花火で歌おう!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 猫乃卵
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/16〜08/20

●本文

 漆黒の空を見上げれば、光の花びらが静かに開きます。
 まるで彼岸花の様に艶やかで、タンポポの綿毛の様に儚くて。
 次から次へと咲き競い、内臓を震わせる低音がリズムを刻みます。
 皆、一夜限りの花々の舞を愛で集うのです。

 う〜、やっぱ、この時期って言えば、間違いなく『花火大会』でしょう!
 この近くでも花火大会がまもなく開催されるって!
 うん。花火大会、行きましょう! 行って歌を歌って、観客を楽しませるのです!

 『歌?』って、今、聞き返しましたね?
 ふっふっふっ‥‥
 まさか、会場でライブ開くだけ、なんてイメージしませんでしたよね?
 私を誰だと思ってるんです? 企画力と行動力が服着て走ってる様な女ですよ?
 既に花火大会の主催者に話を付けて、幾つかの花火を指定した時間で打ち揚げてもらえる事になってます。
 私の企画するライブでは、花火がステージ演出の一部と化すのです!
 歌の中で一番盛り上がるタイミングで歌い手のバックに打ち揚げ花火が開き、数秒遅れて『ドン!』と低音が響く様にセッティングするの!
 例えば『はなひらくー』の『く』で花火が開いて、長音『ー』の最後で『ドン!』とかね。

 歌のテーマは『私の愛する君/貴方は、まるで花火の様に儚くて美しい』にしましょう。
 このくらい、ちょろいわよね。もちろん、このフレーズをそのまま歌詞に盛り込まないでね。
 あと、注文つけるとしたら、広い年齢層の観客に伝わる平易でノリの良い歌を歌って欲しいという所でしょう。

 そういう事で、撮影日までに番組で歌う曲を一曲以上、皆で作っておく事! いいわね?

●今回の参加者

 fa0186 シド・リンドブルム(18歳・♂・竜)
 fa0585 畑下 雀(14歳・♀・小鳥)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa1478 諫早 清見(20歳・♂・狼)
 fa3983 キラ・イシュタル(17歳・♂・竜)
 fa4131 渦深 晨(17歳・♂・兎)
 fa4133 玖條 奏(17歳・♂・兎)

●リプレイ本文

●打ち合わせ
 ライブ開催を間近に控えた或る日、今日は出演者とスタッフ全員が控え室に集まって打ち合わせをしている。
 それぞれの曲における花火演出のタイミングを正確に求める為だ。
 まず最初は、曲毎に、出演者が楽譜のコピーに花火を開かせたいタイミングと音を響かせたいタイミングを書き込む。
 花火を開かせるタイミングを『※』、音を響かせるタイミングを『$』と書き示す方法で、表記は統一された。
 書き込みが終わると、次は制作スタッフの作業になる。曲のテンポと『※』と『$』の指定位置から、それぞれの花火をイントロの演奏開始から何秒後に打ち揚げるか求めていく。実際の所、指定されたタイミングにぴったりと合わせられる訳ではないが、可能な限り合わせ込む様に計算されていく。これらの時間に従い時間差で打ち揚げる様花火師側に依頼しておけば、後は本番でイントロの演奏開始と点火タイミングを制御するコンピュータの動作開始を合わせるだけでいい。
 その後、出演者達はリハーサルを進め、本番に備えていた。

そして、当日夜。観客は暗く静かなステージを見つめ、ライブの開始を待っていた。

●オープニングナンバー
 真っ暗だったステージが、照明に照らされて、ゆっくりと明るくなる。それに合わせてイントロの演奏が始まる。
 ステージ中央に立つのは、花柄の浴衣に身を包んだキラ・イシュタル(fa3983)。頭には渋く輝く銀の髪飾りを付けている。
 余計な言葉は要らない。キラは、ただ軽くお辞儀をして歌いだした。

(キラ・ソロ)
笑顔※咲く$ 君と繋がってい※たい$
もし繋がっていられ※たら$ 私は何だってしてあ※げる$

笑顔が見られるのなら
その為の努力は惜しま※ない$

だ※から$ あなたは笑って※いて?$
私の為に笑っていて?

空に浮かぶ あの綺麗な花火の※ように$

あなたを愛している 私の※為に$

 細く銀色に広がる花火に包まれて、女性並みの声域でやさしく歌う彼のバラードは、聴く者に心落ち着く感覚を与えた。

●『hana×yume』
「はい。オープニングナンバーを歌っていただきましたのは、キラ・イシュタルさんでした。皆様、いかがでしたでしょうか」
 拍手に包まれてキラが退場すると、代わりに渦深 晨(fa4131)と玖條 奏(fa4133)がステージに登場した。
「次は、ユニット『T.R.Y.』のお二人です」
「はい! 俺がT.R.Y.のシンです。そして」
「俺がカナです。よろしくね、みんな!」
 二人は観客に向かって元気良く手を振る。
 二人の衣装は良く似ている。だが、カナは上着を脱ぎ腰に巻きつけている。カナは半袖の白いシャツを着ているが、シンは上着の下にノースリーブの白いシャツを着ている様だ。ズボンは二人ともダメージジーンズだ。
 演奏開始直前、二人はヘッドセットマイクのスイッチを切った。
「カナ、頑張ろうね? 失敗だけはしないように!」
「ああ。観客を楽しませて、尚且つ俺達も楽しまないとな?」
 二人はヘッドセットマイクのスイッチを入れる。
「それでは、お聞き下さい。T.R.Y.の歌で、hana×yumeです」

