天使募集中。アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
7.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/07〜11/11
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●本文
舞台劇「天使募集中。」では、ただいまキャストを募集中です。
世の中複雑になり過ぎる上、ひたすら他人を幸せにする仕事なんてキツくてやってらんない! というので天使のなり手? も激減で、慢性人材不足状態の天界。
そこで、ドジな下っ端天使が、スカウトしてきたのが天使志望の小悪魔。
ところが実はその小悪魔、堕天使ルシフェルが送り込んだスパイ。天上界に波乱の予感!? ‥‥そんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?
☆ストーリー☆
天使長ミカエルは、今日もため息をついていた。
「はあ‥‥また一人堕天使になってしまいましたか」
「はい。天使が減る一方、なのに我々が幸せを運ぶべき人間は増える一方、実に嘆かわしい」
と、超がつくカタブツの天使ウリエルが嘆きます。ウリエル様は炎の剣で堕落者を罰することが役職の一つということもあり、厳しいお方なのです。
「大丈夫です。ちゃんと手は打っておりますから」
と、にこにこ笑っているのは、智天使ガブリエル。慈悲を司る、女性の姿の天使です。ちょっと天然ぽい所もありますが、天使達の中でも特に優しい天使様。
「手を打った、と言われますと?」
「有望そうな者を天使見習いとしてスカウトしてくるようにと下級天使達に命じたのです」
と、丁度そこへ飛び込んできたのは、下っ端天使のルルラです。
「ガブリエル様―っ、新人スカウトしてきましたー!」
とルルラが引っ張ってきたのは、黒い小さな翼と尻尾を生やした小悪魔ではありませんか。
驚く皆に、ルルラは一生懸命説明しました。
「この子、優しすぎて悪魔に向いてないって、地獄を追い出されて来たところなんですって。だから、天使の方が向いているんじゃないでしょうか?」
「ふむ‥‥もし、本当にこの子が天使に生まれ変われるなら、格好の手本になりますね。悪魔でも、善行を積めば天使になれるという‥‥この物語が下界に伝われば、人間達にとっても、励みになるのではないでしょうか?」
と、癒しを司る理想家肌の天使のラファエルが進言しました。
ミカエル様は頷きました。
「それもそうですね。‥‥でも言っておきますが、天使の仕事は厳しいですよ」
「覚悟してます! でも他に行き場所がないんです! どんな仕事でもやりますから、ここに置いてください」
小悪魔‥‥キールという名でした‥‥は、ぺこぺこ頭を下げます。
「さしあたっては、天界にやってくる人間の魂を安息の花園に導く下級天使達の仕事を手伝ってもらいましょうか。手伝いとはいえ、大事な仕事ですから気を抜かぬように」
「はい! よろしくお願いします」
小悪魔キールはぺこりと頭を下げました。
◆
その頃、地獄では。
「例の小悪魔は、首尾よく天上界にもぐりこんだようだな」
大悪魔ルシフェルが満足そうな微笑と共に呟いていました。
「しかしルシフェル様。天使不足に乗じて小悪魔を天使志望者に仕立てて送り込むとは、思い切った策をとられたものですな」
「なんであれ、好機は逃さぬのがゲームの勝者の条件だ。‥‥さて、まもなく下界で、一人の人間が息を引き取ろうとしている。人間界では聖女マデリンと呼ばれ、数々の奇跡を行ったそうな。‥‥そういう特別な人間の魂は、天使にとってもだが、我々にとっても大きなパワーの源となる。そのマデリンの魂を、天国からかすめとって来させるのが最終目的なのだ。
では、キールへの連絡を天界の奴らに気づかれぬよう、うまく取るのだぞ」
「ははっ」
幹部悪魔が頷いて、何でも望みのものを映すことのできる「魔鏡」で、子悪魔キールの様子を映し出す。キールはまさに、安息の花園への導き手として働き始めたようだ‥‥
☆募集キャスト☆
●下級天使ルルラ‥‥魂の導き手見習い中。
●小悪魔キール‥‥地獄から追い出されてきたという触れ込みの小悪魔。実はルシフェルのスパイ。
●聖女マデリン(の魂)‥‥人間界で聖女と呼ばれていた善なるパワーの持ち主。人を疑うことを知らない純粋な心の持ち主。
