真・特命霊能捜査官アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/29〜09/02

●本文

 TOMI TVがお送りする特撮ホラーアクションドラマ「真・特命霊能捜査官」では、ただいまキャストを募集中です。
 終戦直後の日本。
 揺れ動く時代の中、恨みを残して死んだ者達の霊が新日本政府の官僚たちやGHQの米国人兵士達を襲う。
 選ばれし超能力者たちが平和のため、日本復興のため悪霊たちに闘いを挑むーーそんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?

☆ストーリー☆
 時は昭和24年。かつて「戦国日本の英雄」と呼ばれていた軍人たちはほぼ全員が戦犯として処刑され、日本は新しい民主主義国として歩み始めていた。
 ある日、新日本政府の閣僚たちと、GHQメンバーとの晩餐会が行われていたが、その会場で突然ポルターガイストが起こる。
 元華族の令嬢ながら、今は通訳兼メイドとしてパーティーの行われる迎賓館で働く東王院静子(とうおういん・しずこ)は、その際一人の女性の亡霊を見る。
 それは自らの叔母に当たる女性、東王院蘭子(とうおういん・らんこ)だった。
 美貌で驕慢だった蘭子は、亜細亜帝国に女王として君臨する日を夢見て軍人たちに取り入っていたが、敗戦を知って遠島に逃亡を図った。
 だが恨まれていた彼女は市民たちに見つかりリンチにあい、死亡。
 悪霊と化した蘭子は今の日本すべてを憎み、GHQもろとも滅ぼそうともくろんでいた。そのために戦犯として処刑された軍人たちの怨念を集め、その霊障は凄まじいパワーにまでふくれ上がりつつあった。
 静子はパーティーで出会った「エマノン」と名乗る謎の米国人に霊能力を認められ、「気」を銃弾として撃ち、悪霊にダメージを与えることの出来る「霊銃」を授けられる。
 数日後、静子に新日本政府から極秘指令が下る。
「特命霊能捜査官」
 ‥‥警察機構の中の「影の存在」となり、霊障事件の解決に当たれと。
 エマノンはGHQ及びアメリカ軍部に隠然たる影響力を持つ超能力者だった。やがて静子は、同じくエマノンにスカウトされた超能力者たち‥‥念動力障壁(サイコバリヤー)を作ることの出来る蓮城(れんじょう)、念力放火(パイロキネシス)を持つ甘粕(あまかす)らと出会い、彼らを率いて蘭子の悪霊と戦うことになる。
 しかし超能力者たちもまた、それぞれに戦争による心の傷や、特殊能力故の悲劇を抱えていた。
 霊能捜査官VS悪霊。哀しくも凄まじき闘いの行方は‥‥?
 

☆募集キャスト☆
●東王院静子‥‥元華族の令嬢だが、戦後没落し、メイド兼通訳として働いている。父親はB級戦犯として巣鴨に拘束されている。境遇にめげず、人間の良き面を信じているひたむきな女性。清冽な「気」を持つ。
●エマノン‥‥GHQに同行して日本に滞在する米国人。実は超能力者で、その発言はGHQのみかアメリカ軍部にも影響を及ぼす。名前の「エマノン」は実は「NO NAME」の逆さつづりである。本名経歴不明。
●連城‥‥外部からの攻撃に対抗する念動力障壁(サイコバリヤー)を、自分を中心とした3メートル四方に張ることが出来る超能力者。
●甘粕‥‥念力放火能力を持つ。念力の炎は霊に多大なダメージを与えるが、感情の揺れにより能力が暴走してしまうことがある。

●東王院蘭子‥‥静子の叔母に当たる女性。戦中は軍人たちの集う社交界の華としてその美貌と知性を謳われたが、敗戦後、リンチにあい死亡。悪霊化しGHQや新日本政府の官僚たちを襲う。他人を見下し、傷つけることに喜びを感じる驕慢な悪女。

