人工アニキアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 4Lv以上
獣人 4Lv以上
難度 やや易
報酬 15.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/03〜12/07

●本文

 TOMI TVがお送りするドラマ「人工アニキ」では、ただいまキャストを募集中です。
 悪の組織にその知識を狙われ、あげく殺された天才青年。しかし青年は自らの研究の最後の秘密を、妹の潜在意識に封印していた。そして妹を守るため、自分そっくりのアンドロイドを妹に遺品として残していた。だがこのアンドロイド、あまりにも兄そっくりな故に妹と喧嘩ばかり。果たして妹を守りきれるのかーーそんなストーリーに、貴方も参加して見ませんか?

☆ストーリー☆
 IQ200の天才青年、如月譲(きさらぎ・じょう)が突然の交通事故で死亡してしまった。
 両親は早世し、残された家族は妹の凛(りん)だけ。しかも凛は、兄にまったく似ていないと評判の劣等生。譲の死をいたむ声にも、今までさんざん兄と比較され、傷つけられてきただけに、凛は素直になれずにいた。
「どーせあたしはアニキみたく天才じゃないわよ☆」
 しかし、譲の遺品を整理していた凛は、譲のメッセージを発見する。
「凛へ。お前がこれを読んだということは、もう僕はこの世にはいないだろう。今だから真実を打ち明けておく。僕の研究は「ザ・ショップ」という組織に狙われている。奴らは僕を殺し、研究成果を悪用するつもりなのだ。そして僕が死んだら、次に奴らはお前を狙うだろう。なぜなら、お前は本当は僕以上の天才だからだ‥‥」
 譲のメッセージによれば、同じく天才科学者だった譲と凛の両親は、凛のあまりに傑出した才能を危惧し、凛に深層催眠をかけ、本来の知性を封印したという。そのパスワードは、凛が自ら思い出し口にしなければならないとも。
「お前の記憶が戻る日まで、僕の代わりにお前を守ってくれるアンドロイドを作った。僕の所属していた研究所のロッカーにそいつを隠してあるから、これを読んだら急いで取りに行ってくれ。これはそのロッカーの鍵だ」
「‥‥えっ、兄貴そっくりのアンドロイド?(やな予感)」
 そして凛の目の前に、譲にそっくりなアンドロイド「ジョー2号」が出現!
 生前の譲そのままの顔、体つき、そして‥‥眼鏡!
「キャーッ、あ、兄貴!?」
 ジョー2号は、フッと冷笑を浮かべ、眼鏡の位置を直す。‥‥亡き兄そっくりの仕草で。
「なんだその猿みたいな悲鳴は。相変わらずモテ属性から遠いヤツだなあ」
「‥‥その人を馬鹿にした言い方まで、生前の兄貴そっくりかよ!!(怒)」
 あまりにも生前の譲そっくりなキャラのジョー2号に、譲に対するように反発してしまう凛。
 だが、そんな凛を狙う悪の組織「ザ・ショップ」が、刺客を送りこみ‥‥!?

☆募集キャスト☆
●如月凛‥‥天才の兄貴を持つフツーの女の子として劣等感多い日々を過ごしてきた。実は兄以上の天才だが、その計り知れない才能は、両親にかけられた深層催眠によって封印されている。

●如月譲(ジョー2号役と2役になります)‥‥ロボット工学・知能早世工学に特に優れた天才青年。口は悪く、妹である凛とは常に喧嘩ばかりしていた。高い知性ゆえにきつい言い方もするが本当は誰よりも家族思い。
●ジョー2号‥‥如月譲が作り上げた、譲そっくりのアンドロイド。凛を守るため、戦闘能力を有し、体の各部分に武器やセンサーを内蔵している。譲と同じ形の眼鏡をかけているが、この眼鏡が武器発動のスイッチになっているらしい(ハートのチョーカーで変身したりはしません)。性格も譲そっくりで凛をからかうのが趣味。


