ウェルカム☆幽霊荘2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
2.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/19〜10/23
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●本文
TOMI TVがお送りする特撮ドラマ「ウェルカム☆幽霊荘2」では、ただいまキャストを募集中です。
ちょっとレトロなアパート「裕玲荘」に引っ越してきた女性。実は合コンで歴戦歴勝の合コンクィーン。恋はテクニック、贅沢させてくれる結婚相手をゲットするだけ〜と豪語する彼女に、裕玲荘に住み着いた心優しい幽霊が本気の恋を手ほどきーーそんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?
☆ストーリー☆
「ちょっとショボいけど、まっしょうがないか‥‥オシャレ代は削れないし、住居費を節約するってことで」
ヒロイン・亜美はそう呟いて、引越しを決めた。引越し先はレトロだけど小奇麗なアパート「裕玲荘」。
しかし亜美はどうせ、ここに住むのも短い間と独り決めし、適当に住処を選んだようだ。
亜美は実は「合コンあらし」と呼ばれる恋のテクニシャン。合コンの場には完璧に男心を計算したファッションで現れ、出会う男によって性格すら変えるというつわものであった。で、最近引っ掛けた彼氏数名(オイ)のうち、一番贅沢させてくれそうな男を選んで間もなく結婚するつもりなのだ。
「で、残った男はポイって捨てる訳よ♪」
引越し直後の亜美がそう呟いて、明日の合コン(オイ)に備えてパックなどしていると‥‥
「ぬしさん‥‥それじゃああんまりでありんす。わちきたち花魁でさえ、気に入らない旦那にはいくらお金を積まれても、お相手にはなりんせん。なのに、お金で一生を添い遂げる相手を選ぼうなんて〜」
ヒュードロドロと現れた女の幽霊。江戸時代頃の花魁姿の美人幽霊だ。
「キャーッ、で、出た〜!」
亜美はとりあえず管理人室に飛び込み助けを求めた。が、管理人さんは、
「ああ、十六夜(いざよい)太夫さんに突然話しかけられてビックリしたんですね。世話好きですからねえ十六夜さんは。幽霊だけどいい人だし、相談に乗って頂いたらどうですか?
花魁といえば女の中の華、綺麗なだけじゃなくて礼儀作法や琴の演奏、漢詩の教養まで納めてるスーパーレディなんですから」
と平然たるもの。
「ちょっ、幽霊に相談って」
と怒りかける亜美の傍を、折りしも同じく裕玲荘の住人である学生が通りかかり、
「あっ十六夜さん。こないだ古文のレポート手伝ってもらって助かりました〜。お礼におはぎお供えしときますね」
「それは嬉しゅうありんす。わちきでよろしければ、いつでも相談しておくんなんし」
「‥‥って幽霊が普通に近所づきあいしてるし(しかも円満)!!」
と驚く亜美だったが、管理人さんが言うには、この裕玲荘、昔から幽霊さんに居心地がいいらしく、今も何名かが住み着いているのだとか。
「ちなにに302号室は明治の文豪幽霊さん、104号室は恐れ多くも江戸時代の副将軍の幽霊さんが」
「もっもうどうでもいいわ、どうせこんなアパートに住んでるのもわずかな間だしっ。あたしは三高オトコをゲットして出て行くんだからー!!」
「‥‥あれ、意気地の無いお嬢さんでありんす。そんなんじゃあ、本当の幸せは掴めるはずありんせんよ?
