あの世町不思議通りアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/27〜03/31
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●本文
☆舞台「あの世町不思議通り」パンフレットより抜粋☆
「次はー、不思議通りー、不思議通りー」
バスのアナウンスが告げる。
私は降車を知らせるボタンを押し、「あの世町」を巡る巡回バスを降りた。
あの世町不思議通りは、いつもに変わらず、不思議な静けさに満ちていた。
この町は、昭和中期ごろの日本の、下町に似ているという。
ここの住人たちは、家族と肩を寄せ合って暮らすのにちょうどいい位の、素朴なつくりの小さな家を欲しがり、あまり贅沢をしたがらず、便利すぎる電化製品は欲しがらない。
多分そのせいで、自然と似るのだろう。
素朴すぎて少々みすぼらしいという意見もあるが、私はそれで構わないと思っている。
それがこの町のよさであり、特徴でもあるのだから。
停車場に降り立った私を、案内役の男が愛想よく出迎えた。
「お待ちしておりました。視察ご苦労様でございます」
やや訛りのある口調で挨拶し、男は小柄な体を運んで先に立つ。
まずはこの不思議通りで暮らす人々を紹介してくれるつもりらしい。
歩道に、美しい花の咲き乱れる花壇がある。そこで水遣りをしていた女性が、私を見てにっこりと華やかな笑顔を向けた。顔はまだ十分若く、かわいらしいのに、気の毒に生前体験したフランス革命がよほど辛かったのだろう、髪は真っ白だ。
「マリー・アントワネットさんですよ。生前は浪費家で高慢ちきだとずいぶん嫌われたそうですが、案外素朴な人でしてねえ。土いじりやパン焼きなんかお手の物ですよ。ただ、極度に寂しがりやでおせっかい焼きなので、煙たがる人も多いですが」
男が苦笑しつつ、私に囁いた。道路には、街路樹もあり、道路に落ち葉を散らしている。その落ち葉を丁寧に掃いている、15人ばかりの日本人の青年達がいた。
「お見回り、お疲れ様でございます」
彼らは私を見て、一斉に歯切れのよい挨拶をよこした。
私は軽くうなずきかける。
「彼らは?」
「2・26事件の青年将校達ですよ。生前世間を騒がせた罪を償うんだと言ってね。よく働いてくれます」
「それは結構ですね」
私は答えた。
この「あの世町不思議通り」は、生前、何か大きな悔いを残して命を終えた人々が自分を見つめなおすために設けられた、いわば現世(うつしよ)と天上界の中継地点である。
淡々とした日々の中で、自らの生前の罪がどんなものであったのか、をよく把握し、そしてまた、次の転生で、どんな風にその罪を償うか、その答えを出すための場所。
そして私の仕事は、そうした不思議通りの人々を観察し、転生後の生き方を定めた魂を選び、天上界に連れてゆくこと、である。
ただし、連れてゆける魂は、一度につき一人だけである。
私はふと、小さな家の軒下に目を点じた。
そこでは、初老の男と、小柄な青年が穏やかに将棋を指している。
「だいぶあの二人は仲良くなったようですね」
「源頼朝・義経兄弟ですか? ええ、そのようですよ。やはり欲得を離れたこの世界だと、自然とわだかまりが解けるようでして」
案内役の男は嬉しそうに頷く。が、声を潜めて、
「まだ生前と同じように仲の悪い人たちもいましてねえ。エリザベス1世とメアリ・ステュアート、ありゃあ、どうにもなりません。ルクレチアとチェーザレのボルジア兄妹も、ずうっと冷戦状態ですわ。
マリー・アントワネットが一度、お茶会に二人を招待して仲直りさせようとしたんですが、かえって悪化しましてね。
まあ彼女のおせっかいも厄介なんですが‥‥
生前の争いに、あまりにも多くの人を巻き込み、血を流しすぎたのが不仲の元なんでしょうね。気の毒な話です」
私は密かに苦笑した。
この男は、生前と同じく、美しい女性がどうにも気にかかる性質らしい。
私は問うて見た。
「ところで、貴方はいつまでもここの案内役に甘んじてらっしゃるようだが、それで満足なのですか?