※上記以外のキャストは確定しておりません。凛のボーイフレンドや組織の刺客・幹部等、自由に考案の上、ご応募下さい。
※凛&ジョー2号の口調はOPに準じなくてもOKです。

●今回の参加者

 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa4579 (22歳・♀・豹)
 fa4941 メルクサラート(24歳・♀・鷹)
 fa5072 進藤・悠希(14歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●トラブルあにき
「凛ちゃ〜ん学校行こう」
 友人弥生のどか(=雨宮慶(fa3658))ののんびりした声が、いつもと変わりなく凛を学校へ誘いに来る。
「あ‥‥はいはいっ。ちょっ、なにしてんのよこのポンコツアンドロイド!」
 急いで制服のブレザーのボタンをはめ、靴を履こうとした如月凛(=楊・玲花(fa0642)
)は、一足お先に靴を履いているジョー2号(=椿(fa2495))につまづきかけた。
「その口の利き方はなんだ、可愛い妹を学校まで送ってやろうというこの優しい兄に向かって」
 口調も、赤みがかった長い髪を無造作に束ねているのも生前の譲そのままだ。
 のどかが言い争う声に心配して、玄関を覗き込み、ジョー2号を発見して驚いた。
「あれ〜? 交通事故で重傷って聞きましたけど、もう治ったんですか〜? ‥‥ってあれ? こないだお葬式も出てたような‥‥」
「ちっ違うの、親戚、親戚! そう、アニキにそっくりの従兄。し、心配して来てくれたのよ、オホホホ」
 必死にごまかす凛。
「あらあら良かったです〜、凛ちゃんドジだから一人暮らし無理かなーって心配してたから」
「‥‥ふっ。お前のドジっぷりはどうやら公認らしいな」
「‥‥このポンコツアンドロイド‥‥っ、この一件が片付いたら燃えないゴミの日にまとめて出してやる‥‥」
 そんな黒いオーラを吹き上げている凛の気持ちを知ってか知らずか‥‥多分知ってて面白がっている気配はあるが‥‥凛の影法師のようにくっついて歩く。
「もう少し離れて歩いてっ」
 凛は、後ろからぴったりついてくるジョー2号を睨み付けた。
「いいのか? 離れて歩くとスカートの裾がほつれているのが他人に見られるが」
「‥‥っっもっと早く教えなさいよっ!!」
 凛はカバンから出した安全ピンでほつれを直しつつ、真っ赤な顔で睨み付ける。
「まさか教室まではついてこないでしょうね」
「もちろん、校門前で待機する。‥‥たださえ集中力のないお前のことだ、授業にならんだろうからな。それにこの眼鏡には方位センサーが仕込んであってお前の居場所は常に追いかけられる。ついでにパッシブソナー機能も兼ねていてお前の声紋パターンを登録してあるから何を喋ってるかも丸分かりだ。誰かに告白したりとか僕の悪口とかも全部」
「キャーッ!! なんでそんな機能ついてるのよ、この変態アンドロイド〜〜!!」
 凛はカバンでジョー2号を殴りつけるが、もちろんジョーはひょいとかわす。 
「凛ちゃ〜ん、風紀委員が校門閉めちゃいますよ〜」 
 先に入っていくのどかが呼んでいる。
 まったくもぅ〜と凛はにっこり手を振るジョー2号をにらみつけ、教室に入った。
 ‥‥でも。
