私の地元紹介します!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/15〜05/19

●本文

 芸能人マネージャーにあるまじき発言かもしれないが、なんだか今回取った仕事は、悪い予感がする‥‥

 それは、とある情報誌の企画。
 その企画のタイトルを、「私の地元紹介します!」という。
 芸能人が、ツアーガイドに扮して自分の出身地や思い出の地を、他の芸能人ゲストを案内して回るという内容。
 案内する人のプロフィールと、人となりをさりげなく紹介できる企画内容なので、デビューしたての芸能人にはもってこいの企画かもしれない。
 おまけに、僕がマネージメントしているまだ無名の新人女優・泉本れいら(fz1043)は、なんだかとっても乗り気である。
「で、この企画っていうのは、「私の地元紹介します」っていうタイトルどおりに出身地でゲストを案内して回って、行きつけのお店や、見どころなんかを紹介してください、っていう内容なんだ。れいらちゃん、場所どうする?」
「やっぱ、新世界やな。あと、岸和田!」
 れいらは(無駄なくらい)元気よく応えた。
 僕はメモをとりつつ質問を続ける。
「うん、新世界にはれいらちゃんが大衆演劇の公演で出演したことのある劇場があるし、思い出深い場所だよね。
 通天閣っていう見所もあるし‥‥岸和田はれいらちゃんが小学校卒業まで住んでた出身地だしね。だんじり関連の見ものがあるから、良いかもしれない」
 とか言ってる間に、れいらの目がキラーンと輝いた。
「‥‥キョー兄。その取材中って、かしみんとかドテ焼きとか、なんぼ食べても雑誌社で費用出してくれるん?」
 あ、言い忘れていたが、僕の名前は五十嵐京という。れいらにとっては従兄でもある。
「‥‥それはまあ‥‥けど、いくら楽しくてもこれは仕事なんだからね、常識の範囲内で‥‥」
「だってれいら、食べ盛りで育ち盛りやし、ゲストも連れてくわけやから、宣伝と思ってお店もタダにしてくれたりとか」
「‥‥だから、これは仕事ね?」
「あっ、そうや、久しぶりに岸和田やし、ちょっとれいらが芸能人らしゅうなったとこ友達にちょこっとだけ見せてもええ?」
 と携帯を手に、メールをぴぽぱしかける彼女。僕は喉が枯れる勢いで叫んだ。
「だから、これは仕事っ!!」 

 やっぱりだ。
 なんだか今回の企画、良くない予感がする‥‥というか、どんなことが起こるか予想出来すぎる‥‥きっと、こんな風に‥‥

 ※注  以下は五十嵐京の脳内シミュレーションです。実際に起こった出来事ではありません。
↓         ↓        ↓
●通天閣周辺にて
れいら「おっちゃん、このドテ焼きなんぼ? えっ一皿150円? たっかいやん、れいら、芸能人の○○さん連れてきたんやで。ええ宣伝なるやろ? 広告打ったと思てタダにしときぃなタダに!」
京「ちょっ、れいらちゃん、他の芸能人の皆さんが引いてる、引いてるよ! 
 ああっ皆さん、ドン引きしないで!」

●岸和田にて
京「わあっどこからか女子中学生の大群が!」
女子中学生の群れ「キャー芸能人! サイン下さ〜い! 一緒に写真撮ってくださ〜い! 握手してくださ〜い! 髪の毛一本くださ〜い!」
れいら「あー、そういえば久々に岸和田帰るし、地元の友達2,3人にこのツアーのこと話したんやったわ〜。皆〜、わざわざ待ち伏せしてご苦労さんやな」
京「ご苦労さんじゃないっ! 明らかに迷惑がられてるよ! くっ、黄色い悲鳴で頭が割れそう‥‥君達、帰りなさいってばっ! あぁっ、その人の髪の毛引き抜かないのっ!」

「ウキャー!」
「一人で頭抱えて何叫んでんのん。キョー兄」
 ふと気がつくと、れいらは完璧にツアーガイドの装い‥‥紺色スーツに赤いスカーフ‥‥に身を固め、「泉本れいら地元案内ツアー」と書いた旗をふりふりして立っていた。
 そうだ。
 今日が「地元案内ツアー」撮影当日だった。
 僕は頭痛薬を飲み込んで、想像通りのご迷惑がゲストに及ばないよう、細心の注意を払いつつツアーに赴いたのだった。