※上記以外のキャストは確定しておりません。自由に考案の上、ご応募下さい。天使や悪魔は基本的に両性具有といわれますが、大天使のうちガブリエルだけは女性形で描かれることが多いようです(ご参考までに)。
●リプレイ本文
ここは雲の上、天上界。四大天使達が今回の異変について話し合っていた。
「しかし驚きましたね〜。小悪魔が天使見習いになるとは‥‥でも最近のことですから、そういった大胆な人事も必要かもしれません。悪魔としての経験も、役に立つ知識となる場合もあるでしょうしね」
と四枚の翼を持つ大天使ミカエル(=都路帆乃香(fa1013))は、むしろ楽しそうだ。真珠のヴェールをかぶったその童顔は、あどけないとすら評されるが、時折妙に老成した表情が過ぎる不思議なキャラだ。
「手放しでは喜べませぬな。何やら裏があるのではないかと思われまする。‥‥不穏な動きがあれば、わが炎の剣もて断ち切りましょう程に」
と、細身の体を白銀の鎧で包んだ断罪の天使ウリエル(=千架(fa4263))。
「ウリエル様のお気持ちももっともですけれど、まずは信じてあげなければ‥‥幼子をいつくしみ育てるのと同じに、信じて愛してあげてこそ善なる心が育つものと、私はキールを信じております」
と、ニコニコしながら金色の髪に薔薇の花冠を戴いた智天使ガブリエル(=葉月 珪(fa4909))。
「ラファエル殿はどう思われます?」
ミカエルは、微笑を浮かべて聞き役に回っている長身のラファエル(=ラリー・タウンゼント(fa3487))に問いかけた。
金の縁取りのある純白のローブをまとったラファエルは静かに答えた。
「今はただ見守りましょう。私はこの『生命の樹』の上から善きことも悪しきことも全てを見守り、彼らが迷ったときに道標を示してあげましょう」
「それがよろしいでしょう。ラファエル、見守りは貴方にお任せします。貴方は癒しの光持つ守護天使の長、悩み迷える者の支えですから‥‥」
ミカエルが告げ、四大天使達は翼をはためかせ、それぞれの持ち場へと戻った‥‥
◆
件の見習い天使キール(=月 李花(fa1105))は聖女マデリン(=エマ・ゴールドウィン(fa3764))の魂を迎えに行くという役目の最中だった。まだ小悪魔らしく黒い翼が残っているが、ミカエルから授けられた小さな光輪を輝かせている。
マデリンは質素な修道院の中で、最期の時を迎えようとしていた。
「まあ‥‥可愛い天使さん達だこと。私をお迎えに来てくれたんですの?」
マデリンの魂は、横たわったその亡骸から抜け出すと、天使達に笑いかける。
「そうそう、こっちだよ」
と、キールがマデリンの魂を引っ張って行こうとしているのは‥‥地界への道だ。
キールと一緒に仕事を果たそうとしている下級天使クロディス(=大海 結(fa0074))がキールをとがめた。
「そっちって方向が違うんだけどどこに行くの? 僕達は、マデリンさんを天界に導かなきゃいけないのに」
「あっごめんごめん、ついいつもの癖で。地獄行きの道の方が慣れてるもんだから〜」
てへっと謝る小悪魔キールを、クロディスはじっと見つめた。
「‥‥ねえ、キール‥‥マデリンはラファエル様の御使いになる最上級の魂の持ち主なんだからね。軽い気持ちで扱っちゃいけないんだよ?」
「いつもの癖ならしょうがないよ、クロディス。キールはまだ新米なんだもの、信じてあげなくちゃ〜」
と、もう一人の下級天使ルルラ(=七瀬七海(fa3599))は言う。その能天気なまでの無邪気さに、クロディスは悩んだ。
「信じたい気持ちは僕にもわかるけど‥‥でもキールの様子を見てると、なんだかそわそわしてて変なんだもん」
やがて天使達に守られて天界に着いたマデリンを、ラファエルが笑顔で迎え入れた。
「その力、私と共に役立てていきましょう、全ての人間のために」
「もったいないことです‥‥でも、また人の役に立てるなら、うれしゅうございます」
マデリンが天使になるべく天国の知識を勉強しに席を外すと、クロディスはラファエルに悩みを打ち明けた。
「キールを信じて上げられない僕は‥‥意地悪なのかな。天使なのに‥‥こんな僕に、天使の資格はあるのかな」
「君は間違ってはいませんよ。君の不安は、役目を大切に思えばこそ‥‥なのですから」
ラファエルに優しく言われて、クロディスはほっとした表情を浮かべた。
「そうなんです。僕だってキールを信じたい‥‥仲間が増えるのは久しぶりだし、嬉しいですから」
「なにせ四大天使の中にすら、始めから疑ってかかっている、もっと腹黒いのもいるんですからね。例えばあのウリ‥‥」
