ウェルカム☆幽霊荘アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
2.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/20〜09/24
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●本文
TOMI TVがお送りする特撮コメディドラマ「ウェルカム☆幽霊荘」では、ただいまキャストを募集中です。
ちょっと変なアパート「裕玲荘」‥‥通称「幽霊荘」。
そこには心優しい幽霊たちが棲んでいて、幽霊ならではの能力を生かし、おせっかいを焼いている‥‥そんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?
☆ストーリー☆
一人の女性が、ひっそりと引越し作業を行っていた。
女性の引越しにしては荷物は少ない。
辛い恋を清算するつもりで、数々の思い出の品を捨ててきたからだ。
引越し先は、築年数はたっているけれど、レトロでまだまだ小奇麗なアパート「幽霊荘」‥‥もとい「裕玲荘」。なぜ「幽霊荘」と呼ばれているのか、普通の人にはわからない。「見える」人には、すーっと廊下を横切る白い影とか、「聞こえる」人には、夜中に談笑する笑い声が無人の部屋から聞こえたりとか‥‥するという噂もあるが。
ちなみに引っ越してきた女性、この噂は耳にしていない。
いや、たとえ耳にはしていても、関心は無かっただろう。
わざわざこんな街中から少し離れた、不便で寂しげなアパートへ越してきたのは、今までの生活から遠ざかりたい一心だったのだから。
恋のいざこざで仕事も失い、しばらく傷心を癒すつもりだった。
引越しの作業が一段落すると、女性は、管理人室へ挨拶に来た。
「これから‥‥よろしくお願いします」
「こちらこそ。困ったことがあったら、何でも相談してくださいね」
管理人さんは、優しい微笑を浮かべて丁寧な挨拶を返す。そして、何も無い空間に向かって言葉をかける。
「ほら皆さん、新しい住人さんが来ましたよ。よろしくお願いしますね」
(「変な管理人さん。なんにもない壁に向かって「よろしく」なんて話しかけてるわ‥‥」)
女性は202号室の鍵をもらい、首をかしげながら、部屋に入っていく。
だが。
そこは「なんにもない壁」ではなかった。ちゃんと、古株の住人たちが管理人室でお茶を飲んでいたのである。それも3人。
ただ、普通の人には見えない「人」なだけで‥‥。
「む、まことにたおやかな女人でござったな、管理人殿」
と、101号室の住人、通称「落ち武者さん」。髪はざんばらで矢のささった鎧を着た、見た目は怖いがシャイで優しい幽霊さんである。
「でもよぉなんか、雰囲気暗くねぇか? あれって不倫でもしてんじゃねーかオイ」
と、205号室の住人、通称「暴走さん」。
事故で死んだ暴走族のリーダーの幽霊さんで、ちょっぴりガラは悪いが根は優しい。 生前はずいぶん族のメンバー達に慕われていたようで、お供え物に事欠かず、仲間たちにもよくおすそ分けしてくれる。
「なにっ!? あの蟲も殺さぬ顔で不義密通をいたしおると申すか!?」
「あーもう、落ち武者さんの心なきぞわろし〜。かなわぬ恋こそいとあはれなり〜」
と、301号室の住人、通称「平安さん」。平安時代の幽霊で、ものすごいスローペース。しかも死後1000年以上たとうという今でも、あまりにもロマンチックモードなので他の幽霊さんがイライラ虫に取り付かれることもよくある。
この3人が仲良くお茶している光景は‥‥その、なんというかとってもアレだ。
「けどよぉいつまでも無くした恋に未練タラタラってのぁうぜーよな? 早く次の恋めっけてやらねーとな」
