ワクワクアニマルランドアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 成瀬丈二
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/27〜12/01

●本文

「丹(たん)センパイ、企画通りました!」
「何だね、大友君?」
 丹と呼ばれた大男は、馴れ馴れしいボブカットの女子の後輩、大友に局の廊下で呼び止められた。
「センパイとこの前、飲み屋でペコちゃん人形を壊しながら考えた企画ですけど、通りました」
「語弊のあるいい方をするな、大友君。飲み屋にペコちゃん人形を酔っぱらって“持ち込んできて”素手で殴り壊したのは君だろうに」
 大友が、実はパンダの獣人で空手4段というのは結構洒落にならない破壊力だと思う丹であった。
「とにかく、通った企画ですけれど、多摩動物公園に小学生の子供を連れて行って、そこの動物に合った半獣人化‥‥じゃなくて、コスプレをしてもらう、単発番組になりました。タイトルはワクワクアニマルランド──美少年が一杯来てくれるといいな」
「俺的には女子大生くらいの子の方がいいな‥‥──って、何でそこで俺の臑をけっ飛ばす!?」
 じゃあ、センパイ、ロケの時は宜しく、と言って大友は丹を追い抜いていくのだった。
 カット5スタート

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0489 荻咲・姶良(21歳・♀・兎)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa1322 shion(14歳・♂・狼)
 fa1726 小鳥遊 日明(12歳・♂・蝙蝠)
 fa1806 伝説の竜戦士(59歳・♂・竜)

●リプレイ本文

「テレビを見てる皆さんこんにちは〜
今日は俺たちが、多摩動物公園をご案内します♪」
 小鳥遊 日明(fa1726)がカメラ目線で、多摩動物公園の入り口でポーズを取った。
 中性的な面立ちに、茶髪と茶眼のひあきの、ネコミミ、ネコ尻尾というコスプレのベースは、下半身は半ズボンにスパッツと運動靴。上半身はシャツとジャンパーという非常に少年らしいものであった。
 夢も少年らしく実力派アイドル。しかし、こっそり獣面バイカーの放映を欠かさず見るという少年、というより子供らしさも持っている。
 誕生日も間近に控える身であった。
 が、そのマイクを横から奪い取る、月岡優斗(fa0984)が叫ぶ。
「キャラ被っているじゃん、テレビの前の皆さん、主役は俺ですからねー!」
 ゆーとはズボンの後ろから、ふりふりなリスの尻尾を覗かせている。
(‥‥って、俺はなんでこの仕事引き受けたんだろう。でも、ちょっとは慣れてきたから普通に楽しませてもらうぜー! よーし、分かった。やってやろうじゃんっ) マイクの奪い合いも楽しいハプニングとして、カメラに収めるスタッフたち。
「あぅー」
 若い衆のイニチアシブの奪い合いに呟くは、元気盛りな少年達の傍らで、熟れきった果実のような、退廃的なイメージを漂わせる、中世的なモチーフの衣装──ぶっちゃけ言えば、ゴスロリ姿のshion(fa1322)であった。
 荻咲・姶良(fa0489)の(指示は大友女史)渾身の賜物であった。
「みんなかわいいよねぇ」
 アイラはムードメーカーっぽく一同のメイクに携わっていた。
 もっとも実年齢が十代の半ばも超えた、シオンの様な肌が微妙な年代の者を除いて、軽いタッチアップ程度に止めていたが。
 その一方で、大友のお目付役? である丹センパイから、芸能界と番組づくりについて色々教わったりする。「1にスポンサー、2にスポンサー。金は出しても、口は出さないスポンサーが1番だな」
「今のスポンサーは?」
「中の上と言った所かな‥‥」
「それよりも‥‥あれ──」
 最後に言葉を挟んだのは、青いエプロンドレスに、懐中時計を片手に持ち、ウサ耳、コウモリ羽と言った風情の湯ノ花 ゆくる(fa0640)。苦笑いしながら年少組の暴走を見ていた。
 一方、白い耳に、白いリス尻尾を生やして、金髪のツインテールのトール・エル(fa0406)が自分の出番を未だ遅しと待ちかまえる。
 女装であるが、それが常の彼女? は全く違和感がない。
 一目見て、まんまじゃつまらない、と言い放った大友女史に、力押しで──。
「どうみても、わたくし、年齢的にも、美しさとしても、美少年として何も問題ありませんわよね」
 と無理矢理、説得しただけの迫力はあった。
 少女? は高飛車な口調で。
「それより、わたくしの出番はまだですの? 待ちくたびれてしまいましてよ?」
 白髪に白い兎耳を垂らした内気そうな少年、大海 結(fa0074)はおどおどと──。
「あの、マイクの取り合いが終わらないと、カメラ向かないんじゃ」
「何言ってるの? カメラは撮る物じゃない、わたくしを撮らせる物よ!」
 言ってカメラの前に仁王立ちする。
 シオンもマイクの取り合いをしていたふたりも、呆気にとられる。
「”美しい少年”のわたくしが、番組を盛り上げてさしあげますわ。おっほっほ!」
 断言。
 思わずカメラもそちらを向く。淑女然とした衣装のトールに、周囲の視線も集中する。
「では、番組は始まりましてよ♪ まずは大温室から」

