フロのワンダーランド☆アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
小田切さほ
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/03〜09/05
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●本文
大阪の某地に、その奇怪な建物はある。
あえてその建物を定義するならば、「大衆浴場」あるいは今流行の「スーパー銭湯」ということになる。
しかし、「なんでもテンコ盛りにするのが吉」という、大阪ならではの謎の常識によって、その浴場はとんでもないことになっていた。
建物は1Fから8Fまであるのだが、その1フロアごとに、さまざまな種類のフロが趣向を変えて存在しているのだ。
1階は、シャワーつきの洗い場もある、まあ普通の日本式フロ。純水を沸かした湯で満たされた浴槽は、ゆうに世界水泳大会が開催できる広さである。
2階は、「アロマ風呂」。ビャクダンから薔薇、ラベンダーなど、あらゆる種類の香りの風呂がある。薔薇風呂なぞは、花びらが浮かべてあって、ひととき女王様気分に浸れるというのがウリである。
3階は、「流れる風呂」。流れるプールみたいにゆるやかな流れがついていて、ここにゴムボートに乗ったり背泳ぎで浮かんだりして、ぷかぷか漂っていると、ほのかな湯気のぬくもりもあって、極上の気分になれるという噂。
しかしあまり長時間漂っていると、生きてるか死んでるか人が不安がるので要注意。
そのほかすべり台がついてたり、遊び心満喫の風呂である。
4階は、滝風呂。つくりつけの岩壁から、滝状になった風呂が流れ落ちてくる。それに皆、修行者のように打たれる趣向である。ちなみに、この風呂に入ったおかげで何か悟りを開けたという人はいない。時々、滝に打たれながら読経する人がいる。
5階は、「薬草風呂」。アロマ風呂と効用面は似ているが、決定的な違いはドロドロ感と香り。
アロマ風呂は高雅な花の香りがするが、こちらは「ヨモギ蒸し風呂」はまあいいとしても、「ドクダミ」だの、「高麗人参」だの、土臭いような青臭いような、微妙な香りが多い。
しかも、ドクダミは、すりつぶした葉っぱを混ぜてあるとかで、湯がドロドロである。湯上り姿が「怪人」ぽくなるので注意。ヨモギ蒸しはヨモギを蒸した蒸気を、照る照る坊主みたいなマントを羽織って浴びるやつ。
7階は、今話題の「岩盤浴」フロアである。
九州の噴火火山から取ってきた溶岩岩を温めて、そこへ横たわるというもの。マイナスイオンと赤外線で健康効果があるらしい。
そして問題の最上階。ここは「熱湯風呂」になっている。ここに漬かる人は、漬かれた時間を計測され、最長記録を更新した人は、同じフロアにある高級レストランで使える食事券がもらえる。
今のところ、最長記録は3.4秒。
◆
とある雑誌社とマネージャーさんの陰謀により、貴方はその「スパワンダーランド」の体験取材に挑むことになった。
題して「体験! 世界の大温泉〜大阪某地に出現したあらゆる種類のお風呂が楽しめるスパ・ワンダーランド!」。
選ばれた芸能人一人ひとりが、それぞれ一種類の風呂を選んで、入浴体験をレポートするという企画。
あ、ちなみに今日だけは、皆さんすっぱだかではなく一応水着をまとって入浴することになっている。
雑誌には写真も掲載されるので、そのための配慮である。
写真映りのよさそうな水着をマネージャーが用意してくれている。あとは着替えて入浴し、取材を敢行するまで。
ともかくも貴方とマネージャーは、勇気を奮い立たせて貴方はその奇怪な建築物‥‥「スパワンダーランド」という‥‥の門をくぐった。
