バトルロイヤル白雪姫アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/28〜10/02

●本文

 舞台「バトルロイヤル白雪姫」では、ただいまキャストを募集中です。
 父王の再婚でグレちゃった白雪姫さん、お城からヤサグレて、茶髪にガングロで七人の小人ならぬ七人のパシリを従え大暴走。
 お后様は、そんな白雪姫をお城に連れ戻し、まっとうなお姫様に戻ってもらおうと、古今東西の御伽噺のキャラ達の力を借りて、教育に乗り出します。
 ーーそんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?

☆ストーリー☆
 黒檀のような黒髪、血のように赤い唇、そして雪のように白い肌。
 ‥‥のはずの白雪姫でしたが‥‥
 パラリラ♪パラリラ♪
「どけどけ〜ぃ!!」
 今日も今日とて、白雪姫は、七人の小人ならぬ七人のパシリを引き連れ、大暴走。
 そう、白雪姫はグレちゃったのです。父王が再婚してしまった寂しさもあったのでしょう。おまけに継母となった新しいお后さまは、いきなり思春期の娘を持つ母親になったプレッシャーからか、しきりに白雪姫を口うるさく心配するのです。
「うるせー! ケッ、こんな城になんかいられっかー!」
 とうとう白雪姫はやさぐれてしまったのでした。
 今じゃ茶髪にガングロ、逆パンダかと見まがうパール系メイクです。
 継母たるお后さまは何度も白雪姫を説得してお城に連れ戻そうとしたのですが、そのたびに白雪姫と七人のパシリのものすごい抵抗にあい、疲れ果ててしまいました。
 そんなお后さまの唯一の気晴らしは、お茶会です。
 中世の貴婦人達はお茶会をよく開きました。そこでぶーたれたり教養のある人を招いて講釈を聞いてたりするのが娯楽でした。
 お后様もご他聞にもれず、お茶会でグチをこぼします。
「ほんとにうちの白雪姫ったら、どうしたらよろしいんでしょ‥‥。
 いえ、あたくしもね。色々試したんですのよ。
 ポリフェノール強化で女らしさを取り戻させるというリンゴとか、背筋矯正でポジティブ思考になる胸紐とか、通信販売で買っては、もの売りのおばあさんに変装して娘に届けてみたのですが‥‥どれも効果がいまいちで」
 お后様は実は通販マニアだったのです。しかも結構いい人です。
 どうして伝説上では残酷な女王様かと言うと。
「うっせぇクソババア! すっこんでろ鬼ババ!」
 という白雪姫の罵詈雑言が世間に伝わり、鬼のような母親という評判になってしまったのです。マスコミの功罪ってやつですね。
 立ち上がったのは、お茶会にいた一人の日本人女性。
「それはご心配ですわね。いえ、あたくし思いますのに、女は結婚より仕事ですわ、男性なんて肝心なところであてになりませんもの。
 将来のために白雪姫さんも手に職をつけるよう、説得して差し上げますわ。私、機織のキャリアがありましたので、どうにか頼りない夫と離婚が成立しそうなんですけれど‥‥でなければどうなっていたか。ぜひ、お任せくださいませ」
 その美女は、俗に「鶴女房」=おつうさんと呼ばれている鶴の化身でした。
 鶴の姿でわなにかかっていた時に助けてくれた夫に、恩返しをしようと自らの羽を抜いて機織をして稼いでは貢いでいたのですが、夫はだんだん、おつうさんの働きを当てにして働かなくなり、おつうさんは愛想をつかして夫を捨ててはるかヨーロッパまで来たのでした。
「ふっ、ご安心下さいお后様。私がダンスで気持ちを伝えれば、説得できない女性などおりません。」
 と断言するのは「こぶとり爺さん」。鬼をも魅了する天才ダンサーと評判で、現在ヨーロッパ公演中なのです。
 なるほど鬼娘達が一大ファンクラブを結成しているというだけあって、引き締まった体つきのロマンスグレーの男性です。
 「あの‥‥では僕にも協力させていただけませんか‥‥?」
 と発言したのは、「ハーメルンの笛吹き男」。
 なぜか女装の美少年で、寂しげな音色の笛を吹きつつ町を行くと、女子高生を中心にファンがぞろぞろ後をついて回ると評判です。
 不思議なことに、彼にはジャパンから来た大男の部下がついていました。名を「ベンケイ」と言う、僧形で七つ道具を背負った‥‥違うかもしれない。
「皆さん、ぜひお願いします。そろそろあの子も年頃ですし、何か間違いがあってはいけませんもの。あたくし心配で‥‥」
「ほんとにこのごろ物騒ですものね。白雪姫様のグレ方なんてまだ可愛い方ですわ。先日なんて森の奥で、ヘンゼルとグレーテルっていう、未成年の二人組み強盗が出たんですってよ。
 一人暮らしのおばあさんをカツアゲて大金を手にして、まだ逃亡中らしいですわ」
 ほんとに今の若い人ったらねー、と、おつうさんは、お后さまとうなずきあうのでした。