☆ツアー内容紹介☆
 現地集合:大阪新世界・通天閣前(大阪市浪速区恵美須)および周辺観光と撮影
※「泉本れいら地元紹介ツアー」の旗を目印にお越しください。
※当地の見所‥‥通天閣、天王寺動物園、ジャンジャン横丁
※当地の名物‥‥串カツ(一説によると発祥の地)、ドテ焼き
 ↓
 マイクロバスにて移動(運転:五十嵐京 ※縦列駐車がやや苦手)
 ↓
 岸和田城前(大阪府岸和田市岸城町)降車、周辺観光と撮影
※女子中学生集団が待ち伏せする可能性があります。注意しましょう。
※当地の見所‥‥岸和田城、だんじり会館
※当地の名物‥‥かしみん、水ナス、村雨、くるみ餅

●今回の参加者

 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1357 結城 紗那(18歳・♀・兎)
 fa2025 御剣緋色(18歳・♂・竜)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)
 fa4764 日向みちる(26歳・♀・豹)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5442 瑛椰 翼(17歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 僕こと五十嵐京と、れいらが通天閣前の商店街に到着すると、驚いたことに本日のゲスト兼カメラマンの高遠・聖(fa4135)が、誰よりも早く来ていて、僕達に「よぉ」と笑顔を寄越した。
「あれ? 高遠さんて地元ちゃいますよね?」
 と僕達が尋ねると、
「前日から準備を兼ねて大阪入りさ。ついでに2、3軒味見して回っといた」
 とニッコリ。そうか、カメラマンってシャッターの一瞬が勝負だから、準備にはいくら時間を掛けても過ぎるってことはないんだ。そのプロ意識に感じ入った僕は、思わず「弟子にしてください」と口走りそうになったが、高遠さんは既にれいらに向いていた。
「じゃ、れいら嬢。今日のツアーだけど、皆に大阪のどんなところを見て欲しい?」
「えっ‥‥嬢‥‥っ!? あの、や、やっぱ楽しいとこです‥‥」
 おーい、「嬢」なんて呼ばれ慣れてないから完璧に舞い上がってるよ。だがそんな会話の最中に、都路帆乃香(fa1013)さんが伊藤達朗(fa5367)さんと御剣緋色(fa2025)さんに挟まれて守られながら到着。
「私なんか、そんなに人目につかないと思うんですけど‥‥」とカジュアルなフレアスカートにブラウス、目深に麦藁帽子をかぶった都路さんは恐縮しているが、伊藤さんと御剣さんはサングラスなんか掛けて成りきっている。
「いや、チラチラ都路さん見ながら過ぎる通行人いてますわ。ま、注目ぐらいやったらええけど大阪の人間は人情味が溢れているせいか、度を超して親しげに成りすぎる事で迷惑掛かるかも知れへんから、そこは行き過ぎんように注意しておきませんとな」
 と、がっしりした体にダークスーツを着込んできた伊藤さんは刑事役でも務まりそうな目つきでちらりと周囲に目を配る。
「てか、その旗が無駄に目立つじゃん?」
 って、月岡優斗(fa0984)君。いつの間に来てたの? あっそうか僕の身長だと視界が完全に優斗君を通り越‥‥あっごめん、身長の話はタブーだったね。何かフォローをしようと僕が気配りしてるのに、れいらが無駄に反撃した。
「目立つんはれいらが輝いてるからや!」
「あーハイハイ。スーツに下駄のコーディネートがなっ」
「ムッ‥‥れいらのビボーがわからんとはこの目は飾りかっ」
「そっちこそ、この口がボケかますのかよっ」
 こら、優斗君のまぶた引っ張りあげない! 優斗君もれいらの口つねるのやめなさい! 焦る僕の耳に、涼やかな笑い声が響いた。
「優斗君とれいらさん、仲がいいのですね」
 ジーンズ姿も爽やかに、日向みちる(fa4764)さんが立っていた。
 「ふぉのひょーはいのふぉこがはかふぇーねん」(訳:この状態のどこが仲ええねん)
  れいらが叫ぶ。‥‥放っとこ。
 「少女歌劇団の日向みちるです」と、皆に挨拶を済ませたみちるさんと僕はしばし立ち話をした。みちるさんは歌劇団時代によく買い物にこのあたりに来ていて、今日も集合時間の20分前に来ていたが、懐かしくてその辺を見て回っていたという。
 とか話しながら見回すと、なぜか周囲を警戒しながら来る瑛椰 翼(fa5442)君を発見。
「テルくーん。こっちこっち」
「お、おぅ」
 モノクロのストリート系ファッションになぜか犬耳風のニットキャップを合わせてる瑛椰君は、メンバーを確認すると、
「オカンさえいなけりゃ俺の天下だ!うははー☆」
 反り返って満面の笑みを浮かべた。
 彼はれいらの母とも親しいので、「さくら叔母さんがよろしく伝えてって」と何気なく言うと、急に瑛椰君は「うわあ〜!」と叫んで髪の毛をかきむしった‥‥何か悪いこと言った?
「はわっ、すみませーん!」
 土地勘が無いために迷ったという結城 紗那(fa1357)さんを迎えてツアーは始まった。
「遅刻者がいたら誌面で名前付きで公開してやろうと思ってたけど、皆ぎりぎりセーフだったみたいだな」
 とにやり笑う、高遠師匠(勝手に師匠呼ばわり)は意外に怖い人だ‥‥

