ざ・釈明会見アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
07/12〜07/14
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●本文
‥‥しまった‥‥!
収録の打ち合わせを終え、プロダクション街をそぞろ歩いていた時、突然名前を呼ばれて振り返った貴方は、思わずそうつぶやいた。
「参ったなあ、そう嫌な顔をしないで下さいよ」
にこにこ‥‥いや、この男の場合は「にたりにたり」と表現すべきか‥‥笑顔で、そいつは近づいてきた。
下手に逃げたらどんな噂を流されるか知れたものではないので、貴方はとりあえず立ち止まり、当たり障りのない挨拶の言葉を口にする。
「ああ、どうも。先日のご活躍、拝見しましたよ。結構、反響があったみたいですねえ」
にたりにたり。
この男、芸能レポーターだ。あつかましい人間の多いその職業の中でも、「すっぽんの」と異名をとる男。
名前は「桜木卓(さくらぎ・すぐる)」という。
思えばデビュー当時から、貴方は桜木に目をつけられていたのだろう。
デビューしたばかりのぺーぺーの新人に丁寧に名刺をくれ、その後もおりおりに有名店のケーキを差し入れてくれたりするから、ずいぶんいい人だと思っていれば、何のことはない、貴方の方こそおいしい獲物だったのだ。
貴方のマネージャーがうっかり気を許して、例のネタをこの男に漏らしたと聞いたときから、不吉な予感はあったのだが。
桜木は持ち前の押しの強さで、貴方にとくとくと話し始めた。
「いやあ、お会いできてよかった。
今度、「週刊ハートビート」で特集記事を寄稿することになりましてねえ。
ぜひ、貴方へのインタビュー記事をその中に入れたいのですよ。ハートビートは下世話なゴシップ誌とは違い、質の高いエンターティメント誌でしょ? とはいえ、エンターテイメントである以上、やっぱり読者の求めに応じて多少のゴシップ記事が期待されるわけですよ。そこでねえ‥‥」
桜木は貴方に近寄り、耳元にそっと囁いた。
「例の『疑惑』についてインタビューさせてくださいよ」
貴方は反射的に首を横に振った。
このスッポン野郎に、プライバシーを面白おかしくつつかれるのは気に食わない。
しかし、当然スッポン野郎は引き下がらなかった。
「そうですかあ? マネージャーさんから聞いた例の件ですがね、ファンってのはよく見てるもんで、ディープなファンの間では、もう半分事実みたいに言われてるみたいですよ?
僕も貴方のファンの一人だから、ファン仲間同士で話してて気づいたんですがね」
ここぞと桜木は『マネージャーさんから聞いた』に力をこめる。
とんだ「ファン」がいたものだ。
貴方としては、桜木自身がその噂をばらまいて、情報の価値をつりあげようとしているのではないか、と詰め寄りたい気持ちをこらえるのがやっとだ。
「下手に隠し通して誤解を受けるよりは、早いことさっくり釈明してあげたほうが、ファンの皆さんのためにもいいんじゃないですかねえ。それに、『週刊ハートビート』なら、変な捏造を加えたり、怪しげなコメント付の、不鮮明な写真を証拠に採用したりはしませんし。
さっきも言ったように、僕も貴方のファンの一人なんですからね。ダンマリを決め込むのと、きちっと釈明会見するのと、ファンを喜ばせるのはどっちかをようく考えて、協力しちゃくれませんかねぇ」
貴方はため息をつく。
下手に逃げを打ったら、絶対しっぺ返しをしてくるつもりだ、この男は。
芸能人の本能で、貴方は敏感にそのことを察知していた。
敗北をみとめ、取材に協力する旨、桜木に伝えた。
「そうですかあ、助かりますよ。きっと、いい記事にしてみせますよぉ!」
桜木はドングリ目をギラギラさせて、嬉しそうにプロダクション街の中に消えていった。
貴方は見送った。
この桜木に気を許し、言わなくてもいいことまで教えてしまったマネージャーに、心の中で必殺のカカト落としをしながら。
スッポン野郎を舌先三寸でごまかすべきか、それとも正直に答えるべきか。
ファンや事務所のスタッフに、かける迷惑の少ない解決方法を考えながら、貴方はプロダクション街を後にした。
●リプレイ本文
7月某日発売「週刊ハートビート」エンタメ総力特集!
〜桜木卓(以下、「桜」と表記)の「芸能界・アノ疑惑を斬る!」〜
● 美少女レポーター・リーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)一人カラオケにハマる!?
リーゼロッテ嬢は最近カラオケボックスに通いつめているという。そんな彼女にレポーター桜井が直撃したところ、意外な答えが返ってきた!
