癒し戦隊イチゼンジャーアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/12〜12/18

●本文

 美しい自然あふれる某県では、環境を守るため、市民のボランティア活動を推進中である。その一環として、地方テレビ局で放映するための県庁発・広報番組が企画された。そして‥‥

 〜『善意戦隊イチゼンジャー』オーディションのお知らせ〜 
『善意戦隊イチゼンジャー‥‥それはとある地方都市で誕生した、正義のヒーロー戦隊である。
 そんな彼らに与えられた最初の使命とは!!
 
 『ミッション1:公園のゴミ掃除』
 ‥‥諸君、脱力すな!!!
 市民憩いの場所である緑あふれる公園。そこが、近頃悪の手先によって次々と汚されているのだ!
 これが地球破壊の発端にならないと誰が断言できよう。その悪の手先とは、
「不燃ゴミをひそかに不法投棄し、注意されると居直るおばはん」
「茶髪の高校生バカップル」
「職場ストレスで悪酔いしてるリーマン」
 等といった恐るべき敵たちである!
 こうした敵に、我らがボランティア戦隊イチゼンジャーは正々堂々と戦いを挑む!
 彼らは日ごろ、地方公務員・学生・主婦・歯科技工士などの普通人として平穏な日々を送っているが、ひとたびボランティア活動を阻む敵が現れると、「ボランティア戦隊イチゼンジャー」に変身し、敵と戦うのである。
 武器とゆーても、環境破壊につながるレーザー光線や炎や絶対零度などではない。あくまで「善意」を武器に戦うのである!
 「善意」‥‥それは地球に優しく、なおかつ敵を攻撃するのではなく、敵の内にある善なる衝動に目覚めさせ悪をも善に転向させる恐るべき武器だ!
 その一部を紹介しよう。
『マッハ肩もみ』‥‥特に中高年層の敵を善意に目覚めさせるのに有効な必殺技。
『手料理ブラスター』‥‥特に単身赴任中の敵を善意に目覚めさせるのに有効な必殺技。
『ヨイショミラージュ』‥‥あらゆる敵に有効な必殺技。プライドをくすぐり敵意を喪失させる恐ろしい技。
『車座クラッシュ』‥‥特に孤独な敵に有効な必殺技。お茶、お菓子、時に酒などをすすめ、自らも飲食するうちに敵を和ませる恐ろしい技。
 尚、これらの必殺技のほか、諸君の考案した必殺技もしくは武器も、地球に優しくなおかつ「善意」に基づくものであれば採用される可能性はある。もちろんそれらの技は、映像化時には特撮効果が加わり、カッコよさ倍増だ!
 赤、青、黄色、ピンク、緑といった基本的な戦隊カラーの衣装は用意されているが、どのカラーのキャラクターがどの必殺技を使うなどの詳細はまだ決定されていない。
 というか、多分オーディションに集まった顔ぶれを見て、スタッフが気分で決定するものと予想される。
 他、イロモノ的悪役キャストも鋭意募集中。
 キミの中に郷土愛は燃えているか!?

●今回の参加者

 fa0200 影山志狼(22歳・♂・狼)
 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa0683 美川キリコ(22歳・♀・狼)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa1689 白井 木槿(18歳・♀・狸)
 fa1785 蘇我・町子(22歳・♀・パンダ)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

