留学生はエイリアンアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 2.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/23〜07/27

●本文

 TOMI TVがお送りする青春特撮ドラマ「留学生はエイリアン」では、ただいまキャストを募集中です。
 舞台は近未来の地球・日本。
 異星間での留学制度が確立し、とある平凡な家庭がエイリアン留学生をホームステイさせることになる。
 しかしそのエイリアン、怪力だわ地球の常識は通用しないわで周囲を巻き込み行く先々でトラブル満載。ただ心は優しく純粋なため、地球の人々はなんとかエイリアン留学生が無事学生生活を全うできるように守っていく‥‥という、SFほのぼのストーリーです。
 貴方も一緒に、そんな心温まる世界を作ってみませんか?
 
☆ストーリー☆
 20XX年。
 科学はいくらか進歩しているが、今の地球とさほど大きな差異はない。大きく違っているのは、異星人との交易や文化交流が盛んなこと。
 そしてこの年、ついに異星人との間に交換留学生制度が発足。
 日本の平凡な家庭・向水(むこうみず)家がホームステイ先に選ばれた。
 やってきたエイリアン留学生は、純粋な心を持ち、勉強熱心でどうやらほぼ地球語はマスターしている様子。ただし時々とんでもない取り違えをしたりもする。
 困った欠点もあった。
 怪力で、地球の常識が通用しないため、とんでもないことをやってしまうのである。遅刻しそうになって、塀やビルをぶち抜いて勝手に近道を作り登校してしまったり。叱れば反省はするものの、一朝一夕で地球の文化に馴染めるはずもなく、また別種のトラブルを起こしてしまう。
 毎日の異文化との遭遇に、はたまたトラブルの後始末に追われて疲れ果ててしまう向水一家。
 ひそかにエイリアン留学生を監視していた宇宙平和連合のエージェント、MIB(メン・イン・ブラック)により、エイリアン留学生は迷惑行為のかどで強制送還されることに。
 だが、エイリアン留学生の地球の人々と仲良くなりたいという純粋な思いを知った向水一家の人々は、エイリアン留学生を守ることを決意する‥‥

☆募集キャスト☆
 ●向水家の人々‥‥家族構成、年齢は自由です
 ●エイリアン留学生‥‥性別、外見年齢等は自由です
 ●MIB(メン・イン・ブラック)‥‥宇宙平和連合のエージェント。地球での役目は、地球人に多大な迷惑をかける異星人がいないか監視すること。性別、年齢は自由。常に黒服と黒サングラス着用

 ※上記以外のキャストは確定しておりません。自由に考案の上、ご応募下さい。

●今回の参加者

 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1478 諫早 清見(20歳・♂・狼)
 fa1689 白井 木槿(18歳・♀・狸)
 fa2102 西園寺 紫(14歳・♀・蝙蝠)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa4048 梓弓鶴(22歳・♀・犬)
 fa4091 佐奈田 ミラ(15歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●「異星間留学生滞在ハンドブック」より抜粋
○学生プロフィール 名前:ピーピ 
出身:アルファ727星 体の構造は地球人に酷似するが筋力が10万馬力に相当する為、要注意。食事はほぼ地球食で支障なし。故郷星では野菜が主食。尚、この野菜類の分子構造は豆腐及びひじきに酷似している。
備考:精神年齢等はほぼ高校3年生レベルと思われる。学習意欲は極めて高く、異星間マナー・地球語習得度共に高レベル。

