見せようと決意した。
 侵入者を告げるサイレンが鳴り響き、彌白と玲の密会は引き裂かれた。
「明日の晩も───」
「そんな約束は出来ないな」
 猥雑な生命力が充溢しているスラムに彌白が戻ると、黒いレザーの上下に身を固めた少女、忍(天羽遥(fa5486))が彌白にすり寄ってきた。下はミニスカートであり健康的な煩悩を持った青少年ならそれだけでノックアウト出来そうな色香が匂い立つ。
「よう、不良少年。朝帰りかい?」
「忍には関係ない」
「相変わらずクールだな、そこがいいんだよ───キスしたいな」
「お断り」

 その頃、沙羅は優しい微笑みを浮かべながら、ひとりの青年実業家(巻 長治)を玲に紹介した。
「貴女はこの人結婚するんですよ」
「初めまして」
「‥‥どうしたの?」
 突然迎えに来た青年実業家に、不思議そうに首を傾げ自身の結婚の話と聞けば驚き瞬きを繰り返す、
「私‥‥そんなの聞いてない‥‥」
 着々と結婚式の準備を整えつつ、屋敷に無断で誰かが侵入しないように警備も強化させたりして、彌白少年を遠ざけようと目論む沙羅。
 その警戒網の前に彌白少年は玲と再会を果たす事が出来ない。
「正面突破か───」
 屋敷に侵入し、玲と共に駆け落ちするため屋敷へ突入する彌白。
 警備の者を当たるを幸いなぎ払い、玲の元へと突き進む、まさに『鏖』であった、離れに半ば幽閉されている玲の部屋の前にいるメイドの由佳(武越ゆか)が───。
「お嬢様が逃げないようにって、物々しいわ‥‥ああぁ! 貴方、何処から入ってきたの!」
 屋敷の逃亡劇中、忠告で怒りを買いツンな心理的鏖対象になる。
「身分違いは悲劇の元よぉっ! ああ、行っちゃった‥‥」
「由佳ちゃん‥‥ありがとう‥‥」
 玲は身分違いの恋を案じてくれるメイドさんに感謝し、僅かに戸惑いつつも彌白の手を取って屋敷を脱出、知らぬ道、全速力で走る事にも慣れず、すぐに息切れ。小さな段差に足を取られ、そこへ手下を引き連れた忍と遭遇する。
「彌白! 行かせないよ!! 彌白にそんな子あうわけないだろう!? あんたが玲? あんたみたいなお嬢さんが彌白となんてわけないよな。そうだろう?」
 と、玲を冷たい目で見る。
 彌白と忍のやり取りには胸の高鳴りを隠せない玲。
(弱虫な私なんかよりも、彼女の方がずっと彌白くんには相応しいのかもしれない‥‥そう思えば、悲しくて目が潤んで)
 それを彌白にも、忍にも気づかれまいと俯いて───、
「彌白!? うちは諦めたりしないからな!!」
「邪魔をするなー! ふたりの愛の逃避行だー」
「うそ‥‥いつもの彌白はそんなヤツじゃない‥‥クールな彌白はどこ‥‥」
「悪いな」
 そこへ現れる沙羅。
「やめて、お姉さま‥‥っ。私‥‥もう、決めたの」
 この人と行く! その覚悟を持った強い瞳で、沙羅と向き合い───その覚悟に沙羅は膝を折った。
 一度だけ振り返り、今まで自分の居た場所をしっかり見据え、
 その後はもう振り返らず、彌白の手をぎゅっと握って付いて行く。
 二人の障害が全て『鏖』になったのを確認すると、スラムの奥へむかってフェードアウト。
「行こう。愛を信じて良い場所まで」