おそとでごはん。アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/25〜06/29
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●本文
僕の名前は五十嵐京、という。新米マネージャーである。
ちなみにマネージメントしているのは従妹で、かけだし女優の泉本れいら。
僕達はもともと、親族同士で経営する大衆演劇一座に属していたのだが、座長であるれいらの父親が体調を崩したために一座は解散し、それぞれ別の道をゆくことになった。
親族同士肩を寄せ合ってこなしてきたこれまでの仕事と違い、僕一人に付き添われて上京しての芸能界デビューは心細いに違いない。
‥‥だから。
れいらのために取ってくる仕事は結構、僕なりに選びに選んでるつもりだ。
なのに、頬杖ついて企画書のコピーをめくりながら、従妹は言う。
「んーなんかこの仕事、嫌―」
ってなんで!?
自分で取ってきてなんだけどさ、これって結構いい仕事だよ!? 楽しそうだし。
しかも僕らの出身地である関西――奈良県でのキャンプ&アウトドア体験取材。空気は綺麗だし、新緑の季節だし、川が近いから釣りも出来る。
おまけに、この企画はキャンプ用品メーカーの宣伝の一環なので、ダッチオーブンや飯盒、バーベキューセットなどのキャンプ用品を貸し出してもらえて、アウトドア料理を皆でわいわいと作るのが主眼。
いいじゃないか? 青春って感じの企画じゃないか!?
なのにれいらは言うのだ。
「‥‥だって、下駄履いていかれへんやん」
れいらはふだん、常に下駄履きなのだ。この子のおやっさんが健康法として小さいときから履かせてたせいなんだが。
僕は諄々と諭した。
女優として生きていく道を選んだ以上、いつかは下駄とも決別しなくてはならないと。たとえば下駄でシンデレラ姫の役がこなせるか。下駄でジュリエットが演れるか。答えは否だ。
さあ、スニーカーを買って、体験取材に行こうじゃないか! 今こそ下駄卒業の時!
「‥‥でもなんか山で泊まるのん嫌やなー」
まだれいらは不満そう。なんで!?
「だって、キャンプ行ったときって、夜になったらたいてい誰かが怖い話始めるんやもん!」
それが本音かー!
言い忘れたけど、れいらの苦手は高いところとオバケだった。
怪談と肝試しはキャンプのときの夜の楽しみなのになあ‥‥
それじゃ、一緒に体験取材に行くほかの人たちには、れいらの聞こえるところで怖い話をしないようにお願いしよう。それでいいだろう?
「‥‥でも、山ってオバケ以外にも怖いもんおりそうやん! 熊とかオオカミとか」
いや、山の中って言ってもオートキャンプ場だから。めったに熊は近づかないと思うし。ニホンオオカミって、それ絶滅の噂。
「‥‥雪男は?」
‥‥あのね。今、初 夏 だ し。
僕があきれていると、れいらは突然開き直った。
両手を腰に当ててキッと僕をにらみすえ、
「ほな聞くけど、雪男が絶対に冬しか出ぇへん、って証拠あるんか!?」
‥‥‥‥えーと。
‥‥
‥‥
って、真剣に悩んでる場合じゃなかったっ!
ともかくこれは仕事だ、アウトドアの楽しさを広く世間の皆さんに知らしめるためにも、レッツゴー!