 あの、いつも凛を小馬鹿にしてた譲が、死に臨んでここまで周到に凛を守る用意をしていたのかと思うと、凛の心も少し痛んだ。
 なんだかんだ言って、兄妹って繋がっているんだと思う。凛も兄貴に喧嘩をふっかけながら、どこかで慕っていた気もする。 
(「この眼鏡だって、兄貴が選んでくれたんだっけ。センス違うけど断れなくて‥‥」)
 かけている流行おくれの黒縁眼鏡を、凛は指で触れて見る。
「転校生を紹介する」
 担任教師の言葉に、はっと凛は我に返った。
「滝和美(=長澤 巳緒(fa3280))です。よろしくおねがいしまーす」 
 ヘアバンドで束ねた髪から覗くおでこが印象的な娘である。和美は凛の後ろの席に座ることになった。
「和美でいいよ、よろしくね」 
 和美は凛に笑いかけ、互いに眼鏡同士の視線でにっこり笑う。
「学食は何が美味しいの?」「生物のテキスト見せてくれる?」
 和美は天真爛漫に凛に色々話しかけ、瞬く間に二人の眼鏡っ娘は仲良くなった。
 そして放課後。校門に待ち受けているジョー2号の姿にげっそりしながらも帰宅しようとする凛。
「凛ちゃ〜ん。一緒に帰ろう〜」
 和美が追いかけてくる。今日が初対面なのにずいぶんフレンドリーな娘だ。
「やあ、僕はジョー‥‥」
「違う違う、親戚のお兄さんでしょっ!」
 自己紹介しかけるジョー2号を、凛が睨み付ける。
「わあ素敵なお兄さん〜。こちらこそよろしく☆」とにっこりする和美だが‥‥。
 実はその眼鏡の下の瞳は、ジョー2号を冷徹に観察していた。 
(「如月譲? ザ・ショップのハッキング記録によれば死亡した筈じゃ‥‥コイツは一体」)
「お願いなんだけどー、日本史のノート見せてくれない? できたら凛ちゃんのおうちで☆」
「いいのか? こいつのノートは象形文字並に判読困難‥‥ふぐっ」 
 にっこり言いかけるジョー2号の脾腹に、凛の肘打ちがめり込んだ。アンドロイド故痛みはなかろうが、腹部の動力源を直撃されたようだ。
「じゃいこっか和美ちゃん」
 何気なく歩き出した凛を、あまりにもさりげないジョー2号の声が引きとめた。
「気づいてないのか、凛」
 あまりにもさりげなく、ジョー2号が言う。
「はへ?」
 凛は立ち止まる。
「後ろだ!!!」
 その凛を、ジョー2号が突き飛ばした。「何すんのよっ(爆怒)」凛が叫びかけた時‥‥
 ひゅん! と凛の頬を鞭が掠めた。
「おーっほほほ、感心なお兄様だこと。もう少し若かったらタイプだったのに」
 と高笑いの主は、凛たちの学校の保険医メル・クライフ(=メルクサラート(fa4941)
)。
「離れてっ、凛! 国際指名手配中の殺し屋よ」 
 まだ事態が把握できずにきょとんとしている凛に和美が言い、スカートの裾をまくりあげレッグホルスターに入っていた拳銃を抜く。
「凛ちゃん、心配しないでね。あたし味方だから‥‥貴方を守るためにインターポールから派遣された捜査官なの」
 その言葉を裏付けるように、和美はただ一発でメル・クライフの膝を撃ち抜いた。命を奪わず戦闘不能にする技術から見て相当な射撃技術だ。
「通報しておいたから、まもなく地元の警察官が迎えに来るわ。‥‥今のうちに行きましょ、凛ちゃん、お兄さん」
 メルを校門に手錠でつないで和美は、油断無く眼を配りながら二人を促した。
 