世話好きの暴走さんがお茶をぐびっと飲み干すと、指をぱちりと鳴らした。
「新しい恋を成就させる手伝いをすると申すか? 面白うござるな」
と、落ち武者さんも膝を乗り出す。
「管理人どの、この近くに、よき「おのこ」やあらん? よき「おのこ」あらば、われらの力で、かの女人に娶わせんとぞおもふ」
とは、とことん恋愛ネタ好きの平安さん。
「ほんとに‥‥優しい幽霊さんたちなんですねえ、あなた方は」
管理人さんは優しく言う。
幽霊さん達は、霊感のある人にしか声は聞こえず姿は見えないが、憑依したりモノを動かしたりすることは出来る。
もちろん壁を通り抜けたり、鏡に姿を映すことも。
その力を生かして、事故を未然に防いだり、素直になれない親子の関係を修復したり‥‥といった世話焼きを、この幽霊さん達はこれまで何度かしてきているのだ。
「もちろん管理人殿も手伝うて下さろうな〜?」
「はい、喜んで」
「まずは彼女のキャラを調べて、それに合う男をピックアップするってこったな♪」
幽霊たちは管理人さんを囲んで早速相談を始めた。
狩衣姿の平安さん、鎧にざんばら髪の落ち武者さん、特攻服の暴走さんが管理人さんを囲んで相談している姿は、限りなく不気‥‥いや、心温まる光景であった‥‥
☆募集キャスト☆
●引っ越してきた女性‥‥失恋直後らしい。
●管理人さん‥‥霊と人間両方と普通に交流している不思議な人。幽霊・人間両方のよき相談相手である。
●落ち武者さん‥‥無骨ものだが実はとてもシャイで優しい幽霊さん。
●平安さん‥‥とってもスローモーな幽霊さん。夢見るロマンチストだが、時折深遠な言葉を吐く哲学者な人でもある。
●暴走さん‥‥ガラは悪いが本当は世話好きで優しい幽霊さん。
※上記以外のキャストは確定しておりません。女性の友人や彼氏、他の幽霊さん等、自由に考案の上、ご応募下さい。
※また、キャストが足りない場合などは適宜NPCを追加したいと思います。
※キャストの役名も自由に考えて下さって結構です。
●リプレイ本文
目覚まし時計が鳴った。裕玲荘の住人の一人〜坂本咲織(=都路帆乃香(fa1013))の部屋。
「ふぅ‥‥」
朝一番、ため息。彼氏を会社の後輩に奪われてから、がっくり落ち込んで眠れない。食欲もないので野菜ジュースを飲み、身支度をして外に出る。次の仕事が決まるまで、コンビニのレジでのアルバイトをすることになっていた。
「おはようございます」
アパートの庭で、朝早いというのにきっちりと長い髪を束ねて、エプロン姿で落ち葉掃除をしている管理人・水瀬鏡子(=キャンベル・公星(fa0914))が声をかけてくれた。清楚な薄化粧だがエプロンのリボンで腰のくびれが強調され、家庭的な色気というか単身赴任中のおやぢだったら垂涎ものの姿である。
「あ‥‥おはようございます」
「引っ越されて三日たちましたが、どうですか? 慣れました?」
「ええ、まあ‥‥」
と、咲織の返事は元気が無い。鏡子が気にかけてくれるのは嬉しいのだが。
「朝ぼらけ〜目覚めし時のせつなさや〜」
と、すかさず鏡子さんの横で朝から和歌を詠む「平安さん」こと平安貴公子幽霊・三条実綱(=三条院真尋(fa1081))。柔和な容姿にゆったりした喋りで究極の癒し系幽霊とも言うべき存在である。
「あら平安さん、おはようございます♪」
と鏡子。だが、霊感の無い咲織は平安さんが見えない。なので、
(「そうか、管理人さん一年前にご主人を亡くされて‥‥」)
寂しさの余りいやにリアルな独り言を言うんだと勝手に解釈している。
「さぞ、いいご夫婦だったんでしょうね‥‥うぅっ」
勝手にもらい泣きしつつ出勤してしまった。
「咲織さんったらどうしたのかしら? ‥‥ところで平安さん、昨夜、咲織さんの部屋を調べたんでしたね? 好みの男性のタイプとか、わかりましたか?」
「いやそれが‥‥恋は秘めし恋こそ誠の恋なりて〜」