仕方ありんせん、わちきが本気の恋を見つけるお手伝いしてあげようじゃありんせんか」
と、十六夜太夫。
「冗談じゃないわよ、ついてこないでよ!」
亜美は突き放そうとするが、実体のない幽霊さんにはパンチもキックも効き目無し。
「ええい、こうなったら徹底的にシカト!」
「そうはいきんせんよ。わちきにも花魁の意地がありんす!」
さて、亜美は「本気の恋」を見つけられるのだろうか‥‥
☆募集キャスト☆
●亜美‥‥合コンに出れば狙った男は必ずゲットする合コンクィーン。恋はテクニックがすべてと信じている。
●十六夜太夫‥‥江戸時代の名太夫。早世したが数々の浮世絵のモデルにもなった美貌の持ち主。(プレイング中の台詞は「ありんす言葉」でなくてもOKです)
●管理人さん‥‥親切かつどこか不思議なムードを漂わせている。幽霊と人間両方のよき相談相手。
※上記以外のキャストは確定しておりません。亜美の友人や彼氏、アパートの他の住人等(幽霊、人間含む)自由に考案の上、ご応募下さい。
※幽霊さんはある程度の霊感のある人にしか見えず、声も聞こえません。ポルターガイスト等である程度の自己主張は出来ます。
○補足事項「花魁」について‥‥文中管理人さんが言及している通り、遊郭(政府公認の男性の遊びどころ)の中でも最高位の遊女さんです。遊女とはいえかなりの教養を身に着けており、彼女達と一夜を過ごすには莫大な財産と、花魁に気に入られるほどの男としての魅力が必要でした。遊女とはいえ、誇り高きオンナだったわけですね。
●リプレイ本文
●合コン女王、初敗北
「では、すばらしい出会いに、カンパ〜イ♪」
てなわけで。裕玲荘の新しい住人にして合コン女王の女子大生・一之瀬亜美(=霧島・沙耶香(fa2385))は、いつものごとく合コンに出席していた。本命は有名大学の医学生・村瀬君である。狙い通り村瀬君の隣の席をゲットし、数々の男を射止めてきた合コン秘技を駆使しようとするのだが、今日はいつもと勝手が違った。
「このビーズネックレス手作りなんですよ」
とアクセサリーを見せつつ、ぷるん☆な胸元をちらりと魅せる戦法をとろうとしても、裕玲荘に越して以来、亜美に憑いている花魁幽霊・十六夜太夫(=楊・玲花(fa0642))が黙っちゃいない。
「いけません、堅気のお嬢さんがそんなに気安く肌を見せるものではありんせんよ? 第一そんな胸元の開いた服じゃ風邪をひきんす。下着もずいぶん布地の少ないのをお召しになって(←着替えの時から観察してた)」
(「太夫ったら‥‥何もなくても合コンには勝負下着で出かけるのが私のポリシーなのっ」)
亜美はほぼマジギレ5秒前の気持ちを押さえつけながら、かろうじて無視している。
しかもなぜか村瀬君のいる側に十六夜太夫がいるので、なかなか話しかけられない。そうこうしているうちに、村瀬君は亜美の友人・麻倉翔子(=ブリッツ・アスカ(fa2321))と話が弾んでいるではないか。
「へえ、君、建築学科なの? いいねぇ、俺、建築美術鑑賞が趣味なんだよね」
「へっ? いや俺はそんな美術とか高尚なアレじゃなくてさ、オヤジが大工の棟梁だから仕方なく‥‥なっ、亜美」
亜美の親友である翔子が、一生懸命亜美に話題を振ろうとしてくれるのがかえって痛々しい。男勝りの翔子はカットオフジーンズにざっくりしたセーターという普段着で、合コンというより飲み会の雰囲気を楽しむのが目的なのだが。亜美には、反対隣の青年が話しかけてくるのだが、身を入れて聞けるはずもない。
「あれ、亜美さん、こっちの殿方が一生懸命はなしかけてくれておりんすよ? 本命とやらに気を取られて、他の方に礼を尽くさないじゃ、女がすたりんすよ」
「もうっ、ほっといてください!!」