すると。
「いらっしゃいまっせー、ご案内いたしまーす♪」
豊満な肢体にド派手な金ぴかのビキニ姿をまとった女性が「ようこそ」と書いたプラカードを持って、にこやかに貴方を出迎えた。
‥‥いや、そこドン引きしない。
この人は湯あたりでのぼせてアレな行動に走った人ではありません。
れっきとした、この「スパワンダーランド」専任、風呂ガイドである。
あらゆる種類の温泉・入浴法に通じた、風呂スペシャリストの「内海さん」なる女性なのだ。
「スパ・インストラクター一級」なる民間資格を有しているらしいが、詳細は誰も知らない。
「どのフロのフロア、じゃなかった、どのフロアのおフロをご希望ですか〜?」
とにこやかにオヤジギャグを発するあたり、やっぱり湯あたりでアレじゃないかと疑いたくなったりもするが。
「こちら、案内図になりま〜す」
内海さんはクルリとプラカードを裏返す。するとそこには、この「スパ・ワンダーランド」の案内図が描かれていた。
「うーん‥‥」
貴方は迷う。1階はオーソドックスだが、取材される面でオイシイのは最上階の熱湯風呂か。でもせっかくだからアロマ風呂も捨てがたい。
「じゃあ‥‥ここ」
貴方は、プラカードの一箇所を指差した‥‥
●リプレイ本文
●1階・日本式
最初のフロア、日本式風呂に案内されたのは美森翡翠(fa1521)。長い髪をきっちり三つ編みにし、頭に巻きつけきっちり水泳帽子をかぶったスクール水着姿でちんまりと浴槽の縁に座る。胸には「4くみ みもり」と書いた名札がついており見る者の郷愁を誘う。翡翠は真面目にあちこち観察し、鋭い質問を投げかける。
「あ、お風呂場はスロープが付いててバリアフリーですの‥‥純水の沸かし湯って仰ってましたけど、温泉としての効能ってあるんですか?」
「地熱で熱せられたお湯ではないので、温泉の定義からは離れていますが、最適温度を常に保ち、赤外線効果をプラスするため竹炭を適量入れておりま〜す」
説明に頷きながら、翡翠はぽちゃんと全身漬かる。
「深さは、ないですのね‥‥それにしても広い、ですのぉ‥‥」
真ん中の、噴水みたいにお湯を吹き上げるところをじっと見て、
「あの、温泉プール並みに広いです、真ん中まで行くのは、歩くより泳いだ方が速いですの。本当はマナー違反ですけど‥‥」
今日は人がいないからいいですか? とかわいくお伺いをたてるヒスイに、ワンダーランドのスタッフから許可が下り、ヒスイはぴょんとプール底を蹴って泳ぎだす。
と、何のいたずら心か、一生懸命水を掻くヒスイの足裏を浴槽縁にしゃがんでくすぐる内海さん。
「こちょこちょ〜こちょこちょ〜」
「きゃ‥‥あはははっ、やぁ‥‥沈んでしまいますの〜!」
という、無邪気に水と戯れる(もがいてるともいう)翡翠の姿がカメラに収められた。
撮影終了後、
「時間に余裕がありますから、他のお風呂も入ってみたいです」
と翡翠は内海さんについてゆく。更衣室でふくらませた浮き輪とマット型浮き袋は既に装着済みであった。
●2階・アロマ風呂
大胆なオレンジの花柄のセパレート水着姿の都路帆乃香(fa1013)は、
「水着で撮影するとは思いませんでした‥‥(汗)」
と、バスタオルにくるまって登場。
じゃあ素っ裸の方がいいですかと失礼なことをのたまうカメラマンの頭上に、内海さんがすかさずプラカードを振り下ろしたがそれは取材には関係ない。
「丁度薔薇風呂が用意してございますので、ぜひご入浴くださいませ〜。水着のイメージもぴったりかと思いま〜す」
と内海さんに案内され、薔薇の花びらを浮かべイランイランオイルをたらしたゴージャス風呂へ。だが眼鏡を外し、さらに風呂の蒸気で頬が自然な薔薇色になるからとノーメーク状態で写真を撮られる帆乃香は自信なさげだ。
