放課後魔女倶楽部アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 易しい
報酬 2.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/17〜03/21

●本文

 20XX年。
 人類の「精神」の持つパワー解明が進み、「魔法」が科学の一領域として認められるようになった。
 そして、そんな世界では、科学者に憧れロケットを飛ばしたいと夢見る少年少女がいるのと同じくらい、魔法使いにあこがれてホウキに乗り星空を飛び回りたいと願う少年少女もいる。
 学校の「科学部」と同じように、「魔法部」がある。
 この物語は、そんな「魔法部」のひとつで、未来の魔法使いを夢見る若者達が巻き起こす出来事である‥‥

 聖アグリッパ学園・魔法部。
「やったー☆ ついにでけたで〜!」
 思いっきり関西弁で叫ぶ一人の魔法少女。少女の名前は「岩里モイラ」(いわさと・――=fz1043泉本れいら)。
 かなりのドジで、魔法部の中では落ちこぼれ気味。
 全国の学園の魔法部員が、マジックアイテムを練成しその機能を競い合う「ウィッチコンテスト」がまもなく開かれる。
 聖アグリッパの、伝統ある魔法部ももちろん全員出場予定だが、一番不器用なモイラは出遅れていて、今日がコンテストの2日前。
 他の部員達は、とっくに自分のマジックアイテムを完成しているというのに。
 しかも、モイラのマジックアイテムというのが。
「じゃーん! 魔法の下駄♪」
「‥‥はい?」
 魔法以前にそのセンスはなんだと言いたげな友達に、モイラは得意げに出来たばかりのマジックアイテムを見せた。
 下駄だ。
 こともあろうに、ヒョウ柄の鼻緒をつけた下駄。どういうセンスだ。
「これな。こーやって足にはいて投げたら、お天気が変わるねん♪ あーした天気になーれっ!」
 早速モイラは、ぽーんと足に履いた下駄を放り投げた。
「あっ、しもた」
 下駄は、ガッシャーン☆と窓を割り破って飛び出し、校庭に落下した。
 しかも下駄は裏向けにひっくり返っている。
 ザザザザーッ!
 早速魔法効果により、大雨が降ってきた。
「あーもう、何やってんのよモイラってば〜☆」
「ごっめーん、今拾って来てもう一回やり直し‥‥あれっ?」
 下駄を取りに行こうとしたモイラとその友達達は、顧問のロゼッタ先生の、
「お待ちなさい!」
 という鋭い声に止められた。
 ロゼッタ先生が指差す方を見ると、いつのまに現れたのか、黒いマント姿の少年が、魔法の下駄を手にしてこちらを睨みつけている。
「それはうちの生徒のものです。お返しなさい!」
 ロゼッタ先生は毅然と言ったが、少年はふふんと笑った。
「ふん、返せないね」
「何言うてんねん、それモイラが作ったんやから! マジックコンテストに出す大切なものやねんから返して!」
「マジックコンテスト? そんなもの‥‥めちゃくちゃにしてやるよ」
 少年はモイラに向けた手のひらから、紫色の雷光を放つ。
 思わず生徒達をかばったロゼッタ先生が、視線を校庭に戻すと、少年の姿は消えていた。
「くぅっ、腹立つーっ! どこ行ったんや、あいつーっ!」
 少年の行方を追いかけようとするモイラに、ロゼッタ先生は静かに告げた。
「あの少年‥‥危険です。黒魔術使いに堕ちようとしている気配が感じられました」
 その言葉に、部員達は息を呑んだ。
 黒魔術使い。
 それは、憎しみや悲しみといった精神の暗い部分をエネルギー転化する魔法使いである。魔法の用途は主に、呪いや災害といった、悪の方向に向く。
「なんで‥‥黒魔術使いがモイラちゃんのマジックアイテムを」
「もしかしたらあの下駄を改造して、嵐などの災害を発生させる気かもしれませんね」
 ロゼッタ先生は困った表情だ。
「そんな‥‥せっかくモイラちゃんが完成したマジックアイテムを悪用するなんて‥‥!」
「あの少年、マジックコンテストに恨みを持っているようですね。マジックコンテストで数年前、大事故が起きたことはありますが、もしかしたら‥‥」
 ロゼッタ先生は口をつぐむ。
 しょげ返っているモイラを、部員達が慰める。
「モイラ、元気出しなよ。あたし達、モイラが魔法の下駄取り戻すの、手伝ってあげる!」
「聖アグリッパ魔法部の実力見せてやろうぜ!」
「皆さん、お友達を助けるために魔法を使うのは良いことです‥‥しかし、今回はとても危険です。私も手伝いましょう。でもくれぐれも、危険を招くようなことはしないこと。約束できますね?」
 ロゼッタ先生は念を押す。
「はいっ!」
 魔法部員達はそれぞれのマジックアイテムをぎゅっと胸に抱く。