 高遠師匠(だから何故)がメモを片手にスケジュールと進行を確認する。
「っと、まずは通天閣でビリケンさんを囲んで記念撮影な。その後商店街探索して、移動。今日は道路も空いてるし、撮影の合間に旨いもの食べる時間は十分確保できるぜ」
 と一行を安心させてくれる辺り、オトナだなあ。というわけで最初に僕達が向かったのはやはり通天閣。
 朝から酔ってるどっかのオヤジが都路さんを指差して、
「おっ! ねーちゃん、テレビ出とる人やろ? パソコンのメイドさんやろ?」
 と叫んだ。伊藤さんがすっと前に出て、
「悪いけどな、仕事中やさかい」
 低めの声を作って睨みを利かすと、すんません、とオヤジは小さくなる。
「すみません。せっかく声かけて下さったのですけど‥‥撮影中なんですよ〜」
 都路さんはおっとり優しく応える。まあせっかく庶民の町での仕事だし、ファンとのスナップも1枚ぐらいはいいだろう、と高遠師匠が言うので、感激かつ興奮気味のオヤジ‥‥となぜか急に集まってきた商店街の皆さん‥‥が都路さんをはじめとするゲスト達を囲み笑顔でカメラに収まった。
 ようやく通天閣に。5階にいるビリケンさんを囲み記念撮影。皆、幸運を授けるというビリケンさんの足の裏を撫でまくる。展望台から大阪ドームなどランドマークを紹介。高いところ好きの瑛椰君は「空飛びてぇ〜」と叫んだりご機嫌。都路さんは大衆演劇に興味があるようで、れいらと僕はいろいろ質問された。
「たとえばミュージカルとはどう違うんですか?」
「大衆ウケを前面に押し出した舞台なんです、純粋な音楽劇とは違って、コントやパロディを交えたりとか」
 他の舞台と比較して大衆演劇を考えたことがなかった僕達は、精一杯応えたけど満足してもらえたかな。都路さんは舞台のセルフプロデュース企画を暖めているそうだ。
「そん時はれいらも誘ってな!」
 ってれいら、厚かましいぞ!
 足元の町を見下ろしていたれいらが急に、「あっ、オカーチャン」と叫ぶ。
 瑛椰君が「ひゃうっ!?」と叫んで縮み上がる。何故。
「‥‥の好きなうどん屋さん」
「び、びびらすなあぁ〜!」
 続いて狭いが名店の多いジャンジャン横丁へ。いい匂いが漂っている。れいらの先導で、串カツ屋へ。
「これがジャンジャン横丁かあ‥‥」
 あちこちの看板に三味線引いてる通天閣のキャラクターが描いてあるのを目に留めて、御剣さんは感慨深げ。
「揚げたてが美味いで!」
 ってれいら、優斗君の口に揚げたて突っ込んじゃ駄目だよ! 水、水!
 目を白黒させてようやく飲み込んだ優斗君が反撃にかかる。
「はい、あーん! ねじ込まれたく無ければ素直に口開けれ‥‥!」
 あーもうこの二人は‥‥
 ソースの漬け方を説明しようとした地元民の伊藤さんを遮り、結城さんはニッコリ。
「幼なじみからテクニックを聞いているので、ソース二度づけ禁止のチョンボはしませんよ。ちゃんとキャベツを使ってすくいます」
 結城さん、ナイス! だけどその動作微妙にオヤジ入ってま‥‥あうっ、ごめんなさい!
 その後、腹ごなしを兼ねて、通天閣本通り商店街の終わりにある駅から出る路面電車と有志参加のガチンコ勝負。のどかに走る電車を追い結城さんと優斗君、れいらがダッシュ。
