バトルロイヤル浦島太郎アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
7.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/14〜06/17
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●本文
☆舞台「バトルロイヤル浦島太郎」あらすじ☆
海際の小さな村。のんびりと釣り糸を垂れている一人の男。
「ふわあ‥‥」
あくびをしかけた彼の、表情がひきしまった。粗末な着物の袂で、彼専用の極小通信機が、小さな振動と音で、着信を伝えたのだ。
「おはよう浦島君。新しい任務を説明する。
どうやら「海の王国」で、最終兵器「玉手箱」が開発され、そのスイッチを海の王トリトンの一人娘・乙姫が握っているらしい。
キミの任務は、急ぎ乙姫の手から「玉手箱」を奪い、破壊することだ。
なお、この火打石型極小通信機は自動的に消滅する」
‥‥
ちゅど〜ん!
‥‥
男の名は浦島太郎。村では気のいい猟師さんで通っているが、実は彼は元凄腕の国際スパイ。戦いに明け暮れる日々に疲れて引退を表明し、この小さな漁村でのんびりと心身を癒していたのだが‥‥
数時間後、太郎は村はずれの小さな小屋を訪れていた。
そこには、太郎がかつて所属していたスパイ組織「MI6(エムアイシックス)」の、科学開発担当者「Q」が彼を待っていた。
「やあ太郎。秘密兵器『釣竿型ワイヤーガン』を用意しておいたよ」
「‥‥もう、スパイとしての自分を捨てたつもりでいたのにな‥‥」
ほろ苦く笑う太郎。
だが、「Q」は、言った。
「最終兵器『玉手箱』は、開くと、浴びた人間を急激に老化させる恐るべき毒ガスが仕込まれているそうだ。トリトンはそれを使って、陸の世界ものっとるつもりらしい。
そんな恐ろしい事態を停められるのはキミだけだ」
「Q」は浦島の手に釣竿型ワイヤーガンを渡し、そして告げた。
「ネバーセイ・ネバー浦島」
そして太郎は、「Q」がもたらした極秘情報によって、MI6に侵入して捕獲されていた、海の王国のスパイ・亀を逃がしてやる。
これは「海側に寝返った」とみせかけて、海の王国に二重スパイとして入り込み、乙姫に接近するための作戦であった。
見事に亀をだまして、トリトンのいる「竜宮城」へたどりついた浦島太郎は、鯛やヒラメ達美女軍団に守られた乙姫とついにめぐり合う。
「‥‥貴方が、海の王国に協力してくださるという人間? お名前は?」
乙姫は嫣然と太郎に微笑みかける。
対する太郎もまた、スパイとしての長年の経験から来る余裕の笑みで答えるのだった。
「俺の名は浦島。‥‥浦島太郎だ」
浦島太郎はさっそく乙姫を始めとする竜宮城の美女達に接近しつつ、海の王国の裏事情を調べ始めた。
そして知ったのは、一筋縄ではいかない、陰謀渦巻く海の世界の真の姿。
「玉手箱」の開発者であり、海の王国を牛耳ろうとするマッドサイエンティスト・「ドクター・ノオ」の存在。
また、乙姫を亡き者にして海の王国の王位継承者の座を手にしようと狙う、乙姫の異母姉妹・人魚姫のアリエルも不穏な動きを見せる。
最終兵器「玉手箱」はどうなる!?
そして太郎と乙姫の恋の行方は!?
