バトルロイヤル金太郎アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 3.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/09〜08/13

●本文

 舞台「バトルロイヤル金太郎」では、ただいまキャストを募集中です。
 舞台のストーリーは、おなじみの日本御伽噺「金太郎」を題材に、御伽噺のキャラが入り乱れて、山に隠された埋蔵金をめぐりバトルを繰り広げるというものです。
 

☆ストーリー☆
 山奥深く、母親と共に住む少年・金太郎。
 ある日、仲良しの熊さんといつものように無邪気に遊んでいた彼は、留守番をしていた母親を誘拐されてしまう。
 残された脅迫文を見た熊さんの表情が一変する。
「あの埋蔵金の情報が漏れたのか」
 それはいつもの優しい熊さんとは違う、「戦う漢(おとこ)」の顔だった。

 金太郎少年の父親(既に戦死している)は、母親と共にある領主の密命によりこの山に埋蔵金を隠し、守っていたらしい。
 それを察知した亡父の敵・酒天童子が、埋蔵金を奪うべく、誘拐を企てたのである。
 金太郎そして熊さんは、母親を奪還すべく仲間を集め計画を練る。
 仲間も敵も、もちろん御伽噺キャラ。
 「ひとぉ〜つ人の生き血を」げふんげふん剣の達人「桃太郎」に協力を求めるのか。女スパイの「絵姿女房」を敵のもとに送り込むのか。はたまた可愛い姿に似ず復讐鬼キャラの「舌切り雀・おちゅん」が孤独に佇むのか。
 様々な思惑を抱えた御伽噺キャラが小判をめぐる闘いに舞う。
 金太郎は母を奪還できるのか‥‥!?

☆募集キャスト☆
●金太郎‥‥ご存知気は優しくて力持ちなヒーロー少年
●熊さん‥‥金太郎の大親友。かつては金太郎の父の部下で、「A級スナイパー」と呼ばれたハードボイルドな熊
●母上‥‥亡き夫から「埋蔵金」に冠する密命を帯びている? 今も衰えぬ年増美人
●酒天童子‥‥京都・羅生門あたりをブイブイ言わせている(古)鬼さん。弟子に「茨木童子」といった大物がいることから、かなりの悪の実力者と思われる。

※上記以外のキャストは確定しておりません。自由に考案の上、ご応募下さい。ストーリー部分に御伽噺キャラをベースにした登場人物が例記されていますが、特にこだわる必要はありません。好きな御伽噺の登場人物、あるいは敵側の侍など、自由なキャスティングで応募してください(必要な場合は適宜NPCを配役したいと思います)。
 この舞台は、御伽噺パロディのどたばたコメディですので、御伽噺キャラでご参加いただく場合は、
「頭突きをすれば無敵の『鉢かつぎ姫』」
 といった風に、無茶な設定を加味していただくと楽しく暴れていただけるかと思います。

●今回の参加者

 fa0213 一角 砂凪(17歳・♀・一角獣)
 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1689 白井 木槿(18歳・♀・狸)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)