「わ、私って、べ、別にプロポーションが良いわけでもありませんし、おまけに今回の取材で唯一既婚者ですし、最年長ですから」
いや人妻マニアのためにもぜひ脱いでくださいと失礼なことをのたまうカメラマンに再び内海さんがプラカードを振り下ろしたがそれは取材には(略)。
浴槽に浸かって香りでリラックスされたところを撮影してはという内海さんのアドバイスで、雑誌には、幸福な若奥様そのものの表情で、はにかみつつも薔薇の花びらに埋もれる帆乃香の姿が掲載されたのだった。
●3階・流れる風呂
「どもども、『流れる風呂』の案内を務めさせていただく葉桜リカコ(fa4396)です〜」
オレンジ色のハイネックワンピース水着をまとったリカコはぴょこりとお辞儀する。
流れるプール、いやお風呂を楽しむ意欲満々でマット型浮き輪を用意して早速お風呂へ。
「葉桜様〜、ご感想はいかがですか〜?」
「はい〜、このお風呂はですね〜、ほかほかの丁度良いお湯加減設定されており、緩やかな流れがついていますのでこーやって、マッタリできます〜」
と、ゆらゆら漂って行くリカコ。
「次はすべり台で滑ってみられますかー? 葉桜様―?」
「にゅにゅ‥‥はうっ、ちょっと気持ち良くなってました」
いつの間にか気持ちよく眠っていたリカコは内海さんに呼びかけられて目を覚まし、慌てて「子供から大人の方まで楽しめるお風呂だと思います」とコメントした。
雑誌には、浮かびながらほんわかと転寝する彼女の写真が掲載された。
● 4階・滝風呂
シンプルだがカットの大胆な黒水着に身を包んだ神楽(fa4956)は、4階フロアの扉の前で、雑誌向けのコメントを取材陣に語る。
「あたしが紹介するのは、四階にある、この滝風呂。つくりつけの岩壁から、滝状になった風呂が流れ落ちてくる形式に成っていて、それに入浴者は修行者のように打たれる趣向になっているそうよ」
中に入ると、岩風呂の壁から清冽なしぶきをあげつつ湯がなだれ落ちてくる。
激しい勢いで落ちる湯に打たれると圧力と温度がツボに刺激を与えるのか、鍛えぬいた神楽も時折眉をひそめて体をくねらせる。
「落下エネルギーによるマッサージ効果が期待できそうよ。痛いところとかに集中的に当たるようにするといいのかしら? んっ、あ、‥‥結構‥‥来るわね」
大胆に背中の開いた黒い水着姿とあいまって、ちょっと色っぽいレポートとなった。
内海さんがプラカードで、1階の撮影を終えて同行していた翡翠の視線を遮っていた。
●5階・薬草風呂
「えーと‥‥ドクダミ、高麗人参、ヨモギにセンキュウ、トウキ、ジュウヤク‥‥
とりあえず、ここに載ってるのを全部入れてみようかな、せっかくだし」
薬草の元を全部ブレンドしようとする姫野蜜柑(fa3982)だが、
「薬草には、東洋医学で言う『陰』『陽』の性質がございますので、全部混ぜても意味ございませ〜ん」
という内海さんのガイドにより、全種混合を諦めて一番ステキな香りの高麗人参の風呂を選択。植物の根っこの匂いのエッセンスみたいな泥臭い香りのどろどろ風呂につかる蜜柑は、
「さあっ、ここは僕が引き受けた、皆は先に進むんだ‥‥!」
撮影を終えて他のフロアを見学に来ていた神楽や翡翠、帆乃香・リカコ達は、蜜柑に言われなくてもあまりの濃厚な香りに逃げ腰だ。
「おばけだぞ〜〜」
「「「キャー!」」」
他の見学者達を、薬草湯まみれの全身緑色の姿で脅かす蜜柑の写真が掲載された。
●6階・謎風呂
6階エレベーターホールで、内海さんに出迎えられた阿野次 のもじ(fa3092)の全身を、闘志がオーラとなって漂っていた。細い腰に両手を当てて、彼女はビシリと宣言した。
「私の名前は阿野のもじ。好きな作家はゆでたたこ!
