ハウスキーパー炎野達人アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
2.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/29〜11/02
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●本文
TOMI TVがお送りする特撮アクションコメディ「ハウスキーパー炎野達人」では、ただいまキャストを募集中です。
舞台は老舗の旅館。規模は小さいが、家庭的なサービスが売りである。
その経営と家族の支えだったおじいちゃんが突然亡くなり、うろたえる一家。ところがそんな家族の前に、超一流の家政「夫」さんが現れてーー?
ーーそんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?
☆ストーリー☆
俺は政府の特殊機関「F」に養成された特殊工作員。
名前は「炎野達人」という。
今日も俺に新たな指令が下った。俺はこの任務を命がけで遂行せねばならない。
どんな任務かって?
「ばらばらになりそうな家族の心をひとつにすること」。
それが特殊工作員の任務だなんて、って驚いているようだな。
フッ甘い甘い。
特殊機関「F」の目的はこの国の守護と繁栄に他ならない。そして国の基本はひとつひとつの「家族」だぜ?
おっとそろそろ俺は行かなくちゃならない。壊れそうな家族の心が俺を呼んでるぜ。
さてと、夕食の買い物はひき肉500gに小松菜3把、豆腐も必要だな。洗濯物はびしっと畳んで風呂を沸かし、あとは犬の散歩。子供の宿題の手伝い、と。
出来る男は辛いぜ、ふっ‥‥
◆
小さくとも家庭的な居心地の良さで評判の老舗旅館「松尾」。
ところが、ある日突然「松尾」に騒動が起きた。旅館経営を仕切っていた剛毅もののおじいちゃんが倒れ、そのまま天国へ逝ってしまったのだ。
家族はなんとかおじいちゃん亡き旅館を盛り立てようとするのだが、すべてが空回り。余計なことにお金をかけ過ぎて、借金までこしらえてしまう。
ついに家事を仕切っていた家族までが過労で倒れてしまい、やむなく家政婦さんを呼ぶことに。
そして「アイツ」がやってきた。
「ピンポーン♪ どうも、ハウスキーパー派遣会社から参りました、炎野達人(えんの・たつひと)と申します」
家政婦ならぬ家政「夫」。しかしこの家政夫が超スグレモノ。
掃除洗濯キビキビこなし、まかない料理もお手の物。
しかも、出てくる出てくる家事の裏ワザ。
「お米のとぎ汁はそのまま捨てたりしないで、洗剤代わりに使いまわす」
「熱いものを冷ますときはあらかじめ器を冷凍庫で冷やしておいて、盛り付ければ早く冷める」
実は炎野は政府特殊機関「F」の秘密工作員。国家の安泰はひとつひとつの家族の安らぎから、という政府の方針により養成された、家事とカウンセリング、節約術に医療に警護に教育‥‥なんでもござれのエキスパートだったのだ。
炎野の第一の仕事は、料理人でもあったおじいちゃんの得意料理の味を再現すること。
そして不仲になっていた家族を仲直りさせること。
そして末っ子をいじめる悪い子にマーシャルアーツでお仕置き! ‥‥だがそのいじめっ子、「松尾」の業績をおびやかす巨大ホテルチェーン経営者の子供であった為、予想もしないややこしい事態に‥‥
どうする炎野達人、どうする「松尾」の人々!?