 うわっ、断然優斗君が早い! れいら、こけた! ‥‥やっぱりな(オイ)。
「下駄なんか履いてっからだろー」
 ずっと先を走っていた優斗君がわざわざ戻ってきてれいらに手を差し伸べた。
「下駄下駄言うなっ! 日本人の伝統的健康アイテムやぞ!」
「もっと似合う、可愛い靴履けば? せっかく、その‥‥ま、超が付くほどとは言わんけど、どっちかというと可愛い方に生まれついたんだからさ」
 そういわれるとれいらは何故か非常に動揺して、「あっ! ひ、飛行機―!」と空を指差していた。若い子の会話は良く分からんな‥‥
 僕の運転で岸和田方面へ移動。
「岸和田は初めてです。楽しみですね」
 みちるさんが地図片手にナビをつとめてくれる。移動中もそれぞれの出演作の裏話などで賑やかだった。岸和田城に車を停め、しばらく散策。
「この城を雑賀衆が攻めた時、海からたくさんの蛸が来て城を守ったという伝説があるんです」
 とか僕がガイドしながら皆さんを先導する。瑛椰君がトイショップで購入したという「ぼへぇ〜ボタン」を押しまくり、「ぼへぇーぼへぇー」と盛り上げてくれた。
 ちなみに前述の話は「8ぼへぇ」だそうだ。
 緑に囲まれた庭園の中の茶室でお薄を一服して休憩‥‥の予定だったが、なんかれいらがそわそわしてる。思ったら、出たー! れいらが増殖したかのような、地元女子中学生の集団―! れいらめやはり情報漏えいしてたな!
「都路さんだ!!」「握手してくださーい!」
 あっと言う間に小柄な都路さんが囲まれる。もみくちゃにされないように両手でガードするのが精一杯だ。ガードするはずの伊藤さんも、
「あっ! 『プロレスごっこ』出てた人ですぅ?」
 人気番組に連続出演したせいか、しっかり知られていた。関西はお笑いチェッカーが多い。中高生は特にそう。
「キャアッ、『ぷにっと』のユートもおるやん! かわいー!」
 優斗君は「‥‥俺は珍獣かっ」と呟いてたような気もするが‥‥若干口元がひくついてた気もするが‥‥笑顔で応じていた。
「ちょっと皆聞いて。ごめんやけどまだ撮影の仕事あるし、あと5分だけで堪忍な」
 流暢な関西弁でみちるさんがきっぱり言うと、その迫力にキャピ軍団も静かになった。みちるさん‥‥アニキと呼ばせてくださいっ!(オイ)
 だがそんな彼女も、「牙武者の朧さん、ですよねっ?」としっかりバレて、サインに握手にと振り回される。油断して変装せずに来られたからですよ。歌劇団の仕事ばかりならメイクばっちりの舞台姿とのギャップでばれないかもだけど、最近は彼女もドラマの出演が多いしね。
「『ご当地HERO☆』大阪編来たら出演してくださいね!」
 口々に叫ぶ女子中学生たちを、
「ハイハイ〜そこまでね、これ以上は有料だぞ、お金払ってもダメだけどな」
 と御剣さんがセーブして、茶寮へ。
「変わった庭石だな。なんかいわれがあるのか?」
 庭園を撮影しながらの高遠師匠の質問に、れいらが、
「んーなんか戦争の形やて。真ん中の石が大将で周りのんがそれ守ってんー」
 なんつうラフな説明‥‥キミ、ガイドだろうがっ! 
