特命霊能捜査官アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/08〜04/12

●本文

☆ストーリー☆
 TOMI TVがお送りする青春特撮アクション番組「特命霊能捜査官」では、ただいまキャストを募集中です。
 「特命〜」は、架空の「霊障による事件専門の捜査官」が警察に存在するという設定のアクションドラマです。霊能力ゆえに、悪意ある霊と戦わざるを得ず、しかも周囲の偏見とも戦わなければならない捜査官達。彼らはどんな感情を抱いて捜査に挑むのでしょうか。怒り、悲しみ、それとも? ちょっぴりホラー風味のこのドラマに、あなたも出演してみませんか?

☆ストーリー☆
 警視庁・特命霊能捜査班。それは、特命により結成された、特殊能力を持つ捜査官達のチームである。
その特殊能力とは、「霊能力」。彼らはひとたび霊障事件が起こるや、それぞれの特殊能力と、警視庁超科学研究班(その存在もまた極秘である)が開発した、実体をもたない霊に攻撃できる特殊武器を使い、浄霊に乗り出すのだった。ただし、警視庁内での扱いはあくまで異端でしかない。
 彼らが霊能捜査官である事実は、一般人には極秘となっている上、本来なら協力関係にあるべき普通の警察官・刑事たちからは冷ややかな目で見られているのだ。また、通常の階級制度は適用されず、一律に「捜査官」として扱われる(ただし、捜査班のリーダーは「白瀬捜査官」であり、白瀬捜査官の判断により捜査が進められる)。
 ある日、大企業が立てた超高層ビルで、奇妙な自殺事件が相次ぐ。捜査に乗り出す霊能捜査班。
 そこには恐るべきカリスマを持ち、第二次世界大戦中に死亡した軍人「氷上礼次郎」の怨念が残っていた‥‥

☆キャスト☆
●白瀬(しらせ)捜査官‥‥霊波を断ち切る刀を使い浄霊する。霊の存在そのものに反発しており捜査には厳しい姿勢で取り組む。

●黒須(くろす)捜査官‥‥憑巫(よりまし=霊を乗り移らせる)能力を持つ捜査官。霊と一体化する経験が多いせいか、霊に対しては同情的。

●氷上礼次郎‥‥第二次世界大戦中、「若き軍神」と呼ばれ、恐れられた、強力なカリスマを持つ軍人。終戦直前に死亡したが、日本を軍事大国化し君臨する野望を捨てきれず悪霊化し、日本の支配を狙う。

※上記以外のキャストはまだ確定しておりません。自由に設定を考案の上、ご応募下さい。

 ☆補足事項☆
 捜査官役を希望される方は、どんな霊能力を持つのか配役希望とともに具体的に書いて下さい。
 例:「笛の名手であり、霊を鎮める楽を奏でることができる」「射撃のエキスパートであり、銀の弾丸をこめたピストルで霊を撃つ」など。
 ※ただし、武器はすべてOP文にあるように警視庁超科学研究班が開発したものとしてください。リアル世界の伝承や物語から引用した武器を使ったりすると、著作権の問題があったり、説明文だけで登場時間を食ってしまったりと、採用できない可能性が多々あります。
 劇中での捜査官役は半獣化まで(特殊能力という設定であれば)OKです。氷上役も邪霊化している設定なので、同じく半獣化までならOK。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa1308 リュアン・ナイトエッジ(21歳・♂・竜)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa3141 宵夢真実(23歳・♂・蝙蝠)
 fa3179 和泉 姫那(23歳・♀・猫)
 fa3330 ダース・リィコ(15歳・♂・狸)
 fa3366 月 美鈴(28歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