 上記以外のキャストは確定しておりません。他の捜査官や協力者、静子の家族など、自由に考案の上、ご応募下さい。
※蘭子は静子の「叔母」ですが、年の差はあまり開いていなくても蘭子は死亡時の年齢で止まっていますし、兄弟の多い人がよくいた時代ですからさほど支障はないかと。

●今回の参加者

 fa0182 青田ぱとす(32歳・♀・豚)
 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa3158 鶴舞千早(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●役作り
 ヒロイン静子役のため、鶴舞千早(fa3158)は英会話と喋り方の特訓を受けていた。
「静子役って本来、特命霊能捜査官達のリーダーなんだけど、役作りできそう?」
 という監督の問いに、本人も「うぅ‥‥上手く出来るかな〜」と自信なさげ。
 どうやら「闘うメイド」というキーワードに惹かれて応募したらしく、他キャストが既に固めている、演技プランもまだ固まっていない様子。
「じゃできる範囲で演技してもらうとして‥‥」
 と脚本の調整にかかった監督は、次に因幡 眠兎(fa4300)の演技プランに目を通し。
「んっ!? クンフー使いで予知能力者で壁を砕いたり空飛んだり? す、すごいてんこ盛り‥‥」
 尺に収まりきりそうに無いスケールに頭を抱えるのであった。
◆ 
 昭和24年。
 迎賓館で、GHQ幹部らと、新生日本の閣僚達が晩餐会を開いていた。
 とはいえ、もっぱら日本閣僚達がGHQ幹部らにへつらっているのが現状だ。
「PLEASE DON’T SMOKE HERE、SIR」
 一人の若い日本人女性が英語で、無作法にパイプを吹かすGHQの要人に注意をした。要人は苦笑しながら煙草を灰皿に落とす。
 迎賓館のメイド兼通訳、東王院静子(=鶴舞千早)である。元華族令嬢だが今は没落したため、英語の知識を生かして働いている。
 と、突然、異様な物音が起こった。テーブルがふわりと持ち上がり、人々を襲う。まるで見えない嵐が吹いているように。窓ガラスが割れ、破片が人々に突き刺さる。逃げようとした人々の前で、扉はバタンと固く閉じた。
 静子は見た。混乱を背景に、一人黒いドレスの華やかな美女が立っていた。
「叔母様‥‥!?」
 静子は叫んだ。
 叔母に当たる東王院蘭子(=楊・玲花(fa0642))の姿がそこにあったからだ。蘭子は終戦直後、敗戦でパニックに陥った民衆にリンチにあって死んだ筈だった。美貌と怜悧さを兼ね備えた蘭子は戦時中、軍人達や特高警察のエリートと親交があり、女ながら数々の残酷な振る舞いで、反戦を叫ぶ市民たちをむごい目に合わせ、恨みを買っていたのだ。
『あら、静子ではないの? わが国を打ち負かし属国にしようとするその元凶どもにどうして与しているのかしら?』
 亡霊と化した蘭子の声は、直接心の中に冷たい風が吹くようだった。そしてその笑顔はあくまで凛とした風情に美しいがどこか凶悪なものが漂う。
「憎しみからは何も生まれないわ叔母様!」
「おだまり!!」
 凄まじい形相と化した蘭子から、身を凍らす程の冷気が襲ってきた。静子の腕を、誰かが引っ張った。浅黒い肌の若いアメリカ人。こんな状況なのになんとも温かな笑みを浮かべている。
「これを使いな」
 銀色の小さなピストルが渡された。妙なことに弾丸を込めるところがなかったが、静子の手にはしっくり馴染んだ。銃はまるで自らの意思のように蘭子に銃口を向けた。
 銃口から碧い炎が噴出し、一瞬で亡霊たちの姿は消えた。