「問答無用! とりゃー!」
「ふえ〜〜」
僕は従妹のえりがみを掴んで、体験取材の地へと赴いたのだった。
☆ごあんない☆
キャンプ用具の宣伝がこの企画の主眼なので、めいっぱい用具を駆使して楽しんでください。
テントはもちろん、ダッチオーブンを使った料理とか、ランタンを灯しての夜の酒盛りとか。ロープと網で魚すくいとか。
料理は、一応下記に予定メニューを載せておりますが、変更・追加可能ですので他に希望がありましたらどうぞ、ただし希望表明はお早めに。
(あまりに手間がかかる、高度すぎるなどの料理は却下されることもあります)。
ダッチオーブン、飯盒などすべてのキャンプ用具は雑誌社からの貸し出し品です。要返却ですので、焦げ付かせたりしないように注意しましょう。
れいら、キョー兄とも料理はそこそこできます。大衆芸能一座って、年中通して合宿状態で交代で炊事当番をするところが多いらしいです。
ただしキョー兄はちょっと盛り付けが乱暴、れいらは熊やら何やらに怯えて鍋をひっくり返す可能性ありとそれぞれに困ったちゃんです。
あと、熊やら何やら怖いものがいそうな気もしますが、NWは出ないことになってます。一説によると、NWは関西弁が嫌いらしい(嘘)。
☆予定めにゅー☆
○豚の角煮(豚ばら肉の塊を甘辛く煮込んだゴハンに合うオカズ)※ダッチオーブン使用
○焼きりんご ※バーベキューコンロ使用
○白ご飯‥‥日本人だからやっぱり白ご飯。※飯盒使用
○夏野菜の焼きびたし(野菜を網で焼いてダシに漬け込んだものです)‥‥※バーベキューコンロ使用
●リプレイ本文
●いい感じ?
やっぱりこの仕事、引き受けて良かった。
なんたって面子が頼もしい。
「きゃんぷだほーい、きゃんぷだほーい、きゃんぷだほいほいほーい♪」
なんて、ロケバスの中でずっと歌っていた姫野蜜柑(fa3982)さんはアウトドア通らしく、飯盒でのご飯の炊き方なんか特に詳しい。
「どっこらしょ。この辺にテント設営しときましょかいな」
ガタイのいい伊藤達朗(fa5367)さんは力仕事を率先してやってくれる。
「わあ因幡っさーん♪ 久しぶりー」
れいらは4月にドラマ共演した因幡 眠兎(fa4300)さんと再会出来、嬉しそうに寄っていく。十代にしか見えない因幡さんだが、キモが座ってるというのか数段大物ぽい。
「ぃゃー‥‥遊んでるだけでお金貰えるって良いよねぇ‥‥オイシイお仕事だよ、うん」
ロケバスを降りて伸びをすると、背負ってきたリュックをズシッと僕に押し付ける。
「女の子は重いもの持てないんだよ〜ガンバレ男衆」
「って、因幡さんと戦ったら僕が絶対負けると思いますよ!?」
『ワルキューレリーグ』での戦いっぷりを思い出して僕は反論したが、貫禄負けだ。
荷物運びを終えた僕は、高遠・聖(fa4135)さんを、彼の持参した蚊遣りをセットしてお手伝い。
「師匠、蚊取り線香は各テントの前に設置しましたよー」
高遠師匠は以前仕事でご一緒して以来、僕の心の師匠だ。高遠師匠は今日も、顔が売り物である女優陣に虫刺されの痕でもつけてはいけないと、スプレーに蚊取線香の他、傷病対策の救急セットを持参している。この心配りは見習いたいと思う。
「ありがとう‥‥でも師匠って言う呼び名はちょっと」
「えっ、破門!?」
「って弟子承認した覚えもないからなあ‥‥」
と高遠師匠は困惑顔。いいんです、この思いが通じるまで師匠と呼ばせて頂きます!