「ええい、要するにわからんかったんかい!」
業を煮やして平成さんのスローモーな話を遮るのは「暴走さん」こと元レディース暴走族の総長、その名も総蝶子(=桃音(fa4619))。可愛い顔してロング金髪に紫系のすごいメーク。小柄な体に似ず喧嘩と気の強さ、姐御肌で、生前は200人近い族を束ねていたという。
「甲斐もなし〜。かような絵巻物が部屋にあったゆえ、つい時を忘れて」
と、恋愛好きの平安さんは咲織の部屋にあったロマンス小説や少女漫画を読みふけっていたらしい。
「へぇこんなの読んでんのか、結構少女趣味だな、あの咲織ってヤツ」
と、可愛い顔の割りに少女漫画趣味は無さそうな暴走さん。
「うぬ‥‥拙者にはとんとわからぬ」
と、落ち武者さん(=比企岩十郎(fa2469))。戦国の武人の幽霊である。筋肉ガッツリの幽霊さんと言うのも珍しいが、霊と化して尚逞しく、かちどきで鍛えた声がよく通る。生前の名は忘れたと言い張っているが、言葉の端々からかなりの豪傑だったと思われる。
平安さんが何やら興奮し始めた。特技の占いに何か卦が出たらしい。
「いとをかし〜。咲織姫の恋、南西の方角が吉と出にけり〜」
「南西? だったらもしかして咲織さんの職場かしら‥‥アルバイト先のコンビニがその先ですから」
「よっしゃー、早速手伝いに行くとすっか!!」
「いざ出陣っ!!」
落ち武者さんが、愛用の法螺貝を「ブオォ〜」と吹き鳴らし、重々しい声で宣言した。
◆
その頃咲織は慣れないレジ打ちに苦労していた。
「おにぎりセットとお茶、以上2点で680円になります‥‥あ、ごめんなさい、860円です」
値段間違えないでよ、と客に叱られて、咲織はしゅーんと項垂れた。つい元彼氏のことを思ってぼーっとしていたため、失敗したのだ。
「最初だからしょうがないですよ。そういえば、引越し直後って大変じゃない? 何か悩みがあるのなら、相談して下さいね。あたし、咲織さんの力になりたいですから」
店長の娘で、店員でもある白瀬葵(=楊・玲花(fa0642))が慰めてくれる。
葵は口には出さないが、なんとなくワケありと察してくれているようだ。
「ありがとう‥‥」
ウルウルしてきた咲織。
と、コンビニの入り口で誰かうずくまっている。咲織が声をかけにいった。
「どうしました?」
「‥‥メシ買いにここまで来たんだが‥‥入り口で意識が遠のいて‥‥腹が空き過ぎて」
長い髪をつややかに垂らした青年だ。綺麗な顔立ちをしているが、「きゅるるる〜」とお腹の虫が美形のインパクトを裏切っている。コンビニ店内に連れて行き、おにぎりとお茶を食べさせると、彼は近くでピアノ教室を開いている橘桂(=神楽坂 紫翠(fa1420))と名乗った。
「最近、生徒が増えて‥‥教えてたら‥‥時間を忘れた‥‥」
「ついでにご飯食べるのも忘れたってことですか? そんな食生活してたら病気になりますよ!? いいですか、食事を作るヒマがなくても、最低限、ミルクとバナナとほうれん草と蜂蜜をミキサーで混ぜて飲むんです!」
咲織は呆れてしまい、つい初対面ということも忘れて叱り飛ばしてしまう。
「フフ‥‥店員さん、面白い人ですね? ‥‥一度ピアノ教室に来ませんか?」
青年はお礼のつもりか、おにぎりとお茶代の他に名刺を置いて帰っていった。
そうこうするうち、咲織のパート時間が終わった。
「時々いるんですよね、変わったお客さんが‥‥咲織さんも初日に大変でしたね」
葵に労わられつつ、咲織は帰宅した。と、葵の前に、ゆら〜りと現れる人影。
「やっぱ、ああいう美形が好みなんじゃねーの」
「うむ楽を楽しむ優男か。悪くは無いが、おのこは性根が肝心」
てんでに桂の品定めをしつつ現れた三人の幽霊さんに「見える」体質の葵は、当初こそ
「キャー!」
としおらしく悲鳴を上げたものの‥‥
