せくすぃ〜くノ一参る?アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/23〜12/02

●本文

 どんな職場にも、困ったおやぢはいるものだ。
 芸能界とて、例外ではない。
 その名は伊刈利久、既に御年67才。
 ベテラン舞台俳優である。
 この困ったおやぢの困ったところは、「霊の世界はあるんだよ〜」と見てもない死後の世界の話を吹聴することと、もう一つは「セクハラ」。
 演技指導と称して年下の女性を触りまくり、訴えられかけたことも数度。
 しかしたいていの場合、相手が若い女性つまり彼より立場が下ということもあり、演技の世界、特に時代劇の分野においてそれなりの実力を持つゆえに、周囲がもみ消したり、相手が諦めたりとまあラッキーな道をたどってきたおやぢである。それに、女性側に貞操の危機が訪れるといった深刻なセクハラは少なく、
「おっ、こんなところに綺麗なお尻があるのう。ラッキ。触ろ」
 といったどちらかというと明るいセクハラに属するからという理由もあるが――もちろん明るいからといってセクハラは本来許せるものではない。
 ところで、このおやぢ、今回時代劇の舞台をプロデュースするのだという。
 タイトルは「くノ一乱れ剣」‥‥時は江戸時代。せくすぃーな女忍者が敵味方入り乱れ、見えそうでみえないお色気と忍法を武器に、お家を乗っ取ろうとする奸臣を退治し若君を守る、という内容らしい。
 ちなみに伊刈氏本人は、くのいちを統率する「御頭」役。
 くのいち達に自ら忍術を指導する場面も脚本家に注文をつけてちゃっかり入れている。女性に手取り足取り、あわよくば胸取り腰取り指導しようという意図見え見えという奴だ。
 というわけで、現在、アクション演技と艶技で伊刈氏及び観客までも魅了しちゃおうという女優魂たくましい人材を募集中である。
 もしくノ一役に選ばれたとしたら、伊刈氏のセクハラは練習中だろうが本番中だろうがおかまいなしなので、もしかすると舞台上でもセクハラを受けるかあるいは防ぎつつ、演技をしなくてはならない。
 もちろん一部脇役(悪役含む)も、オーディションにより募集中である。
 ‥‥貴方もせくすぃーで華麗な時代劇舞台を演じつつ、セクハラおやぢを退治してみませんか?

●今回の参加者

 fa0394 小鳥遊 つばさ(7歳・♀・小鳥)
 fa0491 ハディアック・ノウル(23歳・♂・鴉)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa0968 シャウロ・リィン(16歳・♀・猫)
 fa1084 比良坂 夏芽(25歳・♀・一角獣)
 fa1126 MIDOH(21歳・♀・小鳥)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa1704 神代タテハ(13歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●「くのいち乱れ剣」
 時は安永。今は若君と呼ばれる幼き将軍が、江戸幕府の重鎮に守られ、権力の頂点にいる時代である。若君は、毒を盛られかけたこともあり、数人の手だれに守られ、ひそかに親族のいる某藩に暫くの間かくまわれることとなった。だがその手筈は既に何者かにより察知されており、暗殺者が旅路の途中で待ち伏せているのであった‥‥
 その暗殺者『萩の影』役ハディアック・ノウル(fa0491)が、竹林のセットの中、若君に近づきつつあった。なぜか虚無僧姿で「ぶお〜」と尺八を吹きつつ登場。日ごろ扱っているトランペットと勝手が違うせいか、ハディアック多少ぎこちない。
 若君に忍び寄り、突然一度笠をばっ! と脱ぎ捨て、尺八から仕込みの剣をずらりと抜き若君を演じる子役に迫る。子役が、本気で怯えて客席に飛び降りてしまった。萩の影は、お伴の侍をバッサーッ! と切り倒し、若君を追う。
「逃げられはせぬぞ‥‥」
 目が鋭いわガタイはでかいわ迫力満点。不気味に低く呟く演技に、若君役が大泣きしている。
「しっ。おじちゃんお仕事でしてるだけだから。後でアメあげるから」
 低〜い声で子役に囁くハディアックなのだが。
「若君を狙う痴れ者! 公儀お庭番が一人、利音(りいん)が相手をしてくれる!」
 ひゅっ! という風音とともに、トンボ返りを切ってくのいち・利音役シャウロ・リィン(fa0968)が舞台袖から登場。身軽さを生かした動きで忍者刀を操り、「萩の影」を追い詰める。
 しかしその時。妖しい三味線の音とともに、鳥追い女姿の謎の女「紫(ゆかり)」役神楽坂 紫翠(fa1420)が登場。女装ながらも紫の着物姿は妖艶で、艶笑を浮かべつつ。
「捕まって余計なことを喋られては困ります‥‥掟はご存知ですね? 失敗はすなわち、死!」
 しゅっ‥‥紫の投げた手裏剣が命中し、萩の影が「むっ‥‥うぅっ‥‥」断末魔の演技。
「なにやつ!?」
 利音の問いに、
「紫(ゆかり)‥‥とお覚えくださいまし。いずれまた‥‥それまでに貴女が死んでいなければ‥‥ですが」
 艶笑を残し、謎の女は去ってゆくのであった。