☆募集キャスト☆
●炎野達人‥‥謎の超優秀ハウスキーパー。実は政府特殊機関の工作員。
●「松尾」の人々(経営している家族、従業員など)
※上記以外のキャストは確定しておりません。自由に考案の上、ご応募下さい。
●リプレイ本文
僕達家族は、おじいちゃんが死んでからバラバラだ。お父さんはずっと単身赴任中。お葬式が終わると、また忙しそうに会社に戻っていった。おじいちゃんが死んだから、会社勤めを辞めなくちゃならない。そのために仕事を引き継いでいるんだって。
お母さん‥‥ううん、お父さんの二度目の奥さん‥‥梨花さん(=沢渡霧江(fa4354))も必死で家のこと、頑張っている。でも、梨花さんは元運動選手で、あんまり料理なんかうまくない。だから皆、お弁当を買ってきたり、バラバラで食事を取るんだ。朝は特に寂しい。おねえちゃんは朝食も食べずに出かけるんだもの。
「‥‥行ってきます」
「あら、もう行くの? 牛乳くらい飲んでいかない?」
「‥‥いいです」
おねえちゃんも何か悩んでいるみたいだ。でもピーンと張り詰めた梨花さんには相談しにくいんだ。わかるよ、僕だってそうだもん。
でも、アイツがやって来てからは‥‥
◆
「お早う、皆さん」
その派遣家政「夫」‥‥炎野達人(=伊達 斎(fa1414))は、朝何時から起きてるのか早朝から洗濯物を干して完璧な朝食を用意して、家族を待ち受けている。
朝の弱い長女のユキ(=悠奈(fa2726))が、食卓に並べられた焼き魚、青菜のおひたし、いい香りを放つ味噌汁、といった豪華な品々に目を見張る。
「キミは時折朝食抜きだそうだね。しかし朝食は体調を整え美しさを維持する重要なポイントだよ。いずれ誰かの最高に美しい花嫁となるためにも必要だ」
と、西洋のバトラーみたいに椅子を引いてうながし、ユキを座らせる。
「すごい人が来た‥‥ほら、食卓もピカピカだし。割烹着の似合うイケメンって始めて!」
ユキは目を丸くして、心なし頬を上気させて弟の善夫(=海風 礼二郎(fa2396))に囁く。
「あ、きんぴら」
食卓を見た善夫が声を上げる。
「亡くなられた前当主は、朝食には必ずきんぴらを用意していたそうだからね。試しに作って見たんだけど‥‥どうかな?」
でも、口にした善夫は「味が違う‥‥」と哀しそうにぽつり。
「ちょっ、何言ってるの善夫、ほら美味しいじゃない!」
ユキがフォローするが、善夫は悲しそうに炎野を見つめると、「行ってきます」とぺこりと頭を下げ、飛び出していった。
「ごめんなさい、弟が‥‥で、でも、本当に美味しかったですから」
ユキがやがて登校し、梨花と炎野二人がダイニングキッチンに残った。
「きんぴらの味は、家族を繋ぐ絆の象徴でもあったのでしょうね」
梨花はこくりとため息混じりにうなずく。
「うん。‥‥私もそう思う。もしきんぴらが作れるようになれば、私も家族に溶け込めるんじゃないかって‥‥」
「なら作りましょう」
「む、無理言わないで! 私、料理なんて!」
梨花は自信なさげに首を横に振る。
「投げ出してはいけないね。貴女は既に料理上達の第一条件をクリアしている。料理の第一条件は相手に喜んでもらいたいという『誠意』だからね‥‥」
きっぱりと炎野が言った。
炎野と梨花は、「松尾」の古株料理人・畠山安二郎(=鬼頭虎次郎(fa1180))に、おじいちゃんの使っていた調味料等について尋ねることにした。
「あん? 亡くなった大旦那の使ってた調味料? 知らんなあ。ま、所詮素人にゃ無理じゃて。大旦那様亡き後は、若奥様も若旦那様も、素材を見る目すらないんじゃからなあ」
と、昼間から日本酒をちびちびやっている自分を棚に挙げ、畠山‥‥通称やっさんはじろりと梨花を嫌味な目で見る。梨花がコブシを固めて詰め寄ろうとするのを、炎野の静かな声が遮った。
「しかし、貴方も大旦那と同じ料理人です、何か思いつきませんか」
「は、わしだってご同様じゃ。大旦那様のご指導なしじゃあ、二流以下よ。自分でもよぉくわかっとるわ。分かりすぎて‥‥酒に逃げるしかなかろうがっ!」
どんっとテーブルに、酒のカップを叩きつける。
「酒、といいましたね?」
「そ、それがどうかしたか?」
「さすが料理人だ。貴方は今、重要なヒントをくれたんです」
しばらく後。
再び炎野達人は、松尾の家族を一同に集めた。畠山も一緒だ。
「今一度、この肉じゃがときんぴらを食べて見てもらいたいんだが‥‥」
恐る恐る口にした一同の目が丸くなる。祖父の、あの味だ。
「でも‥‥どうして?」