 ようやく騒ぎが収まるとアメリカ人は静子を外に連れ出した。
「あたしはエマノン(=ティタネス(fa3251))。あんたは今まで自分の力に気づいていなかったようだね」
 最近、新生日本政府の議員として平和憲法の編纂に携わった者、GHQの幹部らが次々と不審死を遂げていると、静子も迎賓館で働くうちに聞き知っていた。それは全て蘭子と旧日本軍人達の亡霊の仕業だとエマノンは語った。
「彼女は昇天させる為にあんたの力を貸してくれるかい」
 エマノンの言葉に静子は頷いた。エマノンはそっと静子の手に触れる。わずかな電流が走ったような衝撃がある。
「親友を彼女に密告され特高に捕らえられたこともあったのに、あんたは優しい子だね」
「な、なぜそれを!?」
 それはリーディングと呼ばれる特殊能力。エマノンの場合、癒しの力も伴っている。静子の心が包み込まれるように温かくなる。自然に涙が流れた。
「ついておいで。仲間に合わせてあげるよ。あんたと同じく悪しき亡霊に抗する力を持った仲間にね」

 GHQ本部内へと、つかつかとエマノンは静子を案内していった。最奥の一室に入ると、そこに5人の東洋人がいた。
 その内の一人、長身の青年がかちりと踵を合わせ、旧日本軍風の敬礼をした。
「東王院陸軍大佐殿のお嬢様ではありませんか‥‥お久しゅうございます、甘粕一真(=蘇芳蒼緋(fa2044))です」
「甘粕空軍少尉‥‥!?」
 軍人だった父の知り合いで、空軍のエリートパイロットだった青年だ。確か捕虜を半殺しにしたかどで戦犯として捕らえられた筈だった。
「連城達一郎(=烈飛龍(fa0225))、元陸軍少佐だ。彼の能力は念動力障壁‥‥心の力で、あらゆる攻撃を防御する壁を作ることだ」
 エマノンの紹介に、連城は辛そうに顔を背けた。能力で3メートル四方にいる仲間は守れた。だが仲間の家族は、その恋人や、友人までは守りきれぬ。何が能力だと連城は自らを責め、心を閉ざしていた。
「あ、あの‥‥織原夢路(=千音鈴(fa3887))と申します」
 隅にいた若い娘が静子と目が合うやおどおどと頭を下げた。ダンスホールなどで歌っていた歌手の卵で、精神感応能力を持ち、他人の心を読むことが出来た。敗戦後、人の心の裏表や悲惨な記憶を知り尽くした夢路は人というものにおびえ切っていた。
「相当地(よろしく)‥‥」
 エマノンの護衛として付き従っている海藍(=因幡 眠兎(fa4300))が中国語で挨拶をした。
 海藍は功夫使いである。小柄な少女だが「気」の力で壁をも砕く力を発揮するという。国籍は不明だが、金糸の縫い取りのある中国服を着ていた。
「これで5人集まったな。見込みはどうだ? 目黒のおばさん」
 夢路の傍にいた中年女性‥‥目黒光代(=青田ぱとす(fa0182))は、フードをかぶったまま、ぼそぼそと応えた。
「そう、やっと五分五分さね‥‥蘭子は今や異形‥‥恐るべき執念の化け物。それに未来予知はあくまで『より確率の高い可能性』に過ぎない‥‥気をお付け」
 目黒は予知能力者であった。従軍看護婦として戦地に赴いていた目黒は生前の蘭子を知っていた。敗戦を予知したため蘭子にむごい傷を負わされたという。それ故か、常にフードを目深にかぶっていた。
「特に甘粕さんは危険だねぇ‥‥無意識に能力が暴走してしまうことがある。戦犯として告訴されたのも能力のせいだったね」
 捕虜にした兵士にいずれ日本は負けると挑発され、怒りのあまり兵士に火傷を負わせたのだと。
「悪霊たちを安らかな眠りにつかせてやってくれ。『特命霊能捜査官』として。‥‥ああ、元帥と総理には話を通してあるから自由に行動していいよ」
 さらりと凄いことを言ったエマノンに、連城達は思わず顔を見合わせた。
「蘭子はきっと、私たちの心の傷を暴いて来る。それに抗しうるのはあんただ。人の心の醜さも、その底にある一欠けらの美しさも知り尽くしたあんたなら、出来るんだよ」
 エマノンと目黒が仲間達と出かけようとした夢路を呼び止めた。そして目黒が夢路にそう囁いた。
「わ、私が?」
 夢路の細い肩がびくりと震える。エマノンはその肩に手を置いた。暖かいエネルギーがそこから流れ込む。
「私からも頼むよ、夢路」
「‥‥私‥‥やってみる」
 夢路が頷く。頼りなげだった表情に、確かな芯が生まれていた。 