☆募集キャスト☆
○浦島太郎‥‥MI6(イギリス情報局秘密情報部)のモテモテ&エリートスパイ。釣竿としても使えるワイヤーガン片手に、海の王国の陰謀を阻止しようとする
○乙姫‥‥海の王トリトンの娘。最終兵器「玉手箱」のスイッチは彼女の手にある。陸の住民達による海汚染を不満に思っている。
タイ、ヒラメ、カレイなどの源氏名を持つ美女の軍団を従える女戦士。
○アリエル‥‥乙姫の異母姉妹。王位継承者の座を狙う(現在の王位継承者は乙姫)。人間の世界にあこがれている。
○トリトン‥‥海の王国を治める王。陸世界の住民達による海汚染に怒り、陸世界への侵攻を目論んでいる。
○ドクター・ノオ‥‥トリトンのおかかえマッドサイエンティスト。
※他の登場人物は某有名スパイものの登場人物もしくは御伽噺系など、架空の人物限定でお願いします。その上で、何かトンデモな設定を付加していただくとなお楽しく暴れられると思います。(例:「夜になるとムーンライトパワーで正義の味方・白鳥仮面に変身するオデット姫」など)
※舞台ですのでホンモノの水はほとんど使えません。特殊効果はある程度照明など舞台効果でカバーできます(「全身からオーラを放つ」はバックから強力な白ライトを当てる、など)。
後はパントマイムによる目線や動作で補ってください。
上記の方法で表現できると思われることがらは、何でもアリです。
ただし、ほとんどの場合、舞台演出についての詳細な説明はしません。
リプレイはほぼ舞台上のストーリーで進行する予定です。
●リプレイ本文
●陸の国から来たスパイ
竜宮城は、陸の国から来たあの男の噂で持ちきりだった。
「俺は太郎。浦島太郎(=烈飛龍(fa0225))だ」
陸の国で捕らえられ拷問にあっていた斥候の亀を逃がしてくれた英雄でもあるその男は、たくましい体躯にシャープな顔立ち、大人の男の色気で、たちまち美女軍団の注目の的。もちろん、美女軍団の筆頭である乙姫(=角倉・雪恋(fa5003))も彼に胸をときめかせる一人。
「陸の住人の貴方が、海の汚染問題に理解を示してくださるとはありがたいわ」
「陸の住人にとっても、海は大切な環境の一部だ。海は地球表面の温度の激変を防ぐだけでなく豊富な栄養塩を含みプランクトン等の微生物を(以下略)」
浦島は、その研ぎ澄まされた頭脳をフルに駆使し、ここへ来るまでに叩き込んだ海とエコロジーについての知識を披露し乙姫を信頼させる。
「面白いお方‥‥ずっとここにいてもよろしくてよ、貴方が望むなら」
乙姫は、浦島に心を許し始めていた。浦島は、まず言葉巧みに乙姫に陸の世界の情報を吹き込んでいった。
「乙姫さんには真珠のアクセサリーが似合う。だが、サファイアの輝きでその肌を飾ったところも見てみたいものだ」
「さふぁいあ‥‥?」
「地上にしかない、貴女の瞳によく似た色の宝玉さ」
「そう‥‥地上にも、そんな不思議な宝物があるのね」
乙姫は、次第に陸の世界のことを知りたくなり、浦島から聞く地上世界の情報を楽しみにするようになっていた。そして陸上世界についての様々な情報を得るにつれ、
「最終兵器玉手箱を発動させる前に、陸の世界のことをもっとよく知らなければならないのではないかしら‥‥重要な文化遺産もあるし、海の汚染のことを気にしている人間もいるそうよ」
そんな言葉を、美女軍団の側近であるカレイのレイカ(=幹谷 奈津美(fa5689))に漏らすようになっていた。もう一人、美女軍団にはカレイの美女香麗(かれい=冬織(fa2993))がおり、同じカレイ同士混同せぬよう、便宜上源氏名を区別している。
そしてレイカの方はといえば、最初のうちこそ太郎を出迎えて、