 今、魔法部員達の冒険が始まる。

☆募集キャスト☆
●ロゼッタ先生‥‥魔法部顧問。優れた白魔法の使い手で、魔法部員達の憧れの存在
●聖アグリッパ学園・魔法部の部員達‥‥魔法部は代々コンテストで多数優勝者を出している伝統がある。部員達もレベルの高い者が多い
●黒魔術の少年‥‥マジックコンテストに恨みを持っているらしい謎の少年

  
 ※「岩里モイラ」役はNPC泉本れいらが演じます。主役ではなく狂言回し的な役どころです。ちなみにモイラのマジックアイテムは、「魔法の下駄」。効果は、「投げて落下した時の状態でお天気を変えることが出来る。逆さま‥‥雨または雪、横倒し‥‥曇り、正面‥‥晴れ」 です。
 ※ロゼッタ先生、魔法部員、黒魔術の少年役は、いずれもひとつオリジナルのマジックアイテムと、空飛ぶほうきが使えます。
 マジックアイテムと、それにより使える魔法をひとつだけ指定してください。書いたら何でも実現するノートとか、万能タイプは駄目です。

 
(例)アイテム‥‥銀のパチンコ
魔法‥‥命中した相手を一定時間眠らせることが出来る
     

 ※聖アグリッパ学園は、男女共学です。中高大一貫教育制度を採っており、魔法部員は中から大まで同じ部室と顧問の先生を共有しています。
 
※上記以外のキャストは確定しておりません。自由に考案の上、ご応募下さい。

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1465 椎葉・千万里(14歳・♀・リス)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa3742 倉橋 羊(15歳・♂・ハムスター)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)
 fa5442 瑛椰 翼(17歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●弾丸娘が飛び出した!?
 聖アグリッパ学園・魔法部。
 岩里モイラ(=泉本れいら)のアイテムが奪われ、少女のように可愛くて優しいロゼッタ先生(=夏姫・シュトラウス(fa0761))も、さすがに怒っていた。
「何の恨みがあるのかわかりませんが、あの少年のしたことはいけないことですね」
 口調は優しいが、手にした黒板消しがバキィ! と砕け散り、見ていた生徒達は恐怖に震える。ロゼッタ先生は、実は怒るとハンパじゃなく怖いという噂。
「ほな、ロゼッタ先生のお許し出たことやし、行きましょー! モイラちゃんの努力の結晶を! 許されへんわ!」
 ぴゅうーっ! とホウキに乗って、窓から先頭切って飛び出す弾丸娘はモイラの同級生・チマリ・シーヴァ(=椎葉・千万里(fa1465))。
「ちょっと待ちぃー! あいつがどこの誰か、わかってへんやん!」
「‥‥あ、そうだった」
 モイラに呼び止められ、てへっと笑って戻ってくるチマリ。モイラは、キラリと瞳を光らせて、魔法部一のヘタレ少年・巳蔵ヨウ(=倉橋 羊(fa3742))をビシィ! と指差した。
「あんた、あの黒魔術野郎の素性、サラサ先生に聞いて来てや!」
「ええっ、ぼ、ぼぼ、ぼくぅぅぅ!?」
 ビン底眼鏡に寝癖ヘア、といまどき珍しい位イケてないヨウは素っ頓狂な声を上げる。