●リプレイ本文

 今は昔、金太郎の成長物語‥‥
 のどかな緑したたる京都の山の中。
 金太郎少年(=月岡優斗(fa0984))は熊さん(=羽曳野ハツ子(fa1032))とちゃんばらごっこをして遊んでいた。
「えい、えいえーいっ」「ほらどうした金太郎! 腰が入ってないぞ!」
 遊びとはいえ熊さんのちゃんばらは結構本気である。金太郎少年も汗を滲ませ夢中。ただしこの金太郎、赤い腹掛けではなく赤地に「金」の字を縫い取りのあるタンクトップに黒のバンダナを纏ったオシャレさん。体型も力持ちと言うよりすらりと細身で敏捷そう。
 そして熊さんといってもむくつけき毛むくじゃらの大男ではない。大柄ではあるがなぜか漆黒の小袖をしなやかにまとった男装姿、流れる黒髪の間から黒い獣耳を覗かせた半獣の女性である。 熊さんが髪をかきあげうなじの汗を拭う時など、金太郎少年のみならずウサギやリス達もどきりとその白い肌に見入ってしまう時がある。
「そろそろ日が暮れる。帰ろうか」
 腹をすかせた二人は、金太郎の母上(=都路帆乃香(fa1013))の待つ洞窟へ帰路を辿る。そして、母上の笑顔と、暖かい手料理に迎えられるのが常だった。
 だがその日は違った。
「母上、ただいま帰りました‥‥ん、これ置手紙?」
 金太郎の声にも反応がない。そして洞窟の中は荒らされており、はらりと床に散る一枚の紙。
『金太郎へ 母親を返して欲しくば埋蔵金の在り処をアタシまで知らせに来なさい♪ ってゆーかシカトなんかしたら母親殺すってカンジ? by酒呑童子』
 読み終えた金太郎の顔色が変わった。
「ってこれ‥‥脅迫状!?」 
 酒呑童子は父上の仇だと母上から聞かされていた。なぜか中年男性にひどく恨みを持っていて、京都の町に出没してはオジサマ狩りをする。父上もその犠牲になった一人だと。
「埋蔵金の秘密‥‥酒呑童子め、いつのまに探ったのか」
 熊さんがうめく様に言う。埋蔵金とは、父上が生前仕えていた殿様から言いつけられ、戦で傷ついた子供達の楽園を作る資金にするべくこの山のどこかに埋められたものだとも。
「亡き父上の志、私はこの身にかえても守ってみせる。酒呑童子ごときに渡すことはできぬ‥‥金太郎、ともに戦おう。これまで私は遊びを通してお前に格闘術や戦闘法を教えてきた。お前と私ならば酒呑童子ごとき、敵ではない」
 それはいつもの優しい熊さんの表情とは違う、闘い抗う戦乙女のものだった。
「おのれ酒呑童子、僕は母上を取り戻してみせる!」
 純真な金太郎は頬に血の色をのぼせて言い切った。
 その意気だ、健気な金太郎!
「そして酒呑童子とその手下はボコボコにして鴨川に放り込んで魚の餌に(小声)」
 ‥‥健気な‥‥えーと、今のは聞かなかったことにする。 
 だが母上の囚われている場所と状況を、探らねばならない。
「面の割れていない味方が必要だな」
 熊さんが言った。その時である。突如流れてくる笛の音。そして謎の侍が舞いながら登場。
「ひとぉーつ、人を見ればナンパする、ふたーつ、二重まぶたのいい男、桃から生まれた桃太郎推参!」
 くるりとターンして決め台詞を放つ長身のイケメン剣士・桃太郎(=辰巳 空(fa3090))。
「何やつ!?」 
「ちょ、ちょっと待って、この人は味方だピョン! 鬼退治の名人、桃太郎さんだピョン!」
 金太郎の友達の一人、ウサギさんが紹介する。ウサギさんと、桃太郎の家来の猿さんは友人同士。桃太郎は鬼退治の先輩なので、力を貸してくれるということらしい。
「鬼退治はハートだぜハート。ハートで負けてたら勝てないぜ」
 よくわからないアドバイスをくれて、桃太郎は家来のキジを放ち、様子を探らせた。
「クェー、金太郎の母上は海の傍の洞窟に閉じ込められてるクェー」
 海際に向かう一行。
「竿を使えば日本一〜♪ そいつはこの俺浦島太郎〜♪」
 やたらでかい怪しい歌声が聞こえてくる。見れば浦島太郎(=志羽翔流(fa0422))が浜辺で動かぬ亀を介抱しているところである。
「亀のまっつあんが腹をすかせて立ち往生、竜宮城に戻れない。タートルフードをお持ちでないか」
 お弁当のおにぎりをご飯粒にほぐして食べさせてもらい、亀は元気を取り戻した。大喜びの浦島太郎は、
「ところで皆、こんなところに何の御用だい?」
 熊さんから事情を聞いて、
「鬼に仕置きの旅たぁ面白そうだ。竜宮城の魚ダンサーズの舞にも飽きてたとこだしお供するぜ」
 一行に加わった。