「ここは竜宮城、死人に口なし」
と意味不明ぽい脅し文句を口にしつつ、海を汚染する陸の人間がなぜこの竜宮城に、と不信の目で見守っていたが、しだいに信用するようになっていた。
そして同じくカレイの香麗もまた、
「浦島様の情報と頭脳があれば、戦わずして地上世界を竜宮の支配下におさめることも可能かもしれませんわ。浦島様には最上級のおもてなしをさせていただきましょう」
と浦島を厚遇する。最上級のもてなしがなぜ煎餅と梅昆布茶なのかよくわからないが。今一人の美女軍団員・ベル(=ベルシード(fa0190))も、
「頼もしい殿方が現れましたわね」
と嬉しそう。
だが、そんな乙姫と美女軍団にイライラと不信感を募らせる者がいた。
玉手箱の開発者、ドクター・ノオ(=伝ノ助(fa0430))である。
「う〜、早く玉手箱の効果が見たいのにあのお姫様ときたら‥‥いっそボクが海の世界を乗っ取っちゃった方が早いかもなぁ」
ダブダブの白衣にボサボサの髪、見るからに科学おたくのノオは、海の汚染もエコロジーも知ったこっちゃなく、自らの開発した兵器の効果を見るのが生きがいという危険な男。
そして今一人の危険人物。
それは乙姫の異母妹、人魚姫の人魚姫アリエル(=あずさ&お兄さん(fa2132))。
もともと陸の世界に憧れている彼女は、浦島太郎にのぼせ上がり、
「私にも陸の世界に憧れてるのっ☆ ねぇ‥‥私を地上まで攫ってもいいのよ?」
と積極的に誘惑。だが、海千山千のスパイ浦島が、任務遂行を捨てて早熟といえ少女の誘惑に乗るはずはなかった。
「フッ‥‥バーボンの一杯も酌み交わせるオトナの女になってから、出直してきな」
ガーーーン!! 海の王国の末娘にして第二王位継承者として、蝶よ花よと育てられた我がまま娘アリエルは生まれて初めての拒絶に遭って呆然。そして、可愛さあまって憎さ百倍と、自分を拒絶して乙姫とはなんかいい感じの浦島に憎悪を募らせるのであった。
「何よ、貝ビキニ姿(ぇ)も可憐なこの私がストライクゾーン外れてるっていうの!? 超あったま来た!」
怒り心頭のアリエルは、父トリトン(=九条・運(fa0378))に、最近お姉さまったら太郎の影響で陸の世界は魅力的だーなんて言ってるけどーそんな人に海の女王たる権限があるのかしらねー等と愚痴りまくる。それを小耳に挟んだのがドクター・ノオ。
「何だって‥‥それじゃ何時まで経っても実験が出来ないじゃないか!」
怒りの余りご乱心のノオは実験室で暴れまくる。フラスコが一つ割れ、他のフラスコ内の薬品にその飛沫が入り、化学反応してゴボゴボと泡だち、紫色の霧となって立ち上りノオの全身を取り巻いた‥‥がすぐ収まったのでノオは気付かない。(←伏線)‥‥ひとしきり暴れて怒りの収まったノオは、アリエルをそそのかす作戦を思いつく。
ノオはアリエルの失恋話を巧みに聞き出し、
「‥‥なるほどね。ではボクがご協力しましょう。交換条件付ですけどね」
と、持ちかけた。
「太郎と乙姫に、この毒薬を飲ませてください。そうしたらボクが作った、DNA変換薬を差し上げましょう。コレを飲めば貴方は人魚から人間になれるのです。」
「マジ!?」
目を輝かせるアリエル。
「本当ですとも。ただしこの薬を差し上げる代わりに、地上に出たら玉手箱を使って地上世界の人間どもを老化させ無力化して頂きます。まずは玉手箱を手に入れるために、この毒を‥‥太郎には人間がこの世界にいる為に必要な薬だと、乙姫には汚れた水を体内から浄化する新薬だと偽って飲ませなさいな。一口で奴らは海の藻屑になりますよ」
●浦島太郎は二度死ぬ!?
