香港山海経1−1アジア・オセアニア
種類 |
シリーズ
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担当 |
成瀬丈二
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.1万円
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参加人数 |
15人
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サポート |
0人
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期間 |
12/12〜12/16
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●本文
2005年某日香港にて──。
「どうやら、君とはエンターテイメントの方向性が違うようだ」
竜人にして、香港の映画監督、ファーナス・王(−・うぉん)はそう言って、3人目のシナリオライターに累計65度目のリテイクを出し、ついでに4人目のシナリオライターを探す事となった。
シナリオのタイトルは『香港山海経』無国籍、無考証のアクション映画を目指して作られていた。未だシナリオは、悪の獣人と正義の獣人が5つの宝玉を巡ってハッタリに満ちあふれたバイオレンスなアクションを行うというレベルでしか詰まっていない。
「駄目だ、今の香港映画界ではハッタリとケレン味だけで、話を作っていこうという気概が無い! 獣人だから、多大な無理をしても構わない、という事が判らないのか!? CGとワイヤーアクションと言い張れば、客をも勢いに巻き込めるというのに‥‥」
「それって子供騙しって言わない?」
明るい声で、部屋に入ってくるのが、双刀を腰に落とし差しにし、上は明るい黄色、下は黒一色の武闘着に身を包んだファーナスの子供、リューキ・王(−・うぉん)であった。
「娯楽で、子供を騙すのは、大人を騙すより難しい」
「はいはい。で、次の脚本家のあては? スポンサーに逃げられない内に、目処をつけないとね」
「判っているさ──もう、一度行ってみるか、日本に」
シナリオのコンペを行う。ついでに目星をこの前つけた、スタッフが居るので、引っこ抜いてくる。
これがファーナス・王の日本での予定であった。
「WEAに連絡を入れろ。人を集めるのと、後。前、クビにしたシナリオライターと一悶着あるかもしれない」
山をそのまま削り出したようなファーナスが立ちあがった。彼自身もつい先日までは現役のアクション俳優である。
「やるぞ、まずは東京でシナリオコンペと俳優の目通しだ。無論、主要な役者のひとりに、お前が含まれているのは忘れるな、リューキ?」
カット6スタート。
●リプレイ本文
「おはようございます、森宮千尋と申します。よろしくお願いします」
と、深々と礼をする、森宮・千尋(fa1782)。
「はじめまして。確か、アドリブとボディで売り出している、と聞いたが?」
礼儀正しく千尋は頷く。口笛を吹く音が聞こえる。
「見事なボディライン。こちらにも宜しくしてくれないかな? で、お久しぶり、監督サンにリューキ。日本まで引抜きスか? ところで、役者はいいのが見つかったんス?」
尋ねる水守竜壬(fa0104)にファーナスは肩を叩いて切り返す。
「今、見つかった所だ」
「それはいいですが、ただ、この水守竜壬を起用するなら、役に自分である程度肉付けして構わないスか──? そうすることで意外性も出るんじゃないか、と」
「意外性。それは常に大事な問題だ──竜壬くん。常にひと捻りは大事な要素だよ」
AAA(fa1761)はファーナスとリューキを同時にハグしようとして断念。とりあえずリューキをハグする。
(やっとこの時が来たのね。愛しの王親子に会いに、すっ飛んで来たわよ)
「やあ、エースはスタッフかね?」
それとも、と、ファーナスが繋げようとしたところでエースが遮る。
「アタシは勿論、役者志望ね。アクションも、お芝居もどっちもこなして見せるから、心配しないで。