 さてこちらは白雪姫。仲間たちと一緒に酒盛りしてクダを巻いています。
「またババアがなんかたくらんでやがるぜ。どうせ、あたいらを力づくで城に戻らせようとかしてんだろけど、あたいらは徹底抗戦でいくぜ夜露死苦―!」
「夜露死苦―!」
 七人の小人ならぬ七人のパシリたちが唱和します。
  
 さてさて、白雪姫はまっとうなお姫様に戻れるのでしょうか。

☆募集キャスト☆
●お后さま‥‥心配性で通販マニアですが、伝説とは違い、結構いい人です。口うるさいのは後妻の不安ゆえか。年頃の娘の母親とはいえ後妻なのでまだ若いです。
●白雪姫‥‥グレてます。それでもパシリが大勢ついてくるところを見ると結構姉御肌かも。

※上記以外のキャストは確定しておりません。自由に考案の上、ご応募下さい。文中に登場するおつうさんやハーメルンの笛吹き男、こぶとり爺さんなどでも、ヘンゼル&グレーテルでも、御伽噺のキャラならなんでもご自由にどうぞ。
 その上で「モデル歩きが得意な美脚の『長靴を履いた猫』」など、トンデモ設定を付け加えていただけるとより楽しく遊んでいただけるかと思います。