アリエルはその夜、乙姫と太郎に近づき、
「これ、海の王国の健康飲料なの」
と言葉巧みに毒を飲ませようとする。乙姫が毒のグラスを唇につけかけた時、太郎の目が光った。
「その前に、これを試させてもらおう」
と、新兵器開発担当Qからもらった、試薬キットで簡易成分分析を試みる。猛毒反応が出て、太郎はアリエルを捕らえるべく、じりじりと近づいた。
「どういうことか、説明していただけますかな」
「‥‥私、昔からお姉さまなんか大嫌いだったのよっ! 太郎も王位継承者の地位も、私の欲しいものは何でも奪ってしまうんだからっ! こうなったら、玉手箱で全てをお姉さまから奪ってやる!」
アリエルは太郎の手を振り払い、乙姫の部屋に侵入し、かねてノオが赤外線透視装置で調べておいた見取り図に従い玉手箱を見つけて奪い去ると、浜辺へと猛スピードで泳ぎ去り、DNA変換薬をゴクリ。アリエルは見事、人間に変身。
「やったわ! 次は玉手箱で地上を滅亡‥‥」
「そうはさせない!」
ヒュッ。太郎の釣竿形ワイヤーガンから、銛状の刃先がついたワイヤーが放たれ、アリエルの腕を絡めとる。だが、ワイヤーで縛られながらもアリエルは玉手箱を手放すまいともがいた。
「離して! つま先でだってスイッチは押せるのよ、私にかすり傷でもつけたらすぐにスイッチを押すわ‥‥! 太郎、貴方と一緒に滅びるなら本望だもの。こんなに貴方を愛している私に、どうして振り向いてくれないの?」
「自棄を起こすな。君はまだ若すぎる。我欲と愛の区別がついていないのがその証拠だ。もっと生きて成長するんだ」
太郎が説得を試みていると、横合いから白い手がのびて玉手箱を奪った。
「おーほっほっほ、玉手箱は頂いたわ!」
見れば、竜宮美女軍団の一人、ベルがいきなり着物を脱ぎ捨てて、ドレス姿に。
「私、実はCIA直属のスパイ、シンデレラですの。あなたのおかげでこちらも仕事をやりやすかったですわ。ですからそのお礼に、海の王国にこの爆弾を‥‥っ!?」
ドゴッ。
鈍い音を響かせて、ベルのみぞおちに美しい脚がめり込んだ。ベルがあえなく昏倒する。その背後に、十二単を着た人影が立ち、含み笑った。
「残念ながらこちらが真打ですわ」
美女軍団の一員にして乙姫の忠臣、香麗が玉手箱を奪い取り嫣然と微笑んでいた。
「私、実は月の王国から海の王国と陸上を手中に収めるべく潜り込んだスパイでしたの。その名も『かぐや姫』と申します」
ジャキッ。
乙姫は衣装の裾をまくりレッグホルスターから愛用のコルトを抜き、かぐや姫に照準を合わせた。
「身中の虫、というわけね。でも玉手箱を渡すわけにはいかないわ」
「無駄よ!」
かぐや姫は十二単の袖から三日月形ナイフを取り出し、ダン!と放たれた銃弾を刀で叩き落す。かぐや姫は美女軍団時の制服姿よりも、十二単姿の方がはるかに俊敏な動きを見せるのであった。
「とどめですわ‥‥かぐやムーンフラッシュ!」
かぐや姫が月世界の必殺武器・ムーンレーザー光線銃の引き金を引いた。
「危ない!」
太郎が猛然とダッシュして乙姫を伏せさせ、レーザーの狙いを逸らした。再び狙いをあわせるかぐや姫。
「無駄なあがきはおよしなさいませ。この地球を征服する覇者は私。私の前に皆ひれ伏すが良いわ!」
「フッ、その姿で征服者を名乗るつもりか」
「え? ‥‥あーれー!」
かぐや姫はふと自らの胸元を見下ろし、狼狽した。帯を使わず紐一本結ぶだけの十二単でアクションを演じたため、ハラリいやん状態。その隙に、太郎が釣竿型ワイヤーガンの引き金を引いた。
玉手箱をワイヤーが絡めとる。宙に浮かんだ玉手箱をレイカがキャッチした。
「これで形勢逆転だな」
玉手箱を手に入れた太郎が宣言した。かぐや姫はレイカに取り押さえられた。
