炎の姫神・ブリジットアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/10〜07/14

●本文

 ケルト神話をモチーフにした舞台「炎の姫神・ブリジット」では、現在キャストを募集中です。
 舞台のストーリーと募集している主な配役は下記のとおりです。
 
※ケルト神話はあくまで「モチーフ」ですので、もともとの神話のストーリーや人物設定とはかなり異なります。ご注意下さい。

☆ストーリー☆
 太古の昔、まだ神々が地上の支配権をめぐり争っていた頃のこと。
 光と善なる神の一族、ダーナ神族は闇と邪悪の神のフォモール神族の侵攻を受け、苦戦していた。
 ダーナ神族の長老たるダグダの娘、炎を司る女神ブリジットは長引く戦を憂い、フォモールの王・ブレスに一騎打ちを申し出る。
 ブリジットが勝てば、フォモール族は地下へ永遠に封印される。もしブリジットが敗れたらブリジットはブレスの妻になり、ダーナ神族はフォモールの支配下に置かれるという条件で。
 決死の覚悟で臨むブリジットだが、邪法を操るブレスに破れ、その妻となる。
 そしてダーナ神族はフォモールの圧政に苦しむことに。
 ダーナ神族のはみ出し者で、死と地下を司るケルヌンノスはブレスに取り入る。美しく優雅なダーナ神族の中で、角を生やした恐ろしげな姿をしたケルヌンノスはかねて不満を抱いていたらしい。
 一方、ブリジットの弟ヌァダはブレスの暗殺を謀るが返り討ちにされ斃れる。
 だが瀕死のヌァダは、自らの魂を封じ込めた「不敗の剣」を姉ブリジットに託した。
 ブレスを討とうとするブリジットを意外なことにケルヌンノスがひきとめた。ケルヌンノスは自分がブレスに取り入っていたのは、ブリジットの身を守るためだったと打ち明ける。
「私はずっと以前からそなたを愛していた。恐ろしい角を生やした私ゆえ、叶わぬ恋と諦めていた。そして、せめて影からそなたを守ろうと心に決めたのだ」
 残忍なブレスは、妻としたものの心を開かぬブリジットを警戒し、自分が死ぬときブリジットも共に死ぬようにとのろいをかけているということも。
 全てを知り心を揺さぶられながらも、ブリジットはダーナ神族の姫としてブレスから一族を救う責任があると、ケルヌンノスを振り切ってブレスを討ち果たす。ブレスの死と同時にブリジットは倒れる。ケルヌンノスはブリジットの亡骸を抱いて、地下に姿を消す。
 そして何百年のときが過ぎ‥‥
 ブリジットが倒れた場所に、二本の美しいイチイの木が生える。その木達は、しっかりと枝を絡ませて大地に静かに根を張っている。

☆募集キャスト☆
※監督の希望が多分に入っていますが、アレンジ可能です。
●ブリジット‥‥炎を司る女神。強気系美人だと思う。
●ブレス‥‥邪神の王。サディスト入った色男のワルだと思う。
●ヌァダ‥‥ブリジットの弟で戦士の神。薄幸の似合う色男だと思う。
●ケルヌンノス‥‥死と地下世界を司る神。角が生えてるけど陰のある男前だと思う。

 ※上記以外のキャストは確定されておりません。下記にケルト神話の代表的な神々を挙げますので、参考にして下さい(ケルト神話の中でも、神の役割とか血縁関係? が諸説入り乱れていたりするので、「私の知っているケルト神話と違う」と仰る向きもあるかもしれませんが、参考として)。
●ダグダ‥‥全知全能の神。ブリジット他多くのメジャーな神様のお父さん。
●マナナン‥‥海の神。なぜか馬車で海の上を走れる元祖サーファー(オイ)。
●モリガン‥‥闘いの女神。多分セクシー系で悪女です(オイ)。
●ルー‥‥太陽と光の神。超ハンサムらしい。会いたい。

●今回の参加者

 fa0095 エルヴィア(22歳・♀・一角獣)
 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa2617 リチャード高成(22歳・♂・猫)
 fa2820 瀬名 優月(19歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