 とある高層ビル屋上からの、原因不明の飛び降り自殺が相次いだ。
 『彼ら』の出番が来た。
 間もなく警察上層部はそう判断した‥‥
 自殺者の遺体が眠る警察地下の霊安室に、『彼ら』はひそかに呼ばれた。
「お宅ら? 霊能ナントカって。幽霊でも見えるわけ?」
 霊安室に『彼ら』を案内してきた刑事は、珍獣でも見るかのように『彼ら』を見た。『彼ら』――特命霊能捜査班。霊能力を持つ捜査官のチームである。その一人、憑巫の達人・黒須零夜(=蘇芳蒼緋(fa2044))が、その刑事に笑いかけた。
「ええ、見たいわけでもないですが。そういえば、貴方の肩にも恨めしそうな顔をしたのが一人、手をかけてますね」
「ばっ‥‥馬鹿言うな!」
 と言いつつ震え上がった刑事はへっぴり腰で部屋を出た。
 黒須はくすりと猫めいた笑顔を浮かべる。
 もう一人の霊能捜査官・玖珂(=辰巳 空(fa3090))は、自殺者の額に自らのそれを近づける。彼の能力は霊気の流れを「見る」ことである。「魂の目」と呼ばれる特殊能力だ。
「この魂は、ひどく怯えています‥‥相手はどうやら死よりも恐ろしい存在ということですね」
 やがて目を上げた玖珂は言う。
「するとやはり‥‥邪霊がからんでいるようね」
 捜査班のリーダー・白瀬葉月捜査官(=和泉 姫那(fa3179))は眉をひそめた。元来さばさばした性格の彼女にとって、霊だの超常現象だのといった湿っぽい話は好きではない。だが自分の霊能力により、人々を救えることも確かなのだ。
「この人達、まだまだ生きたかったろうに‥‥許せないっすね」
 と、甲斐冬馬(=リュアン・ナイトエッジ(fa1308))は、霊にダメージを与えることができるオープンフィンガーグローブをはめた手をグッと握り締めた。銀髪に青い瞳という目立つ容姿ながら、幼い頃から格闘技を叩き込まれている。
「そうね。ただ、当分の間は刑事課との共同捜査になるわ。軋轢はあると思うけど、皆プライドを持って調査に挑んで頂戴」
 白瀬の声が凛と響いた。