 深夜ーーGHQ本部内で緊急会議が招集されることになった。だが集まったのは数名のみ。
 蘭子を迎え撃つ罠だった。
 だが、最初に現れたのは蘭子ではなかった。
 血まみれの兵士の悪霊が恨めしげに、バリアーを張る連城を睨みすえた。
『連城少佐殿‥‥貴方の念動力では一握りの部下しか守れなかった‥‥我々は‥‥』
「や、やめろ! 来るな‥‥来るんじゃない!!」
 連城は叫び、床にがっくりと膝を付く。カッとなった甘粕が手から炎を発した。
「貴様、その言葉‥‥後悔させてやる。この俺の炎をもってな!」
『あら、そう言う貴方は役立たずの甘粕少尉殿? せっかくの発火能力を持ちながら、戦争の勝利にはさっぱり役立たずだったわねぇ。貴方の尊敬する連城少佐殿と同じ‥‥』
 蘭子の嘲笑だ。妖艶な容姿を黒いドレスに包み、自信たっぷりに姿を現す。甘粕はたちまち怒りで我を忘れた。部屋全体が赤い炎を発し、燃え上がる。
「貴様っ」
「甘粕っ、落ち着け!」
 とっさに炎に対抗する障壁を張った連城が叫ぶ。が、地獄の業火に包まれる鬼に似た形相の甘粕に声は届かない。
「ハッ!」
 海藍がクンフーで壁をぶち抜いて空気を確保するが、時間の問題だった。蘭子の思う壷だった。蘭子は死霊と化して尚艶を感じさせる声音で言い放った。
「この力はわたくし一人のものではありませんわよ。
 この国の為に己が命を賭けたにも関わらず、戦いに敗れたら、占領軍の言いなりになってかつての同胞を売り渡そうとする今の政府の狗とその飼い主であるGHQへの英霊たちの恨み辛みがわたくしにこれだけの力を与えているのです。静子、貴方の父も私に賛同するはずよ? 貴方は親不孝な娘だこと‥‥
 もし少しでも恥というものを知るのなら、わたくしに与しなさい!」
「お父‥‥様」
 静子の肩ががくりと落ちる。
『止められるのは私しかいない‥‥』
 夢路の怯えきっていた心の中で何かが弾けた。
「聞いて、皆さん‥‥兵隊さん達、心の奥では『死ぬのは怖い』『生きたい』って叫んでました‥‥。それでも私達を守る為、戦地へ。私は流込む『声』に泣くしか‥‥出来なくて‥‥」
 夢路は必死に祈り、甘粕と連城の心に記憶を流し込んだ。戦争前後、出会った人々から読み取った悲劇を。アメリカ人も戦争で犠牲を払ったのは同じだった。青い目の母親が息子を失い泣いていた。日本人の傷病兵が飢えに苦しんでいた。
「お願い‥‥気づいて! 憎しみを抱き続ければ、またこんな悲しみが増えるだけなの!」
 蘭子の差し向けた冷気に骨も凍らんばかりに震えながらも、祈り続けた。
 一方連城は、いつのまにか自分の周囲に白い影がいくつも立っているのに気づいた。
『大佐殿。操られてはなりません』『我々は皆、大佐殿に感謝しております。精一杯、我々を守ろうとしてくれたではありませんか』『恩返しに、微力ながらお手伝い致します』
 白い霊達が甘粕の手の炎に触れると炎はふっと消えた。連城は
(「皆、ありがとう。過去は変えられなくとも未来は作って見せる! ‥‥お前達を救えなかった分、今ここにいる仲間には指一本刺させぬ。もう、俺から何も奪わせはせぬ!」)
 夢路と静子をかばい、すっくと立ち上がった。
「貴女が起こした数々の行為は、決して許されるものではありません。申し訳ありませんがここで消えていただきます」
 甘粕が一歩前に出た。もう冷静ないつもの口調に戻っている。その手から炎が再び迸るが、今度は憤怒の赤ではなく聖性を感じさせる青だった。静子も霊銃で援護する。蘭子の霊波が襲い掛かるが、もはや連城は鉄壁のバリヤーを張り、びくともしなかった。
「甘粕、護りは任せておけ! この悪女に目にもの見せてやるがいい!」
『ま‥‥さか、そんなっ‥‥こ、このわたくしが敗れるなど‥‥まさか、狗ども風情にこの私が‥‥っ』
 碧い炎が蘭子の美しい肢体を包み込む。蘭子の悲鳴が響き渡り‥‥そして消えた。甘粕が深く吐息をついた。
「貴女も時代の流れに翻弄されながらも居場所を探していた一人だったのかもしれませんね。私のように‥‥」
「見えたわ‥‥深い闇と‥‥その奥に孤独が。哀しい人だったのかも‥‥」
 夢路も涙を浮かべていた。「南無‥‥」連城が静かに合掌していた。