「ん〜‥‥ケルト神話って奥が深いのですね〜」
 舞台の楽屋。モリガン役・都路帆乃香(fa1013)は愛用のパソコン画面を睨んで考え込んでいる。
「都路さんって調べ物好きなのね」
 舞台監督が感嘆しつつ、その華奢な肩を揉む。監督も女性だからセクハラではない。
「あたしも、都路さんがケルト神話について色々調べてくれたから、役作りの参考になりましたっ☆」
「愛瀬さんも今回は少年役にチャレンジなのね。その健康的なお色気が出せないのは惜しいけど、女優魂は立派だわっ」
「はいっ、演技の幅を広げて将来的には、百化けの愛瀬と呼ばれたいですっ」 
 太陽神ルー役・愛瀬りな(fa0244)が、ゼブラ柄のメイクボックスを手にガッツポーズを取る。
「あの〜僕らもメイクでもうちょっとオットコ前にした方がよろしか? 美形専門の舞台みたいやったのに、僕ら芸人が立候補してスンマセン」
 差し入れを配りに来ていた桐尾 人志(fa2341) がぺこりと頭を下げる。
「あら何言ってんの? 募集条件は美形じゃなく色男となってた筈よ。ヒョーキンな男にしか出せない可愛げオーラを期待してるわ。私の舞台はありとあらゆるタイプの「ええ男」を網羅するわよ〜おーほほほ」
 怖っ。と呟き桐尾は男性用控え室に姿を消す。
「ところで監督‥‥ラストシーンはやはり、ケルトの伝承にある、『霊魂不滅』の象徴なのでしょうか」
 鬘をかぶるため銀髪を夜会巻き風にきっちりと巻き上げたエルヴィア(fa0095)が静かに言葉を発した。
「ええ、ケルトの伝承では、肉体は滅びても霊魂は転生を繰り返すってことになってるわね。エルヴィアさんはばかばかしいと思うかしら?」
 エルヴィアは左手の薬指の指輪に触れながら、なぞめいた微笑を浮かべて否定する。
「いえ‥‥転生そのものではないけれど、少なくとも死が全ての終わりではないと私も信じているわ。人は死んでも、思い出は残る。その記憶を支えに誰かが生きていくとしたら、魂は不滅といえるかも‥‥そんな風に考えながらケルヌンノスを演じるつもりよ」
「期待しているわ♪ あ、ところで都路さん? モリガンの衣装これで決定したから」
 と、監督が差し出したのは、烏の羽のついた冠はいいとして、太ももぎりぎりのショートパンツにおへそが見え隠れする丈の胴衣。
「ぐむっ。き、聞いてないですよ〜!?」
 帆乃香がコーヒーにむせている。
「モリガンの彫像に似せたらこうなったんだもん。大丈夫よ、胸より脚強調するデザインにしといたから」
「どーゆう意味ですかっ!」

