しあわせこんびに。アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/23〜05/27
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●本文
TOMI TVがお送りする特撮青春コメディ「しあわせこんびに。」では、ただいまキャストを募集中です。
主人公はしがないコンビニの店長‥‥でも実は修行中の魔法使い。人々を幸せにするため、魔法を使う。でも人々の反応はイマイチで、おまけに魔法使い一族の間では、「魔法は人間を困らせるために使うもの」が常識であり、彼ははみだしモノ。おまけにコンビニ業界進出を狙う超エリート青年社長までが絡んできて‥‥!?
そんなハートフルストーリーに貴方も出演してみませんか?
☆ストーリー☆
とある町にある一軒のコンビニ。どこにでもありそうな店だが、実は秘密があった。店長の青年・天童鏡太郎(てんどう・きょうたろう)は魔法使いだったのだ。
だが、あまりにもお人よしなためか魔法力はイマイチ伸び悩んでおり、店に来る人をみんな幸せにしてあげたいと願うのに、魔法で彼ができるのは、ヤキトリばっかり買っていく単身赴任のサラリーマンの買い物袋にそっとビタミンサプリを忍ばせたり、衝動的に万引きしようとした女子高生の手から、そっと商品を取り戻したりするのが関の山。
妹である魔法少女・天童リリカ(てんどう・――)の方がはるかに魔法力は上達が早くて、一族にははみ出しモノ扱いされる始末だ。
そんな彼の心の支えは、女優を目指しながら店でレジのアルバイトをしているしっかり者の江川沙羅(えがわ・さら)。
ところが、そんなある日、コンビニの常連客である超エリート青年・森江貴明(もりえ・たかあき)が思いがけない話を持ち込んできた。鏡太郎のコンビニを自分の所有する企業グループの傘下に入れたいというのだ。 そうすれば売り上げナンバー1コンビニになること間違いなし、と。
だが、そうなれば、今までのようにひそかに魔法でお客さんを助けることはできない。しかし森江の言うことを聞けば、より多くの客に安くて良い品を提供でき、ひいては人を幸せにできるのかも‥‥鏡太郎は迷う。
おまけに森江は沙羅に個人的に接近しつつあり‥‥?
☆キャスト☆
●天童鏡太郎‥‥コンビニの店長。実は魔法使いだが天然ボケかつ魔力は未熟。他人を幸せにするのが生きがいだが、そのために自分が損をすることもしばしば。
●天童リリカ‥‥鏡太郎の妹。鏡太郎よりはるかに高度な魔法を使える魔法少女。魔法は人間を困らせるために使うものと信じており、お人よしで他人の幸せを願う兄を馬鹿にしている。姿は可愛いが心は鬼?
●江川沙羅‥‥鏡太郎のコンビニでバイトしている女性。若さに似合わず苦労人でしっかり者。女優になることを夢見ている。
●森江貴明‥‥若くしてコンピュータソフト開発会社をたちあげて財を成したIT長者。さまざまな企業を企業グループの傘下に入れている。
※上記のキャスト以外は確定しておりません。
鏡太郎の師匠の魔法使い、森江社長の秘書など自由に考案の上、ご応募下さい。
●リプレイ本文
二人の魔法使いがいた。二人は、魔法使いの師たる大魔女から、課題を出された。
「二人それぞれ、魔法を使って出来るだけ多くの人間の人生を変えること。ただし、どんな手を使ってどんな風に変えるかは自由よ」
童顔で年齢不詳の大魔女・小津法子(=都路帆乃香(fa1013))は言った。利巧で抜け目の無い魔女・保科カレン(=姉川小紅(fa0262))は言った。
「なんでこのあたしが、こんな『うすボンヤリ』と同じ課題を課されなくちゃいけないんですかっ!?」
「私の魔法教育に間違いはないっ!!」
怒ると怖い童顔の大魔女に叱られて、二人は旅立った。
お人よしの魔法使い‥‥天童鏡太郎(=壱夜(fa3328))は、コンビニを経営し始めた。だが、魔力は弱い。例えばおつかいに来た子供が、高い棚にあるおにぎりに手が届かないでいると、店の制服の胸に挿したボールペンを一振り、呪文を唱える。
「きょたろんきょたろんぱぴぷぺポン☆」