生前、栄耀栄華を極めた貴方には、ここでの暮らしは物足りないでしょう? 豊臣秀吉殿」
案内役の男‥‥秀吉は、その名を呼ばれると、決まり悪げに首を横に振った。
「いやいや、もうその名はここでは使っておりませんでな。若い頃の、木下藤吉郎で通しておりますよ。暮らしぶりもいたって地味なもんです。
それがまた、貧しい生まれなもので、全く苦痛にならんのです。
それに‥‥私ゃ根っから人間が好きな性質のようでして。ここでこうして、色々な魂を見ているのも十分楽しくて気に入っています」
彼が話している間に、着物姿の可憐な娘が通りをうつむきながら歩いてくる。
「やあ、お七ちゃん」
秀吉‥‥いや藤吉郎は如才なく、少女にも声をかけたが、少女は怖いものでも見たかのように目を逸らし、家に飛び込み扉を閉ざした。
「八百屋お七も相変わらずですね」
私は吐息をついた。
生前、恋人に会いたさ故放火の罪を犯し、火刑に処せられた少女。
もうここへ来て随分になるというのに、いまだに心を閉ざし、誰ともかかわりあいを持とうとはしない。
こうした住人もいるのだ。
自らの罪の重さに深く深く思いを致してしまい、明るい方向へ向くことが出来ない魂が。
下手をすればそういった住人達は、次第に姿が薄れ、ある日ふっと消える。
「地獄」と呼ばれるあの世の最下層に、落ちてしまうのだ。
そういった事態は、なるべくなら見たくはないのだが‥‥
「今回は誰が、天上界へ行けるんでしょうねえ」
俗世の欲をこの不思議通りの暮らしで洗い流した藤吉郎は、童子のような笑みを浮かべて私を見つめている‥‥
☆募集キャスト☆
●私(天界の視察官)‥‥「不思議通り」の住人を一人選び、天上界に連れてゆくために視察に訪れた。天使あるいは菩薩といったような存在。
○不思議通りで暮らす人々‥‥生前の生き方に強い後悔を残している人々。
※歴史上の有名人物。架空の人物でも構いませんが、その場合は必ず歴史上の有名事件に関わった人に設定してください。
(例)2.26事件の青年将校の一人 など
どちらの場合も、「生前の生き方に強い後悔を残していること」が条件となります。 ただし明らかな犯罪者は、公共の電波を使う事情から、却下させていただきます。
舞台の最後で、視察官によって一名が選ばれ、天界へ行くことができます。その一名が誰で、どんな理由によって天界へ行けるのかを話し合ってお決めください。
●リプレイ本文
●幽かな希望の灯を
私(=都路帆乃香(fa1013))と共に歩き始めた藤吉郎を、若々しい声が呼び止めた。
「藤吉郎殿、奥方がお呼びであります。新しい小袖が縫いあがったのでお召しにと」
きっちりと踵をそろえて立つのは、池上晋太郎(=倉橋 羊(fa3742))。明治維新前の動乱で自刃して果てた白虎隊士中2番隊の少年兵士だ。
「おぉ、寧々が。ではちょいと失礼」
会釈して去る彼の飄々とした物腰と対照的に、晋太郎は生前そのままの生真面目さで、
「僭越ながらここから先の案内は私が引き継がせていただきます!」
声を張って言うや、早足で歩き出す。まるで行進だ。私は彼と同じく軍人だった友人のジル・ド・レエを思い出し胸が痛む。天界の視察官に就任した折に、そうした感情は捨てるよう努力しているのだが。
「そう硬くなって歩いては、疲れませんか?」
私が彼の肩に触れて労わろうとすると、彼は電撃を食らったように飛び上がる。
「ととと、とんでもないであります! し、視察官殿」
眩しげな目でちらりと私の編んで肩に垂らした金髪や粗末な白のドレス姿を窺う。彼が女性とろくに触れ合うことなく現世での命を終えたことを思い出し、私は苦笑して、彼の歩みに従うことにした。
と、エリザベス1世が東洋人の男を追いかけているのに出くわした。
「龍馬さんではありませんか。どうしました、その服装は」
「このお姫さんが、わちに着せたがるぜよ。どうも肌に合わんのがやき」