 夜。利音から知らせを受け、お庭番最強のくのいち軍団が頭領役伊刈利久のもと、集結。
「うぅむ。若君の命を狙う者、それを操る妖しの女、とな。して利音、奴らの素性はなんと思うぞ」
 忍者軍団の御頭は白いひげをしごきつつ、さりげな〜く利音の肩に手を置き、つるりとその手を胸に滑らせようとする。
「ひああ!?」
 利音の悲鳴が上がる。一瞬、舞台の空気が凍る。伊刈氏がにったり笑って囁く。
「事故ぢゃ、事故」
 絶対にわざとだ、とにらみつけつつ利音はセリフを続ける。
「かの女、異国(とつくに)の香のごとき匂いをさせておりました。抜け荷に関わる者かと」
「うぅむ‥‥抜け荷とな。色葉(いろは)、港を調べておけぃ」
 続けて言いながら棟梁、「はっ」と応えて、早速発とうとする色葉役槇島色(fa0868)の、ぴっちりと身についた黒い短着のヒップあたりに手を伸ばしたが――ふりむいた色葉に、
「御頭、御案じめさるな。妖しい奴を見たら、このように締め上げまする!」
 と、その手を掴まれ、ぎゅーっとねじり揚げられた。
「(小声)あたっ。棗、お前は引き続き、利音とともに若君を守るのぢゃ」
 と頭領はまたしても棗役比良坂 夏芽(fa1084)の豊満なバストをちょんとつつこうとして、
「はい。敵が襲ってきたら、このようにすればよろしいのですね!? 」
 と、小道具の刀でぼこっ! と薄くなりかけた頭頂部をぼこられた。
「さすがは御頭、身をもってのお教え、棗決して忘れませぬ」
 美声をかわれて舞台に上がったお天気お姉さん夏芽ににっこりされ、さんざんな頭領であった。
「じじ様、大丈夫?」
 頭領の孫娘「椿」役・小鳥遊 つばさ(fa0394)が本気で心配そうに頭領の頭をナデナデする。これは実はアドリブで、客席から暖かい笑いが起こる。やがてくのいちたちはそれぞれの役目のため発ち、頭領と椿が二人残る。と、そこへ。
「なにやつ!?」
 頭領がふいに叫び、刀を抜き、椿を背にかばう。銀色の刃光とともに、舞台奥の闇の中から
「父の仇、音羽伊右衛門! 覚悟!」
 斬りかかるのは、男装の女剣士・御堂 忍(しの)役MIDOH(fa1126)こと御堂満里亜。
 伊刈利久も出演している「甘えん坊将軍」や「みの拷問」などの時代劇をよく見るというだけあって、ブラジル生まれながら忍者刀の扱いは結構さまになっている。
「じじ様をいじめちゃダメぇ!」
 追い詰められた御頭に、椿の悲鳴が上がる。その幼い声に打たれたように、忍の手がはっと止まる。
「スキあり! 名を名乗れぃ」
 御頭が忍の剣を叩き落し、その腕を掴んで捕らえる。
「わが名は‥‥御堂忍‥‥仕損じたからには生き延びたとて意味はない‥‥殺せ!」
「御堂とな! 先年、抜け荷の罪でわしが成敗した御堂一総丞の娘か!」
「異国の女との間に生まれ、世に認められた娘ではなかったが‥‥父上は、私を慈しんでくれた‥‥」
 パンチのある歌声で売り出し中のMIDOHだけあって、セリフ回しも気迫がこもっている。
「抜け荷‥‥すると、このたびの若君を狙った騒動も御堂の一派が‥‥」
