どさくさ寺 ほおずり市アジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 猫乃卵 |
| 芸能 | 1Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 普通 |
| 報酬 | 1万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 07/09〜07/13 |
●本文
●まずは、紹介ビデオの上映東京下町の夏の風物詩、どさくさ寺のほおずり市。
この日の縁日にお寺に参拝すると、４万６千回ほおずりをしたのと同じご利益があると言われています。
縁日に合わせ、境内には、ほおずりの市がたちます。通路を挟むように店が並び、売り子の威勢の良い声が飛び交います。
「らっしゃい！ らっしゃい！ うちのほっぺはスベスベだよ！ よっ！ そこのお嬢ちゃん、うちでほうずりしていきな！」
「ほおずりすれば、商売繁盛！ 家内安全！ 満願成就！ うちのほおずり、ご利益あるよ！」
●続いて、制作スタッフの説明
一応ほおずり１回１５００円の値段が付いていますが、お客も勝手を良く知っています。この市では、どさくさに紛れて只でほおずりをしてもらうのが慣習になっているのです。お客も売り子も、色々な手段で駆け引きをして楽しみます。只になるまで値切りの交渉をしてみたり、おとりの売り子と交渉させておいて、他の売り子が隙を見てほおずりをしたりと、手段は様々です。
基本的に、ほおずりする側もされる側も男女を問いません。手段も自由です。しかしほおずり市におけるマナーは守らなければなりません。相手を抱きしめる等、ほおずり以外の事を行ってはいけません。当然、ほおずりされる側にも相手を選ぶ権利はあります。拒否されたら中止するのがマナーです。ただし肌があわないと強く感じるとか不快感を覚えるのでなければ、ほおずりを受けてあげるべきだとは言い伝えられています。
それと、髭で相手を痛がらせてはいけません。される側も出来れば剃るか、剃りたくなければ蒸しタオルで髭を軟らかくしておくのがマナーです。例外として、境内を巡回して、泣いている子供を見つけては、泣き止まないと痛いお髭でほおずりするぞと脅して泣き止まらせる鬼の面をした男の人や、ソリに乗って廻り、良い子にしている子供達を探してはほおずりのプレゼントをする、白くて立派な付け顎鬚をたくわえた赤い服の人が居たりします。
そうです。仮装も有りです。
さて、うちの局でも１つ店を出せる事になりました。もちろんお客との金銭のやり取りは行いませんが、店の様子を録画して放送します。つきましては、売り子と、サクラのお客を募集します。売り子は、好みのタイプで構いませんが、誰かお客を選んで、色々面白いテクニックを駆使して、ほおずりしてください。サクラのお客を客寄せに使うのも有りです。サクラのお客役と打ち合わせておいてください。
店から離れて行動すると、カメラに映るチャンスが減ります。注意してください。
店の飾り付け、衣装、小道具の準備は自由です。もちろんマナーある行動をお願いします。
私からは、以上です。
●リプレイ本文
桐谷蛍火（fa0320）は、浴衣の上からハッピを着て、店の近くに備え付けられている水道の蛇口の前に陣取った。右手にホテルに備え付けられている様な髭剃りセット、左手に冷たいおしぼりを持ち、大声で客引きを始める。「髭伸びてる人、いませんかぁ？ 汗臭いから、ほおずりしようとして断られたらどうしようって思ってる人いませんかぁ？ 断られる人の九割は、汗くさかったり髭が痛かったりするんです！ ホントですよ〜。そんな不安はこちらで解消してください。こちらで顔を洗って髭も剃っておけばもう大丈夫！ 今夜のほおずり市、満喫間違い無しですよ〜」
そこに志羽翔流（fa0422）がやってくる。
「仕事前に髭剃っとかないとな。髭剃りセット貸してくれ」
蒸しタオルを顎にあててから使い捨て剃刀で剃り始める。
古河 甚五郎（fa3135）が、翔流の傍で微笑みながら直立する。
「御髭が気になるお客様は、蒸したガムテと強力ガムテのダブル除毛はいかがですか？ お肌の状態がご心配な方には、スキンケアもございます。毛穴の汚れもガムテで逃さず除去致します。ええ、ベリベリと」
甚五郎は熟練の手さばきでガムテープを数十センチ切り取り両端を手で持つと、翔流のスキを窺う。
「俺は、お客じゃねぇ！」
「問答無用！ 私のガムテが翔流さんの毛穴を求めているのです！」
そんな緊迫した、どうでもいい攻防はさておき。
翔流は番組特注の全身招き猫スーツに着替え、招き猫のコスプレに取り掛かっていた。当初は客集めが終わってからコスプレするつもりだったが、『面白さ』を求めるスタッフの圧力もとい説得に負けたのだった。