 とある場所の広大な野原ーー
 7色の光線を放ちつつ、巨大な円盤が降下してくる。静かに着地した円盤から、好奇心いっぱいの黒い瞳をまん丸にしたピーピ(=白井 木槿(fa1689))が地球に降り立つ。
「あっ! 来た!」「おーい、こっちこっち!」
「歓迎! ピーピさん」と書かれた横断幕を捧げ持つ向水4兄弟が手を振ると、ぴょこんと頭を下げた。
「始めマシテ! ワタシ、ピーピデス」
「わぁっ、日本語‥‥じゃなくて地球語上手だね」
 と末っ子・小学六年生の冬樹(=マリアーノ・ファリアス(fa2539))は100年来の親戚のごとくもう懐いている。
 この感動の対面の後で、とんでもない嵐がこの健気な向水家を待っていた−−
 ◆
「なんなのよこの糖尿病食みたいなのはっ! 炒り豆腐にひじきご飯に冷奴って」
 向水家次女・中学三年生の春華(=西園寺 紫(fa2102))がピーピを囲んでの団欒メニューに怒りの声を上げる。 
「ピーピが食べやすい地球食が豆腐とひじきなんだから‥‥それに豆腐は脳にいいから、お前の受験勉強にもきっといいよ」
 と両親不在の向水家における親代わりの長男・秋良(=玖條 響(fa1276))は冷静だ。成績優秀で既に推薦枠で進学先が決まっているせいもあるが。大人しそうに見えてわりに人望があるというのか、天文部の部長も務めている。
「はいっ、オイシーです」
 とピーピは嬉しそうに平らげている。
「フン、嫌味よねー。ちょっとあんた、私の受験だけは邪魔しないでね!」
 春華はもはや皮膚の一部と言わんばかりに携帯している単語帳を片手に、バシッとピーピを睨む。
「ジュケンって‥‥ジュゴンの仲間デスか?」
「そんなのネット検索してよ!」
 と無理なことを言う。(そういう余裕の無さがイマイチ成績が伸び悩んでる原因だと思うけどな)秋良はため息をつく。ピーピを受け入れることで春華も変わるかもしれないと、秋良としては期待していたのだが‥‥

 いよいよピーピの登校する日が来た。向水家のおっとり長女、夏実(=佐奈田 ミラ(fa4091))が女子制服の着方を教えている間に、時間は過ぎて。
「夏実、ピーピ、遅刻するよ! 急ごう」
 焦る秋良に急かされて、夏実とピーピは家を飛び出す。
「大丈夫デス、近道しマス」
 にっこり笑ったピーピがいきなり「ひゅっ」と腕を振った。どがーん! ガラガラガラ。近所のアパートの敷地を囲む塀をぶっこわし、トンネルを空けたのである。
「さ、行きまショー♪」
「ひいぃ値切ってしかも分割で買った大事なバイクがぁぁ〜!」
 頭を抱えて叫んでいるのは、向水家の隣に住む大学生・林清彦(=諫早 清見(fa1478)
)。いかにも貧しげなボサボサ髪にジャージ姿が哀れを誘う。吹っ飛んできた瓦礫で、ぽんこつ愛車がほぼ全壊状態になったのだ。
「すっすみません、それは市役所の「異星間トラブル相談課」に申請すれば補償がつきますから〜。ピーピ〜そんなに引っ張ったら腕が抜けるうぅ〜!」
 流れ星のようにピーピに引っ張られて駆けてゆく夏実が叫ぶ。
 ピーピ達を見送った清彦の表情が一変した。あたりに人影がないのを見届けると、胸ポケットから銀色の小さな機械を出し話しかけた。
「こちらキルス。留学生ピーピにつき報告する。‥‥地球文化との齟齬が要監視段階に相当すると思われる。‥‥以後の行動については追って報告する」
 今朝の事件はともあれ、登校したピーピは注目の的。地球語をマスターしており、何より目をまん丸にしてなんにでも興味を示す彼女は好印象を抱かれたようなのだが、事件は昼休みに起きた。ピーピが突然三階の教室の窓から身を乗り出し、飛び降りようとするではないか。
「ピッ、ピーピさん、一体何をーー!」
 秋良とピーピのクラスの担任である坂本さやか(=都路帆乃香(fa1013))がすっ飛んでピーピにタックル。
「学食の「焼きそばパン」食べてみたいデス。秋良美味しいと教えてくれまシタ」
「学食へ行くなら階段にしなさーい! 窓は空気を入れ替えるものであって、出入りするためのものではありません!!」
 小柄なさやかがわたわたとピーピと格闘するうちに、さやかの眼鏡がガッシャーンと地に落ち砕けた。
「ああ先生の顔の一部が!! 次から気をつけマス!」
 ピーピは眼鏡を壊したことを、何度も謝った。ちなみに担任教師を心臓麻痺寸前にしたことには気づいていない。さやかはヘタヘタと床にうずくまる。
「い‥‥いいのよ怪我さえなければ‥‥あは‥‥あはは‥‥」
 だが坂本さやかに神が与えたもうた試練はそれだけではなかった。
 二限目は体育の授業。サッカーの実技練習があった。
「あのね、ピーピさん。あの網はゴールというの。あそこにボールが入ると勝者になるの」
 噛んで含める如くルール説明をする、歪んだ眼鏡をかけたさやか。だが、なんとピーピは、ゴールをがしっとつかむと、ボールの飛んでくる方向に向かって「ぶーん!」と放り投げたのである。
「ボールがゴールできなければゴールをボールに向かって投げる。なる程すげー発想の転換、って毒されてる俺ー! ちょっ‥‥それはマズいってばピーピ!」
 我に返り青ざめた秋良がフォローに走り回る中、ピーピは
「空中ゴールできまシタっ!」
 と一人ぴょんぴょん跳ねている。
「うーん‥‥がくっ」
 精根尽き果てたさやかがついに失神した。