リーゼ「はい、主にレポーターとして早口言葉などの発声練習として通ってます」
桜「実は音痴だから他人に歌を聞かせたくないんじゃないかという噂ですが、真相は?」
リーゼ「音痴ではないけれど、まあ普通かな。ただレポーターの仕事に誇りを持っていますから、別に上手くなる必要もないと思ってます。だから、今後も歌手でもないのに番組で歌うような真似はしません」
向上心があり本業一直線の彼女、今後の活躍が期待される。
●熟年ハードロッカー・モヒカン(fa2944)の過去の悪行!?
(編集部注:モヒカン氏の名誉のため、インタビュー記事の一部を伏字にしてあります)
桜「ファンの間で伝説となっている、モヒカンさんの過去についてなんですが、趣味が色んな×を剃ることだというのは、真実なんでしょうか」
モヒカン「うむ、釈明の余地は無い、総て事実だ。こうなったら腹をくくろう。‥‥自分は、××で××賛成者の××を×していたバイカー集団の一員だった。後悔はしていない」
桜「あのー‥‥そういうご意思を公言される勇気は素晴らしいですが、反感を抱く人も多いと思いますので発言は慎重になさった方が」
モ「まあ、その活動目的うんぬんはともかく、ラブ&ピースの名の下に、×を剃り剃りしてるうちに、その行為自体が楽しくなっていたというのが事実だ。やはり×を剃るのは電動より手動のが手ごたえがある、こう逆毛にゾリッと来る感触が×××に××と」
意外な趣味が露呈したモヒカン氏。副業に羊の毛刈りを勧めたいところである。
● モデル兼音楽家、椿(fa2495)に女装趣味疑惑!?
本誌インタビュアー桜井が直撃したところ、椿氏は十段重ねの弁当箱を抱えて登場、昼食を取りつつ答えてくれた。
椿「インタビューはお昼食べながらデ失礼しマス。食事スル時間もないくらい忙しいの、桜木サンも俺の『ファン』なら知ってますヨネ? 『四次元胃袋』とかその手の仇名もいっぱいデス」
桜「今のお言葉で、椿さんがとても素直な好青年とわかってうれしい限りです。芸能界では『ファン』と称して利害目的で近づくのは常套手段ですから、真に受けて頂けて光栄です。ところで噂の、女装趣味疑惑の方なんですけども」
椿「元々モデルで女装の機会もあったケド、頻度が増えたのは、「Battle the Rock」に女装で出演してからカナ? その時は「Aile」ってゆーユニットで参加して、ばっちり優勝――ってのは言うマデもないカ‥‥『ファン』の桜木サンなら知ってるだろーし」
桜「はい、スーパーモデルよりも長身の十頭身美人でしたな。幸いエスコートの方も長身でしたが。私服でも女性ものを多くお持ちだとか?」
椿「プライベートでも時々女装するコトあるのは事実デス。でも趣味じゃなくテ、人目対策の所謂変装。男の格好ダケじゃバリエーション狭くて、すぐバレちゃうんだヨネ」
桜「ほほう、しかし変装なら老け役とかお腹にタオルを詰め込んで太ってみるとか色々ありそうですが。要は女装も決して嫌いじゃないという印象を受けました。ところで恋愛もがんばっておられるそうで」
椿「でも片想いなのデ‥‥『ファン』なら応援して下サイ(笑)」
桜「はい、応援してますとも。得恋でも失恋でも、とにかく面白い記事になる結果に、と言う意味で(笑)。『ファン』ですから」
今後の彼の動向に注目したい。
●あの噂は真実だった!? 篠田裕貴(fa0441)&鳥羽京一郎(fa0443)
二人の「恋」は演出か、それとも‥‥二人のユニット「Ventus」のレコーディングの合間に、桜井が直撃インタビューを敢行した!