「この『てぃらみす』とやら‥‥いみじう美味なり」
「良かったらもう一ついかが、平安さん。今日が賞味期限だから食べてもらうと助かるわ」
いつしか幽霊さん達と、売り物のお菓子や飲み物でお茶会状態。
「ところで例の長髪男子はようこの店に参るのでござるか?」
「ええ、近くでピアノを教えている先生なんですよ。あの通り美形でしょ、それに教え方も上手いって評判はいいわ。生徒も大人から子供まで多くて、それで生活が不規則みたい。‥‥ただ、あたしの勘だと咲織さんの好みには合いそうかな、ってちょっと思いますよ。だって咲織さん、いつまでも橘先生が帰るの見送って、なんか可愛かったですよ」
「ほれ見やがれ。俺の言った通りだろ? 俺が保証するって言ってんだ! あいつなら何も問題はねぇ!」
「されど〜、新しき都を築くには〜荒れ野ではさてしもあるべき〜」
「ハア?」
平安さんの哲学的台詞に暴走さんは首をかしげるが、葵は頷いた。
「そうね。恋の痛手というのは、新しい恋をしたからってそうそう癒えるもんじゃない‥‥前の恋、吹っ切れてないみたいだもの」
◆
その頃、幽霊荘では管理人の鏡子さんが、ハプニングに遭遇していた。庭先からじーっと覗いている見知らぬ男に気づいたのだ。幽霊さん達も不在なので鏡子は早速電話で従弟の大学生・水瀬流(=蘇芳蒼緋(fa2044))を呼び出した。
「え? 空き巣? 待ってろ鏡子従姉さん、すぐ行く!」
駆けつけた流が、後ろから忍び寄って男の肩に手をかけた。
「ちょっと失礼。このアパートにどんな用があるのか、聞かせてもらえるかな」
男は逃げようとしたが、流が一瞬早くぐいと男の腕を捕らえて軽く捻る。少林寺拳法の応用だ。
男は坂本咲織の知人だと言い、咲織を呼んでくれと言う。まもなく咲織が帰宅した。
「この人が、咲織さんに会いたいって訪ねて来られたんですけど‥‥」
男は咲織を捨てた元彼氏だった。元彼氏は臆面も無く言う。
「悪かったよ、お前の後輩と婚約なんかしちゃって。子供が出来たって言われて仕方なかったんだよ。でも、俺の子じゃなかったんだよ。やっぱり俺達、やり直そうぜ」
「よしなき輩かな〜わろき人相が出でたり〜」
と、帰宅してきた平安さん。
「まことに最近脆弱なる輩が多うござる」と落ち武者さん。
「どうするよあいつ、咲織の同情引いて、なしくずしにより戻すつもりだぜ!? 駄目だぜ咲織、こんな野郎より橘の方が絶対いいぜ!?」
「おせっかいはよせよ、他人の恋愛のことに口出しするのはやり過ぎだ。本人がガツンと言ってやるのが一番なんだがな‥‥って、今言ったの誰だ!? お前かっ?」
霊感未完成の流は幽霊さん達の声だけ聞こえるので、軽くパニックに陥り、鏡子の部屋にあった猫のぬいぐるみをゆっさゆっさしたりしている。
「なるほど、本人の口から伝えるのが一番とな?」
落ち武者さんが呟いて‥‥
「‥‥ざけんじゃねえ!! 切れるなら切れる、くっつくならくっつく、男ならビシッとせんかいビシッと!!」
いきなり咲織がドスの効いた声を上げたので、どうなることかと見守っていた鏡子と流は軽くのけぞった。続いて咲織はブンブンと傍にあったほうきを槍の様に振り回し、
「さもなくば、『槍夜叉』の腕前、その身に刻んでくれようぞ!!」
元彼氏はひーこらと抜けた腰を抱えて逃げていった。ちなみに「槍夜叉」とは槍の達人だった落ち武者さんの生前の、異名であるそうな。
「あー、久々に憑依したら疲れたぜ」
「まことに。そこな若人、肩を揉んでくれぬか」
暴走さんと落ち武者さんが咲織の体から抜け出しつつ言う。
流が、「えっ、猫に肩ってあるのか?」と猫ぬいぐるみの肩を揉んでいる。
「あれ‥‥? 私、一体何を‥‥?」
咲織は首を傾げる。よく覚えていないが、なんだかすっきりした気分だ。
「暴走さんも落ち武者さんもお疲れ様。咲織さんの恋のお相手は現れたんですか?」