ファーナスの傍にいられるのだったら、雑用から、エキストラまでなんでもこなしちゃうわよ。ドーン、と大船に乗ったつもりで任せて頂戴」
「では、期待しよう」
「ふーたたびー来たぜ東京ー♪ とまぁ、冗談はさておき、宜しく頼むぜ大将」
と、風羽シン(fa0154)はファーナスとエースが語り合っている所で、握手を求めてくる。
「前の話、受けてくれるのかね?」
シンは不敵な笑みを浮かべる。
「技術を磨く道の1つと考えたんだな。撮影スタッフとして参加させてもらえないか?」
「こちらから振った話だ。よろこんで受け入れさせて貰おう」
「はっはっはー。演技力が無ェから役者は無理だが、人手が足りなきゃスタントマンの代わりくらいはできるかもなー?」
「──横浜のバイクチェイスシーンの様な事は無いようにして欲しいものだ」
悪の貫禄も堂に入った烈飛龍(fa0225)が昔の事を引っ張り出してくる。
「それと監督並びに皆への密着取材。香港映画ではお馴染みのエンドロールでのNGシーン集や、DVD化された際の特典映像であるメイキング編等を編集させてもらえないか?」
「ま、それは早く手を挙げた者が勝つ、という事で任せよう」
「任された。それと、やっぱOPで観客を惹き込めなきゃ、成功は難しいからなー」
「あれくらいか?」
と、ファーナスの声と共に瓦が十数枚立て続けに割れる音。MAKOTO(fa0295)が試技用の瓦を正拳突きで気合いもろともに叩き割った音である。
無論コスプレと称して、完全獣化している。美しく肉感的な、金地に黒縞の虎の獣人であった。
「空手をベースに、八極拳か」
ファーナスは冷静に判断する。シンはその手並みに、自分が的になり攻撃されながら撮影するというプランを捨てた。
その一方、学ラン姿の、高校生兼映画監督──の鷹見 仁(fa0911)はファーナスに向かい持論を述べる。
「だからさ、確かに獣人ならワイヤーアクション並のアクションをワイヤー無しでも出来るだろうけど、その身体能力とワイヤーアクションを組み合わせればより迫力のあるアクションが撮れるんじゃないか?」
「それにはひとつの前提がある。獣人の反応速度に対応出来うる、機材がある事だ」
「そうかな? 例えば‥‥、こうやって俳優をワイヤーの金具で止めて、張り巡らせるだろ? で、役者がワイヤーで振られて行くのに合わせて金具を一つずつタイミング良く解放していくと、ワイヤーに振られた役者はこういう軌道を描いて動くわけだ。な? なかなか面白くないか?」
「面白いが、タイミングを間違えれば、役者の方が、ワイヤーに絡め取られる」
ファーナスと言い交わしながら、紙の上に図を書いて説明する、ジンは混乱してくる──。
「う〜ん、ワイヤーアクションみたいなアナログな手法に拘るなら、フィルムの逆転みたいなレトロな手法使うのも、ありじゃないか?」
「相当、タイミングを吟味して使わねばな。任せたぞ」
「え?」
「音楽はお任せで?」
と抜擢に驚くのは、滝月・玲(fa1405)。役者の演技やアクションを生かすためその他の音響さんやスタッフ、監督達の意見も聞きながら音のプロとして最高の効果音とBGMを作り出したいと述べたのだが‥‥。
効果音とは、実際音だけじゃなく擬音でもあり引き立てるための音。その辺は間違えずに音作りをする。迫力あるシーンはフルチャンネルを利かせ、スピード感は引き裂くような高音で表現。
「そこまでの明確なヴィジョンを持っていると思ったから、採用したのだよ」
とはファーナスの談。
自称大根役者の御堂 陣(fa1453)は「役者なので出たいです」と言いつつ、シナリオコンペにも興味はあってアクションシーンの案を出してみる。
『アクション1 場所:何処か都会の街中。
香港の裏路地を中華系武術や悪の組織の幹部みたいのが平然と闊歩。宝玉の1つを持つ人物を巡り善悪入り乱れてのバトル。ここは善玉の見せ場。
アクション2 場所:高層ビル
世界宝石展開催会場。当然宝玉も出展。それを狙ってバトル。
ツインタワーの屋上でビルを飛び移ったり飛行したりの大空中戦。ここは悪玉の見せ場。
本番はロケだが、テストでは一般関係者には全てワイヤーアクションと称して飛んで貰う。
アクション3 場所:山間部及びその辺の寺院。
宝玉を巡っての最終決戦。自然の中での獣人らしいアグレッシブなバトル。