 ナレーション‥‥「癒し戦隊イチゼンジャー。その実態は、平凡な、だが善意あふれる県民たちである」
 そのバックには、イチゼンジャー達の日常風景。
 日ごろはスーパーの店員として働くイチゼンピンクこと白井 木槿(fa1689)が店頭で叫んでいる。
「地元特産のナスがお買い得です〜。紙袋に詰め込み放題でお値段‥‥きゃっ!? はわわ〜」
 紙袋片手に群がるおばはんに押しつぶされる香。
 一方、駅前商店街の酒屋「美川屋」では、
「はいっ、お買い上げありがとうございま〜す。ビール瓶のリサイクルも宜しくお願いねっ」
 酒屋の看板娘・イチゼンイエローこと美川キリコ(fa0683))が、瓶ビールを買い上げた客にちゃきちゃきと笑顔を振り撒く。
 優しい保育士さん・イチゼンブルーこと蘇芳蒼緋(fa2044)が子供達に紙芝居を見せている。
「はーい、今日の紙芝居はこれでおしま〜い。お手手洗っておやつだよ」
 きゃあきゃあはしゃいで抱きついたりする子供達に困って、だが優しい顔の蘇芳。
 そして、某県立高校――校庭。
「ファイトッ! ファイトッ!」
 生徒達を引き連れて校庭をランニング中のイチゼンレッドこと影山志狼(fa0200)。
「よぉーし、今日はここまで」
「ありがとうございましたっ!」
 去ってゆく生徒達。志狼もまた職員室に去ろうとするが、
「影山せんせーいっ」
 駆け寄ってくる3人の生徒。
 一人はイチゼングリーンこと志羽翔流(fa0422)、そして森里時雨(fa2002)、お下げ髪にぶあつい眼鏡とダサダサスタイルの蘇我・町子(fa1785)。
「せ、先生、僕達の『ボランティア同好会』が正式に部活動として認められることになりました。先生、顧問になっていただけますか?」
 翔流が頬を紅潮させ、一気に言う。
「それにしても、高校生の部活動としてはずいぶん地味なんじゃないか?」
「いいんです。あたしは、派手なの似合わないし」
 と、はにかんで町子。
「「じゃあ活動は早速、駅前公園の掃除ってことにしよう。で、部長は誰がやる?」
 目を見合わせる3人。
「志羽、お前がやれよ」
「ええっ? で、でも僕、口ベタだし‥‥森里君の方が適任じゃないのかな」
 と、気弱そうな口調で翔流。うつむいて、ぽつりと言う森里。
「俺‥‥ダメだよ。成績下がってるし。ホントは親に、部活動より予備校通えって言われてんだ」 
 その肩に手をかけて、翔流が励ますように、
「わかった。じゃあ僕が部長をやらせてもらう。た、頼りなくて‥‥悪いけどさ」
「いいんだ翔流、公園掃除、頑張ってみよう。きれいに掃除すれば、気も晴れ‥‥ああっ!?」
「ほほほ、そうは参らぬ」
 校舎の屋上から響く笑い声。
 黒い巫女装束の霞 燐(fa0918)である。
「何者だ!?」
「悪意でこの世を支配する悪の巫女・メディウムクイーン!」
 答えと同時に、燐が指先を突き出すと、そこから発した紫の光線がびびび‥‥と時雨と町子を包み込む。
「うわあっ」
「きゃあっ」
 光線が消えると、時雨はギンギンの不良スタイル、町子は黒レースにタイツ、コルセット風の胴衣といったゴスロリスタイル。しかも紫基調のメイクもばっちり。
「ケッ、ボランティアなんてやってられねえよ!」と時雨。
「一度こういう可愛いかっこ、したかったのよね」と町子。
「汝、心の闇のままに‥‥」
 燐の言葉に、催眠術にかかったような足取りで彼女に吸い寄せられる時雨と町子。
「森里!? 蘇我さん!?」
 駆け寄ろうとする影山と翔流。
「無駄だ! 公園掃除はさせぬ! 町の象徴を小汚くして、県民全体のテンションを下げてくれるわ」
「ちょっと待て、なんか女王とか言ってる割にはやり方セコイぞ!」
「コツコツやってかないと今時悪も人材不足で厳しいのだ! とっ、とにかくこの二人は頂いた!」
 二人を連れ、消える。
 教師影山‥‥いや、イチゼンレッドは右腕にはめた腕時計型通信機に向かって呼びかけた。
「イチゼンジャー、出動!」
「燃える熱血、イチゼ――ンレッド!」
 しゃきーん! 変身!
 保育園の一室で、昼寝をしている子供達の寝顔を覗き込み、布団を優しくとんとんしてから、保育士さんのエプロンを外し、眼鏡を外す蘇芳。そして変身!
「未来の守り手イチゼンブルー!」
 キリコが酒屋のエプロンを外しながら、商店街を走る。ランニング変身である。
「義理人情戦士イチゼンイエロー!」
 スーパーの従業員出入り口のドア前で、木槿が叫ぶ。
「癒しと和みのイチゼンピ〜ンク!」
 そして最後に、翔流が学生服の詰襟を脱いで宙にばさっ! と投げ。
「善意と友情の使者、イチゼングリーン!」
 5人が並んで、