鳥羽「スキャンダルには気をつけていたつもりなのだが(溜息)。まあ、隠していてもバレる時はバレる、そういうことかも知れんな」
桜「逆に釈明する機会があってよかったじゃないですか。で、どうなんでしょうか? お二人が禁断のカップルだっていう噂の真実のほどは」
篠田「(鳥羽氏としばらく目顔で語り合い)名前が売れるのも、良いことばかりじゃないね。追いかけるのも追いかけられるのも苦手だから、そっとしておいて欲しいんだけど‥‥‥‥えと(咳払い)、前にライブで交際宣言を強制的にさせられたと思うけども、そのときに男が好きなわけじゃなくて、その人個人が好きなんだって言ったと思うけど」
桜「と、いいますと鳥羽さんとの仲は事実なんでしょうか。その、男同士‥‥」
鳥羽「そもそもこの世界には俺の好みに合致する女性が『一切』居ないからな。女で興味があるのは、裕貴とともに妹のように可愛がっている存在くらいだな」
桜「えっ、でもお二人だったら言い寄る女性も数知れずでしょ?」
鳥羽「ん、まあな。だがこいつに関しては、自分が初めて絶対に手に入れたいと思った存在だ。なんだかんだで無事手に入れられたわけだが、誰にでも優しい上に、無自覚なもので苦労するよ。まあ、そんなとこも惚れた弱みで可愛く思ってしまうところが‥‥」
桜「ざざーっ」
鳥羽「何だ今の音!?」
桜「私が大量の砂吐いただけです。後で海岸に捨てます」
篠田「ご、ごめん、京一郎の奴俺様だから‥‥」
桜「そういうところにゾッコンですか」
篠田「だって恋心って自分じゃどうしようもなくて‥‥ってこれ、オフレコにしてっ! 削除しといて!」
桜「その辺は編集長の意向でなんとも、うひひ。ところで篠田さんには日本人名なのに日本人じゃないらしいというタレこみもありますが」
篠田「うん。これは芸名。正確に言えば、カタルーニャ自治州バルセロナ出身の日・カタルーニャ人ハーフ、だけど。日本に滞在するために就労ビザ発行して貰ってるから、間違いなくスペイン人だよ。あえてスペイン名は公表しない、プライベートを守るためにもね」
普通、美形男性に恋人が出来ると女性ファンの嫉妬を買いまくるが、この場合はどうなのか! 次週続報記事「Ventus鳥羽・俺様プリンスに乙女モード篠田ゾッコン!?」を待て!!
●「舞台界の黒船」エミリオ・カルマ(fa3066)にも女装趣味疑惑!?
『獣人ドクターズ』シリーズ等で注目されるエミリオ・カルマに衝撃の女装趣味疑惑!本誌では、彼がドレス姿で週末に踊り狂う趣味があるとのタレこみを元に、その真相に迫った! プロダクションの控え室で台本を下読み中の彼に直撃したところ、意外な答えが!
エミリオ「ごふぅっ!?(と、彼は桜井の差し入れたアイスコーヒーを噴出した)何ソレ、マネージャーは『ダンスサークルに通ってることを話した』としか言ってなかったけど!?」
桜「同じ教室の生徒さんから、エミリオ君がある日口紅塗って現れたという情報がありまして」
エミ「それはニューハーフ役で舞台立った後、化粧落とす時間なくて直行したからだよ。あれは、そーゆー趣旨だったし‥‥日常では一度もやったことないよ?」
桜「そうですかねー。他にもエミリオ君が子供時代から女装に目覚めてたって言う目撃証言がちらほら」
エミ「‥‥誰に聞いたの、それ。っていうか、それ、俺の妹と間違えてるんだと思うよ。子供時代、よく間違えられたから」
桜「ダンスには相当ハマってるようですね。練習重ねて、だいぶ上達されました?」
エミ「んー‥‥チョットハ、マシニナッタカナ(なぜか棒読み口調になり)」
桜「では最後に、同じダンス教室に通う熟女様達からコメントをいただいておりますので、紹介します。
『この前はタンゴの相手役してもろて助かったわあ。いつも明るいエミリオ君にオバチャン一同癒されてます☆ ものは相談やけど、オバちゃんのツバメにならへん?』」
エミ「‥‥‥‥‥‥!!」(真っ青)
●衝撃! あの「ムチャジャック芸人」チェダー千田(fa0427)に才女の恋人!?
イベントLSPで、なんとあのチェダーが舞台音響を手がける才女に告白されたという噂が! 某スタジオ内でプロレスごっこ収録控え室に入るチェダーに直撃!