●迫り来る影!?
 如月家に戻った凛とジョー2号は、和美から、ザ・ショップがアンドロイド兵士を大量生産しそれを使って世界支配を目論んでいること、それ故組織は国際警察機構の天敵でもあるのだと聞かされた。
「つまり、私達とあなた達の共通の敵ってわけね。奴らが狙うのは如月譲が開発した自己学習型神経網‥‥人間の脳と同じく、自ら知識を吸収して成長する人工知能なの。でもいかな天才の彼も、人間で言うところの『連想』に当たる双方向同期システムの完成には至らなかった‥‥少なくとも生前には」
 連想システムがあれば人工知能の成長は飛躍的に高まる。譲はおそらくその秘密を凛の深層意識に封印したのだろうと和美は言った。
「凛ちゃん。奴らの先手を打って、その秘密を私達インターポールに保護させてもらえないかしら」
「そんなこと言われても‥‥思い出せないんだもの。ねえ、ジョー2号。手っ取り早くパスワード教えてくれないの?」
 凛は途方にくれた顔をジョー2号に向ける。
「僕が言ってしまったら、秘密にならんだろうが、愚か者め。小学校からやり直すか?」
「‥‥(グサッ)ポンコツの癖に生意気なっ‥‥!」
「第一、ザ・ショップがアンドロイド開発技術を悪用したら‥‥そんなこと『オリジナル・譲』‥‥つまり、死んだお前の兄が望むと思うか?」
 ジョー2号に問われ、凛は横に首を振った。兄が人工知能開発にのめりこんだのは、両親を亡くした悲しみからだったと凛は思う。亡き両親が帰ってくる夢を科学の研究で叶えたかったのだろう。
 ガガガガッ!
 突然、三人がいる部屋の窓をこじ開ける音が響いた。
「めがね大嫌いスナイパーゆっきー参上! ジョー2号かくご〜☆」
 ガシャーンと大窓を体当たりで破りつつ、工作員ゆっきー(=進藤・悠希(fa5072)
)が飛び込んできた。ジョー2号の首を締め上げて、
「ゆっきーデス☆ 締め殺し! ほ〜ら、連想システムの秘密教えないと、お兄さんの首へし折っちゃうぞ〜」
「そううまくいくかな?」
 ジョー2号の声は変わらず冷静だ。ひらりとジョー2号の体が反転し、見事な背負い投げで叩きつけられるゆっきー。
「くぅ、眼鏡男子め」
「茶番は終わりだ」
 黒い影が、マントをなびかせ窓からひらりと現れた。
「何者!?」
 和美が銃を構えようとしたがーー
「ザ・ショップ指揮官、ギアス(=神楽坂 紫翠(fa1420))、お見知りおきを願おう。‥‥ついでに銃は捨てろ。凛がどうなってもいいのか?」
 一瞬の隙をついて、ギアスは凛を羽交い絞めにし銃を突きつけていた。
「この娘を連れ帰り、拷問して連想システムの秘密を聞き出すのも一興かもしれんな」
 薄い笑いが、ギアスの唇を歪めた。
「そいつはやめておけ。いいことを教えてやろう。連想システムの件は、如月譲のハッタリだ」
「‥‥何?」
 ギアスが眉をひそめた。
「それに、アンドロイド兵士を造るなら、むしろ僕の体の方が貴様ら組織には興味深いだろう。役立たずの妹は置いといて、僕を連れ帰ってはどうだ?」
「お兄‥‥ジョー2号!?」
 凛が思わず呟いた。凛は直感していた。ジョー2号は憎まれ口をききながら、凛を守ろうとしてくれているのだと。だがジョー2号の言い分に敵が従えば、凛はもう一度兄を失うことになるのだ。
「ぴんぽーん」
 時ならぬチャイムが沈黙を破った。如月宅の向かいに住む汐咲潤(=檀(fa4579))が天真爛漫な笑顔とともに玄関から乱入した。
「お邪魔しまーす。凛ちゃん、おかず持って来‥‥あら? ‥‥あらら、譲さんが‥‥えいえい」
 潤、ジョー2号のほっぺたをぷにぷにする
「幽霊じゃありません。よく似た親戚のお兄さんだそうです。貴女の記憶に間違いはないので今日のところはお引取り願いたく。現在取込み中ですので」
 とジョー2号(「だそうです」って何だ)。
「あらそうなの。やっぱり譲さんが亡くなったの夢じゃないのね〜不思議だわ〜あ、これお裾分け。ちょっと量多いかしらと思ったんだけどこんなにお友達がいらしてるんなら大丈夫よね」
 羽交い絞めにして銃をつきつけてる人間のどこが「お友達」に見えるのか、とツッコむスキもなく、にっこり笑って去ってゆく。
「なんだ今のは」とギアス。
「いわゆるひとつのご近所付き合いだ」
 なんだかどこまでも冷静なジョー2号。
「‥‥本当に、知らないんだろうな」
 ギアスが銃口をぐりりと凛の喉に押し付ける。
「知らないものは知らないのっ。たとえ知ってても、敵になんか教えてやるもんか‥‥お兄ちゃんの夢を、人殺しの兵器作りに悪用させたりなんかしない! お兄ちゃんの夢はあたしが守る!!」
 凛が叩きつけるように叫んだ。
 ジョー2号の冷静な横顔に、ほんのり微笑が浮かんだように見えた。それは凛の錯覚だったかもしれないが。
「というわけだ。不肖の妹には手を出さないでもらおう。その代わり、いいものをやる。僕の設計図を記録したMOだ」
「それはありがたい。いただこう。‥‥だが、同じレベルのアンドロイドを複製できるなら、原型は不要だな」
 ギアスは、薄笑いのまま銃をジョー2号の心臓部に照準し、引き金を引いた。
 パア‥‥ン!
 ジョー2号がゆっくりと膝をつき、倒れる。
 正確には「死」ではない。機能停止である。エネルギー供給源たる小型原子炉を撃ち抜かれたのだから。だが、凛にとってはそれはそのまま、「兄」の「死」であった。
「お兄ちゃん!!!」