●今回の参加者

 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa2530 天王寺 ベリンダ(17歳・♀・一角獣)
 fa3066 エミリオ・カルマ(18歳・♂・トカゲ)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa4579 (22歳・♀・豹)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 お后様(=楊・玲花(fa0642))は今日も、魔法の鏡の前で呪文を唱えていました。
「鏡よ鏡よ鏡さん‥‥白雪姫(=阿野次 のもじ(fa3092))が好みそうな品物はないかしら」
「では今十代の女の子に人気のコスメはいかがでしょう。「塗るだけ美白乳液」、分割払いOKで今なら油取り紙がついて、なんと9800円!」
「まあ、お安い。後で10セット届けるように通販会社に連絡して頂戴。それで白雪が心を解いてくれるといいのだけど」
 ‥‥そして相変わらず、通販おたくです。
 そこへおつうさんが「友達を連れてきました」と、冷蔵庫をよっこらせと運んできました。冷蔵庫を開くと、真っ白な着物に水浅葱の帯を締めた愛らしい少女が出てきました。
「こんにちは、ゆきんこ(=桃音(fa4619))ですわっ。私も白雪姫を連れ戻すお手伝いをさせて頂きます〜。この冷蔵庫、とっても居心地が良うございますわっ♪」
「ええ、それも通販で買ったのよ。って、さっ寒ぅ〜」
「わぁお后様って紫のドレスがとってもお似合いで美人さんですぅ♪ 握手しませんか〜?」
「え、遠慮しておくわ‥‥ブルブル‥‥じゃ、白雪のことお願いねっ」
 ゆきんこが喜ぶと霙が降ります。泣くと雪嵐が吹きます。何もしてなくても歩く冷却装置状態です。お后様は寒さに震えながらゆきんこ達を送り出しました。
 続いてお后様を訪れたのは、チルチル(=Iris(fa4578))とミチル(=檀(fa4579)の兄妹です。まるで双子のようにそっくりな美形兄妹でした。だけどどうやらお兄さんの方の綺麗なブルーの瞳はちょっとイッちゃってる感じです。
「青い鳥様のお告げにより参上しました」
 と、微妙に爽やかな‥‥その笑顔の皮膚一枚をつんと突いて破いたら猛毒ガスがあふれ出しそうな笑顔でチルチルが言いました。
「青い鳥様?」
 いぶかるお后様に、ミチルが説明しました。それはチルチルの信じている一種の宗教のようなもので、彼の前に青い鳥が現れて電波で霊感を授けてくれるのだそうです。さすがにお后様もコメントに困ります。
「えーと‥‥とりあえず、お任せするわ。先発隊と連絡とって、協力して頂戴」
「はい。‥‥すみません、本当にすみません、うちのチルチルがすみません。チルチルちょっとぉ、その青いタイツ姿だけはやめて頂戴〜、ご近所の視線も痛いのよ! どうせまたボーナス払いにしたんでしょっ!?」
 ミチルはぺこぺこ頭を下げて、涙を拭いつつ兄の後を追いかけるのでした。
  ◆
 ところが、おつうさんは白雪姫のところへ向かう途中、旦那と和解してもとの鞘に収まり、他のお后様の刺客達も全員玉砕。笛吹き美少年はファンに押しつぶされ、こぶとり爺さんは白雪姫との会話で世代間ギャップにショックを受けて引退です。一人残ったゆきんこは健気にも一人で白雪姫を襲撃します。
「白雪お姉さま覚悟ですわっ! 凍らせてそのままチルド輸送いたしますのっ。これこそ究極の美白ですことよ〜」
 ひゅぅぅ〜、と得意の吹雪を吹き付けます。白雪姫はすかさずパシリ代表のガングロ騎士・えみりん(=エミリオ・カルマ(fa3066))を盾にします。
「はい、パシリは前に一歩!」
「イエッサー! ‥‥ひゅぅ〜ぶるぶるぶる」
 忠実なえみりんは敬礼したままカッキーンと凍ってしまいました。
「な、何て人‥‥仲間を盾にするなんて〜」
「フッ私は人間を超越するッ!! ‥‥どうした、そんなに真っ白になるほどおびえなくていいじゃないか‥‥友達になろうじゃないか‥‥ゴゴゴ」
 妖しいオーラをまとって勧誘する白雪姫に、ゆきんこは無邪気に喜びました。
「うわあ☆ 白雪姫お姉様ってよく見ると可憐ですわっ! ガングロって意外といいかも♪ こうなりゃ私もガングロでOKですっ!」
「よっしゃー、新規メンバー一名加入、夜露死苦!」
「夜露死苦!」
 ミイラ取りがミイラになったゆきんこは、ガングロメークを施され、わいわいきゃっきゃっと白雪姫たちと一緒になって走り回っている始末です。白雪姫たちのパラリラパラリラ♪ の騒音に加え、吹雪まで加わりどえらい近所迷惑でした。あ、ちなみにパラリラ♪ は、白雪姫たちが馬で爆走しながらラッパを吹き鳴らす音です。騒音を鳴らしながら爆走することを、姫たちは「馬(ば)行く」と称しているようです。
 ‥‥深くツッコんではいけません。
 そこへ、青い鳥のチルチルミチル兄妹が白雪姫に挑戦! 鳥かごを構えて、
「さあっ、貴女も幸福を呼ぶ青い鳥様の電波を受信するので〜す」とチルチル。
 ふっ、と白雪姫は鼻で笑い飛ばします。そして。
「ふっ、甘いなおまいら。トリなんか頼ってると『トリ越苦労』が増えるぜーなんつって」
「ひいぃ、寒いー!」
 バタバタと青い鳥コンビが(パシリ達も)凍結して倒れます。これこそが白雪姫の必殺技、親父ギャグ冷却攻撃なのです。
「すっごいです、人を凍らせることが出来るなんて、お姉様もゆきんこの仲間ですぅ♪」
 と瞳キラキラのゆきんこ。故郷の雪国から離れて寂しい思いをしていたらしい。だが、ちょっと違うぞゆきんこ。