不思議なことに、おにぎりはぽろりと子供の手の中に転がり込んでくる。他には衝動的に万引きしてしまった女子高生のかばんから、そっと商品を戻しておいたりする。
一方、カレンの方はやっぱ人生を変えるならお金よと、とある青年実業家の秘書に納まった。ビシッとスーツを着込み、伊達眼鏡をかけて。しかも鏡太郎と同じ課題を課されたのがよっぽど気に食わなかったらしく、イタズラを企んだ。
「おーっほっほっほ! どちらが上なのか、思い知らせてやるわ! ‥‥かれりん・かれらん・ぱっぷんぽい!」
と彼女が呪文を唱えて魔法をかけたのは、彼女の上司たる青年実業家。さて‥‥
◆
「店長。そろそろあがって構いませんか?」
アルバイト店員・江川沙羅(=姫乃 舞(fa0634))が鏡太郎に遠慮がちに尋ねる。沙羅は小さな劇団の女優をしており、バイトの時間を調整して練習に通っているのだ。
「あ、ああ、今日舞台も舞台の練習?」
「はい。もうすぐ本番ですから」
「大丈夫、響子さんがいるから。‥‥って、響子さん、いつまで店の前の掃除やってんだろ」
沙羅が探すと、入り口の前を掃除しているはずの早乙女響子(=愛瀬りな(fa0244))は、ほうきを持ったまま、常連客のおばあさんとしゃがみこんでお話中である。
「響子さん、あのう、レジ交代してもらっていいですか」
「あ、ごめーん」
と、まったりおっとり響子が交代に来る。
「じゃあ響子さん、お願いします。お疲れ様でした」
髪をなびかせて走っていく沙羅を、鏡太郎はいつまでも見送っている。
続いて入ってきた一人の客がいた。店の常連客で、栄養ドリンクや経済紙等、いかにもデキル男風の買い物をしていく青年である。
が、今日の彼はレジにまっすぐ近づいてくると、名刺を差し出した。「アナライズ社 代表取締役 森江貴明(=風祭 美城夜(fa3567))」とある。
「アナライズ社って‥‥急成長中のIT企業グループの?」
響子が大きな眼をさらに大きく見開いて森江を見つめる。心なしか、頬がぽーっと桜色に上気している。
貴明が持ち込んだのは、なんと自分の企業グループの傘下に入らないかという誘いだった。
「いつも買い物に来ていて思ったんだ。場所もいいし、コンビニ事業進出の足がかりにはぴったりだなってね。それにキミたちにとっても悪い話ではないと思う。なんといっても仕入れ値を安く、良質な商品を提供することができるし、店員の待遇も‥‥そういえば、いつもの彼女、いないの? ほら沙羅さんとかいう」
「ああ‥‥今日、舞台の練習があるとかで。彼女、小さな劇団で女優さんやってるんですよぉ」
前向きに検討してくれたまえ、と去る貴明を心なし熱い視線で見送る響子だった。だが沙羅の名を知っているということは、貴明は前から沙羅に興味を持ち、話しかけているらしいのだが‥‥
そしてその後、これも常連客の草加 真幸(=草壁 蛍(fa3072))が店を訪れた。豊かな肢体に細面のイイ女風の外見に反して、レアな懐かしおまけ付きお菓子を、なぜかいつもオトナ買いしていくというマニアック客である。
「はろ〜響子ちゃん、今日も可愛いね〜どう? アレ、とっといてくれた?」
「はい。月間俺の兄貴様フィギュアコレクションですね?」
変な客を響子に任せて? 鏡太郎は店の一大事を相談すべく店の二階に駆け上がる。そこにはちゃぶ台でお茶を飲みつつテレビのワイドショーに興じる童顔の大魔女・法子がいる。
「し、師匠! 大変でっ‥‥あたた」
「師匠じゃなくて、ほうちゃんでしょ、ほ・う・ちゃ・ん」
こめかみグリグリ攻撃で無理やり愛称で呼ばせようとする法子。
「ししょ‥‥いや、ほうちゃんこそ、昼間っからぐーたらしないでくださいよっ」
鏡太郎がグリグリされつつ貴明の提案を説明する。
そこへ口を挟んだのは、丁度学校から帰宅してきた鏡太郎の妹で、これも魔法使いの(しかも鏡太郎よりはるかに上を行く)天童リリカ(=アマラ・クラフト(fa2492))である。魔法を組み込んだ携帯を親指で操りつつ。
「その話、乗るの? 乗らないの? どっちにしてもあーいうウザイ客が来ないようにしてよね」