と燃える僕に、何やらすっごい荷物を手にした雪城かおる(fa4940)さんが優雅に挨拶を送ってくれた。
「ごきげんよう、五十嵐さんですね? れいらさんとお知り合いの歌劇団のお友達から、五十嵐さんとれいらさんによろしく言っておいてほしいと伝言を預かっています」
「ご丁寧にどうも。雪城さんは彼女とは正反対のタイプみたいですが、れいらとも仲良くしてやってくださいね」
しかしジーンズ姿なのにインド系ハーフゆえの彫りの深さもあいまって、なんだか舞台衣装ぽい華麗さがある。華麗すぎて、アウトドア装備を固めた面々の中、微妙に浮いている。
そしてれいらの奴、どうもこの前のイベントで変なスイッチが入ったらしい。
ロケ地に着いて早速あたりを探検し、靴を脱いで川にざぶざぶ入ってみてる月岡優斗(fa0984)君の周りをうろうろしつつ、
「今日ってさ、れいら、ゆーとと初めて一夜を共にするわけやな? ドキドキー」
何だその裏声。それ以前に意味わかってんのか。
「変な言い方するなっっ!! キャンプだキャンプ! インドアよりアウトドアのが好きだから引き受けただけだし‥‥ま、その、れいらがいるからってのもあるけど‥‥」
ま、優斗君もまんざらじゃないぽいから、れいらを強制送還する必要はなさそう。
「今夜のおかず増やしてやっから、期待して待っておけ!」
なんて、優斗君も自らハードルをあげない方がいいと思うんだが。
「お魚お魚―にゃんにゃんにゃん」
姫野さんが目をギンギンさせて串焼きの用意をしている。れいらも同様。恐るべし猫獣人達。釣れなかったら、たぶん爪制裁。
「あたしもやってみよう♪ 食べられる魚が釣れたら、おかずが一品増えるもんね!」
と、咲夜(fa2997)さんも見よう見真似で釣り糸を垂れる。
「あ、スジエビがいますよ。可愛いでしょ」
川瀬の生き物を捕まえて見せてあげると、咲夜さんは目を輝かせた。
「それ、美味しい? あ、でも小さすぎて食べるとこないねー」
食い気ばっかりかい! 僕は思わず、映画「雪女は見た!」のヒロイン女優にツッコミをいれそうなった。
「来たーーーッ!」
優斗君が釣り糸を引き上げた。やった、本日最初の釣果!
「‥‥」
れいらと姫野さんの視線が白い。釣れたはいいけど、それは指の先位の小さな鮒だった。
「こんな小っこい魚、塩焼きになる前に、炭になってしまうやん!」
「こうなったら責任とって、尻尾で魚獲ってもらおうかっ!」
「すると何か? 俺が尻尾こーやって水の中に入れるとな、魚が藻と間違って寄って‥‥‥こねーよ!!」
「やってみなきゃわからないよ」
「そうや、期待させた責任取ってもらおーやないか!」
優斗君、女子二人に水中に投げ込まれそうになるの図。
追い込まれた優斗君はシャツも脱いで、ざんぶざんぶと水の中に入り、
「えいっ!」
ばしゃばしゃとれいら達に水をかけて反撃。
「うにゃーっ」
「ひゃああ〜」
「キャッ!?」
真剣に釣りをしている咲夜さんにもとばっちりが。
なんだか部活のノリで楽しいけど、これでいいのかなあ。
「今日の仕事はキャンプ用品の宣伝だろう? 購買意欲をかき立てるには、キャンプに行きたいと思わせる事が必要なんだから、キャンプ自体は宣伝を意識せず楽しむだけ楽しんで貰ったほうがいいだろう」
と、水滴の飛んだメガネを拭いながら高遠師匠。師匠がそう言うなら目いっぱい楽しむべきだろう。
テントを張って中に荷物を運び終えた伊藤さんが、川の様子を見て腕まくりをし、
「わいも魚釣りさせてもらおかな。何か釣れたらもうけもの位のつもりで戦果は期待せんで欲しいんやけど、な」
「えっ、力仕事のあとだし、少し休憩してくださいね?」
「いや、腹減らしのええ運動になりますわ。夕食、女性陣が張り切って料理してくれるみたいやから、期待させて貰います」
と、にこにこしているので、伊藤さんにも釣竿を渡す。咲夜さん達の可愛いジーンズ姿もいいが、ガタイのいい伊藤さんのアウトドア姿は大自然の背景に映えるようだ。
「師匠―、シャッターチャンスです!」
「はいはい、ありがとな」
高遠師匠はシャッターを切る。師弟関係はなしくずしに成立しつつある。
● 輝けアウトドアご飯!