「だ、だってあの先生、苦手で‥‥何かおなかの中まで見られそうでえええ」
「ん〜? 断るんか? ‥‥道頓堀川の水はまだまだ冷たいでぇ?」
「ひゃうぅぅぅ〜! セメント詰めで道頓堀に沈めるのだけは勘弁してぇぇぇ!」
 結局‥‥
 錬金術学の教師で情報通のサラサ・セラ(=都路帆乃香(fa1013))に頼んで、黒魔術少年の素性を調べるよう頼む役目を押し付けられたヨウであった。
 少年の現れた時の様子と下駄が奪われたことを話すと、黒いローブをまとったサラサは眼鏡をきらりと光らせて言った。
「そう‥‥そんなことが‥‥興味深い‥‥で‥‥その少年‥‥どんな風に呪い殺せばいいのでしょう?」 
 きらりと眼鏡を光らせて、黒いローブに身を包んだサラサが微笑する。
「ちっ、違っ、違います〜っ! 名前と居場所を調べて欲しいだけなんですぅぅぅ」
「あら‥‥今の、シャレ‥‥です」
 シャレも言う人によってはシャレにならないんですうぅっ! と叫びたいヨウだったが、命が惜しいのでやめておいた。サラサが自らのマジックアイテム「レスノート」を取り出して、ヨウから聞いた黒魔術少年の特徴を記していくと、いわば似顔絵捜査の魔法版で、次のページに少年の名前と居場所などが現れる。
 クロウリー学園高等部2年、霧島エン(=瑛椰 翼(fa5442))がその名だった。
「クロウリー学園ってか‥‥むむ〜」
 モイラは難しい顔をする。クロウリー学園はアグリッパ学園に並ぶ魔法の名門学園だが、噂によれば政財界にまで影響を及ぼす黒魔術師の大物が牛耳っているとかで、アグリッパの生徒達はなんとなく敬遠ムードだ。
「ビビッてる場合やあれへん、モイラちゃん! 私らがついてるし」
 弾丸娘チマリが励ます。
「せやな、いざとなったらヨウ君身代わりにしたらええんやし」
「そうそう、ぼくが犠牲に‥‥って、なんでぇぇ!?」
「ケイも協力します」
 にっこりと言う、小柄で華奢な中等部二年のケイ・レインキャッスル(=雨宮慶(fa3658))の言葉に、魔法部員達はどきり。
「ケイ‥‥それってもしかして、キミのアイテムを使うってこと?」
「「そっのとーりー!」」
 ブンブンとケイが振り回すそれは、彼女の魔法アイテム「根性注入バット」。これで殴られると、殴られた力の分だけ対象の能力が向上するという凶器‥‥じゃなかった魔法アイテムだ。
「待っていたぜこの時を!」
 どかっ!
「うきゃ!」
 モイラの悲鳴が響く。
 お尻いったいわーと愚痴りながらもホウキに乗ってクロウリー学園に飛び立とうとするモイラに、ヨウが念を押している。
「あんまり手荒なのは好みじゃないんだけどなー‥‥痛いのやだなー‥‥ねぇ、最初から喧嘩なんかしないよね? 説得するんだよね?」
「ええから早よ乗り!」
 襟髪掴んでホウキに乗せられたヨウだが、乗ると口調が一変。
「ぃよぉっしゃあぁ! お礼参りレッツゴー!」
 実は彼、ホウキに乗れば人格転換するスピード野郎であった。
「アグリッパーアグリッパー顎立派―」
 呪文を唱え、飛び立っていく魔法部員達を見送りながら、一人ぽつりと部室に残る女性がいた。
 大学院生で、最上級生魔法部員の角倉・ユキレ(=角倉・雪恋(fa5003))。いつもマスクをしていて、極端に無口なので、魔法部の中でも謎めいた存在だ。
「もしかして、あの時の誤解が‥‥」
 ユキレが低い声でぽつりと呟いた。
 