次々と倒れる仲間たち、最後は宝玉の神秘性を出す為に寺院で主人公と親玉の一騎打!』
「よかろう。その線で年明けに香港でテスト撮影をしてみるか。出たいシーンと役回りを考えておいてもらおう」
本番ではツインタワーを使うとして、テスト撮影にそこまでする事はないと監督のリテイクはあったが。
手下獣人や大道具なども担当したいと言う鉄劉生(fa1738)は、ストーリーよりも小ネタを評価され、シナリオライターに加わる様打診された。小ネタとしては。
『宝玉を一つ得るごとに火ならば炎を拳に纏えたりとか属性の力を得る。
宝玉の一つは過去の事故で瀕死の重傷を負ったヒロインの心臓となっている。
ヒロインに主人公は一目惚れ。主要正義側と悪の幹部連中は因縁がある』
などが挙がる。そして、肝心の本筋だ。
シンプルさで勝負の孫・華空(fa1712)は、積極的にアピール。高い評価を得て、粗筋はこれで決定。
『主人公Aと父BはCという仙人界の姫と会う。仙人界はD皇帝に滅ぼされ、次はこの世界を狙っている。
帝国を止めるには伝説の5つの玉、五行玉を集め奇跡を起こすしかない。
Bは拳法仙人で半獣化し超人となれるが、玉に選ばれた拳法仙人は完全獣化し更に強くなる。
そこへDが玉の1つを持ち現れ、完全獣化しBを倒す。
BはAに玉を渡しAは完全獣化。撤退するD。BはAが赤子の頃、玉を持ち捨てられていたと言い死ぬ。
Aは残り3つの玉を持つ拳法仙人と仲間となり、又Cと愛し合う様になる。
侵略で滅亡寸前の世界を救う為Aらは帝国へ乗り込が、Cが誘拐され、Aと仲間達は城で最強の拳法仙人四天王と戦う。
Aだけ生き残りDと対決――DはAの実の父だった。Aは仲間の玉の力も借りDを倒すが力尽きる。
Cが祈る中5つの玉が光り、世界は元に戻り死んだ敵も味方も生き平和に暮らしている。
再会するAとCだがAはCを思い出せない――優しく見つめるC』
「大筋が決まった所で、皆がやりたい役回りがあるだろうから、それを盛り込んでいこう」
そこで華空がアピール。自分は中国拳法の『孫家極流』を使える。棍術が得意なので、孫悟空の様な扮装で暴れ回る役をしたいと。
「オッケー」
美しい艶やかな黒髪を靡かせながら、楊・玲花(fa0642)も自分の役を。
『役柄の名は芳蘭。立ち位置としては、悪の首領格Dの妻であり、主人公の今は亡き母親。
悪の首領が宝玉を手に入れる為に利用された護り手一族の長の娘。彼の正体を知り苦悩しつつも、殺すことはできず、宝玉を奪い取り人界へ。その影響で命を縮め、主人公を生んだ後没した。
ただ、その意識は主人公の持つ宝玉に宿り、主人公がピンチになった時、宝玉の力を発揮させる。また、最終決戦で悪の首領が命を落とした時、その魂を天へと運ぶ役割も果たす』
「じゃあ、今度は‥‥」
と、もりゅー・べじたぶる(fa1267)。
「Dの部下の拳法仙人。と、言えばカッコイイが、その実は組織の中でもあまり強くない下っ端。命令に忠実だが、非常にお間抜けさん。スーツ姿で外見的にはしっかりしているように見える。組織の命令で、Aの持つ宝玉を狙う。
『宝玉を渡してもらおうかぁ?』と、指を鳴らしながら近寄る。華麗なステップで主人公の周りを回って、蹴りを入れようとするが、主人公からの反撃を食らい、派手に吹っ飛ばされる、と」
一方、陣のやりたい役回りは──。
「希望としては善玉の獣人で、ハードボイルドを気取った殺し以外はオールOKの何でも屋。飛行して拳銃を撃つというセコイ戦法を取る」
と言ったところ。
竜壬は端的に女性に囲まれればOKらしく、「悪側についた方が女の子の従者とかつくし」と気軽な理由で居ついている軽い性格の竜の拳法仙人。宝玉はDの命令で集めているが、密かに自分が手に入れることも画策している、という裏設定も希望。
風光 明媚(fa1500)の希望はやや細かい。
「僕は悪側の参謀を希望するよ。
名前はフォックス=王(ウォン)。何か企んでいそうな、いやらしい笑みと嫌みったらしい敬語で話す男だよ。自分の手を汚さず、部下を使って事を運ぶタイプだね。
最初は、悪の手下共に追われながら登場して、主人公側に泣きついて助けて貰おう。追われてた理由は、悪側の組織が集めている宝玉の情報を入手したから、ってのが適当かな?