「みりんの代わりに煎り酒を使っているからだよ。ちなみに煎り酒とは、日本酒に梅干と鰹節をいれて煮切り、アルコール分を飛ばしたもの。配合は各家庭や料理人によって違う。今回の配合を考えたのは‥‥やっさんだ」
皆が一斉に畠山を見る。
「ま、怪我の功名じゃ」
照れくさそうに畠山が肉じゃがを口に放り込む。
「そして梅干は梨花さんが実家から持参したものだ。だから今までの味とは違う、また新しい松尾家の味が今、完成したというわけだね」
ユキがちらりと梨花を盗み見た。梨花がすかさず微笑みかける。料理の出来ない引け目で自分から子供達に歩み寄れなかった梨花だが、素直に喜んでくれるのを見て、自信を持ったようだ。ユキもおそるおそる微笑み返した。
「そうだったのね‥‥これが梨花さんの、ううん新しい松尾家の味‥‥凄く美味しいよ!」
「ありがと‥‥きんぴらだけじゃなく、私、もっと頑張るからね。アイロン掛けも掃除も苦手だけど、体力には自信あんだからね!」
間もなく、梨花は本当に旅館の異色女将として、注目を浴びることになった。前歴を生かして、女性客相手に護身術指導を始めたのである。旅先で開放的な気分になった女性を狙う輩も多いことから、これは好評を博した。ユキも時々、こっそり参加している。
松尾の客がまた増え始めた。やっさんも「煎り酒作りだけは、あんたにゃ任せられんからの」炎野の指導で煎り酒に至ったくせに、鼻高々で炎野に宣言し、腕も上がったと客の評判もいい。
だがトラブルの種は別なところから飛んできた。
「最近調子こいてんじゃねえかよ」
学校からの帰り道、待ち伏せていたいじめっ子‥‥田畑春也(=パイロ・シルヴァン(fa1772))が、善夫の前に立ちふさがった。
「な、なんのこと?」
「とぼけるな、おまえんちのちっぽけなボロ旅館が目立ちやがって、おかげでとーちゃんのホテルが客減ったじゃないかっ!」
と善夫を突き飛ばす。春也は海外にまで支店を持つ巨大ホテルチェーン「ダバダホテル」オーナーの一人息子なのである。女の子みたいにまつげの長い美少年なのに、性格は限りなく俺様で、以前から気の弱い善夫をいじめている。取り巻きも一緒だ。春也のベビーシッターと称する女子高生・調布卯月(ちょうふ・うづき)(=花鳥風月(fa4203))までが加わっているのだからたちが悪い。
「三流旅館のチビ息子―」
「ま、松尾は三流なんかじゃない!」
「あー、聞こえんなー」
善夫の訴えをシカトして、春也は卯月に命じた。
「こいつ電柱に縛り付けて、『僕は三流旅館のバカ息子です』ってシャツにマジックで書いてやれよ」
「おっけー♪」
「やめろ、やめろよー!」
もがく善夫の肩にかけた卯月の腕を、誰かの手が掴んだ。
そしてーー
「きゃーっ!」
卯月は空中で一回転。何者かに投げ技をキメられたのだ。
「あ、炎野さん!」
スーパーの買い物袋を提げて立っていた炎野を発見して、善夫が嬉しそうに叫んだ。
「いじめはよくないね。まして善夫君は君よりも大分年下じゃないかな? いじめをする自分を鏡で見つめて出直したまえ。美しい女性は心も美しく在るべきだからね」
「なっ何よそれ!? ‥‥あら、いい男♪」
と卯月。
「こいつ!」
春也が殴りかかるが、炎野の人差し指でおでこをピンとはじかれると、しりもちをついてしまった。悠々と善夫を連れて炎野が去る。
「ちっくしょー、なんだあいつ!!」
地団太踏んで立ち上がった春也は携帯電話を取り出し、
「よーしパパに言いつけてやる‥‥もしもしパパ? 僕ね、松尾のチビ息子にいじめられているんだ!」
◆
ある町で、一人の男が雪の積もる町の中で、車を運転していた。単身赴任中の仕事の引き継ぎが終わり、もうすぐ家族の下へ帰れるので嬉しそうに鼻歌を歌っている、松尾松夫(=レナード・濡野(fa4809))。
と、ふいに目つきの悪い男が自転車で前を横切る。
「わーっ!」
必死にハンドルを切った。よけたはずなのに、男がわざと車を追いかけるようにして、体をぶつけてきた。
「どないしてくれんねん、骨折れたやないけ。ちょっと事務所の方へ来てもらおうか」
「ど、どうして警察へ行かないんですか!」
松夫は抗弁したが、腕を捕まれ、男に誰かの別荘らしき大きな屋敷に連れ込まれた。
中にいたのは、サングラスをかけた男だ。
「君は旅館『松尾』の経営者、松尾松夫‥‥そうだね?」
「そうですが、なぜ‥‥」
なぜ知っていると問いかけて気づいた。暗色のスーツを一分の隙もなく着こなしたその男に見覚えがあった。ダバダホテルチェーンの経営者、田端悪夫(=レナード・濡野(fa4809)・二役)だ。