と真珠のボタン付き上着を着せられた坂本龍馬(=伊藤達朗(fa5367))は、苦笑して乱れ放題の髪をかき回す。調整役はお手の物の彼は、彼女とメアリ・ステュアートの仲裁を勝ってでているうち、エリザベスに気に入られたらしい。メアリが対抗意識を燃やし、さや当てにならなければ良いが。
気がつくと、後ろからいつの間にかマリー・アントワネット(=日向みちる(fa4764))が付いて来て、心配そうに龍馬の様子を見ていた。
「私が龍馬さんにメアリ達の仲裁をお願いしたものですから‥‥。龍馬さん、不愉快な思いはなさらなくて? ごめんなさいね」
「おなごの争いは難しいぜよ。ま、ぼちぼちやるしかぇいきね」
龍馬は豪快に笑い飛ばした。
「貴方の努力は、天上界に報告しておきますよ」
私が言うと、彼は遠くを見る目で言った。
「いやあ、わちはまだまだ人間というものがわかっちゃあせん。そのためにあがな不本意な死に方をしたがやか。わちがちくと長生きしちょったら西郷さんにあんな最後選ばせる事もなかったと思うと‥‥」
「いえ、僭越ながら、あの時代は誰もが大きな滝に流されるようでした‥‥龍馬殿の尊い犠牲は決して無駄ではありません」
動乱の日本で、一年違いで死んだ晋太郎に言われて照れくさかったのか、龍馬は私に矛先を向けた。
「おまんさも女性の身で、こうろう活躍した方だと聞きゆうよ。その話も、聞かせとおせ」
私は笑って受け流した。
私の目の前を、一人の少年が独り言を呟きながら通り過ぎようとする。
見覚えのある美しい前髪姿に、私は声を掛けようとしたが、少年はうつむいたまま歩き続けて、しまいに街路樹でがつんと頭をぶつけ、目をぱちくりさせて立ち止まる。
「大丈夫ですか?」
私の声に、一瞬益田四郎時貞‥‥後に天草四郎(=千音鈴(fa3887))として知られた少年は、無言のまま逃げるように走り出す。
「待って。少し話を‥‥」
だが彼は逃げてしまった。私の人生も彼と同じだったと伝えたかったのに。周囲の愛する人たちが困っているから、何かしたかった。それだけなのに、まるで自分の存在が歯車となり大きな機械仕掛けが動き出したかのように、あまりにも大きな波が起きてしまった‥‥
立ち尽くす私の後ろから、のんびりとした声が響いた。
「視察官殿、あの少年と話すなら、私が場を設けましょうか。ついでのことに梅を見ながらお茶でもいかがかな。ついに咲いたのですよ、私の庭の梅が」
菅原道真(=仁和 環(fa0597))だ。髪は白いが、にこにこと話す表情は無邪気な程明るい。
「以前視察に来た時よりも随分暖かいと思ったら、菅原さんの念でしたか‥‥」
私は何が無し救われた思いで、不思議通りに吹く風の香りを吸い込んだ。この町に、「時」は無い。人々の「念」によって季節が移ろう。今日は道真の思いが通じ、彼の愛した花‥‥梅が咲く春になったのだろう。
「せっかくですから、八百屋お七も呼べるといいのですが‥‥」
「自分が声を掛けて参りましょう」
道端を黙々と箒で掃き清めていた中橋基明(=志羽・明流(fa3237))が言った。
2.26事件で当時の日本政界人達を襲撃した青年将校の一人。
生前は緋色の裏地付きの粋なコートを愛用していたはずだが、今は粗末なシャツの袖をまくりあげ、ズボンの裾を汚してひたすら道路を掃き清めている。
「髪に枯葉がついていますよ」
「あ、失敬」
私の注意に、基明ははにかんだように笑って、お七の住まいの方角へ姿を消した。
● 心に花が咲くとき
果たしてお七(=小塚さえ(fa1715))は基明に背中を押されるようにしておずおずとやってきた。
「まあ‥‥そんなに髪を乱して。私にお任せ下さいませな」
マリー・アントワネットが早速おせっかいを焼き、髪を梳き花を飾ってやろうとする。お七は石のように固まり、聞いた。
「あの‥‥自分の思いだけで人を傷つけた、あたしが怖くないですか?」
「だが、貴様はただ幼さ故過ちを犯したにすぎん。自分は、自分達こそ正しいと信じ、人を殺め、自らを血に染めた。貴様より、自分のほうが恐ろしい。そうは思わないか」