「‥‥呼びましたかラファエル?」
ウリエルが翼をはためかせて近づいてくる。
人間界を見守るのが役目ゆえ、地獄耳らしい。天使に地獄耳というのも変だが‥‥
「いえ、いつもウリエル殿は役目に忠実で実にご立派だと、下級天使に説教していたところです」
と翼をそびやかし、澄ましてラファエルがごまかすのに、クロディスは噴出しそうになるのを必死でこらえた。
「それは恐れ入ります。‥‥何やら『腹黒い』というような言葉が聞こえたように思いましたが、聞き違いでしたか」
呟きながらウリエルがまた翼をはためかせて飛んでゆく。
悪戯っぽい表情を、すぐまた温和な表情に切り替えて、ラファエルはクロディスの髪をくしゃっと撫でた。
「疑うのは仕方のないことだとしても、君達下級天使の仕事は、人々に希望を与えること。‥‥キールがかりそめにであっても、仲間の一人なのであれば、キールにも希望を与えてやってはどうですか?」
「‥‥はい! ラファエル様」
クロディスは反り返りそうなくらい胸を張って、笑顔を取り戻した。
◆
一方、キールはといえば‥‥
「どうやったらマデリンを盗み出せるかなあ」
つい地獄を懐かしむように、下界を見下ろしながら飛んでいた。
下界へと続く薄暗い通路にいつしかキールは来ていた。はっと立ち止まる。通路の果てには、穢れた魂を裁く断罪の間がある。扉がかすかに開き、炎の剣を振るうウリエルの後姿が見えた。
(「天使ってやなヤツだ、ああやって弱い心の持ち主をいじめて、自分達は澄ました顔してさ‥‥」)
キールは思った。が、ふと気配に気づいたらしいウリエルがキールを振り返り、狼狽の色を浮かべた。
「見るな! 来てはならぬ!」
ウリエルが激しい口調で言うが、キールはすでに見てしまっていた。ウリエルの頬に、涙が伝っている。悪しき魂を断罪しながら、ウリエルは涙を流していたのだった。
「泣いてる‥‥?」
「‥‥いくら慈しみ愛を注いでも、全ての魂を善に導くことは出来ぬ‥‥私だとて、虚しくなることぐらいあります! ‥‥貴方の任務とて、下級天使とはいえその責の重さは変わらぬ‥‥心して励みなさい」
乱暴に涙を拭ったウリエルは、もう断罪の天使にふさわしい、冷たい横顔に戻っていた。だが、ウリエルの涙を見たことがキールの心に波紋を広げていた。
(「天使って‥‥泣きながら人間を裁くんだ‥‥もっと絶対的で、もっと容赦なくて、もっと傲慢な存在だと思ってた‥‥」)
地獄では、ルシファー達に天使達がいかに思い上がった存在かを吹き込まれていた。
だが今はキールの心に、ルシファー達への疑念が生じ始めていた。
「キール、そこにいたんだ。心配したよ?」
ルルラとクロディスがキールを見つけて、笑顔になった。
手に小さな蜀台を持っている。
「ガブリエル様から頂いた、希望のともし火さ。これで人間界を照らすんだ」
天使役の三人は、蜀台を手に花道を下り舞台から客席の間を歩き、客達を照らしてゆく。
「この人たちは‥‥恋人同士かな? あなた達に愛の喜びがたくさん訪れますように‥‥」
「こっちは友達同士なんだね。いつまでも友情で結ばれますように」
クロディス達に習って、希望を点すうちに、キールは気づいた。
(「人間を喜ばせるって、結構悪くないな‥‥こっちも楽しくなるし」)
(「何をしている、キール!? お前の役目、忘れたわけではあるまいな」)
キールの体がぴくりと震えた。密かに隠し持っている、魔鏡から、ルシファーの声が聞こえた。
魔鏡を通したルシファーの声は、天使には聞こえない。
キールは、他の天使達が気づかれないように、小声で返事をした。
「ルシファー様、もう少しです。きっとマデリンの魂を持って帰りますから」
(「お前という存在は、私の意志ひとつで消滅するのだ。ゆめ忘れるな‥‥」)
◆
「おや、どうなさったの、可愛いなりたて天使さん?」
思いつめた表情で、天使になるための修行をしているマデリンの元を訪れたキールに、マデリンは笑顔を向けた。キールの黒い翼など、最初から意に介していない彼女は、いつも笑顔だった。
「うるさい! こっちへ来い! ルシファー様への捧げものになるんだ!」
キールは自暴自棄の力をこめて、マデリンの魂を強引にルシファーの魔力を込めた鎖でつなぎ、引っ張った。
「そう‥‥だったの‥‥貴方は始めからそのつもりで‥‥?」
キールの企みを悟ったマデリンが小さく呟く。キールの胸に小さな痛みが走った。
(「でも、でも、マデリンを連れて行かないと消されちゃうんだ!」)