日が傾く前に、写真写りと作業の手間を見越して夕食の準備にかかる。各自、薪を集めに方々へ散ったが、予想通りれいらがやたら怖がって大迷惑。
「く、熊とか出たらどないするんよー!?」
「大丈夫、熊や猪ぐらいなら、私が拳で撃退するよ」
と、因幡さんが慰めてくれる。‥‥エッ!?(冷や汗)
「雪男は?」
「れいらちゃん‥‥多分雪男は居ないと思うよ」
因幡さんのほっぺたがヒクヒク。
「そやけどそれ、科学的に証明できる!?」と半泣き状態でれいら。
「あのさ‥‥」
と、斜め前あたりに視線を逸らしながら、優斗君。
「こーやって行けば、怖くねーよ。熊でも何でも俺が守ってやっから」
手を繋いでれいらを引っ張っていく。
「で、でもゆーとが食べられたら困るから熊が出たら『せーの』で一緒に逃げてや?」
「わ、わかったから‥‥くっつきすぎんなっ」
仲良く? 薪集めに行く二人を見送って、僕達も手分けして作業を開始する。
疲れる前に水汲みをしておいた方がいいよ、とアウトドア通の姫野さんが言うので、僕と伊藤さん、それに師匠の男性陣でペットボトルに水をキープ。高遠師匠が、貸し出し品の規約と、リストチェックしながらテーブルを広げ、ダッチオーブンなどの料理器具を取り出している。
「おーい京、ダッチオーブンはシーズニングしとけって書いてるぞー」
「ああ、空焼きですね」
広げられたテーブルに、雪城さんがふぁさっと自らのバッグから出したクロスを広げる。光沢のある純白にレースのそれは、ダマスクと見た。中央にはずっしりと銀製の蜀台と、これも銀と思しきカトラリーが並ぶ。
「ちょ‥‥雪城さん、今日のオカズは豚の角煮なんですけど‥‥」
「ええ、楽しみですわね。セッティングはセザール・リッチ式でよろしいですか」
セザ‥‥何? 庶民出身の僕は答えに窮して脂汗を流したが、
「必要十分かと思います」
と言ってみた。雪城さんは外見だけじゃなく正味の姫だったらしい。
さて本格的に料理開始。
咲夜さんは遠慮して、配膳や後片付けをやるという。一度緑色の味噌汁でとある演劇界の偉い人の命を危うくしたので料理は自主規制しているのだとか。なぜ緑色か気になるところだ。
「ダッチオーブンってはじめてみるかも」
と姫野さんは長い髪をきゅっと結んで料理にかかる。
「最初に豚を蒸して、と‥‥後から大根とか生姜を入れて水を足す、と。そこから煮込んで柔らかくなったら、醤油、みりん、砂糖にお酒を適当に‥‥てな方法でいいかな?」
「時間を短縮するために、蒸して脂を抜く代わりにおからを入れて煮込みます。ダッチオーブンは保温性が高いから、最初に調味料をぶち込んでも味が染みますよ」
と説明するのも楽しい。便利だねーっと目を輝かせる姫野さん。
「飯盒で飯を焚くのはそんなに難しくはない。基本的にナベで焚くのと同じなんで、停電で電気炊飯器が使えないって時の為に、覚えておくのもいいと思うぞ」
高遠師匠がメガネを曇らせながら、れいらに説明しつつ、火にかけた飯盒を見守っている。
姫野さんに角煮を任せ、僕は野菜の焼き浸しに、れいらは焼きりんごに専念。煮切ったみりんとかつおだしのタレで食べる焼き浸し、喜んでもらえただろうか。れいらの方も、ホイルに包んだりんごに、コンロでじんわり火を通し、別鍋で作ったカラメルソースをかけるだけのシンプルなデザートだが、意外と好評で良かった。
「外で食べるご飯ってやっぱり美味しいよね♪」
食べてる時、本当に幸せそうな咲夜さん。
「焼きりんごってフレーズ自体が美味しそうだしね!」
姫野さんもうなずき合う。
「れいらの料理、結構いけるじゃん」
優斗君に言われたれいらは、