着替え終わると台の上に正座し、左手で手招きをしながらＣＤプレイヤーから流れる三味線の演奏に合わせて歌う。
よってらっしゃい 見てらっしゃ〜い♪
商売繁盛のゲン担ぎ〜♪
金運上昇の招き猫〜♪
あなたの運気も あげまっせ〜♪
楽しい楽しいほおずり市〜♪
老いも若きも 男も女もよっといで〜♪
犬神 一子（fa4044）は、白いセントバーナードの着ぐるみを着て、曲に合わせて踊っている。一見すると、単なる売り子の様に見える。だが一子の真の狙いは、店に寄ってきた酔っ払いやマナーの悪い客を『ジョリジョリ髭のほおずり攻撃』で撃退する事だったのだ！
一子は店の設営や小道具の飾り付けを手伝ってきたのだが、番組的にはこっちのキャラで活躍する事となった。
同じく設営の終わった甚五郎が期せずして悪役のサクラとなった。甚五郎はガムテの紙切りを客に披露していたのだが、出来上がった作品をお客の頬にペタンと貼っていたのを見たスタッフが、そのお客に被害者のサクラとしての演技をお願いしたのだ。
「ええい！ 訳の分からん切り絵をお客の頬に張る迷惑者よ！ このセントバーナードの白い毛並みにかけて、お前を退治してくれるわぁ！」
「小癪なぁ！ このガムテで一本残らずお前の毛をむしり取ってやるわ！」
周りを囲むお客が拍手して盛り上げる。
そんなセントバーナードとガムテ職人の息を呑む（筋書きの有る）攻防は、お客を呼び、翔流は愛想よくそのお客とほおずりを交わしていた。
さて、女性陣はと言うと。
「赤まるほっぺ大作戦〜！」
浴衣姿の姫野蜜柑（fa3982）が叫ぶ。
「今年のほおずり市は、赤まるほっぺ隊がいただきだね！」
「ほっぺ隊〜？」
安部彩乃（fa1244）が首を傾げる。
「ようこそ、ほっぺ隊へ。ここにございますは、汗では落ちないけど洗えば簡単に取れる塗料だよ。この塗料を筆で頬にこういう風に塗りまして‥‥」
蜜柑の頬を見た彩乃は悲鳴をあげて逃げようとする。蜜柑は彩乃の手を両手で掴み、更に語りかける。
「塗った後、乾燥する前にそのままほおずりするの。これにより、お客さんはどこでほおずりしたか、一目瞭然。同じ模様のほっぺを見つければ、親近感もわくというものでございます」
「でも、その渦巻きほっぺは嫌〜！」
彩乃は蜜柑の手を振り解き、逃げていった。
「隊員勧誘、失敗しましたです」
蜜柑の最初の案は、頬をただ赤く塗りつぶすというものだったが、これまた『面白さ』を求めるスタッフのダメ出しもといアドバイスによって、渦巻き模様に替えさせられたのであった。
彩乃には逃げられたが、お客には意外と好評だった。蜜柑の親近感わく接客態度が受け入れられた為であった。
一方、彩乃は、その後カキ氷を幾つも作っていた。
「こんなにカキ氷を作って‥‥いったい何をするつもり‥‥なの？」
店の裏で休んでいた紗雪（fa2853）が尋ねる。
「これはですね〜、こうやって使うのですっ」
彩乃は、いきなりカキ氷を口いっぱいにほおばった。
「ふぉ、うしておいて、ですね〜」
彩乃は紗雪にほおずりをする。
「きゃっ！ ‥‥冷たい」
「これが必殺『ひんやりほおずり』なのです〜。相手もカキ氷を食べれば、ダブルひんやりなのです〜」
そこまで言うと、彩乃は頭を抱えてしゃがみ込む。
「あ、頭がキ〜ンと‥‥ わたくし、負けませんですっ」
さすが必殺技である。
ほおずりをされた紗雪はパニックモードに入り、何をやってもトラブルを起こしてしまっていた。人見知りが激しい上に、人に触れるのは苦手だからだ。トラブルの現場の収録は省略されたが、そうやって色々とトラブっていると、銀杏（fa3122）が話し掛けてきた。
「鼠さんっぽいお面はある、ですか？」
「無い‥‥の。‥‥権利上の問題とかで‥‥収録に使えない‥‥らしくて‥‥」
「どうして、ですか？」
「ごめんなさい‥‥なの。‥‥その事に触れるのは‥‥苦手‥‥」
「しょうがない、です。では、この椅子、借ります」
銀杏は椅子を運び出し、叩き売り用の台の横に置いた。自前のハリセンで台をぺしぺしと叩いて口上が始まった。
「えと‥‥安いよー安いよー、うちの頬ずり、は、ここら一体、の中じゃ、一番の、お値打ち品だ‥‥じゃなくて、ですっ」
というか、今回の収録ではお客さんからお金を戴かないのである。
ちょうど通りかかったお客さんをじっと見つめて、誘い、交渉成立したら、用意した椅子に座ってもらう。大抵のお客さんとは身長差が有りすぎるからである。ほおずり自体は、ちょっと触れてすぐ離れる感じで控えめな感じだった。
「ありがとう、ですっ」
多少、笑える事で視聴者の心を掴む場面作りについてスタッフの注文は入ったが、収録自体はこうして無事終了した。