● GOGOホウキ
 エンはクロウリー学園の校舎屋上で、赤い髪を風になびかせながら一人魔法書を読んでいた。
(「アニキの仇は、必ず討ってやるからな」)
 改造したばかりの魔法の下駄と、自ら練成した魔法アイテム「展開魔鏡」を手に呟く。
 と、その時、突然ひゅうっと風が吹いた。見上げたエンの目に飛び込んできたのは、ホウキにまたがったチマリ‥‥のスカートの中。
「はうっ!? 良かった〜スカートの下、ドロワーズで完全防備してきて」
 水色のライン入り紺のブレザー、アグリッパ学園の制服を見て、エンがさっと自らもホウキにまたがって飛んで逃げつつ、
「ちっ、どうせゴスロリならメイド服にでもしろってんだ!」
「やかましぃわ! 関西の常識にただ見はないっ!」
 ヒョオォォッと嵐のようにホウキに乗って飛び、エンを追いかけるチマリに、エンは「やだね」とせせら笑う。魔法の下駄をぽいと手の中で投げ、裏向ける。途端に魔法効果で強風が吹き荒れる。
「えぇーい、根性―!」
 強風をぶっちぎり進むチマリだが、エンはふん、と鼻で笑ってさらに下駄を投げた。
 途端に雪が降り視界が遮られる。
「何すんねーん!」
 とモイラが怒りつつ目をこすった隙に、エンが展開魔鏡をさっと彼女にかざす。
 ん? と見上げたモイラは、鏡の中に吸い込まれ、閉じ込められた。
【きゃーっ! ここどこー?】
「なんてことを‥‥待ちぃや!」
 憤然と追いかけるチマリに、笑って鏡をちらつかせるエン。
「ふーん、鏡落としちゃうよ? いいの? そのモイラっての見捨てるわけ? ハクジョー」
 だがその時、ひゅうっと風を切って、
「天候いじったくらいでこのぼくを落とそうなんて、百年早ーい!!」
 ヨウがまっすぐに飛んでくる。チッ、と舌打ちして、校舎とフェンスの狭い隙間を飛びぬけるエンだが、ヨウはくるりと反転して逆さ飛びで見事に追いすがる。
 エンが急降下してプールの水面すれすれに飛ぶ。ヨウは同じくらいすれすれに飛びながら、スピードを上げてエンの眼前に回りこんだ。
「マイ箒『小撤3号』は無敵いぃぃっ!」
 ふぁさっとマジックアイテムのマントをエンに投げかけて。ヨウのアイテム「ナイトマント」は、かぶせられると視界が夜のように暗くなってしまう効果がある。
「わっ、な、何すんだよー!」
「皆さんやっちゃってくださーい!」
 ヨウの呼びかけに、バット片手のケイが、じりじりと迫る。
「さあ、レインキャッスル家に代々受け継がれてきた神風特攻バッティング、受けてもらおうか‥‥!!」
「うわあああ!」 