「こ、これからも良かったら、時々収録のときとか、差し入れしたるわ」
と赤い顔で言っていた。
そんなほんわかムードとは関係なく、
「しまった、角煮があるのんやったら焼酎の一本も下げてくるべきやった」
と伊藤さんがつぶやく。その埋め合わせのように角煮をオカズに、飯盒炊きのご飯をよく食べていた。姫野さんと高遠師匠のお陰か、このご飯の「おこげ」加減が絶妙で、瞬く間に飯盒はカラになる。雪城さんのせっかくのテーブルテッセィングには申し訳ないが、ほぼ全員がフォークとスプーンぐらいしか使っていない。
いまだに信じられないが、雪城さんはナイフとフォークで優雅に角煮を食していた。その模様は高遠師匠が激写していたようである。
● おやすみなさいの前に
日が暮れた。テントで眠りに入る前に、焚き火を囲んでおしゃべり団欒タイム。
「せっかくのキャンプだから、キモ試しか怪談でもしたいとこだが‥‥怖いのが苦手な嬢ちゃんがいることだし、業界の噂話でもするか」
と、高遠師匠。
「うん、まあ、嫌がる人に無理やりは良くないね。用意してたんだけどなー、「あかい女の子」のおはなし。でもれいらちゃんが苦手なら内容はヒミツ。だってこの話すると、絶対夢に見るもんね」
姫野さんが無邪気に言うが、それを聞いたれいらがいらない方向に想像力を駆使して騒ぐ。
「ひいぃーっ! 絶対夢に出る赤い女の子って‥‥それ聞いただけでれいら、うなされるー!」
「そうそう、キーワードだけでもこんなに怖がってるんだから絶対怪談は無しな? 俺も怪談で余計なゲストを呼び寄せて、雑誌に載せられない写真が撮れても困るからな」
高遠師匠。それフォローじゃないです。
「ひぃぃー! 心霊写真てホンマにあるんー!?」
うるさいな、全く。しかしやさしい皆さんは怖さを忘れさせようと別の話題にシフト。
「幽霊と言っても、最近は萌え系幽霊なんていうのもあるそうですわ。可愛い女の子の幽霊が人間の殿方と恋に落ちたりする、ツンデ霊なんていうのもあったりして」
歌劇団仲間で話題になっているというギャグ怪談を披露してくれる雪城さん。そういうネタが好きとは意外な一面だ。
「っていうか、あたしは怪談より優斗君とれいらちゃんの出会いのきっかけが聞きたいな。怪談を封印したお返しにね。あたしには縁がない話だし、もう興味津々だよ」
と、咲夜さんが振ってくれた話題に、うきうきとのっかるれいらであった。
「えっ‥‥聞きたい? それはな、れいらが標準語を特訓しようとしてた時、協力してもろた先輩芸能人の一人が優斗やってん。最初はれいら、優斗と喧嘩ばっかりやってん。だってセンス悪いとかさんざん言うねんもん。でな、この間のイベントの時にな‥‥」
「あーーもういいだろっ、恥ずかしい」
優斗君が大声を上げてストップをかけるが、女性陣は完璧スルー。餌食だな、ありゃ。
「なんや、オッサンのついていけん話題になったみたいですなあ。やっぱり焼酎持ってきたらよかった」
ぼやく伊藤さんに、
「ビールやったらありますよ」
僕はクーラーボックスの中に隠してた缶ビールを取り出して薦めた。
「なんですな、オッサンにはオッサンの楽しみ方があるっちゅうことで‥‥乾杯!」
「乾杯―!」
テントは男4人・女3人・女3人で分かれて就寝するようスペースを配分して張っており、女性テントのひとつはれいら抜きで怪談解禁空間となっていたようだ。
その怪談解禁空間で寝た人が翌朝言うのだが。
深夜に野太い男の声でお経を唱える声が聞こえたとか。
僕ら男性陣は確か優斗君を除き、ビールでほろ酔いになって爆睡してましたが‥‥もしかして‥‥
「ひぃぃぃー! 出たんやー!」
れいらの怪談恐怖症は当分治りそうもない。