「ピーピ、何度も言うようだけどその10万馬力には注意してもらわないと。地球人とは桁違いなんだからさ‥‥わかった?」
 学校から帰宅した秋良はピーピを懇々と諭した。ピーピは目を丸くして真剣に聞いている。さすがにしょんぼりした様子だ。
「ワタシ‥‥皆さんに迷惑デスか?」
「もういいじゃん兄ちゃん。ピーピ姉ちゃんが可哀想だよ!」
 末っ子の冬樹がピーピに同情して遊びに連れ出した。跳ねざかりの冬樹はガチガチの勉強家の春華やのんびりやの夏実よりもピーピと馬が合うらしい。
 ドーン! キキキィ!
 向水家の近くで、急ブレーキの音がした。
 飛び出した秋良が見たのは、道路の真ん中に立つピーピと冬樹。道路を囲む塀に大穴が開いている。
 黒スーツの上下に黒サングラスをかけた女性が秋良に近づいてきた。
「向水家の長男――秋良君ね。私はMIBエージェント・ユズリ(=梓弓鶴(fa4048)
)。お宅に滞在していた留学生のピーピは再三地球上の交通ルールについて注意を受けたにもかかわらず、道路上に飛び出して道路に大穴を開けた。これは留学停止・強制送還処分に相当するわ」
 ユズリは感情の起伏の見えない声で言い終えると、ピーピの腕を掴んで黒い車へ乗せてゆく。
「違うノです! 私は道路の下から変なにおいのガスが漏れてきているから調べようと‥‥」
「留学前の文化学習で学ばなかった? 道路の下には下水が流れているの。そのにおいでしょ。地球では当たり前のことよ」
「でも‥‥」
「さあ行くわよ、ピーピ。もう少し慎重に行動すべきだったわね」
「ピーピ姉ちゃんを連れていかないで! ピーピ姉ちゃんは、嘘なんかつく人じゃないよ! もっとよく調べて‥‥」
 全てを目撃していた冬樹は懸命に訴える。だがクールなユズリは頑として受け付けなかった。ピーピを乗せた車が見えなくなると、冬樹がとうとう半べそをかき始めた。
 秋良がぎゅっと冬樹の肩を抱きしめる。
「冬樹、大丈夫だ。お兄ちゃんがなんとかしてやるからな」
 帰宅してきた夏実も賛成した。
「お兄ちゃん‥‥無理かもしれないけどやってみようよ。強制送還なんてかわいそうだよ! ピーピちゃんは、いい子だもん」
 そこで‥‥
「お願いします」
「ピーピちゃんに留学を続けさせてあげてください、お願いしまーす!」
 夏実は強制送還取り消し&事件再調査依頼を嘆願するための署名集め。
 秋良と冬樹は事件の目撃者を訪ね歩き、宇宙平和連合に証言してもらえるよう説得して回った。
「皆を宇宙にロマンを抱く天文部員と見込んで頼みがある。協力してもらえないか?」
 秋良は天文部の部員達にも呼びかけた。
「部長が仰るならあたしたち、たとえ火の中水の中っ!」
「ちょっと抜け駆けする気!?」
「キーッ! おだまり部長の微笑はあたしのものよ!」
 これすなわち人海戦術。‥‥多少醜い争いもあったような気がするが。
 家に帰り署名を取りまとめていた夏実は、ふと署名板の下の方に目を留めた。
「●●中学3年C組 向水春華」
 確かに春華の几帳面な字だ。その下には春華が引っ張ってきた友達らしい、同じ中学の生徒の名前がずらりと続く。‥‥ちらりと単語帳を一心不乱にめくっている春華を見ると、春華は真っ赤にした頬を膨らませ、
「何見てんのよっ!? 冬樹があんまりうるさいからしてあげただけよっ。ったく!!」
 バタバタと自室に引っ込んだ。
「もう、春ちゃんてばしょうがないなあ。‥‥でも、やっぱり春ちゃんもピーピちゃんもいい子だね」
 夏実はほんわかした微笑を浮かべつつ署名を分厚いファイルにまとめた。
 一方‥‥
「こちらキルス。‥‥例の留学生周辺で新たな動きが発生。いや、そうじゃない。ピーピとやら、いつのまにか高度な地球文化を苦も無く学んでしまったようだ。そう、『友情』というヤツをね」
 密かに向水家を監視する大学生清彦‥‥実はMIBエージェント「キルス」がそう宇宙平和連合に報告した。
 数日後‥‥
 向水4兄弟は再び、あの野原にいた。
 ピーピと初めてであった場所。そして、ゆっくりと輝く円盤が舞い降りてきた。円盤のドアが開き、ピーピが大きな目を潤ませて降り立った。
「皆さん、ありがとう‥‥大好きデス!」
 飛びつくようにピーピは向水4兄弟に抱きついていった。
相変わらず黒ずくめのユズリとキルスがその両側に立っている。
「例の道路、下水に産業廃棄物が不法投棄されている事実が判明したわ。怪我の功名というやつね。」
「地球の皆が慣れてしまって気づかなかった事実を、異星人ならではの感性が発見した‥‥皮肉なものだが」
「おかえり、おかえりピーピちゃん」
 キルスとユズリの説明も聞こえぬかのように、夏実と冬樹が手放しで泣きながらピーピに抱きついている。春華がずっと下を向いているのは、‥‥涙目を隠すために違いない。
「ありがとうございました」
 秋良はMIBの二人に心から礼を言った。
「まあ、あの署名の山を見れば、我々宇宙平和連合としても無視できなくてね」
「ただし、今後はもっと慎重に行動してもらいたいわね」
「はい。ワタシ、皆サンとお会いできて本当に嬉しいデス。違う星に生まれて、違う環境で育って‥‥でも、一緒にいると、こんなに楽しくて優しい気持ちになれマス。とても素敵なことデス♪ ‥‥だから、ワタシもっと地球のこと、知りたい‥‥。そして、いつかは地球の皆サンにも、ワタシの星のこと知って貰って‥‥大好きになって欲しいんデス。その時のために、ずっとワタシの星と地球が仲良しでいられるように、がんばろうと想いマス!」
 ピーピの言葉に、どこからか大きな拍手が沸いた。
 気がつくと向水4兄弟だけではなく、坂本さやかや学校の生徒達、町内の皆までがピーピを迎えに来ていた。MIBの二人は円盤に戻り、円盤は高く舞い上がって、ピーピと彼女を囲む人々を七色に照らした。