そのまま、主人公達と行動を共にするんだけど、実はそれは最初から策略で、主人公達の間に不和をおこしたり、チームワークを引っ掻き回すように暗躍するよ。
主人公達の近くでは、お調子者で、間抜けな学者を演じているね。
元悪側に居た人間が居る場合には、正体を悟られないように、彼を避けるような態度で、接するよ」
「長い、次」
ファーナスが促す。フェイロンは慌てて──。
「長いが大ボスをやりたいので聞いてくれ。役名は破天虎皇。
物語までの経緯だが、元は有力な武将として天帝の覚えもめでたく将来を嘱望されていた天将・虎飛翔。だが、身に覚えのない罪を着せられ、弁解の余地もなく突然幽閉。これは彼の声望を妬んだ別の天将が彼を陥れる為に周到に企まれた罠であった。
天界での全てを失し、彼の宿敵がより高い地位へと登る。彼を信じ、助け出してくれたかつての部下と共に幽閉先から脱出。
宿敵への復讐の為に力を欲していた彼は天界の片隅に封じられていた五行の宝玉に目を付け、それを我がモノにせんとその一つを護る一族に接近。
彼らから信頼を受け、一族の娘を娶り、宝玉の在処を掴む。そしてある日、野望の牙を露わにし、急襲を掛けて宝玉の一つを入手。
宝玉により増幅された力を背景に他の宝玉を護る一族を次々に襲う。襲われた一族は最後の手段として、『宝玉』を護り手ごと人界に転生させる。
追跡しようとしたが、彼の野望に気付いた『妻』によって瀕死の傷を負い、宝玉も奪い返される。身籠もっていた妻は宝玉ごと人界へと落ちていった。
傷が癒えた彼は己の復讐の為に行動を開始する」
シナリオのアイディアがワシントン条約で没になったエースは──
「アタシの希望役は正義の拳法仙人の一人、ってコトで。
元は悪の拳法仙人に所属していたんだけど、ある出来事がきっかけで悪玉連合を裏切り、正義サイドへ。
以降、主人公とその仲間たちを陰ながら支える武術家、なーんて格好良いと思うんだけど」
「いや、頑張ってそれ以上の肉付けをしてくれ」
ファーナスが頷けば、リューキが返す。
「エース、期待してるよ」
(ああ、悪魔の親子〜!)
森宮・千尋(fa1782)の出した役の設定は、考古学者でトレジャーハンター。美人でアクション&健康なお色気も担当。考古学に限らず色んな伝承や裏世界にも精通し宝玉の事をよく知る人物とのこと。
そこまでは良いが、後は余りにもご都合主義的過ぎて、シナリオ上のバランスが妙になるとの理由で却下された。
「説明台詞が五行以上かかるのは香港映画ではNGだ」
ファーナスが嘘ともホントとも付かない事を言って、ばっさり斬り捨てる。
若い青雷(fa1889)はワイヤーアクションをフルに活かして参入したいという。
狙っている役は主人公の仲間で名前がある役、芸能人として顔と名前を売りたいからと言う事で。
役名はテン。拳法仙人の少年で占いの結果玉を持つ主人公の味方となり、玉を巡る戦いに参戦する。道術より剣術を使う。性格は明るいお調子者だが、シリアスな時は真剣と言う設定。
小道具の剣を自在に空中に浮かし、自分もワイヤーアクションで空中に舞うという、絵になる構図が評価された。
「よし、今度、巴里でクリスマスパーティーがある、役がある者は各自自分で名前を考える事。リュウセイの提案通り、カタカナ表記である事とする」
ファーナスはそう一同に告げた、後。
「で、リューキの役が決まっていないが、ヒロインでいいか?」