 さてこちらは囚われた母上。漆色の黒髪の間から二本角を生やした妖しの美少年鬼・酒呑童子(=玖條 響(fa1276))は脅したりすかしたり、埋蔵金の場所を聞き出そうとするが、金太郎の母上も乱世を生きる女、従うどころか酒呑童子をしかりつける始末である。
「助けなんか待っても無駄よ。ほら、さっさと埋蔵金の場所、教えなさいよ」
「なんですか、世を騒がせる鬼ともあろうものがそのなよなよした話し方は! 貴方ごとき、金太郎ならば指一本で片付けてしまいましょう」
「まっ威勢のいいおばさんねえ‥‥最近じゃこういう話し方がトレンドなのよ、これだから山奥に住んでる田舎者って嫌いっ」
 ぷいと横を向く酒呑童子に、おずおずと一匹の狸娘(=白井 木槿(fa1689))がお茶を運んでくる。人間に騙されて化け術を利用され、さんざん儲けた挙句放り出されて、飢え死に寸前のところを酒呑童子に救われたぶんぶく茶釜の狸である。
「あの‥‥酒呑童子の姉貴‥‥じゃなかった兄貴、お茶が入りやした」
「ふん、今いらないわよお茶なんかっ。気分悪いし近くの温泉でエステしてくるわ」
 酒呑童子はさっさと出て行ってしまう。
「よければ私がそのお茶、頂きます。戦地にあって茶の心得を忘れないとは、貴方は感心な狸さんですね」
 母上に褒められて、狸は複雑な表情を浮かべた。
(「‥‥酒呑童子兄貴や茨木童子姉貴より、この人間は優しいや」)
 大きな瞳がウルウルしてくる狸。だがぐっと唇をかみ締めて突っ張るのだった。
「へん。人間なんかおいら大嫌いっ」
 何度も優しくされて騙されて来たのだから。
 一方、金太郎が万一、母上を奪還に来た場合に備え、アジト付近をパトロールしていた酒呑童子の妹分・茨木童子(=一角 砂凪(fa0213))。黄色い一本角がキュートな喧嘩好きのおきゃんな(死語)鬼娘である。と、目前の茂みがガサガサと揺れた。愛用の鎖付き鉄球を片手に身構える。
 ひゅうっと足元に何やら飛んできた。桃印の扇子である。同時に現れた長身の侍。
「お茶しない?」
「は?」
 あまりの脱力感に木刀を取り落とす茨木童子。しかし果敢にナンパを続ける桃太郎。
「あ、俺桃太郎。桃ちゃんって呼んでね。今この辺ふらっと歩いてたら超可愛い子が目に入ってさー、ビビッと来たんだよねー。あ、可愛いい子ってアンタのことだよもちろん」
 茨木童子の気をそらしておいて、桃太郎の配下キジが洞窟に突入、母上の軟禁されている部屋の錠をくちばしであける作戦。異様な気配を察知した茨木童子がキッとなる。
「お前っ金太郎の手下か!?」
「いやむしろ鬼退治としてはセンパイなんだけど。でさ彼女、ケータイ番号交換しない?」
「あーここ圏外。‥‥つかお前、敵だし!」
 茨木童子が指笛で配下の鬼達を呼ぶ。次々に鬼が現れ、金太郎達に襲い掛かる。
「ここは私が引き受ける、早く母上を!」
 愛用の竹弓を背負い、華麗な美脚キックでで鬼軍勢をまとめて2、3人なぎ倒しながら熊さんが金太郎に言う。
 桃太郎は相変わらず、茨木童子を口説きながら戦闘中。
「じゃさ、カラオケとかどうよ?」「あたしを負かすことが出来たらね!」
 浦島太郎は亀に乗って「がんばれー! フレー、フレー、き・ん・ちゃん」と応援中。一人だけ楽してないかと、おそらく彼以外の全員が心の中で突っ込みを入れているだろう。
「熊さん‥‥無事で!」
 金太郎は洞窟の奥に向かう。だがそこには、狸が待ち構えていた。
「金太郎さん、あんたに恨みはありゃしませんが、これも恩返しの為‥‥勘弁してくだせぇ‥‥」
 とりゃー! と茶釜に変身して必殺技茶釜ローリング(転がり&体当たり攻撃)をかます狸。だがあっさり金太郎にブロックされ、捕まった。
「母上はどこだ!」「お、教えないやい!」
 しかしそこへ温泉から戻ってきた湯上り姿も艶かしい酒天童子が加わった。
「いらっしゃ〜い♪あらあらぁ‥‥随分暴れたじゃない。でもまだまだこれから‥‥ね(にっこり)」
「酒天童子の姉貴‥‥じゃなかった兄貴、たったすけて〜〜」
 捕まった狸が手足をじたばたさせて助けを求める。酒天童子は冷酷に言い放った。
「あら‥‥いやだわぁ、手間暇かけて駒にしたのに‥‥本当役立たずねぇ」
「えっ‥‥おいらは友達じゃなかったすか?」
「何が友達よ? アタシが信じられるのはお金だけよ。さあ手下たち、やっておしまい! ギャラは弾むわよ」
 がっくりうなだれる狸。ウサギが慰める。
「しょうがないピョン。オカマは孤独なんだピョン」
「あぁ!? 誰がオカマじゃ、イテこますぞゴルア!!」