〜〜

「ま、交通事故の扱いは公共電波の上では慎重にならんといかんからな。交通事故のシーンは差し替えさせてもらったわけで‥‥ところでその制服、まだ着替えないの? 役者連中で打ち上げ行くんだろ?」
 脚本家から役者たちの出した脚本案に手を加えた旨とその説明を受けながら、撮影所の廊下で木槿は自販機で買ったお茶を飲んでいる。聞かれて木槿ははにかみながら答えた。
「すぐ着替えるのもったいなくて。制服ってなんか好きなんですよ‥‥って、変な意味じゃないですよ? なんかこう、同じ制服を着てる仲間がいて、同じ悩みを抱えて、同じように夢に向かってドキドキしてる、そういう不思議な安心感みたいなのがあって‥‥」
「ふーん、俺は早く卒業したいけど‥‥試験さえなけりゃ楽しいんだけどね」
 と、こちらは早く着替えて廊下に出てきた清見が声をかける。世話好きと見えて、打ち上げの段取りを決めたのは彼だ。ざっくりしたサマーセーターにジーンズだけでもなんとなくオシャレに見えるのはアイドルの特権か。
 同じく着替えて来た響が会話に加わった。
「俺はむくさんの言うことわかる気がします。俺も制服、嫌いじゃないですよ」
 その傍では、黒のヘアカラーを落として元の赤毛に戻ったマリアーノが跳ね回りながら「早く打ち上げ行こう〜♪」と叫んでいる。うーむと腕組みした清見は、
「響君は私服のセンス磨いた方がいいかもな。レクチャーしてあげようか」
「え?? 変ですかコレ。むくさんもそう思います?」
 と首をかしげる響が着ているのは、胸の部分に「男は海」と太書きされた白Tシャツ。確かに少々アレな感じだ。
 笑って木槿は控え室に逃げ、扉を閉めた。
 着替えを終えた木槿は、制服を丁寧に畳むと「さよなら」と微笑んで控え室を後にした。