と、鏡子。幽霊さん達は桂との出会いを口々に語る。
「人相も申し分なし〜、咲織姫に必ずや幸をもたらすとおぼゆ〜」
と、愛用の筮竹を揉みながら平安さんが断言した。
「まあ、良かった‥‥橘先生なら評判は知っていますし、お互い好印象を抱いたようですね。ほんの少し、背中を押してあげましょう。そうそう流くん、司法試験合格したんでしょ? お祝いのパーティーをここで開いてはどうかしら? で、ご近所のよしみということで橘先生にピアノ演奏をお願いしましょう」
「なんか俺のためというより他に目的がありそうで気になるけど、ありがとう」
◆
パーティーは小規模ながら、和気藹々だった。
「春から新米弁護士ね、流くん」
「しかし功成りて後の働きが肝心。勝ってかぶとの緒を締め直せとの教えもあるごとし」
「うん、これからも毎日が勉強だよ‥‥って誰だ、今俺に話しかけたのはー!」
咲織も料理や配膳手伝いを頼まれ、流の友人や家族に給仕をしていた。
葵も咲織の友人として手伝いに来てくれた。
桂のピアノが流れる。その音色に耳を傾ける、咲織の頬がちょっと赤い。
「あ‥‥いつものコンビニ店員さん?」
弾き終えて、咲織に気づいた桂が笑顔を向ける。あれから何度か桂は咲織のいるコンビニを訪れ、そのたびに、
「栄養ドリンクより牛乳を飲んでください!」
「おにぎりを買うならサラダも一緒に!」
等などと栄養のことを心配され、叱られていた。
だが今日は制服ではなく、薄紫の着物を着こなした咲織はいつもよりしおらしい雰囲気だ。
突然、流の友人らしい若者が二人に近づいてきて、平安口調で言った。
「いとをかし〜お二人の人相に恋の兆しが見ゆるなり〜」
「え?」「は?」
その若者に平安さんが憑依していたとは気づかない二人。はっと気を取り直し、咲織が口火を切った。
「あっあの‥‥私、初対面の時から叱ったりしてすみませんでした」
ぴょこんと頭を下げると、咲織のポニーテールが揺れる。桂がくすくす笑いながら、
「まったくです‥‥ずいぶん叱ってくれました‥‥よく知りあってもいないのに‥‥」
「‥‥ごめんなさい‥‥」
がっくり落ち込む咲織に、桂は続けて言った。
「実は‥‥それだけ自分に関心があるってことですよね? と勝手に解釈して喜んでいます‥‥」
図星!! とばかりに咲織がうろたえる。
「そ、その‥‥」
「当たってます? ‥‥だったらお互い様ですから‥‥友達から始めませんか‥‥?」
桂が握手の手を差し出す。
「‥‥私なんかで‥‥いいんですか?」
咲織が差し出された手をそっと握り返した。もちろん、と言うようにさらに強く握り返された。桂のほっそりした綺麗な手は、意外に力強かった。一生繋いでいたいと思えるほどに。
「新しき恋ぞ〜はじむるなり〜」
「ったく世話焼かせやがって♪」
幽霊さん達はガッツポーズである。
「次はあたしにいい恋来ないかな‥‥きゃっ?」
てきぱきと給仕する手を止めて、葵がため息をつく。と。ふいに、よろめいて傍を通りかかった流の胸に抱きとめられる形になった。
「ごめんなさいっ!!」「だ、大丈夫?」
流は葵の黒髪から漂うシャンプーの香りに、眩しそうな表情になる。
「はっはっは、よく見れば御両人も似合いでござる」
嬉しそうに落ち武者さん。わざと葵の背中を押したらしい。
「何するのよーっ! もう、成仏させてやるー!」
真っ赤になった葵が落ち武者さん達を追いかける。
「ヤベェ逆ギレしやがった。オイ平安、火の玉に化けてズラかるぜー!」
「こら待ちなさーい!」
「‥‥ほんとに世話好きな幽霊さん達ですわ‥‥みなさーん、いつまでも漂ってないで、お茶にしましょう? 桂先生が下さったカステラがありますよ♪」
庭中走り回る火の玉と葵を見守りながら、お茶を片手にほんのり微笑を浮かべる鏡子さん。
幽霊荘は、今日もちょっぴり不気味でにぎやかである。