 GHQ本部。
「終わった、な」
 エマノンは、ぽつりと目黒光代に告げた。
「ああ‥‥しかも皆、無事らしい」
 目黒のふくよかな顔がほころぶ。顔に残る火傷の痕も気にならぬ程明るい笑顔で。
「目黒のおばさん。あたしはこれでアメリカに戻るが、よければ一緒に来ないか? 大統領が相談相手を欲しがってる」
「いや‥‥あたしは残る。勝利の先にも、敗北の先にも未来はあるってこと、未来のために「今」があると伝えたい。未来を作るため、この能力を生かせないかやってみるつもりさ。愛国心なんて言葉にはもう反吐が出るけどね」
 後日。目黒は著名な小説家となり、その作品は常に未来を先取りし警鐘を鳴らすと定評を得た。
 連城は霊能捜査官から刑事となり、故国の治安を取り戻す大きな一翼を担った。彼が指揮する現場では、不思議なことに一人の犠牲者が出ないとして伝説的存在となった。
 海藍はエマノンに従いアメリカに渡り、要人警護に役立ったという。
 そして甘粕と夢路、そして静子は引き続き霊能捜査官を務めることに。しかし静子は特赦で出所した父と共に、しばらく休暇を取った。
「その節は一方ならぬ世話をかけましたね。これはお礼です」
 正式に捜査官として辞令を受けた、その帰り道。甘粕が言い、暖かい包みを差し出した。
 夢路が開くと、熱々の焼き芋が沢山入っている。
「いや、私は本来こういった下世話な食べ物は決して買いませんが、女性はこういうものが好きらしいと人に聞いたのです」
 と、赤くなり妙に力説する甘粕。
「ありがとうございます。私、大好きです」
 夢路が笑いをこらえながら言った。この人とは‥‥能力を使わなくても深くわかりあえそうな気がする。
「でも‥‥多すぎますから、よかったらご一緒に」
「頼まれては仕方ないですね」
 と口調はそっけないが、早速嬉しそうに手を伸ばす甘粕と、夢路の手が触れ合い‥‥
 焼け跡の残る町に、温かな日差しが注いでいた。