「青い鳥チームはともかくとして、日本昔話チームも敗北ですか‥‥」
 魔法の鏡で様子を見守っていたお后様はため息をつきました。と、また訪問者が。
「こんにちはー♪ 訪問販売に参りました」
「あら今時珍しい。それで、何をお持ちなの?」
「シンデレラ著『王子様を捕まえる百の方法』、今なら高枝切バサミ付でお得です」
「あら、では貴女はあの有名な!?」
 そう、それはシンデレラ(=千架(fa4263))、一介の家事手伝いから王子様をゲットして成り上がった庶民出身の若手女性政治家。「王子様を捕まえる百の方法」の他「手抜き家事マニュアル」といったベストセラーを出版して文化人となり、それを足がかりに政界進出し、庶民派のイメージで無党派層の票田をわし掴みにし、今や次期総理大臣かと噂されているお姫様です。シンデレラは薄絹でこしらえたような肌に優しい微笑を浮かべ、お后様を慰めます。
「お后様、御苦労なさっているとのお噂はかねがね。でも逆に姫に賛同なさって協力なされば、姫はそれに反抗し本来の狙い通り動くか、お后様の意図が分からず混乱でもしましょうに」
「‥‥ご忠告ありがとうございます、シンデレラ姫。貴女にお任せいたしますわ」
 しかし、お后様は気がつきませんでした。シンデレラの綺麗な顔に一瞬過ぎった邪悪な影に。元々お后様は、人はいいけどあんまし人の話を聞かないタイプでした。
 シンデレラ、そっとお后の下から下がると、携帯電話の電源を入れました。どうしてシンデレラが携帯なんか持っているのか、深くツッコんでは(以下略)。
「ピッピッ(メール音)『何やら甘っちょろい親子がいるそうですけど、一緒に弄りに行きます?」←』」
 あて先は「乙姫様」(=天王寺 ベリンダ(fa2530))となっておりました。