「ふ‥‥余計なことを喋りすぎた。これ以上は語らぬ。永遠にな‥‥」
 すっ、と御頭の手から、力の抜けた忍の体が地面に倒れた。
「舌を噛んじゃった‥‥じじ様、この人可哀想‥‥」
 椿が御堂の体を確かめつつ、涙をためた瞳で御頭を見上げる。
「うーむ、惜しい。この谷間。ぢゃなかった、死なせるには惜しい奴であった」
 御頭、MIDOHのさらしで抑えたバストがちらりとキモノの合わせ目からのぞくのを見て、不謹慎な一言。
 やがて事態は急展開。ひそかに抜け荷を行っていた某藩の代官がより抜け荷の手を広げようともくろみ、海上の保安を厳しく取り締まろうとする幕府を脅かすための目論見と判明。代官の一派を捉えようと、その一派の隠れ家に乗り込むくのいち軍団と頭領。ひそかに隠れ家を囲んで踏み込みにかかるくのいち達の頭上から、
「来たか‥‥御堂の娘は失敗したと見えるな‥‥なれど、これで諦めると思うなよ‥‥」
 と、不気味な声が響く。
 顔を鬼面で隠し、黒装束の人影が頭上の闇から(実はピアノ線で吊られて)宙返りでくのいち軍団の中央に降り立つ。
「わが名は神楽! 将軍家を葬る者として覚えておくがよい」
 続いて、秦弖(ハタテ)役神代タテハ(fa1704)が背後から登場し、吹き矢を放つ。あどけない少女顔に、濃いメークがほどこされ、紫の着流しを着ており、アンバランスな妖艶さを醸している。
「死ぬのは、おぬし達だ‥‥この矢には毒が塗ってある。かすり傷とて油断はできぬぞ」
 秦弖のセリフと同時に吹き矢がひらめき、御頭が倒れた。
「ぬぅ‥‥油断であった‥‥む、無念‥‥」
 御頭、死にかけ演技の合間にもしっかりセクハラしようとて、秦弖(ハタテ)の着物の裾の割れ目からのぞくすらりとした脚をつかもうとする。
「やぁ!?」
 悪役演技を忘れて秦弖が避けた。そのため御頭の手は、その傍にいた鬼面に黒装束の人物の忍者装束の裾をひっぱってしまい。
「あ‥‥っ」
 はらりん。と忍者装束の半身がずりおち、その下にキュートなぺんぎん柄のぱんつ(男物)が‥‥。
「あ、やっぱり男か。女装の『紫』の時、あまりにええ女じゃったんで、だまされるとこじゃった」
 御頭‥‥いや、伊刈氏が思わず口走る。
「こるぁネタばらすなー! ってか、それ以前に何男を脱がしとんじゃー! 舞台の上で本番中に〜!」
 「神楽」=「紫」=神楽坂 紫翠がふるふると震える拳で怒りの制裁。
「じじ様をいじめちゃだめですぅ〜!」
「芝居が、芝居が」
「幕下ろせ、幕!」
 大騒ぎのうちに、「しばらくお待ちください」のアナウンスが流れ、幕が下ろされた。そして無理矢理ラストシーンを続行したのだが、キャスト達の空気はとってもぎこちなかったということだ。
 何よりその再開ラストの折、御頭役伊刈氏の顔は、殴られたばかりのように紫色に腫れていたらしいのだが‥‥
 この「くのいち乱れ剣」、評論家達の間での評価はさほど高くなかった。正統の時代劇の企画から、大きく外れていたこと、ハプニングが多すぎたことがその原因であろう。
 しかし一部の客の間では、何が起こるかわからない、ニュータイプ時代劇として、結構評判を得たという。