思わずリアクションしてしまう亜美。「えっ?」と固まる一同。
「あ、いえ、なんでもない‥‥です」
わたわたとごまかそうとする亜美だが、
「どうしたんだよ亜美? でっかい独り言言って」
と、翔子が心配してくれる。だがさすがにいたたまれなくて、亜美は、
「ごめんなさい、ちょっと気分悪くて‥‥こ、これで失礼します!」
そそくさと席を後にする。
「ちょっ、待てよ亜美、大丈夫か?」
心配そうな翔子がついてくる。合コン女王初の敗北であった。
●気分を変えて
「今日、泊まってやろうか? 一人暮らしって色々不安だろ?」
翔子が亜美を気遣って裕玲荘まで送ってくれ、言ってくれたのだが、亜美は断った。
もし十六夜太夫とケンカになりポルターガイストでも起きたらことだ。
「ううん‥‥でもありがと。それより村瀬君、翔子のこと気に入ったみたいだったわね。私も狙ってたんだけどな‥‥こうなったら翔子を応援するから頑張って」
「あ? そんなんじゃねえって。ただ同性みたいで気安かっただけだと思うぜ」
「翔子ったら‥‥でも携帯番号聞かれたんでしょ」
「今度マージャン誘うってさ。まるで男同士だろ。いつもそうなんだよな、俺って。まっ気楽でいいぜ、こういうスタンスも」
笑い飛ばして翔子が帰ってゆく。
しょんぼり肩を落として帰宅した亜美は、裕玲荘の管理人・水瀬鏡子(=キャンベル・公星(fa0914))に遭遇した。鏡子は庭のハーブを摘みながら立ち話をしているのだが、その相手も幽霊である。霊感のない人から見れば、「リアクション付の独り言」という怖い状態に見えるだろう。
「このカモミールの葉をですね、電子レンジで軽くチンしてお湯を注ぐといいんです」
と説明しているのは明治生まれの女流小説家幽霊・烏丸桐枝(=四條 キリエ(fa3797))。明治生まれ幽霊にありえないショート茶髪にピアスという現代的な軽装だが、鏡子いわく幽霊は精神的な存在で、念じればどんな格好も可能だとか。
「まあ、そうなんですか。ほんとに桐枝さんは博識で助かります‥‥あら、お帰りなさい亜美さん。まあ、可愛いブラウス‥‥でも胸元が少し寒そうですね。これからの季節は「遠赤外線腹巻」併用された方がいいですよ」
と鏡子は大ボケ親切をかましてくれる。
「十六夜さんもお帰りなさい‥‥ってあら、どうしたんですか、お二人とも元気がないですね?」
「もしかして、女の戦いってヤツでしょうか? 尾島菊子先生の世界ですね」
と、桐枝が好奇心むき出しで割り込んでくる。未だに桐枝は創作意欲・知識欲ともに旺盛で、霊感のある有望そうな小説家にネタを提供して回っている。
「鏡子さん、何とかしてください! 太夫が合コンの邪魔するの」
「ですから、ああいう場で本気の恋なんぞ見つかるはずはありんせん!!」
「まあまあお二人とも‥‥あのね亜美さん。太夫は生前、辛い経験があるから貴女のこともほうっておけずに‥‥」
鏡子が優しく諭し始めた途端。
「控えい控えおろう〜! この裕玲荘には受験生もおるのじゃ、夜分にかしましいのは勉学の妨げ! この紋所が目に入らぬか!」
副将軍の霊が出てきて怒鳴る。
「黄門様ったら大げさです‥‥仕方が無い、女同士話せる場所へいきましょうか?」
天下の副将軍を幼子みたいにたしなめて、鏡子がみなに笑顔を向けた。
◆
そのカフェは、裕玲荘のほぼ裏手にあり、住人達もよくお茶を飲みに来店する。グレーを基調にした落ち着いた店内の雰囲気である。鏡子は改めて、亜美に十六夜太夫の生前の物語を教えてくれた。
元は武家の生まれだった十六夜太夫。由緒ある家柄の婚約者もいた。だが父が横領の罪に問われ、一家取り潰し。病身の弟を育て、お家を再興しようと自ら吉原へ身を売ったという。しかし弟は結核で早世。