「諸葛孔明の八陣法を象徴してます。役割に応じて天・地・風等と名づけた軍勢の配置です」
 僕のフォロー説明に、師匠はうなずきながらシャッターを切る。
 休憩後、天守閣へ。結婚式場も兼ねているそこはここ数年できれいに改築されており、白木の香が漂う。高いところ好きの瑛椰君が城下を見下ろしつつ、
「天下は俺のもんやー!」
 ひゃっほう、となぜか関西弁でガッツポーズ。
 いつまでも降りたがらないので、
「はいはい、そこから天下治めてなさいね」
 と皆に置いていかれかけ、慌てて降りてくる。
「テルくん天守閣好きやったら、将来あそこで結婚式挙げんちゃうん」
 とれいら。相手がいたらね、と瑛椰君が言うので、僕が「瑛椰君てなんとなく年上の女性にモテそうだよね」と言ったら、激しくスネていた。何かトラウマでもあるの?
 れいらが子供の頃から行き着けの「かしみん」屋へ。鶏肉とミンチを混ぜたお好み焼だ。
「やっぱり粉もんは関西人のソールフウドや。‥‥腹の底からあったまりますなあ」
 と伊藤さんがしみじみ呟き店のおばちゃんが喜ぶ。
「これ、お持ち帰りできますか?」と事務所にお土産を持って帰りたいという都路さんが尋ねるとさらにおばちゃん舞い上がり、「都路ノドカさんに食べてもらえて感激やわ!」と叫ぶ。落ち着け。皆が次々平らげていく模様を撮影していた高遠師匠は突然叫ぶ。
「‥‥はっ! やべぇ。せっかく目の前にゴチソーが並んでいるのに。俺撮影ばかりやってるとぜんぜん食えねぇ‥‥」
 大丈夫です。師匠の分は僕が確保しました!
「お、サンキュ。これ食わなきゃこの仕事を引き受けた意味‥‥じゃなく、味を確かめないとレポートに深みが出ないんで、ちょっと失礼していただこう」
 って高遠師匠、僕の分まで食べないでくださーい! 
 その賑やかさと先ほどの騒ぎで疲れたのか、少しぐったりしながら優斗君が、
「れいらがここ出身だってのがよくわかった‥‥」
「え、大阪、嫌いなん‥‥?」
 心配そうにれいらが聞くと、
「いや、面白いし綺麗なとこもあるし飽きねーよ‥‥ちょっと疲れるけどなっ」
 れいら喜びコテをマイクにして「心斎橋恋しぐれ」(←十八番)を熱唱。出身地を褒められたからって喜び過ぎだろう。なんか顔赤いし。
 デザートに創業170年という和菓子屋さんでくるみ餅を購入。冷たいくるみ餡が舌に気持ちよい。それにしても皆よく食べるなあ‥‥み、みちるさん、それ何個目!?
「体力のためです。毎日のレッスンがハードなせいか歌劇団には健啖家が多いんですよ」
 とみちるさん。確かに体が資本ですからね。
「くるみ餅って確か、豊臣秀吉も気に入ってた品ですよね」
 と結城さん。さすがMC! おかげで頑固そうな店主も顔がほころんで色々喋ってくれた。
 いか焼きを買いたいという結城さんと都路さんをキタまで、他の人たちを新幹線の駅や駐車場に順次送り、ツアーはお開きとなった。
「今日は時間が無かったですけど、今度、れいらさんのメイクと着せ替えしてあげましょうか?」
 と別れ際に都路さん。ぜひお願いします! あのセンスはどうにかせんと‥‥あ、そうだ。楽しさの余り皆さんに一言言うのを忘れたな‥‥「歯に青海苔ついてますよ」と。