「太郎殿、よくぞ取り戻してくださいました。さ、玉手箱をこちらへ」
手を差し伸べる乙姫に、しかし太郎はかぶりを振った。
「俺は実は陸世界のダブルスパイなんだ。騙したのは悪かった‥‥だが、陸世界も海世界も地球の一部に過ぎない。互いに滅ぼしあうなど無意味なんだ。分かってくれ」
太郎が素早く、玉手箱の中を開いてスイッチの導線を切り離し、無効化した。
だが、海中からザバリと浮かび上がるもう一つの影。
「ええい、せっかくの最終兵器実験が、キミが来たせいで‥‥!」
ドクター・ノオが、何かの薬品が入った試験管を太郎に投げつけた。太郎はかわしたが、すぐ傍の岩に試験管がぶつかり大爆発。爆風で太郎も吹き飛ばされる。
「た、太郎殿!」
乙姫の悲痛な叫びが空しく海の上を流れていった。
それっきり、太郎の行方はわからなかった。
●ネバーセイネバー太郎
それから数ヶ月。乙姫は行方不明の太郎を思いつつ、戦闘により乱れた海の王国の復興に力を尽くしていた。
白いイルカの被り物にオリハルコンのメリケンサックを身につけたトリトンは、
「太郎は陸世界のスパイであったのか‥‥だが、彼は我々に貴重な教訓を残してくれた」
波打ち際に、太郎のメッセージを書いた石碑を建て、その下に玉手箱を永遠に封印した。
「太郎殿の為に、未来永劫決して玉手箱を開けさせはしませぬ‥‥。あの時貴方が助けてくださった亀こそ、この私です。貴方が陸世界からのスパイだしても、あの時の優しさは真実と、私は信じています」
石碑に、乙姫は祈りを捧げる。その誓いは永遠に守られ、海の王国に平和が訪れた。
かぐや姫は月に強制送還されたがそこで一念発起。月面でウサギを飼育して、餅つきを仕込み、観光産業で富を築いたという。
そして浦島太郎は‥‥
爆風に飛ばされた彼は、海の上をしばらく漂流したが、やがてたどり着いたところは鬼が島。だが鬼共は人里から奪った宝物で安楽な生活を送るうちに、だらけ切って体脂肪でぶよぶよ。そのあまりの惨状を目にした太郎は、軍隊式エクササイズを鬼達に伝授した。
「自分を信じろ! あきらめるな!」
厳しくも暖かい指導で、太郎は軍曹と慕われ、やがて鬼達に惜しまれつつ母国へ帰った。贈られたたくさんの宝物と共に。エクササイズはのちにDVD化され全世界で人気を博した。
さてこちらはドクター・ノオ。
太郎と同じく爆風に吹っ飛ばされたが、海上を漂っているところを美女軍団に捕獲され、竜宮城に連れ戻された。しかしその時の彼は狸の耳とふわふわ尻尾が突き出ており、彼を捉えたレイカを始めとする美女軍団を驚かせた。
「実はあっし、かちかち山の狸でやんす」
ノオの正体はかの有名な悦楽殺人鬼ウサギによる「かちかち山連続放火殺人事件」の犠牲者で、おばあさん殺しの罪を着せられた上、泥舟に乗せられて海に沈んだ狸であった。
「なんてキュートな尻尾なのっ、もふらせてぇ〜」
美女軍団がよってたかってノオの尻尾をもふもふ。ノオが暴れた際、実験薬のフラスコが壊れて混ざり合い、あらゆる女性を魅了しもふもふせずにいられなくする「モフフェロモン」が合成された。そしてガス化したそれは、ノオの体に染み付いていたのだった。
「もふもふ〜、もふもふ〜」「ああああ〜」
日々美女達にもふられまくったノオはすっかり人柄が丸くなり、若布から抽出したコラーゲンで美容薬を作ったりと、善の科学者になった。
人間化したアリエルは同じく爆風で吹っ飛んだが、たまたま大きな船の上に落ち、その船の主だった人間界のエリックなる王子様に見初められて結婚。だが、その直後エリック王子はぽっくり亡くなり、アリエルは巨万の遺産を管理する未亡人となってこの世の春を楽しんだそうな。アリエルに逆らう者は海の藻屑に変えられるというなぞめいた噂が流れたが、真実を知る者は誰もいない。