 「ザ・ショップ」本部に帰還したギアスはMOをコンピュータにセットした。
「これが設計図だ‥‥ん!? な、なんじゃこりゃー!!」
 部下達に説明しつつクールな面持ちで起動画面を覗き込み‥‥故某名優のごとき叫びを上げていた。そこには、ギアスが「ふんどし」いっちょで「どじょうすくい」を踊り、やんやの喝采を浴びる姿が映っていた。
「きょ、去年の忘年会の秘蔵写真をなぜヤツが!? ちっちがう、これは何かの陰謀だ!」
 ギアスは画面にへばりついて部下の生あったかい視線をガードした。
「眼鏡って‥‥やっぱちょっといいかも‥‥(ポッ)」
 あられもないギアスの写真を盗み見たゆっきーが密かに呟いた。

 そこは生前の譲の職場でもあった、研究室。白衣を着た凛が、優しい目で手術台を見下ろしている。
 ジョー2号がそこに横たわり、やがて眼を開き、半身を起こした。
「お前が直してくれたのか?」
 ジョー2号は手足を軽く動かして見る。凛はつんとそっぽを向いて、
「感謝してよね。ったくもう、父さんも母さんも恨むわよ。よりにもよって、あんな恥ずかしいセリフをパスワードに設定するなんて!」
 ザ・ショップ襲撃の最中に、凛はパスワードを思い出したのだった。今や、凛は知能創生工学のエキスパートである。機能停止したジョー2号を救う為に、凛はパスワードを唱えて自らの封印された知識を解放し、ジョー2号を完璧に再生させた。
「で、僕をこれからどうするつもりだ?」
「仕方がないから、側に置いておいてあげるよ。さすがに兄貴と同じ顔したの放っておくのも目覚めが悪いしね。その代わり、きちんと働きなさいよ! これからあたし、研究ですっごい忙しいんだからっ」
「そういうお前が今あるのは、僕のお陰だということを忘れるな」
「むきーっ! お黙りポンコツアンドロイド!」
 凛がもう二度とパスワードを口にすることはないだろう。だが、天国にいる譲には聞こえているに違いない。
 パスワードは、いつまでも凛の心の中にこだましているのだから‥‥いわく、
『お兄ちゃん(はぁと) だ〜い好き!(はぁと)』