「ちょ、ちょっと、男に戻ってるぜ酒天の兄貴!」
 茨木童子が注意する。
「あらいけない。もとい、ニューハーフ鬼の意地を掛けて華麗に戦うわよ」
 妖しい微笑を浮かべ、自らも長い業物を引っさげ金太郎軍を翻弄する。
 次第に追い詰められた金太郎達。熊さんが合流してこない、その気がかりが金太郎の動きを鈍らせていた。酒天童子があざ笑う。
「熊は今頃手下たちにやられて鍋にされてるわよ。アンタたちも一緒に煮込んであげるわ♪」
 だが背後に、涼やかな声が挑戦的に響いた。
「私を倒したければ、一流のマタギを百人用意するんだな」
「熊さん‥‥生きていたの!?」
「当然だ。どうした金太郎、押されてるようだな。お前の力はそんなものじゃないはずだ、本気を出せ!」 
 熊さんが加わった金太郎の軍勢は、一気に活気付く。そこへ、キジが母上の軟禁されている場所のかんぬきを外して母上を案内してくる。
「母上‥‥!」
「心配をかけましたね」 
 母上は優しく笑う。そして熊さんに手近の木の枝を切り落とした即席の木刀を手渡され、母上も参戦する。
「はっ! やあっ!」
「相変わらず、心強い仲間だ」
「久しぶりですね、共に戦うのは」
 熊さんと母上は微笑を交し合う。母上と熊さんは古き友。金太郎の父上を助けて共に戦った仲間であった。そして母上も熊さんも父上に恋していたが、親友たる母上を思って熊さんが身を引いたのだった。
 次第に形勢逆転し、ついには酒天童子の軍勢は総崩れとなった。酒天童子は生け捕られた。
「どうしてそこまでお金に執着するのです? 哀しい生き方だとは思わないのですか?」
 母上の説得に、酒天童子はふっと自嘲的な笑いを浮かべて、
「仕方ない、話してあげるわアタシの心の傷を。‥‥アンタの父上が仕えていた殿様は、皆が思っていたような慈悲深い殿様じゃなかったわ」
 かの殿様には、美少年趣味があり、童子自身もまた、美鬼だったばかりに殿様に襲われた一人だとも語った。
「傷ついた子供達の楽園ですって? 嘘よ。好みの美少年や美鬼を集めて『根羽乱土(ねばーらんど)』と名づけたハーレムを築くつもりだったのよ」
 酒呑童子はそれを金太郎の父に訴え、一緒に殿様を殺し埋蔵金を奪ってくれるよう頼んだ。
 だが父上は
「そんなことをしたらお前も本当の悪人、いや悪鬼になってしまうぞ。それよりもしばらく戦地を離れ心の傷を癒すがよい」
 と止めた。だがその時の酒呑童子は既に殿様に深く傷つけられ、おやぢ全てを深く憎むようになっていた。
「今更アタシの心はピュアには戻れないのよっ。信じられるのはお金だけ」
 と、怒りにまかせて父上を突き飛ばした。美少年鬼とはいえ鬼の力は凄まじく、吹っ飛んだ父上は首の骨を折って死亡。
「今にして思えば、あのときアンタの父上の助言に耳を貸していればよかったのかもしれないわね。
 アタシが言うのもなんだけど、父上みたいな侍になりなさいよ金太郎。アンタは背がちっちゃいけどね」
「小さいって言うな! これから大きくなるんだからっ」
 小柄な金太郎は口をとがらせる。
「じゃあね金太郎。これがアタシの償いよ」
 酒呑童子は海を見下ろす断崖から身を躍らせた。
 この断崖では今も酒呑童子ファンが追悼集会を開き、コスプレやビデオ上映をして彼をしのぶという。 
 ちなみにこれは後日談だが、狸はその後改心して茶の湯教室を開き大ブレイク、茨木童子は桃太郎に口説き落とされてじじばばにいびられながら主婦をこなし「渡る世間は人間ばかり」というベストセラーを出した。
 浦島太郎はまた面白いことを求め旅立った。捕鯨船に乗って白い巨大鯨をおっかけているという噂もあるが詳細は不明。もちろん金太郎が豪傑・坂田金時となるのは有名な話である。

「これで一件落着という訳だな」
 熊さんがクールに言った時。
 ビシッ!
 鬼の残党が放った矢が母上を狙う。「危ない!」突き飛ばして熊さんがかばい、その胸に矢が刺さった。
「熊さん!?」
「動いてはなりませぬ、今すぐ手当てを‥‥」
 金太郎と母上が介抱しようとする手をとどめ、熊さんは静かに言った。
「い、いいのだ‥‥自分の傷の深さ位わかる‥‥それに金太郎、段々あの人に似て来るお前を見ているのがつらくなりかけていた‥‥潮時さ‥‥ふふ‥‥」
 泣いても叫んでもすがっても、熊さんの切れ長の瞳はもう開かなかった。
 熊さんは海を見下ろす丘に手厚く葬られた。風が吹くと、墓標にかけられた形見の眼鏡がかちりと鳴った。
 その音にちなみ、以来この山は「かちかち山」と呼ばれていますが何か。