(カナ・ソロ)
広く果てない ※夜空を$見上げて
(シン・ソロ)
心から強く 僕は願うよ
(二人で)
この胸の想い 君へ届けと

(短めの間奏)※$

(シン・ソロ)
天に咲き誇る ※大輪の$華は
(カナ・ソロ)
まるで君のように ココロに残る
(シン・ソロ)
そして暗闇へと 溶けるかのように
(カナ・ソロ)
消え行くその様 儚く美し

(シン・ソロ)
僕の胸に咲く ※優しき$華よ
(カナ・ソロ)
強く儚き アナタを見る度
(二人で)
※僕の胸の内$ ※また綻ぶ蕾$

 間奏が入るまではややスローテンポだが、その後は一気にアップテンポになった。花火もテンポ良く揚がる。
 最後はテンポを落としつつ静かに終わった。

●『beat』
「T.R.Y.のお二人でした。ありがとうございました!」
 観客の拍手に送られて退場するシンとカナと入れ替わり、シド・リンドブルム(fa0186)と諫早 清見(fa1478)が入場する。
「続いては、ユニット『アスタリスク』のお二人です」
「こんばんは。シドです。精一杯心を込めて歌いたいと思います。頑張ります!」
「キヨミです。とにかく、みんな、楽しんでな!」
「そして、ギター演奏として富士川・千春(fa0847)さんが参加されます」
 真紅のエレキギターを抱えて千春がステージ後方に立つ。
「はるちーさん、演奏の手伝いありがとうございます。宜しくお願いします」
 三人揃って浴衣姿だ。
「では歌っていただきましょう。アスタリスクの、『beat』です」

(前奏)
※$
(二人で)
突き上げる音 誘爆してくみたいに 
騒ぐ鼓動で 何も聞こえない
空に※※次々 $$咲き競う花に
彩られてく 夏の恋※※咲※かせて $$$

(キヨミ・ソロ)
祭の灯から 君を連れて抜け出した
いつもと違う むせ返るような熱気と
ルージュの※色に$当てられてる

(シド・ソロ)
儚く淡く 消えてく光を
映す瞳が綺麗で 目が離せない
鮮や※かに $華や※かに $少し寂しげに
過ぎてく夏の思い出にしたくない

(キヨミ・ソロ)
地上五百メートル恐れず飛び出せたら
(シド・ソロ)
想いは散らずに
(二人で)
※実って$くれるのか

突き上げる音 まるで聞こえないほど
騒ぐ鼓動も 岩に染み入るって
空に※※咲く花 $$光を降らせて
焦がれる胸に 勇気を※※と※もそう $$$

 ポップで明るい曲は、リズムに合わせた観客の手拍子を生んだ。2連発・3連発の花火が観客の参加に応える。

●『夜光華』
「アスタリスクの皆さんでした。ありがとうございました!」
 皆の拍手の中、シドとキヨミが退場。代わりに畑下 雀(fa0585)とベス(fa0877)がステージに上がる。はるちーも前に出てくる。
「さぁ、トリを飾るのは、ユニット『fleurir』の皆さんです!」
「こ‥‥こんばんは。畑下 雀です。デボ子と呼んでください」
「ぴゃぁ! みんな、元気ぃ? ベスだよ〜!」
「引き続き演奏させていただきます。はるちーです」
「皆さんも浴衣姿なんですね。色は違いますが、お揃いの柄で‥‥どうされました? デボ子さん」
「‥‥浴衣のサイズが少し小さいみたいで、む、胸がちょっと苦しいです。胸のラインも目立ちますし‥‥」
「ぴ? 顔真っ赤だよ?」
「ちょっとだけお時間いただけますか? デボ子さんの浴衣の胸の補正を調整しますので」
「fleurirの歌をお待ちの皆様、宜しいでしょうか? 少々お時間をいただければと思います」
 脱脂綿の袋を抱えたはるちーがデボ子と共に一旦ステージ裏に引っ込む。
 二人でゴソゴソと何かやっている様だ。
 デボ子が身体に付けているワイヤレスマスクのスイッチを切り忘れた為、詳細は省略するが、観客、特に男性の想像力を掻き立てる音声が会場に流れていた。ベスはステージ裏を覗き込み、虚実混ぜながら実況中継して観客を沸かせていた。

「はい。お待たせいたしました。準備が出来た様です。歌っていただきましょう。fleurirで、曲は『夜光華』です」

(ベス・ソロ)
煙たげな夜を歩く 何も飾らない夜は
小さな灯りが 僕らの足元を※照らす$
いつもの星座(ほし)が見えない地図は 行き先も分からないけれど

(デボ子・ソロ)
咲いては夜に染み込む※花火が$ 夏の終わりに切なく感じた
心に咲き続ける花 いつまでも見ていた菊先
光とき放ち※ 熱を残して$ またどこかで咲くでしょう

(三人で)
※花火の香りで$夏を思い出して 今の夜空(ほし)を瞳に焼き付けよう
あの日 広く深い深海(うみ)※小さな光が$差し込んだんだ
熱を帯びた※流れ星が$ この小さな胸の奥
今でもキラキラ光を※放ち$煙にむせ返るボクを焦がす

(はるちー・ソロ)
耳傾ければ今年も聞こえてくる※大きな音$
打ち上げられた花は
咲いて※散って$ 儚く※散って‥‥$

(三人で)
二人再び歩き出す 星も飾らない夜は
※遠くの華が$ ボクらの影を伸ばす
鮮やかに※咲き誇る$から 二人で上を向いて願いを※かけよう$
※$

 曲の終わりに合わせる様に、ステージの照明が暗くなっていく。完全に暗くなったタイミングで、締めの花火が打ち揚がる。

「全てのプログラムが終了いたしました。皆様のご視聴とご声援に厚く感謝いたします。お気を付けてお帰りくださいませ。本日は、ライブにお越しいただき、ありがとうございました」