 彼らは自殺の多発するビルに到着した。ロープを張り巡らした自殺現場に入り、鑑識課や、一般の捜査官に混じり、捜査を開始する。
「あ、甲斐さん! こんにちはーっ」
 甲斐の姿を見とめ、一人の少年が笑顔で手を振り、近づいてきた。
 甲斐の近所に住む高校生・藤堂新平(=ダース・リィコ(fa3330))である。以前、霊能捜査班の担当した事件で、命を救われた少年だ。一般捜査官に混じり捜査に訪れた甲斐になつき、くっついて歩くうち、甲斐が霊能捜査官ということが知れてしまい、甲斐の頭痛のタネとなっている。甲斐は慌てた。
「ちょっ‥‥お前、危ないだろっ!」
「えっ何が? 甲斐さん、仕事ですか? 手伝うことないですかー」
「‥‥バッ、バカ! 霊障事件の捜査中なんだ、影響あったらどうすんだよ!?」
 突然、現場を捜査していた刑事達がパトカーに乗り込んだ。どこか機械的な動きである。彼らは、エンジンを乱暴にかけると、パトカーごとビルに体当たりした。凄まじい衝撃音が響く。霊能捜査官達は、ただならぬ冷気を肌で感じた。邪霊の仕業だ。
 長い髪をそっけなく束ねた、ジーンズ姿の女性が近づき、警察手帳を見せ、捜査官達にきびきびと尋ねた。
「捜査一係所属、橘警部補よ。今日は非番だったんだけど、事故らしい物音がしたから、買い物途中で駆けつけたのよ。貴方たち、怪我はないようね。所属は?」
 女性‥‥橘静(=月 美鈴(fa3366))に、白瀬捜査官は自分たちは霊能捜査官であるとを名乗った。
「あなたたちが噂の?」
 言いかけて、静の声が途切れる。静は衝突現場の周囲を歩く、一人の男を目撃していた。
 衝突した車のフロントグラスの破片が散乱する中を音も立てずに。
 しかも男は純白の軍服姿であり、長いサーベルを下げていた。第二次大戦下、軍人そのものの姿である。
『私が見えるのか? すると貴様も、ただの人間ではないな』
 男は切れ長の瞳をした端整な面差しの片頬だけゆがめて笑った。一同は魅了されたように動けなくなった。ひゅっ! と、どこからか二本のブーメランが飛来し、生き物のように空中でくるりと舞った。途端に体の自由が効くようになった静がもう一度見ると、軍服の男は消えていた。
「警部補殿にも見えましたか。凄まじい冷気でしたね。見えない物は怖い、だが見えないはずのものが見えてしまうのはもっと恐ろしい」
 太い吐息とともに、玖珂捜査官が言った。静は思い出した。祖母から譲られて以来肌身離さず持ち歩いている、古ぼけた札が入ったお守り袋。それは悪い霊から静を守ると、祖母は言っていた。
 と、もう一人の捜査官があたふたと駆けつけてきた。先ほどのブーメランの主でもある、桐谷捜査官(=九条・運(fa0378))。彼の特殊能力は、特殊合金のブーメランを使い、邪霊が人やものを操ろうとする時発する霊波を断ち切る『沈黙消去』である。
「遅れてすみません、白瀬捜査官っ! 桐谷ヒカル、ただいま到着しましたっ! 何しろ例の明光学園事件の後始末が長引きまして‥‥」
 頭をかくまだ十代の桐谷は学生刑事である。学園への潜入捜査が主な仕事だが、特殊能力を買われての兼任となっている。
「屋上に黒い霧のようなものが見えます。急ぎましょう。犠牲者が増えないうちに」
 玖珂の言葉で、捜査官達はビルに駆け込む。
 ――屋上には、得体の知れぬ冷気が漂っていた。
「貴方は一体誰? さっさと出てきて正々堂々と勝負しないこと!?」
 白瀬捜査官の声に呼応するように、ただよう冷気が純白の軍服姿に凝結した。
「我が名は氷上礼次郎(=宵夢真実(fa3141))‥‥海軍中尉氷上礼次郎」
 氷上礼次郎‥‥海軍の歴史上では、伝説的な名である。天才的な軍略と、若い軍人たちを惹き付ける指導力を持ち、弁舌さわやかな彼はたちまち軍内でカリスマ的存在になった。だが、老獪な政府要人たちは、若い軍人たちを率いて反乱を起こしかねまじい彼を恐れ、毒殺したのである。
「このビルは風水上、地脈の力を吸い上げる位置にある。私の力を強めるのだ。貴様らは、飛んで火にいる夏の虫というわけだ」
 氷上の邪霊が薄く笑った。邪霊が腰のサーベルをすうっと抜いた。晴眼に構え、振り下ろす。斬れぬはずのそれが、衝撃波を生み出した!
「うわっ!」「きゃあっ!」
 弾き飛ばされる捜査官達。だが、橘警部補の胸の守り袋が輝き、そこから巨大な五芒星が生じ、衝撃波を盾のようにはじき返した。
「な、なんなの今の」
 橘本人が驚いている。白瀬はそんな彼女の肩に手を置いた。
「潜在的な能力者というわけね。いずれにせよ、助かったわ」
 氷上が再度の攻撃の構えをとる。が、そのわずかな隙をついて、突然玖珂が走り出した。
「ここです! ここが氷上の力の源です!」
 玖珂が、屋上の隅にぽつりと置かれた『従軍慰霊』の石碑を差す。自らも携帯している拳銃で何発か石碑に放つが、よほど硬質なのか、びくともしない。
「援護してくれ」
 黒須の言葉に、桐谷が頷いた。黒須が『気』をこめた勾玉をつらねたブレスレッドをはめた右腕をかざした。
「風の『気』よわが腕に宿れ‥‥汝の力は我と共に。いざ、迷いし者を導かん!」
 「気」を憑依させた右腕の拳で、黒須が石碑を粉砕した。
「カリスマだかなんだか知らねーが、他人の自由を奪う根性が気に入らねえぜ!」
 衝撃波で攻撃しようとする氷上に向かい、桐谷が同時に二本のブーメランを放つ。
「くっ‥‥貴様‥‥ら‥‥軟弱なる非国民どもめが‥‥」
 氷上の姿が薄れる。同時に、屋上を締め付ける冷気もやや緩んだ。だが‥‥
「甲斐さぁん−−」
 必死の声がした。先ほどの氷上の衝撃波に飛ばされそうになって、フェンスにしがみついている藤堂新平だ。甲斐の仕事ぶりが見たくてこっそりついてきたらしい。
 動揺した甲斐に、スキが生じた。氷上は薄く笑い、甲斐の体に入り込んだ。
『この肉体、実に良い。貴様等を全て倒し、野望への礎としてくれよう!』
 甲斐の唇から冷徹な氷上の声が響くのを聞いて、一堂は冷水を浴びた気持ちになった。
「攻撃はできない。気絶させるしかないわ!」
 白瀬はひゅうっと風を切って急所を狙ってくる甲斐の拳を、かろうじて避けた。
「か‥‥甲斐さん!」
 新平が叫んだ。何が起こっているのかはわからない。だが直感的にわかる。いつもの、自分が慕っている甲斐の姿とは違うことが。
 黒須がブレスレッドを掴んだ。
「人の自由を奪って作る未来などありえない!」
 冷静な黒須の唇から、怒りの声が迸る。「気」を宿した右腕が、甲斐の攻撃をすり抜けてその腹部にめりこむ。
「き‥‥貴様!」
 「気」ごとダメージをうけた氷上が甲斐の体から抜け出る。
 白瀬が、スーツのベルトから霊を斬る刀を抜き、氷上の霊に振り下ろす。
「第一級邪霊と認定し、消滅を命ずる!」
『わが野望‥‥この国の未来が‥‥こんなところで!』
 悔しげな氷上の断末魔が空を切り裂き、そして消えた。
 人の心を縛る未来よりも、今生きている人と人の心のつながりの方が大切ではないのか。
 そんな思いが捜査官達の胸に去来する。
「よかった‥‥甲斐さん!」
「何がよかっただ馬鹿野郎! 俺はお前のせいでえらい目にっ」
 新平に抱きつかれ、悪態をつきながらも頭をくしゃくしゃ撫でている甲斐の姿を見つめながら。