「善意戦隊、イチゼンジャー! 参上!」
 5人が公園に現れると、既に公園はゴミだらけの惨状。主婦やサラリーマン、ゲートボールをしていたらしい老人たちまでもがゴミを撒き散らし、暴れている。中心となり、ゴミ箱を倒したり、花を踏みつけたりしているのは時雨と町子の二人である。
「メディウムクイーンめ、一般市民の皆さんまで巻き込んでしまうとは! ゲートボール同好会の皆さんに、『必殺・ヨイショミラージュ』だイチゼングリーン!」
 リーダー・イチゼンレッドが叫ぶ。
「ラジャー! どぉも〜いや〜皆さんお元気ですね〜。失礼ですが、お年は? ええっ75歳!? 見えませんね〜、いや〜お若い〜! あれですか、若い頃はさんざん泣かせたんじゃないですか女の子っ。よっ、憎いね色男」
 恐るべしヨイショミラージュ。老人会ほぼ全滅。おおっと油断するな!
 コギャル集団が「邪魔するんじゃねえよ」と、イチゼンジャー達に迫ってきた! 危険だ!
「まかせて! 必殺ぅ! 『車座クラーッシュ』!」
 イチゼンピンク、びしっと敵を指すポーズ後、可愛い柄のビニールシートを取り出して広げ。
「はい、これ新発売の『コーヒーしょうゆ煎餅』。この魔法瓶の昆布茶もどぞ? お煎餅とビミョーにあうんだよね〜♪」
 お菓子をもらって紙コップを手渡されお茶を注がれ、コギャル集団はダベリング集団と化して全滅。
「そして主婦の皆さんには、『人生相談ストライク』だ、イチゼンイエロー!」
「ラジャー!」
 びしっ、とサムズアップしたイチゼンイエロー、小さな机と椅子をセットし、「イチゼンイエローの相談室」と看板を上げ、ふらふらと寄ってきた主婦を座らせ、バトルスーツ姿で相談に応じている。
「そうかい、旦那が単身赴任中に義理の妹さんが居座って? だったら、ビシッとこう言ってやんな。『あたしはあたしの責任を果たしてるだけだ。だからあんたも自分の責任を果たしな』ってね」
 主婦達、いつのまにか涙を拭ったりして戦意喪失し、全滅。
 残ったのは時雨と町子、二人のみ。クイーンは姿を見せず、どこからか二人を操っているらしい。
「二人とも! いい加減に目を覚ますんだ!」
「正義の味方気取りかよ! はん、優等生ぶりにヘドが出るぜっ」
 レッドの説得に、時雨がはき捨てる。
「熱くなりすぎるなよ、レッド。今は正面から説得しても、かえって煽るだけだ」
 ブルーの冷静な一言に、レッドがうなずく。
「二人とも、暴れて腹が減ったろ? 一息つかないか? そうすれば、その心の苛立ちも少しは納まるさ」
 イチゼンブルー、いつのまにか湯気のたつ鍋を手にしている。蓋を開けると、和風の煮物がつやよく煮込まれている。恐るべき必殺技『手料理ブラスター』である! しかも今日はすべての素材が地元農家の有機野菜だから、パワーアップだ!
 料理の湯気が虹色のビームとなって町子にぶつかる‥‥と、町子があどけない制服姿の素顔に戻った。
「先生、ごめんなさい‥‥あたし、一度でいいから可愛い服着てみたかっただけなの」
「俺はそうはいかないぜ! 悪の幹部候補だって言われてんだ。俺を認めてくれるのはクイーンだけだ!」
「森里! 一緒に走ろう! イチゼンレッド必殺『熱血ダッシュ』!」
 イチゼンレッドが胸に下げたホイッスルを吹くと、恐るべし、真昼にもかかわらずその背中に夕日が現れた。
「さあ、一度しかない青春を、悪なんかで費やすんじゃない」
「せ、先生っ‥‥」
 いつのまにか、素顔の時雨が夕日を指差して熱く語るイチゼンレッドと並び、ランニングをしている。
 だが、イチゼンジャー達の前に、黒巫女メディウムクイーンが立ちふさがった!
「こしゃくな‥‥だが、それしきの技、この私には通用せぬ」
「皆、合体技だ!」
 レッドの呼びかけに、イチゼンジャー全員が集合し、手のひらを重ねていく。
『集まれ、善意の魂(きもち)たち』とグリーン。
『その善なる力(パワー)と』とブルー。
『清らかなる優しさをもって』とピンク。
『悪をの心を浄化せよ』とイエロー。
『イチゼンソウルフラッシュ!』
 全員が叫ぶ。そしてあわせた手から放たれる虹色のビームが黒巫女を撃ち――
「く‥‥貴様達の力これほどとは!!‥‥うああああああ!!」
 黒巫女、豊かな胸を押さえてふらりとよろける。しかし、よろけつつも、
「これで勝ったと思うな!!我らは人の心の闇。弱き心ある限り、消えることなどない!!」
 黒い霧が沸き起こり、黒巫女の体を包み込み‥‥消えた。敵を殲滅するまでには到らなかったが、今日は勝利だ! 頑張れ、イチゼンジャー! 燃やせ、郷土愛!
 平和が戻った公園には、笑顔で掃除にいそしむイチゼンジャー、そして町子と時雨の姿があった。