故にただの温泉に興味はありません。このフロアー内にもし宇宙風呂、未来風呂、異次元風呂があったら私のところで案内しなさい。以上」
「はい、6階には「ジャングル風呂」がございますのでよろしければご案内いたしま〜す。これも異次元風呂の一種かと」
そして目にしたのは、ハリボテの岩で高い崖に模した飛び込み台と、南国産の植物がむせかえるような謎空間。時折キャッキャとお猿が行過ぎる。
「ジャングル風呂ですので、ほんもののお猿が時折ご一緒しますがよろしいですか?」
妙齢の乙女の危険を心配する内海さんの言葉に、のもじはきっぱりと応えた。
「フッ‥‥取材も終盤、場所と話で言えばここは星米男VS阿修羅男なポジション。ここで華麗に散れば本望ッ!」
いや、別に散らなくてもいいですよ。という声に耳も貸さず、黒のセパレート水着の腰に巻きつけた柄パレオをマントのように翻し、のもじは駆け出した。
「黄金ビキニのお姉さんには負けないのだっ!」
「危ないですの〜」
他フロア見学中の翡翠の悲鳴と同時にすってーん! と転ぶのもじ。その背中を猿が駆け抜ける。それを追うように、のもじは躊躇うことなく飛び込み台へ。
「阿野次様〜、大丈夫ですかあ〜〜」
手をメガホンにして問う内海さんに、仁王立ちののもじも叫び返す。
「八重の温泉塔制覇〜〜! YAHA〜〜〜!」
飛び込み台に絡まった、つる草を模したロープにつかまると「アーアアー!」と気合声と共にザバア! と激しい水しぶきをあげて飛びこむ。のもじがクロールで岸辺に着くと、猿達がキャツキャッとその周りを取り囲み跳ねる。
「キャキャ、キャキャーキャ!(女王様だー!)」
ちなみに、発行された雑誌記事の見出しには、「野生のプリンセスふろ〜ら姫登場!」の文字が躍った。後で聞けば、ジャングル風呂は野生の猿は危険だと言う意見もあり、一時閉鎖を検討中だったとか。
「6階って賑やかですね〜。何があるんでしょうね〜」
「んー‥‥なんだか知らない方が幸せなような気がしますね〜」
先に上の7階でハーブティを飲みつつ、ドスンバタンキャッキャと下フロアからかすかに漏れる異様な音に都路さんと葉桜さんはまったり語っていたのでした。
● 7階・岩盤浴
爽やか笑顔で7階岩盤浴フロアに現れた慧(fa4790)は、ライトグレー地に青と白のラインが入ったトランクス水着姿。
「岩盤浴って女の人が行くイメージがあったけど、最近は男性でも入れるのがあるんだね。っと、下に敷くバスタオルはこれくらいの大きさでいいのかな」
岩盤浴は初体験だからと、内海さんにガイドを求める。
「十分でございます。あと、15分おきに休憩室で体を休め、水分補給が必要でございま〜す」
なぜか内海さんの声が一オクターブ高い。案内されたフロアの広さに慧が目を見張りつつ、バスタオルを敷いて最初はうつぶせに寝転ぶ。
「‥‥ああ、これ気持ちいいね。じんわりとあったかい感じ。マイナスイオンなのかなぁ。いいね。身体の筋がほぐれていく感じがするかも」
ほやーんとしながらも仕事を忘れず感想をきっちり述べるあたり、さすが好青年といったところ。
「はい、次は仰向けになってくださませ〜ミュージシャンは背筋を労りませんと」
手取り足取りガイドする内海さんの世話焼き方が尋常じゃない気もするが、素直に仰向けになる慧。
「はぁ‥‥背中の凝りが取れるね。気持ちよすぎて眠っちゃいそう。内海さん、寝ちゃったらごめんなさ‥‥」
ほんわか笑顔のまま、言葉が次第にむにゃむにゃになり‥‥うとうとしていた慧がふと目覚めれば、間近に内海さんの顔が。しかも後頭部に違和感。
「‥‥え”?」