絶望する十六夜を、かつての婚約者が武士の身分を捨てて商人となり、財産全てをかけて身請けしようと申し出てくれたが、十六夜も既に結核に冒されていた‥‥と。はかない恋ではあったが、その婚約者といる間は真の幸せを感じたと十六夜は淡々と語った。
「無口なお方でありんしたが、和馬さまは実のあるお方でありんした。女を幸せにしてくれるのは上手な口説きや贅沢ではありんせん。そのことをお伝えしたかったのでありんす。ですからお金や権力に、心まで売り渡しちゃあなりんせんよ? ‥‥まあ、亜美さんったら涙なんか浮かべて‥‥いやですよ、遠い昔の話でありんす」
「あ、ご‥‥ごめんなさい」
亜美は慌てて涙目をごまかすようにカフェオレを飲み干した。十六夜の言葉が身に沁みて、今までゲーム感覚で告白してくれた男の子にわざと返事を遅らせてじらしたり、軽い気持ちでつきあって、振ってしまったことが思い出された。その時。
「梅昆布茶、お待たせしました‥‥」
ことりと、店員が十六夜太夫の前にお茶を置いた。
「あれ、わちきは注文しておりんせん‥‥っていうか、わちきが見えるのでありんすか!?」
「ええまあ、幸か不幸か、そういう体質でして‥‥こちらは焼酎『うわばみ殺し』でよろしいですか?」
と桐枝の前には焼酎のカップを置きつつ、カフェの店員(=神楽坂 紫翠(fa1420))が微笑する。長い黒髪を束ねたなかなかの美形だ。
「まあ嬉しい! 鏡花先生のお招き以来です」
と桐枝が好物らしい焼酎をくいっと飲み干す。十六夜も嬉しそうに梅昆布茶に口をつけた。
「店員さん。でも‥‥怖くないんですか、見えちゃうのって」
「全然‥‥幽霊はね‥‥本来、怖いものではないんです。生きている人に何か教えたくてうろうろしてるのがほとんどですから‥‥貴方の傍にいる花魁さんも、おせっかいが好きみたいですけどね‥‥」
十六夜と亜美が顔を見合わせる。
「ちゃんと話、聞いてあげたほうがいいですよ‥‥花魁さんはもてはやされても遊女の身である以上、相当辛い目にあわれたでしょう‥‥でも世の中を恨むどころか、他の人の幸せのために忠告をしている‥‥たとえ貴女に嫌われても‥‥貴重な存在じゃないですか」
淡々といい、にっこり笑って店員が厨房に去ってゆく。
そのとき、カフェに新しい客が。
「あら!? 咲織さん!」
裕玲荘の住人、坂本咲織(=都路帆乃香(fa1013))だった。当初はアルバイトとしてコンビニのレジ打ちをしていたのだが、コンビニ本社に提案した栄養ドリンクの企画が認められ、商品企画担当部署の契約社員に抜擢されたばかりで忙しく、ここが息抜き場所だという。
「管理人さんに亜美さんもいらしてたんですか〜。私もここ、お気に入りなんです。だってあの店員さん、彼に似てるんですよね〜。桂先生が忙しくて会えない時はつい来ちゃいます〜」
ほら似てるでしょう? と咲織が差し出すのは咲織の彼氏・橘桂(=神楽坂 紫翠(fa1420)・二役)とのツーショット写真だ。
「そういえば‥‥でも咲織さんってほんと面食いですね」
「そんなあ〜照れちゃいますね〜」
と照れる咲織を、
「ふむふむ、典型的な少女趣味ですね‥‥とことん美形に弱い、と。吉屋信子先生お得意の分野です」
と冷静に観察している桐枝。
「そうだわ、咲織さんがいるとなると‥‥亜美さんの幸せを見つけるいい方法が!」
ぽむっと手を打つ管理人さん。やおら、咲織に向かって祈る。
「亜美さんの恋を占ってください。何卒お告げを‥‥卑弥呼様」
すると、きょとんとしていた咲織が急におごそかな表情となり、妖しい舞の仕草をして、向き直る。
「邪馬台の民の末裔よ! わらわが女王卑弥呼なるぞ。求めに応じ神の言葉を告げん」