 太古の時代、光と闇の闘いがあった。闇の神族フォモールは、圧倒的な武力で光の神族ダーナを制圧せんとしていた。
「我はフォモールの王にして世界を統べるべき者、ブレス! フォモールの猛き神々よ、ケルトの地を血に染めよ!」
 漆黒のマントを靡かせ、黒い剣を振りかざし、ダーナ神族の兵士をなぎ倒してゆくフォモールの王、ブレス(=リチャード高成(fa2617))。が、その前に、純白の甲冑をまとった女神が立ちふさがる。
「ブレス王! 私と一騎打ちで勝負をつけましょう! 私が勝てば、今すぐこの地を立ち去りなさい!」
「誰だ、そなたは?」
「私は炎を司りしダーナ神族の女神、ブリジット(=瀬名 優月(fa2820))」
「ほぉ、勇ましい。噂に聞く気高きブリジット姫にふさわしい。‥‥一騎打ちは引き受けた、しかしこちらの条件も受け入れてもらわねばならぬ。そなたが負ければこのブレスの妻となれ。それでも勝負を所望か?」 
「ええ。負けるつもりはありませぬ!」
 ブリジットが切り込み、ブレスがマントを靡かせかわす。炎を司るブリジットは白銀の刃を赤く燃え上がらせ、ブレスを追う。切り結ぶ二人。しかし邪法を操るブレスは、黒い影を発してブリジットを包み込み、動きを封じた。
 喉元に剣を突きつけられ、ブリジットは剣をかざす腕を下ろす。
「いかがかな姫? 貴方の負けだ」
「けれど、このような卑怯な手段で得た勝利、長くは続きませぬ!」
 ブリジットの勝気な瞳が睨みつけ、ブレスは高笑いで報いた。
 そして望まぬ婚礼の支度が進められていく。
 ブリジットの弟・戦士神ヌァダ(=水鏡・シメイ(fa0509))は悔やんでいた。
(「姉上‥‥こんなことになるなら、私が命がけでお守りするのだった」)
 感情を表に出さぬヌァダだが、緋色のマントに映える長い銀髪を風が乱す。心の乱れを映すかのように。
 烏に変身した闘いの女神モリガン(=都路帆乃香)が舞い降り囁く。 
「何を迷っておられるのです? いとしいヌァダ殿。どうぞ命じて下さいませ、共にブレスを殺してくれ、と」
「手を貸して下されると?」
「私は戦いの女神。貴方の優しさよりも貴方の戦う姿にこの胸は熱くなるのです。私も烏に変じ、ブレスの目玉をくりぬいてやりましょう」
 ヌァダはブレスと姉の婚礼祝いに訪れたフリをして、ブレスに襲い掛かる。「姉上に貴方はふさわしくない!」が、ブレスに察知され、返り討ちに。
「ヌァダ! ‥‥私の力が足りないがためにあなたの命まで失わせることになるなんて」
 ブレスの黒剣で心臓を貫かれたヌァダを、ブリジットが抱きとめる。
「すみません姉上‥‥貴女を救うことが‥‥できませんでした‥‥」
 ヌァダは愛剣を握り締めて息絶える。その剣にヌァダの魂が宿ったことを、ブリジットだけは感じ取った。
「ヌァダよ、姉への愛故に無駄死にだな。愛とはなんと愚かしいものか。そう思わぬかブリジット?」
 応えぬブリジットに舌打ちをして、
「モリガンめは、父上に献上せよ」
 ブレスは言い捨てる。
「離せ、闇の眷属どもが!」
 怒り狂うモリガンは兵士に引き立てられる。
 ブレスの傍らに立ち、冷ややかな目でそれを見守るケルヌンノス(=エルヴィア)がいた。
「まことにダーナ一族の者どもは気位ばかり高く、そのくせろくな働きも致しませぬな、ブレス殿」
「ケルヌンノス、お前はダーナ神族の一員にしては話のわかる男よ」
「ケルヌンノス‥‥本気でそのようなことを? 大地神の誇りはどうしたのですか!?」
 ブリジットの怒りをよそに、ケルヌンノスはブレスに取り入る。恐ろしい山羊の角を持つ自分は、これまで優雅を旨とするダーナ族に爪弾きにされてきたと。
「ときに知恵者と噂のマナナンとダグダが鳴りを潜めているのは妙だな」
「噂は所詮噂。マナナンは遊び歩くしか能の無い男、ダグダは老いぼれにございます。気にすることもございますまい」
 ケルヌンノスは嘲った。その冷ややかなまでに整った横顔からは、見事な程本心が読み取れなかった。

「なぜです! なぜ盟友ヌァダの仇を討ってはならぬのですか!」
 美しい金髪をなびかせた細身の少年ルー(=愛瀬りな)が頬を高潮させ剣を片手に飛び出そうとする。それを引き止める海神マナナン(=桐尾 人志)‥‥アロハにハーフパンツとサングラス姿‥‥と太目の全能神ダグダ(=河田 柾也(fa2340))。
「あ〜、今は時期じゃないんだってば。考えてもみ? お前は太陽の申し子、お前に万一のことがあったら、世界は太陽を失うじゃあないのかい」
 養い親たるマナナンの言葉にルーはうなだれる。
「でも‥‥悔しいです。フォモールの兵士どもは図に乗ってお師匠様は遊び歩くだけの無能な男、ダグダ様は老いぼれと噂して笑っています」
「まあ俺もフォモールのヤツらのやり方は好かないが、戦いはもっと嫌いだねェ。海の果てに「常若の国」、敵も味方もない楽園を作るのが夢なんよ。気まぐれなだけかもしれんけどさ。でもこのおっちゃんは正味の年寄りだけどね」
 と、ダグダを指す。
「そうそう棺おけに片足突っ込んで、って誰がやねん!」
 ビシバシとマナナンに棍棒で突っ込み2連打を入れるダグダ。
「僕はお師匠様を信じます。時が来ればきっと、お師匠様は僕を導き、世界を光で満たすための力を下さいますね? そのためにも、強くなってみせます!」
 鍛錬に向かうルーの後姿を見送りつつ、海神と全能神は、
「な? 出来がいいんだ俺ッチの弟子」
「師匠がコレなのにねぇ」
「そうそう、誰に似たんだろ。ってコラ!」
 どつき漫才を繰り広げつつ、ふとダグダが真顔になり。
「ヌァダの仇を討ちたいとは、ルーのヤツ嬉しいことを言うてくれるのう。わしがこの手で討ってやりたいのは山々、しかしワシの立場が揺らげば、世界という天秤は揺らぐだろう。光の子ルー‥‥ワシも出来るだけの手伝いはさせてもらおうかの」