「のぼせちゃいけないと思って膝枕してさしあげましたが、何か?」
にっこり笑う内海さん。慧は飛び起きて、「あ、ありがとう」と口ごもる。
ちなみに、撮影現場の隅っこで、転寝する慧をじーっと見つめていた清掃員の女の子が、内海さんを睨みつけ、二人の女の間に青い火花が散っていたが雑誌記事には関係ない。
雑誌には、
「女性はもちろん、男性でも気軽に楽しめる施設になってるんじゃないかな。縁遠いと思っている人こそ、ぜひ足を運んで欲しいと思います」
とコメント付きですっきり笑顔の慧の写真が掲載された。
●8階・熱湯風呂
「お食事券ゲット、頑張って〜」
熱湯風呂にためらいもなくチャレンジを申し出た九条・運(fa0378)に、先に撮影を終えた女性陣と慧が声援を送る。女性達の水着姿を、ニヤつきながら鑑賞する運。
「可憐な清純系、健康的な活発系、むっちりとしたグラマー系、淡い粉雪の様なロリ系
バリエーション豊かでタイヘン宜しい!!」
呟きつつ自らは水着の用意を忘れたため、競泳用のややキツめのビキニパンツを借りている。運は食い込みがどうのと苦情を言ったがもう遅い。
もくもくと湯気の立つ熱湯風呂の前で、すばっと肩にかけたタオルを投げ捨て勇敢にも、
「ふ、所詮はタダの熱湯! NWとの戦いで多種多様の責め苦を経験した俺には大した事無い!」
と豪快に飛び込むも、見る見るその全身が赤く染まる。
「運君、大丈夫〜?」
「ナウマクサンマンダボダナン! ナンド・ハ・ナンド・ソワカ!! 臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在! 前!」
湯の中で九字を切りつつ目がすわっている。
「もういい、もう運君は十分戦った! もう、そんなにがんばらないでっ!」
女性陣から悲痛な声があがる。
「俺を誰だと思ってやがるっ‥‥」
運は気丈に言い張るが、次第に辛くなって来たのか、息を弾ませつつ、目を血走らせてうめくように懇願した。
「ぐっ‥‥俺がやり遂げるために、皆の協力を‥‥っ、頼む、10分耐えたら混浴させてくれっ!! ‥‥水着無しで」
「‥‥なんですと?」
女性陣の間をつめたい風が吹き抜けたようだ。
「‥‥がぼっ!」
雑誌に掲載された写真を見ると、やっぱり熱さに耐えかね浮かび上がろうともがく運の頭を、内海さんがプラカードで押さえつけ、その上からふろ〜ら姫が片足で踏んづけ、足や手を他の女性陣(特に名は秘す)が浮き輪やボードで押さえつけており、心優しい皆さんが運の決意に助力を惜しまなかったことが見て取れる。
九条運の熱湯風呂記録は、9分02秒の、最長記録をマークした。
● つはもの達の宴
「九条君ががんばってくれたおかげで、こんなにおいしい食事が食べ放題だなんて。こういうのも役得かしら?」
神楽が、焼肉てんこ盛りの大皿を手に微笑する。ここは最上階のレストラン、最長熱湯風呂記録のおかげでゲットした食事券で、運が皆に夕食を奢っている。
熱湯からあがった後、氷水風呂にすかさずつかったが、まだ全身ひりひりしている上、のぼせたせいで頭がガンガンしているという運はおでこに氷嚢をのせて椅子にもたれている。
「僕、デザートも注文していいよね?」
「うわ、パン焼きたてだ〜」
ひと汗かいてすっきりした蜜柑やリカコ達が旺盛な食欲を見せている。
食前に腰に手をあて、なぜかフルーツ牛乳をごきゅごきゅ飲み干すのもじ。
お風呂でリフレッシュした女性陣はあふれるほど元気だ。
「あ、10分は漬かれなかったから、混浴はなしですね?」
「‥‥ハイ」
内海さんに釘を刺され、小さくなって応える運であった。