「さあ、話してもらおかっ。マジックコンテストをぶち壊そうとした理由」
 鏡から出してもらい、下駄も取り戻したモイラが、セメント袋片手に迫ると、‥‥その横には、相変わらずバット片手のケイ‥‥エンはやっとしぶしぶ語り始めた。
 六年前、マジックコンテストで、二人の生徒が対峙した。聖アグリッパ学園の女子生徒と、クロウリー学園の男子生徒‥‥エンの兄。二人の実力はほぼ互角で、コンテストは実質二人の優勝争いと見られていたのだが、いざ二人のアイテムが公開される時、天井から黒い粉が降ってきた。「ハクション!」アグリッパ学園の生徒がそれを吸い込んでくしゃみ連発。その直後、
「あ〜暑ぅ〜。3月にこんな暑かったら、12月になったらどんだけ暑いやろ〜」
 ボケを連発し始めた。後にその黒い粉は、吸えばボケを連発してしまう、闇の魔法市場に流通する禁断の品「ボケ師匠コショー」と判明。エンの兄はといえば、ハリセン片手に「なんでやねんっ! なんでやねんっ!」とツッコミ連発。そのハリセンは、その日彼がコンテストに出品する予定だったアイテムで、元々は「こちら焼肉定食のほうになりまーす」といった、変な日本語にツッコミをいれる正しい日本語養成&矯正ハリセンだったのだが、何者かが配線を密かに変えていたのだ。
 将来有望な白魔術師として嘱望されていたエンの兄は、以来、自主退学し、関西へ行ってお笑いの道を志し、兄を超える魔術師を夢見ていたエンは目標を見失い、幻滅と失望を味わった。
「なんよ、お笑いがそないにアカンこと!? 笑いは光の魔法の一種やで!」
 チマリが憤然と言った。だが、エンは首を横に振る。
「それよりも兄貴が恋人に裏切られたことが許せねぇ! 聞いたんだ、あの女が、兄貴を蹴落とすためにコショウとハリセンを仕掛けたって‥‥!」
 実は、女生徒とエンの兄は好敵手で、かつ、恋仲だったのだが、この事件をきっかけに別れた(お互いに会えば会話がひたすらボケツッコミになってしまうせいでもある)。兄の好敵手でもあった恋人が、兄を蹴落とす為に仕掛けたと、クロウリー学園の理事長から聞かされたたという。
「それは誤解よ、エン君」
 いつの間にか後から追いついていたユキレが言った。
「そうよ‥‥あたしがその女生徒だったの。ええ、そうよあたしもボケのコショウの被害者なのよ! 本当はクールビューティーなお姉さんなのに、ボケずにはいられないのよっ(涙)」
 だから言葉は最低限で、マスクをしてボケを抑えているのよと言いつつ、涙を拭くハンカチの代わりにバッグから手品の万国旗を取り出すボケっぷり。
「今もこうして苦しんでいるあたしが、犯人な訳ないでしょっ? 一人でいるときもこうなのよっ? ボケてもツッコミが無いほど悲しいことないんだからっ! そんな時は魔法アイテムの「代返くん」で一人芝居するしかないのよっ!」
 ちなみに「代返くん」は遠くからでも、ある人の声を完璧に再生できるボタン型アイテム。今はエンの兄のツッコミを再生していた。進む道は別れても、エンの兄とは心が通じているらしい。
「全てはこの方達が仕掛けたことです」
 皆の背後から、サラサの声がした。ロゼッタ先生も一緒で、彼女の背後でジャラジャラと音がするのは、後ろにクロウリー学園の理事長と校長、教頭達を彼女のマジックアイテム「マリアの抱擁」‥‥それで縛れば誰でも聖母に抱かれるような素直な気持ちになり、全ての罪を告解する‥‥で一まとめに縛り付けているからだ。彼らが黒魔術団を作り自らの欲望に奉仕させるため、有望な生徒を黒魔術師に転向させるべく様々な工作をしていたらしい。
「生徒に信頼されるべき先生達のやることちゃうやろ! もうあったま来た!」
 チマリがアイテム「踊る六角手風琴」を取り出す。ぶんちゃっちゃー♪ と弾けば聞いた者は誰でも踊りだす恐怖のアイテムだ。もちろんチマリ自身も踊る。
「チっ‥‥チマリちゃん、もういいよぉぉ!」と安来節を踊るヨウ。
「つか、おっさん理事長のベリーダンス、キモイでっ!?」とパラパラを踊るモイラ。
 チマリが演奏を止めた時には、その場にいた全員が息を切らし、ぐったり疲れきっていた。
「すっ、すみませんでしたぁ!」
 涙を流し、許しを請う理事長達に、ロゼッタ先生は、
「悔い改めたのは良いことです。しかしどんな事情があっても罪は罪。罪を犯した人間は罰しなければなりません。少し、校庭裏で穏やかにお話しましょうね?」
と優しく言い、理事長達を校舎裏で連れてゆき、穏やかに話し合‥‥ってるはずだが、「どかっ、ばきっ、ひるるる!」「ぎゃあああ!」「にゃひーん!」等々、悲鳴と殴打音が交互に聞こえるのは何故なのか。誰も理由を聞けなかった。怖すぎて。
「結局、俺は踊らされてただけなのか‥‥」
 ため息をつくエンに、
「一口‥‥どうぞ‥‥ゆくるんのマジックアイテム、メロメロメロンパン‥‥です」
 湯ノ花ゆくるん(=湯ノ花 ゆくる(fa0640))がアイテムを差し出して慰めた。
「一口‥‥かじると‥‥半径1000km内にある。全てのメロンパンが召喚されます‥‥」
「‥‥のーさんきゅー。遠慮しとくわ」
 メロンパンに埋もれる光景を想像したのか、エンがありがたく遠慮した。
 目標にしていた兄が漫才師に転向してしまい、黒魔術を志したのも理事長達の陰謀だったと知り、これからどうしたらいいのか、行き場所を失ったとエンは呟いた。
「あのー‥‥ていうか、うち来たらいいんじゃ?」
 ヨウがおずおずと手を差し伸べた。
「‥‥ふん。友情ごっこは性に合わねぇ。だけど‥‥」
  そっぽを向いたまま、エンは言った。
「改造しちまった下駄、元に戻す手伝いはしなきゃな? 落とし前って奴」
 にこりと笑ったチマリが、握手の右手を差し出しつつ‥‥
「よっしゃ、決まり! せやけどまだ笑顔が足りひんな。ほら、笑うてみ? 恨みなんかぱーっと消えてしまわへん?」
 エンのほっぺたをぎゅむっと上向ける。
「いでででで!」
「んじゃ皆で、アグリッパ学園にレッツゴー!」
 そして夕日がオレンジ色に照らす空を、ホウキに乗った若き魔法使い達が、笑いさざめきながら飛び交ってゆくのだった。