「ハハアーッ!」
亜美も鏡子も思わずひれ伏す。
「亜美なる女よ、そなたの恋の相手、意外と間近におる。それも幸に満ちた恋じゃ! ‥‥なれど互いの気持ちに気づくにはしばし時を要する。運気を高めるにはそれまでの間、周囲の人々を幸せにすることじゃ。おぬしの得意な技をもってな」
「私の‥‥得意な技?」
亜美が呟いた時、咲織がかくんと元の表情に戻った。
「卑弥呼女王って副将軍の幽霊さんのお茶のみ友達で、時々来てくださるんですよね。それに咲織さんって憑依しやすい体質らしくて、卑弥呼様の呼び出しに最適なんです♪」
「きょっ、鏡子さん、そういう怖いことコロコロ笑いながら言わないで下さい‥‥」
「あ‥‥あれ、管理人さん、私どうしたんでしょう。急に肩が凝ってるんですけど」
「あら〜そうなんですか。やっぱりお仕事が忙しいからでしょうか‥‥その合間にデートじゃ、体も疲れますよね」
と咲織をごまかす鏡子さん、意外と悪女である。
「それもそうですね〜うふふ〜少し時間があると桂先生と約束しちゃうんですよね〜」
お肌をツヤツヤさせながら照れてる咲織も咲織だが。
◆
亜美は例のカフェでアルバイトを始めた。
「オーナー、このレシピ、どうでしょうか? 桂花陳酒を隠し味にしたチョコトリュフなんですけど‥‥」
「うん、いいね。帰り遅くなっていいなら、今日試作してみようか?」
「はい! かまいません!」
亜美ははりきって新メニューの開発をしている。そして亜美の提案する目先の変わったスイーツが評判を呼んで、カフェは最近、雑誌の取材が来るほど盛況なのだ。
「亜美さんは南蛮風のお菓子作りが得意なのでありんすね」
亜美は趣味で、オリジナルスイーツのレシピをノートに書き溜めていた。それを見た十六夜がそう言ったのがきっかけだった。
「ごめんな亜美、俺だけ得しちゃったみたいで‥‥」
ある日、カフェに立ち寄った翔子がすまなそうに打ち明けた。村瀬君と男同士みたいなつもりで付き合い始めたのに、だんだんお互い異性として意識し始め、ついに村瀬君から告白されたという。
「よかったじゃない翔子! じゃ、今度はうんとおしゃれして会いなさいよ」
というわけで、今日の翔子は亜美の手を借りて、裾がレースになったタイトスカートにやや胸の開いたニットという女らしい格好。
「翔子、似合う! はい、背筋伸ばしてレッツゴー!」
「やっ‥‥やっぱついてきてくれよ亜美〜」
「ダメダメ! 今日は二人っきりでじっくり話すのよ」
緊張気味の翔子の背中を押して見送る亜美に、例のカフェの店員‥‥名前は霧神宗一郎という‥‥はにっこり笑顔を向けてくれる。長い髪は編みこみにして、セーターにジーンズ姿と、合コン女王時代よりずっと地味な亜美だが、その方が素敵だと宗一郎は言ってくれる。宗一郎は、ジュエリーデザイナーの修行の傍ら、叔父の経営するこのカフェの手伝いをしていることも打ち明けてくれた。そしてある日。
「ジュエリーデザインコンテスト‥‥入賞しました‥‥お祝いにケーキを焼いてくれますか?」
「おめでとうございます! ♪ 霧神さんはどんなケーキが好みですか?」
「どんなケーキでも‥‥亜美さんと二人で‥‥食べられるなら‥‥」
「はい?」
きょとんとしている亜美に、相変わらず付き添い状態の十六夜が気を利かせる。
「あれ、そういうことでありんしたか。わちきは鏡子さんと買い物でもいきんすから、ご遠慮なく」
「何がそういうことなの、変な十六夜太夫」
「亜美さんが鈍すぎるのでありんす。女磨きがまだまだ足りんせんね、ホホホ」
「なんですってー!」
亜美と太夫の喧嘩を、苦笑して見つめる宗一郎。あいも変わらず裕玲荘とその周辺は、にぎやかであった。