 ひあきは、マイクを、周囲の助力で奪還すると笑みを絶やさずに──。
「これが大昆虫館!
 ここではたくさんの昆虫が育てられてます!
 上から見るとトンボの形をしているんだよ。
 それだけじゃなくって、すごく大きな温室があって、一年中たくさんの蝶が飛んでるんだよ!
 わー、すごい! 蝶々待て〜〜〜〜!!」
 蝶をおいかけてはしゃぎだす、ひあき。
 扉を開けると、熱気が押し寄せてくる。
 構わずひあきは、踊るように、軽やかに動いてフレームの外に出る。
 ユイは自分では元気で可愛い感じに、と思っているポーズはあるが、内気さがその元気さを打ち消し、却ってそれが大友女史の萌えを呷った。
「全身フレームに入れるようにして! できないとは言わせないわよ」
 そのカメラフレームの前にトールは割って入り。
「わたくしの蝶の様な舞をご覧あそばせ」
 と、ダンサーとしての本領を発揮。蝶のように華麗で軽快かつ、アクロバティックな舞を踊る。
「編集でどうにか繋げろ、両方撮れ」
 と、丹センパイの声が飛ぶ。
「お花畑に蝶がたくさん飛んでて綺麗よね」
 と、乙女らしい発言をするのはアイラ。だが、自分が男装している事を思い出し。
 カメラに向かってバッテンポーズを取りリテイク。
「お花畑に蝶がたくさん飛んでいて綺麗だよね」
 それに乗じて、拳を眼前で握り締め、ゆーとは昆虫館では、はしゃぎまくる。
 心の底から、すっごいはしゃぎたい、というのがカメラ越しにも丸判りであった、早速金髪を揺らし、黒い眼を輝かせながら実行する。
「やっぱり少年の王道は昆虫っしょ、虫!」
「うーん、そうだよな」
 腕を組んで頷く丹センパイ。
「みんなで蝶を追いかけよう!」
 シオンが音頭を取ると、皆一斉に走り出す。
「まったく、小学生を集めた筈なのに幼稚園みたいです事」
 唯一、トールだけが腕を組んで、一同を見送る。

 ひあきのリクエストで、上下差の激しい動物園内を皆が走って移動する絵も入れる事となる。
 次は落ち葉のプール。秋冬限定である。小動物系が多い、子どもたちにはワクワクなポイントである。
 アイラは落ち葉プールに入るなら、運動をする前は準備体操が必要!
 と、言い放ち、体操の手本を見せる。
「みんなー、集まってー! 軽く、ジャンプ♪ ジャンプ〜♪」
「一番乗り〜!」
 体操が終わると、落ち葉のプールにダイブするゆーと。
 リス尻尾しか見えなくなると、一同にひとつの見解が生まれた。ゆーとと言えばリス、リスと言えば頬袋、頬袋と言えば‥‥。
「おーい、大丈夫ゆーと君?」
 ざばぁっと落ち葉をかき分けてゆーとが姿を現し一言。
「‥‥さ、さすがに食べ物はここに入れないからっ」
 と、赤面する彼をかき分けてひあきがダイブする。
「これが秋冬限定の、落ち葉のプール!
 プールと言っても水じゃなくって、落ち葉でいっぱい!
 ちょっと俺たちには小さいかな?
 ほらほらー!」
 続けて、仲間と落ち葉を、海で水のかけ合いするみたいに、手ですくって、かけ合って、はしゃぎ出す。
「──だからキャラ被ってるって」
 ゆーとは呟いた。
「いーわねー、元気で」
 大友女史が呟いた。
「見苦しくってよ、これでは獣人じゃなくて、只のケダモノですわ」
 トールのこの言葉がオンエア時にカットされた事は言うまでもない。

「ここが、動物とのふれあいコーナーだよ!
 モルモットとかウサギとかを抱いたり出来るんだ!
 うーん、可愛いねぇ、負けちゃいそう?
 俺たちと、どっちが可愛い?」
 カメラ目線で小首かしげるひあき♪
「可愛い動物は、世知辛い世の中で生まれたストレスを解消してくれますわね」
 と、トールは背伸びした大人っぽい発言をするが、つい、隠しきれない子供らしい無垢な笑顔を不覚にも見せてしまう。
「な、何よ、こ、この子が可愛いから笑ったんじゃないから、あくまで一芸能人として視聴者の為に笑ったんだから」
「いいわ、今の表情! 撮った? 撮ったわね?」
 大友のエキサイトを丹センパイが抑える。
 しかし、反射的な鳩尾への一撃が丹センパイを轟沈させた。
 スタッフの内何名かが、丹センパイの介護に回るも、カメラは回り続ける。
 ゆくるは微笑んで、モルモットにおやつに持ってきたバナナを分け与える。
「はいカ〜ット」
 大友女史の声がかかり、撮影が終わった事を一同に告げる。
「いい画、取れたわね。皆さんお疲れ様。って若いから平気か」
 対称的にユイは残念そうに呟く。
「アイドルだし、コアラ行きたかったな」
「第2弾作れたら──お願いするわね」
 するとユイは瞳を輝かせて。
「はい、こちらこそ!」
 伸びをするひあき。
「疲れた〜。でも、楽しかった〜!」
「まだまだ、坂道を行き来するからね、家に帰るまでが撮影だよ」
 復帰した丹センパイが諭す。
 ゆくるは帰りに忘れず、動物園のゴリラ基金に500円募金した。
「何、それ?」
 ゆーとが尋ねる。
「マウンテンゴリラの生態、行動、社会に関する研究と、保護活動を行っているんだって」
 皆、獣化やコスプレを解き、帰りがけにモノレール中で、シオンが大友女史に尋ねる。
「音楽が必要なら、ボクの曲を使えないでしょうか?
編集でBGMとして、後から入れてもらうのもいいかもです」
「うーん、バンド全員が来ているなら、それもありかな? と、思ったけど、ドラムだけだと、ちょっとねぇ。元々、有り物の音楽でやる事になっていたし、御免ね」「じゃあ、今度はみんなでこれる様な企画でしたら」
 こうして取材は終わった。
 日曜早朝から、子供にコスプレさせるとは何事だという一通の苦情メールが当座の反響であった。