中橋の言葉に、お七は考え込んだ。
「直接手は下さなくとも、周囲を不幸にしたのは私も同じです。結局藩を守りきることもできず、誰一人として幸せにできず。自ら命を絶ってしまったのですから‥‥」
池上晋太郎は、しんみりと言った‥‥が、マリーからお茶を受け取る折に彼女の華やかな顔立ちに見とれて、こぼしてしまう。
「若さ故の一途さ、ですね‥‥若さというものは厄介です。私も詩歌の才人ともてはやされ、若い頃は随分と‥‥今思えば顔から火が出るような強気なまねをしたこともございますよ」
道真は穏やかに言葉を挟んだ。
「その後悔ゆえに、私を何度もお茶にお誘いくださるのですか?」
天草四郎が言うが、道真は聞こえない振りでひとり言のように呟いた。
「誰も皆、誰かを不幸にしているかもしれませんね‥‥目に見えるか見えないかの違いで。私も同じ‥‥引退を聞き入れなかった為に、子供達を不幸にしました。
私の政で不幸になった方も、きっと大勢いたでしょう。ことに藤原時平殿は私の左遷後、随分と悪者にされたようで‥‥」
生前を思い出したか、道真は目を閉じる。
中橋基明は、お茶を置いて立ち上がると、今も若い部下達を惹き付ける熱い口調で、語り始めた。
「この、不思議通りに自分達が在ること。こうして、前世を悔いる場を与えられたということは、悔いて何かをなさねばならぬことだと自分は思う」
「悔いて、何かを‥‥?」
お七が呟く。
「第一、貴様は火付けの罪に問われたとはいえ、未遂だった筈。何故それほどまで自分を責める?」
「あたしの巻き添えで、家族はとても辛い思いをしたもの‥‥あたしは、会いたい、会いたいって自分の気持ちだけ考えて、後に残るおとつぁんやおっかさんがどんな思いをするか、ちっとも考えなかった。火刑になるまで、火にまかれた人たちがどんなに怖い辛い思いをするかなんて、考えなかった。なんて自分勝手なんだろうって、思ったら‥‥あたしは、あたしが怖い」
マリーはしゃくりあげるお七を励ました。
「恋の衝動に目がくらみ、自分の責任をおろそかにした経験は私もありましてよ? 生前の私は自分が楽しむことしか考えませんでしたが、ここで皆さんと出会い、気づきました。世の中にはこんなに様々な思いが溢れ、人々は幸せを求め、そして皆の幸せを願っている‥‥。私が花を植えているのもそのため。美しい花があれば、人は少しだけ幸せを感じることが出来ますわ」
「草花程素直な生き物はおりませぬしな。私もまさか、此処でまたあの時の梅の花が私を慰めてくれるとは思いもしませなんだが」
道真が頷く。
東風吹かば 匂い寄こせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ。平安の詩人は生前作った名歌を口ずさむ。折り取った一枝を、お七に差し出してやりながら。お七はおずおずと受け取った。
「まことに、花がこんなに心を慰めてくれるものだとは‥‥きっとあの時も綺麗に咲いていたんでしょうね」
天草四郎が呟いた。島原の乱の篭城の際、見ぬままに過ぎた春の景色を思っているのか。
「天草殿はご立派です。4倍もの戦力に囲まれて臆せず自らの信念を貫かれたのですから。それに比べ、私はちっぽけです。ただ一人から奪ってしまった幸福だけが心残りだ」
そう呟く池上少年には、生前可憐な許婚がいたという。国のためにと信じて選んだ自死が、身近な人間を深く悲しませた矛盾が彼の若い心の中でせめぎあっているのだ。
「ですが私は今も思うのです、あのように多くの犠牲を出してまで、本当に戦う必要があったのか? 私はもっと犠牲を少なくする事は出来なかったのだろうか? と‥‥池上様ほどの年頃の少年を見ると、あの時共に戦って果てた朋輩を思い出‥‥うっ‥‥うぅ‥‥」
美しい顔をくしゃくしゃにして泣き崩れる四郎に、道真がお茶を勧める。