桜「先日の芸能界の一大イベント『LOVE SPRING PARTY」で、告白されたそうですが、その後恋の進展は?」
チ「ちっちっ、アレはほら、テレビの中のお約束。大体あんた、デートなんて、先日のラジオの企画っきりですよ」
桜「しかし告白タイムの喜びようがただ事じゃなかったようですが」
チ「いやそれは、そりゃー‥‥指名してもらって嬉しくなかったっちゃぁ、ウソだけどサ。大体、俺みたいなヨゴレ芸人には勿体無過ぎるだろー。ありえねーって」
桜「ですよねー」
チ「いや、そこは『そんなことないですよ』だろッ!?」
桜「だって、マジで超意外ですもん。しかもお相手は舞台を中心に活躍されている音響技術スタッフでしかもバイリンガルの才女。実はその彼女をここにお呼びしてあります。どうぞ、F・O嬢!」
チ「えぇっ!?」
F嬢「確認も何も‥‥チェダー氏付きのゲストとしてここへ来たことで十分理解してもらえると思うのだが。まずはお友達から、健全なお付き合いを希望している」
チ「ちょっ‥‥あっ‥‥えっ? マジでいいの? 嬉しいけど‥‥」
F嬢「な、何度も言わせるな‥‥こちらこそ、LSPでの告白、受け入れてもらってとても嬉しい‥‥(ポッ)」
桜「ってF・Oさん、こんな男に人生託して大丈夫ですか!?」
チ「こんな男たぁ何だ!」
桜「住宅をリフォームすれば廃墟化し、プロレスごっこに参加すれば高確率でモザイク画面の入る男ですよ」
チ「芸人はヨゴレてナンボだ! つか、しっかり視聴しとるんやないかい!」
桜「そんな態度を取ってると、F・Oさんが「織石フルア」さんだってバラしますよ!?」
チ「って、バラしとるがな!? アホかっ!」
桜「アホとは何だこのムチャ芸人!」
チェダー氏のツッコミに本誌インタビュアー桜井は頭突きで応戦、しかしすんでのところでかわされ壁に激突していた模様。
●若手舞台俳優・伝ノ助(fa0430)にも女装趣味疑惑! どうなる噂の新恋人!
あのオリエンタル・ダークネスシリーズや演劇習慣で演技の幅を見せ付けた伝ノ助に女装疑惑! それにしても多いぞ、女装疑惑!
桜「なぜかメイド服姿でライブハウスの音響されてたという噂が流れていますが?」
伝「あー‥‥あれね。妹に頼まれて、その日はオフだった事もあってお手伝いに行ったんすよ。メイド服は予想外でやしたが。にしても‥‥なんで一日だけの、それも裏方作業してた時の事が知れ渡ってるのでしょう?」
桜「そりゃー貴方。よく言うでしょう、『壁に耳ありアイアム・メアリー』。で、なぜ女装?」
伝「しゅ、趣味じゃないっすよ!! ただその日は、とあるおやっさんにメイド女装させようっていう趣旨だったんで、彼をノせるためにやったことで」
桜「そうですか〜? ではこの写真についてご説明いただきましょうか(と、長髪カツラの伝ノ助氏が同じく女装の友人にメイクされている写真を取り出す。)」
伝「どこからこれをっ? ‥‥ったって、別にやましいことは何もないッス! これは、元々は芸幅を広げようって事で、試しにやってみたって感じっすね。確かに普段と全く違う格好の自分というのが面白くて「楽しい」とは感じやしたけど、決して「趣味として」というわけじゃないっす。試練っすよ。メイド服も、実の妹の頼みだと中々断れなかったせいっすよ。普段あまり頼ってくれない子が珍しく頼ってくれた時に断れやす?」
桜「うーん、確かに織石嬢は自立してそうな感じですもんね。なるほど真相は兄妹愛と役者修行でしたか。ところで、そんな大切な妹の織石嬢ですが、LSPでカップル成立されたチェダー氏についてはどんな印象を?」
伝「んー‥‥妹も良い年ですし、彼も良い人そうっすし、進展するならそれも良しだと思いやすよ?」
桜「『良い人そう そんなあいつが 犯罪者』‥‥ワイドショーでよくある一幕を俳句にしてみました。特に意味はありません」
チェダー「(突然乱入)お義兄さんッ! 二人の仲を認めて下さってありがとうございますっ! 今度フルアさんメシ誘っていいですか? フルアさんの好きなものと、どっかオススメの店教えてくださいよーッ!」
桜「って、まだおったんかい! 早よ帰れ! これから伝ノ助氏の新恋人疑惑をツッコむ予定なのにっ!」
伝「えーと、フローは漬物と梅干、あとは麦ごはんとか‥‥」
フルア「よ、よかったらこれから行きつけの店に帰りに一緒に寄らないか?」
桜「およしなさいって、どうせ目薬入りのカクテルとか飲まされるのがオチですよ?」
フルア「すまないが憶測で口を出さないでくれないか。こっちだって、予想もしてなかったし、今後の事はなってみないとわからない‥‥としか(赤面)」
伝「と、いうことなのでチェダーさん、妹をよろしく。泣かせたら許しやせんが(笑顔)」
桜「‥‥そうですか。ではこれより、密着実況レポート『ムチャジャック芸人チェダー、初デートの一部始終』に移行したいと思います。ご期待くだ‥‥」
チ「やかましいわこの下世話レポーターがッ!」
桜井レポーターはチェダー氏の初デートを密着取材すべくチェダー氏にボディスラムで反撃するも、チェダー氏のヘッドロックにより阻止された。
体を張る芸人は意外と体力に恵まれているという事実を確認する結果となった。