 さてこちらはまたまた白雪姫。えみりんも自然解凍で復活し(オイ)、ゆきんこも加わって、相変わらず青い鳥のご兄妹が「青い鳥様のお告げが〜」とよろよろしながらも付きまとっていますが。と、シンデレラが現れ高笑い。
「ホーッホッホッ。あぁらそこにいらっしゃるのは白雪姫じゃございませんの。相変わらず昔懐かしいグレっぷりですこと。でも本当は淋しいだけではなくて? 私などガッツリ復讐を果たしましたのに。逃げてないでガチで行ったらどうですの?」
「お姉様の悪口言う人は許さないですぅ! 腹黒ハイヒールには負けませんわっ! ゆきんこ☆カランコロンアターック!!」
 ゆきんこが下駄をブーンと蹴り飛ばします。この下駄、相手を攻撃してブーメランのようにゆきんこの元に戻る新ナビゲーション機能搭載でした。深くツッコ(略)。
「甘い! ‥‥トアッ!」
 カッコーン、とシンデレラはドレスの裾を翻してゆきんこの下駄をハイヒールキックでけり返します。楚々とした美少女とは思えぬ運動神経&スカートのさばきっぷりです。おまけにハイヒールは特殊防弾ガラス製のほぼ殺人武器仕様です。
 ゆきんこの下駄は森の木に跳ね返り、ガツンガツンと森の動物達を撲殺しました。なのでこのサッカー試合、じゃなかった下駄VSヒールの蹴り勝負は後に「動物はん達の悲劇」‥‥略して「どうはの悲劇」と呼ばれます。
 シンデレラと白雪姫の視線が空中でビシィ! と火花を飛ばして絡まりあいます。
 シンデレラのメル友で可憐にして邪悪な乙姫様がシンデレラ姫に囁きました。
「お姉様、任務完了です〜。もうすぐ白雪達の荷物の中に仕掛けてきた玉手箱がタイマーで爆発しますわ。そしたら白雪ばかりかパシリ達まで煙で老人♪ クックク‥‥醜悪な姿が楽しみです〜」
「まあ、それは楽しみね。よくやったわ、後で可愛がってあげるわね♪」
 ところが、爆発が迫った時、突然、シンデレラと白雪の間に覆面姿の二人組みが乱入しました。
「こちとら無敵の兄妹強盗ヘンゼルとグレーテルでぃ! 金目のもんを出せ! 姫様がどうなってもいいのかっ? ああん?」
 とヘンゼル。えみりんを人質に取り、ナイフをつきつけています。えみりんは素でガングロなので、いざというとき白雪の身代わりになれるように、大体常にドレスを着用しているのでした。
「そう私は姫様の騎士−パシリ、姫様が馬になれと言えば馬になる。女装ごときを厭うはずはな‥‥」
 しかしヘンゼルが白雪本人よりえみりんを姫君と信じて疑わない程の似合いっぷりにちょっぴり自己嫌悪を感じるえみりんです。 白雪姫が強盗どもも恐れず一歩前に進み出ました。
「なんだろうと勝手に持っていけ。ただし、仲間には手を出すな!!」
 グレーテルは勝手に白雪姫の荷物を探り、漆塗りの上等そうな箱を持ちだして来ます。
「兄貴、こんな上等そうなもんがありましたぜ!」
 グレーテルが箱をパカッ。覗き込んだヘンゼルにも白煙がボン! とふっかかります。
 ‥‥結果はもちろん。あっと言う間に爺さんばあさんです。ヨボヨボのヘンゼルとグレーテルは当局に連行されていきました。
「お姉様、カッコいい‥‥」
 危機に瀕して仲間を庇った白雪姫を、ゆきんこが憧れの目で見つめます。
 シンデレラも、フッと言うクールな微笑とともに、近づいてきました。
「‥‥ちょっと見直しましたわ。少しは骨があるようですわね」
「城を飛び出して庶民の生活を見たせいさ。これからは共和派のリーダーとして、消費税率値上げに反対して庶民達を守るつもりだ」
 二人がそんな会話をしていると、シャンシャンシャン♪ と豪華な馬車がその場に乗り付けました。降りてきたのはお后様です。
「皆様ごきげんよう‥‥ってゆきんこさん、貴女、白雪を諌めに来たのではありませんでした? なのに一緒になってガングロだなんて」
「だって、面白そうだったんですもの〜」
 きゃはっと無邪気なゆきんこです。
「城に戻るつもりもねえからなっ」
「いいえ、いいのよ白雪姫。貴女は立場こそ違え、立派に人の上に立つ姫君としての誇りを保っていたのですね。自由に風のように生きる仲間達の中で‥‥」
 漆黒の瞳にキラリと光る何かを、さりげなく絹のハンカチで拭いながらお后様は言いました。
「まったく駄目な母親でしたわね、わたくしも。生さぬ仲とは言え、あなたが何より自由を欲していたのに気付かないなんて。もう大丈夫ですよ。あなたはあなたの生きたいようにお生きなさい」
「いいのか? オヤジに叱られるんじゃないのか」
「‥‥王様には、貴女が獣に食い殺されたとでも伝えておきますわ。こう見えてもわたくしも女王、舌先三寸で殿方を操る術くらい心得ています」
 ふぁさっ、と長い黒髪をなびかせて、お后様は立ち去りました。
 そんなお后様ですが、馬車に揺られつつ、ちょうど妊娠がわかったし白雪いなくても王の跡継ぎいるしラッキーかもー、結婚前の前カレの子かもしんないけどー、と想っていることは秘密です。
「行くぞ野郎共!」
 真っ赤な夕日をバックに、白雪姫は旅立ちました。
 そうして白雪姫は自由の民のリーダーとして全国を旅しながら世直しをしたそうです。庶民を装っていざと言うときに王家の紋章を振りかざして悪代官達にヤキを入れたとか、ヨーヨーをブンブン振り回していじめっ子を撃退したとかいろんな伝説が各地に残っています。そしてその影には常に影武者えみりんがドレス姿で(オイ)。ゆきんこはと言えば、どんなにガングロメークを施しても地が白いので短期間しか定着しないことに限界を感じ、開き直って美白のカリスマに成り上がったそうです。
 青い鳥教団のチルチル・ミチル兄妹は、相変わらず全国を行脚して青い鳥様の電波を布教しているようです。
 そしてシンデレラ姫はといえば、相変わらず愛らしい笑顔を振りまいて前代未聞の高支持率をキープし、かつ、ニコニコ笑いながら旧体制派の政治家達にキツーイ弁舌でツッコミを入れまくり、次期総理の座を着実に手中に収めようとしています。‥‥邪魔者や政敵をバッタバッタと闇に葬りながら。
 そういえば、かつて彼女をいじめた二人のお姉さんは、「いい縁談を紹介してあげますわ」と言う電報で彼女に呼び出されて以来、消息が途絶えています。その後しばらくお城の庭の井戸から、「助けて〜」という声がしたという噂もありますが、気のせいです。多分。
 今日も、シンデレラと乙姫様の密やかな会話が聞こえてきます。
「そう言えば、百年も不貞寝している姫がいるそうよ。からかいに行ってみます?」
「いいですわね♪ シンデレラお姉様の行くところなら、どこへでも‥‥」
 いばら姫、逃げてーーーーー!!!!