と、窓の外をあごで示してにんまりする。窓の外の駐車場では、「なんですと!? ちょっとアール君! メンテはこの間済ませたでしょ? もしかしてキスしたら直る? ねえ?」
真幸が愛用のスポーツカーの不調に叫んでいる。ちなみに不調はリリカの魔法である。
魔法界では、人間を困らせる魔法こそが上級とされるのだ。
◆
コンビニの系列化はとんとんと進んでいった。最終的な意思確認のすり合わせをする日がやってきた。貴明は秘書‥‥もちろん、スーツ姿のカレンである‥‥を連れ、鏡太郎の店にやってきた。貴明の瞳はカレンがさらに魔法をかけたせいか、いつもよりさらに冷徹だ。響子に眼を向け、言った。
「経営効率を上げるために、提案したいことがひとつ。働きの悪いアルバイト店員は辞めてもらってはどうかな」
「で‥‥でも、響子さんは、おばあさんの話相手になってあげたり、喜ばれてます!」
と鏡太郎。
「店長、ありがと‥‥でも私、自分がトロイの分かってる。だから、もういい。‥‥今まで、ありがとうございました」
響子が店を出て走り去っていく。鏡太郎が貴明に向き直る。
「お誘いは有難いんだけどごめんなさい。やっぱり、売上よりもみんなの笑顔の方が俺には大事なんだ。誰かを泣かせてまで大きな店にしようなんて思わない」
何か言いかけた貴明に、今度は沙羅が鏡太郎をかばうように進み出た。
「私も皆を幸せにしたいと言う鏡太郎さんのお手伝いをしたいんです。私が女優を目指しているのは、人を感動させたいから。このコンビニも人を喜ばせるお店にしたい‥‥人を傷つけるお店じゃなく」
店のドアが開いた。店の前に、ぎっしりと近所の人々が詰め掛けている。
先頭に真幸がいる。
「このコンビニの価値は、あんたみたいな金の亡者にはわからないだろうね。確かに能率は悪いかもしれないけど、心がくつろぐ何かがここにはある」
「このコンビニを変えないで!」
「私たちの心のオアシスなのよ!」
人々は、貴明に詰め寄った。
◆
川岸で、川の流れを見つめぼんやり考え込んでいる貴明。と、「貴明さ〜ん」と、響子が駆け寄ってくる。
「お散歩の途中で偶然見かけて‥‥なんだか背中が寂しそうだったから、思わず声かけちゃった。よかったら、私のおうち近くなんで、お茶でも飲みませんか?」
「キミは‥‥優しいな。俺はキミをクビにしようとしたのに‥‥」
「だって、貴明さんは、その方が店のためになると思ったからなんでしょう? 私、気にしてないですよ」
一緒に歩き出す二人。そして、響子が「ここです」と入っていく家は‥‥
「お嬢様、お帰りなさいませ」
エプロン姿のお手伝いと思しき女性が数人出迎える、大邸宅。
「ただいま、皆さん。貴明さん、お茶はキーマンティとコニャックトリュフでいいですか?」
貴明は唖然と、ほんわか笑顔で振り返る響子と大邸宅を見比べるばかりだ。
◆
並んでレジにいる、鏡太郎と沙羅。なんとなく、そわそわして、眼が合いそうになると互いに逸らしたり。
「店長‥‥鏡太郎さん。これからも、ここであなたのお手伝いをさせて頂いても良いですか‥‥?」
「こ、こんな俺で‥‥いいの?」
「鏡太郎さんより優しい人なんて、どこにもいないもの‥‥」
その二人の頭上の二階では‥‥
「若いっていいね〜」
と法子が今日もせんべい片手にお茶を飲んでいる。しかし今日はカレンが一緒だ。
カレンはいつものスーツと眼鏡はどこへやら、ウェーブヘアに魔女らしい黒ワンピ。
「え〜、まだ魔界に戻っちゃいけないんですかあ!!」
カレンは法子のせんべい袋をひったくり、ガジガジ。やけ食いか?
「ったり前でしょ、試験に負けたんだから。しばらく森江社長の傍で秘書を続けて、人間の心ってものを学ぶのね」
「魔法術じゃなくて‥‥ですか?」
「今回の一件で思ったわ〜、一番の魔法は『恋』かもしれないってね〜」
と法子が指差すTV画面には「実業家森江氏、映画制作会社令嬢と婚約!」の見出しが。
「彼女と出会い、自分の本当の夢にづきました。はい、今は利益よりも、人を感動させることを心がけています」
貴明がにこやかに語る。
「一緒に夢を叶えましょうね、貴明さん」
響子が可憐な微笑を浮かべ、彼を見つめた。