 ブリジットはヌァダの残した「不敗の剣」を手に、ブレス暗殺の機会を伺っていた。
「ヌァダ、貴方の思い、決して無駄にはしません」
 が、剣を腰に差してブレスに近づこうとする彼女をケルヌンノスが引き止める。
「ブリジット姫、貴女を死なせる訳にはいかぬ!!」
「離して、裏切り者!」
「何と呼ばれようとも構わぬ。ブリジット姫‥‥愛する貴女が無事でさえいてくれるならば!」
「‥‥今、何て言ったの?」
「裏切り者の振りも全ては貴女の命を守るための芝居に過ぎぬ。そなたは燃える炎の女神、私は醜い山羊角の大地神‥‥恋したところで叶わぬのは分かっている。ならば貴女に軽蔑されようとも、道化に徹し嘲笑されて何が悪い? 貴女を守るために誇りを捨て、何が悪い? どうあっても、死なせる訳には参らぬ! たといブレスを討てたとしても、貴女の命はない‥‥ブレス王は貴女にのろいをかけたのだ、自分が死ねば貴女も同時に死ぬようにと」
 ケルヌンノスが裏切り者を演じて、ダーナ神族殲滅を目論むブレスから守ってくれていたという真実を知り、ブリジットは驚く。だが迷った末彼女は告げる。
「ケルヌンノス‥‥有難う。貴方にそんなにも愛されていた、そのことだけで私は十分幸せ。私には、ダーナ神族の王女として、ブレスのために苦しむ皆を守る責務があります。もうこれ以上、愛する人が死んでいくのを見たくは無い。私は今度こそブレスと差し違えるでしょう。けれどいつか、生まれ変わることが出来たなら、貴方の傍に‥‥」
 ブリジットの覚悟を知り、ケルヌンノスは共にブレスを討つことを約束する。そしてブレスに斬りかかるブリジット。ブレスはまたも黒い影でブリジットを縛ろうとするが、ケルヌンノスは大地を揺るがしてブレスの動きを封じ、ブリジットはヌァダの魂のこめる剣でブレスに止めを刺す。
「わ‥‥私が死ねば、お前も死ぬのだぞ‥‥恐ろしくは、無いのか‥‥?」
「私が死んでも、私の愛する人達は生きてゆける‥‥その人達への愛は‥‥死にませぬ」
「愛‥‥だと? そ、そうか‥‥ふ‥‥ふふ、これが‥‥愛の力か、ブリジット」
 ブレスが倒れ、自らもケルヌンノスの腕の中に倒れこむブリジット。ケルヌンノスはひざまづいて彼女を支える。
 大地の揺れに異変を感じ、ルーとマナナンが駆けつける。二人はブリジットの亡骸を抱いたケルヌンノスが地下に消える姿を目撃する。冷ややかだったケルヌンノスが涙を一筋流しながら姫の亡骸に優しく囁いた。
「さぁ行こうブリジット姫。永久の安らぎの国へ」
「姫‥‥! ケルヌンノス殿‥‥!」
 ブリジットを守れなかったことを悔やむルー。
「ルー、巣立ちの時が来たぜ。まだ仕事は山積みだぜ、フォモールの残党は王の敵討ちに大暴れするだろう。ダーナ神族を守ってくんな。さあ、約束通り白馬アンヴァルとフラガナッハ、お前さんにくれてやらァ。がんばれや、全知全能の王子様。いつか疲れたら海の果てに『フーテンのマナさん』を訪ねて来ておくれな。「常若の国」で待ってるぜ」
 ついにマナナンがルーを送り出す。ダグダも共に祝福と新たな全能神としての名を授けた。鴉に変身し囚われの身から逃れてきたモリガンが軍勢に加わる。ルー率いるダーナ神族が勝利を収めた。
「ダーナ神族の勝利だ! これよりわれは海神マナナン様と全能神ダグダ様より賜りし名、全能神イルダーナを名乗り、光に満ちた新たなる世界を作り上げようぞ!」
「「オォーッ!」」「イルダーナ様、万歳!」
 ダーナ兵士達の勝どきが唱和する。ルーは師匠の形見フラガッハを天にかざす。
「フォモールの悪政で荒れ果てた世界よ甦れ! そして愛で結ばれし魂よ、転生の輪をめぐりて再び結ばれよ!」
 フラガッハが放つまぶしい白い光が舞台に満ち溢れーー
 二本のイチイの木のシルエットがバックスクリーンに映る。その木達は、しっかりと枝を結び合っている‥‥