「経営者の不祥事とあっては、松尾旅館も終わりだね」
「‥‥そんな!」
「なら、ここは取引で納めてはどうだろう? こちらが事件を忘れる代わりに、松尾旅館がわがダバダホテルチェーンの傘下に入るというのはどうだね?」
そういうことだったのかと、松夫は唇を噛む。
だが、松夫も気は弱くとも、機転は利いた。松夫はひそかにポケットの中で携帯電話のスイッチを入れ、梨花にすべて会話が筒抜けになるように仕掛けていたのである。
◆
「お父さんが一大事ってどういうこと?」
学校から呼び出されたユキ、善夫‥‥それに炎野を載せて、梨花はワゴン車をすっ飛ばしていた。松夫は巧みに会話を引き伸ばし、「こんな雑木林の中に連れ込んでどうするつもりですか?」等と拉致されている場所を教える台詞を伝えていた。
目的の場所らしい別荘が見えてくると、
「僕が春也君に逆らったせいで、お父さんが困ってるんだよね‥‥僕、どうしたら‥‥」
涙ぐむ善夫の頭を、炎野が撫でた。
「善夫君は自分のプライドを守ったんだ。父親にとってそんなに嬉しいことはないよ」
炎野は梨花達をワゴン車に残し乗り込んでいった。玄関に入るや、
「お前誰や!? ここは一歩も通さんでぇ!!」
と目つきの悪い男が手下を引き連れ出てきた。
「悪いが、手荒なまねはしたくない」
いつの間にか木刀を手にしていた炎野が、構える。と、その木刀を男に向けることなく、ゆっくりと空に弧を描く。吸い寄せられるように見ていた男たちは、コテンと地面に倒れ、眠ってしまった。
「円月殺法‥‥久々に使ったが、なまっていなかったようだね」
炎野は別荘奥へと駆け込んだ。
「何の用だ!? 私はただビジネスの話をしているだけ‥‥」
乗り込んだ炎野を見て、ひきつった顔の田端が立ち上がる。
「私のダーリンを返してもらうよ!」
炎野を追いかけるように乗り込んできた梨花がビシッと言い放った。
「お父さぁん!」
ユキと善夫も駆け込んでくる。しっかりと抱きとめた松夫は、田端を振り返った。
「田端さん。松尾旅館は、ダバダチェーンには入りません。私を訴えるなら、どうぞ好きになさってください」
「な、何!?」
「認めたまえ、貴方の負けだ。‥‥貴方はこんな表情で家族に迎えられたことはないだろうね。ホテルが仮の『家』だとしたら、求められるのはこういう家族的な温かさ‥‥その意味で、ダバダホテルは松尾の足元にも及ばないだろうね」
炎野の言葉に、田端はうなだれた。
松尾家の人々は、疲れ切った松夫を包み込むようにして、家路についた。
家ではやっさんが、暖かいおじやを用意して待っていた。
「みんな、貴方のお陰なんですね。貴方は一体‥‥?」
やっさんの料理の腕は格段に上がっているし、梨花は子供達とごく自然に打ち解けている。おまけに旅館も繁盛しているのを見て、松夫が問いかけた瞬間。
バラバラバラバラ‥‥
上空から、ヘリコプターのプロペラ音らしき響きが近づいてくる。
窓から、
「炎野くん、次の指令だ。‥‥Y市で高校生が自殺未遂、家族関係に悩んでのことらしい。悪いが緊急事態だ」
ヘリコプターから特徴のある声が呼びかける。その声は、テレビでよく聞き知っていた文部科学大臣のものと知って、松尾家の人々は驚愕した。
「炎野さん、貴方って一体‥‥何者なの」
ユキが大きな目をお皿のようにして聞く。
「悩める家族の味方、とだけ、覚えていてほしい。ゆうべ聞かせてもらった君の進路についての悩みだが‥‥いずれ、文部科学省の指導で、学校も変わってゆくはずだ。安心していい」
ユキの学校は進学校で、ユキのように音楽系の芸大を目指す生徒にまで無理やり成績に応じた進路を薦めようとする。それがユキの悩みだった。
「あ‥‥ありがと‥‥」
「あのっ‥‥また会える?」
善夫の涙目にぶつかって、炎野は苦笑したが、善夫としっかりと握手を交わした。
「任務が終わり次第、松尾旅館へ骨休めに来ることにするよ。失礼」
炎野は窓から身を乗り出し、ヘリコプターの降ろす縄梯子をつかむと、慣れているというように縄に体を預けて、窓から離れていった。
「僕、炎野さんみたいな男になるよー! 絶対なるよー!」
善夫の声が夜闇に響く。
縄梯子に体を預けて夜空を駆けながら、炎野はぽつりと呟いた。
「あ。伝言を忘れたな。明日のおやつのプリンは冷蔵庫の三段目に入っていると‥‥」
悩める家族のいるところ、その男は現れるという。
「ピンポーン♪ハウスキーパー派遣会社から参りました、炎野達人と申します」
スーパーの袋と、マイ調理器具、そしてマイ割烹着を片手に。