キールは必死で鎖を引いた。‥‥だが、マデリンは抵抗しない。
「ど、どうして!?」
「貴方がとてもつらそうだもの‥‥これもきっと、創造主様の思し召しね。私を地獄へ連れて行きなさい。私ね、辛い目にあうのは怖くないのよ? だって、神様からいただいた小さな力で、人々からも神様からも、たくさんの愛をもらったんだもの‥‥これくらい、その代償だと思わなくちゃねぇ?」
(「人間よ、よい度胸だ。‥‥そうだキール、迷うことはない。このまままっすぐ地獄へつれて来い」)
魔鏡から、ルシファーの声が聞こえる。
だが、キールは鎖を取り落としていた。
「でき‥‥ない」
(「どうしたキール!! マデリンをつれてこぬか!」)
迷うキールの眼前に、ウリエルが舞い降り、炎の剣をキールの心臓につきつけた。
「疑いたくはありませんでしたが‥‥それとなく目を離さずにいたのです。何か、言い逃れはありますか?」
ウリエルの冷たい目には、涙がかすかに光っている‥‥
「キール‥‥これは一体? 貴方一体、何をしようとしていたの!? 何か訳があるのでしょう?」
安息の花園を見回りに来ていたガブリエルが美しい金髪を乱して駆け寄ってくる。
(「臆したかキール‥‥役立たずめ。消滅せよ!!!」)
ルシファーの声がとどろいた。
「お待ちなさい」
冷静な声が、その不吉な響を涼やかに打ち消した。ラファエルだった。
「ずいぶん念の入った目論みでしたね。それを失敗するとは、この小悪魔、ただ消してしまうだけでは、飽き足りないでしょう」
(「何を企んでいる、生命樹の守護天使?」)
「企んでなど。私達とて同様と申し上げたかっただけですよ。まさか小悪魔が四大天使を騙しにかかるとは‥‥ひとつ、この小悪魔にもっと厳しい罰を天界から与えることにしましょう」
(「面白い。では、どのような?」)
「ラファエル様、本気なのですか?」
「キールは、きっとルシファーに脅されて仕方なく‥‥」
クロディスとルルラが悲痛な声をあげる。
ラファエルは青い瞳で彼らを一瞥し、‥‥言い放った。
「この小悪魔、下界でもっとも苦しみ多く報われること少なき存在‥‥人間に生まれ変わらせることにいたしましょう」
◆
時は流れた。
「さあ今日もキールの様子を見て見ることにいたしましょうか。人間界では時の流れが違いますからね、もうだいぶ成長したことでしょう」
ミカエルがいそいそと、雲をかきわけ下界を見ている。
その隣にはウリエルとラファエルもいる。だがラファエルの右腕として働く天使となっているはずの聖女マデリンはいない。
それもそのはず、マデリンは人間界にいる。人間に希望を与えてまわる最下級の天使となって、生まれ変わったキールの傍にいるのである。
今のキールには、マデリンの姿を見ることはできないが、マデリンはそれでも満足そうだ。
「さすがのラファエル様にも、そこまでは計算できなかったということですか?」
相変わらずウリエルの美しい顔は冷やかだ。だが、その口調には、若干からかうような響きが無いでもない。
「もったいないとさんざん引き止めたのですが‥‥彼女ほどの磨かれし魂が、あんな下級天使の仕事を買って出るとは」
ラファエルはため息まじりに人間界を見下ろす。
人間界ではキールの生まれ変わりたる少女が、なんとか人の役に立とうと悪戦苦闘しているのだ。
病人の世話をする仕事についており、頑張ってはいるものの、病人に運ぶスープをこぼすわ、車椅子を押していて自分がすっ転ぶわ、見ていてハラハラするほどだ。
また失敗しちゃったよ〜とキールが落ち込むたびに、マデリンがそっと希望の火を点してやる。
(「いいのよ‥‥大丈夫。貴方の優しさは伝わるわ」)
そのたびにキールは立ち直り‥‥しかしまたドジをする。
「相変わらずドジだなあ、キールってば」
クロディスがくすくす笑っている。
「でもあれぐらい修行を積めば、今度は本当に天使になれるかもしれませんねぇ。‥‥って、あら? ラファエル殿はもしかしたらそこまで計算して、キールを人間に‥‥?」
ミカエルがおっとり呟く。
「コホン‥‥最近の人間界はホコリっぽいですね」
ととぼけているラファエル。実はラファエル、キールを下界にやるとき、少しだけ自分の癒しの力を分け与えてやったのだ。より善き方にキールの心が向くようにと‥‥
と、ガブリエルが飛んで来て告げる。
「みなさーん、下界でまた戦争が始まりそうですよ、希望のともし火作業強化致しましょう!」
「はーい!」
クロディス達が慌てて飛んでゆく。
かくも忙しい天上界、まだまだ天使募集中―――