「さ、せっかくの茶に涙が落ちては塩辛うなりまする。マリー殿の淹れた茶に梅の花びらを浮かべてみましたが、いかが」
「そうだわ、お茶会ですのにお菓子がありませんわね。少し待っててくださいな。すぐにお持ちしますから」
マリーが立ち上がると、ふいに、雲が晴れたようにまばゆい光が降り注ぎ、皆が目を細めた。何でしょう? といぶかるマリーに、私は告げた。
「貴女が天上界行きに選ばれたのですよ、マリー・アントワネット・ジョゼファ・ジャンヌ・ド・ロレーヌ・オートリッシュ‥‥さあ、参りましょう」
マリーは感激の為か、胸の上に手を置き、かすれた声で言った。
「私と同じフランスの地に生まれ、天上界の使いとなった貴女の言葉だから、なお光栄ですわ‥‥聖処女『ラ・ピュセル』」
「その名は慣れませんので、ジャンヌで結構です。私は今も昔も、ただのジャンヌ・ダルクです」
私はマリーに手を差し伸べた。
「寂しくなりますな‥‥あ、失敬。めでたい御出立なのに」
道真がほんのりと微笑を送る。中橋基明は無言で、軍隊式の敬礼をした。
あの世町の中央に、天上界へ続く大きな階段が現れる。マリーは一段目に足をかけ、ふと振り返る。離れた場所で、一人の男が彼女を見送っていた。ハンス・A・F・フェルセン。マリーを命がけで愛した男だ。
「最後に彼とゆっくり話をしていかれては?」
私の言葉に、マリーは首を振って微笑した。
「いいえ。ここへ来た時、お互いにもう会わないと決めたのですから‥‥未練がましいまねはよしましょう。ハンス、大丈夫です。私はもう、オーストリアから一人ぼっちでフランスに嫁いだ寂しさで心の目を曇らせていた、あの頃の私ではありません」
女王の誇りを今も失わぬマリーは、優雅に膝を折ってお辞儀をすると、美しい首筋をまっすぐに伸ばし階段を上って行った。
あれから、地上ではどれほどの時を経たのだろう。転生したマリーは、孤児のための施設を建てるべく奔走している。寂しがりやの彼女には、もってこいの使命だろう。
また視察に不思議通りに来た私は、懐かしい顔に遭った。
「お久しゅうございますっ」
池上少年の几帳面な挨拶は相変わらずだ。
「お見回り、お疲れ様です」
中橋基明率いる青年将校達が声を揃える。前と少し違うのは、青年達に混じり、八百屋お七が、たすき姿でマリーの残した花壇をせっせと手入れしていることだ。
「おぉ、ご無沙汰にございますな」
「一杯、やっていきとぉせ」
坂本龍馬と菅原道真が、花札に興じつつ私に笑いかけた。その傍で、誰かが涼しく笛を吹いている。彼らの陰になり見えないが、恐らく天草四郎だ。
また、梅の香が匂っている。
☆舞台裏〜監督は見た!
●お七の町娘ヅラをひそかにかぶってみる伊藤達朗さん
「ダーッハハハ☆」(鏡見て一人大ウケ)
●稽古の合間にブログ更新してたら倉橋羊君がパソコンの電源コードに引っかかった志羽明流さん
「ガッデーーーム!!!」←電源オチ&保存終了してない
「ごごめんなさいぃぃぃ!(泣きダッシュ逃げ)」
●テンポが微妙な女性陣の会話
「お昼、何にします?」(日向さん)
「ん〜昨日は和食でしたしね〜」(都路さん)
「じゃ、イタリアンね(テキパキ)」(千音鈴さん)
「あの‥‥監督さんが、近くの中華店がお勧めだそうです‥‥」(小塚さん)
「じゃ、中華ね」(千音鈴さん)
「ん〜イタリアンも捨てがたいですね〜」(都路さん)
「じゃ、イタリアンね」(千音鈴さん)
「あの‥‥日向さんも食べたいもの、仰って下さいね」(小塚さん)
「私? 強いて言えば、さっぱりしたものかな」(日向さん)
「ってことは和食ですか? ん〜」(都路さん)
→2行目に戻る。
●舞台公演期間中、仁和 環さんが「ベスト褌ニスト」受賞、目指すは殿堂入り!?
「いや、目指してないから(キッパリ)。三味線奏者だから(強調)。それから褌写真集出版の噂はデマです(キッパリ)。それから写真週刊誌にスクープされた褌姿は俺じゃないから。あれはやらせだ! っていうか、誰だこんな賞設定したの!」