DARKライダー〜降魔アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 4Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 4.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/22〜09/26

●本文

☆特撮アクションドラマ・『DARKライダー降魔』あらすじ
 そこは聖なる島と呼ばれていた。
 島のほぼ中央にある鷲見山(すみやま)と呼ばれる山は、仏教における「須弥山」(仏教における世界観の中央にある、神の住まう場所)にゆかりがあると言われ、数々の伝説が残る。
 その伝説のひとつが、「天魔」の伝説。
 この山で、奈良時代の昔、ある僧が修行をしていた。だが、「天魔」(仏教用語でいう「悪魔」がこれを誘惑し堕落させた。
 だが僧は仏のみちびきによって、再び仏心に目覚め、罪を贖うために「即身仏」となり、天魔をわが身で封印した、という。
 だが、現在のこの地は、変哲もない漁村であり、人々は漁業と、観光収入でつつましく暮らしていた。
 異変が訪れたのは、数人の観光客グループが、「立ち入り禁止」とされている、海際の洞窟に侵入したときだった。
「やだ、何ぃ? この洞窟。チョーキモい〜」
「なんか生臭い風が吹いてくるような気しない?」
「肝試しといくかぁ!」
 能天気な若者達は懐中電灯片手に岩間の洞窟に侵入し‥‥
「ちょっと誰よ、今触ったのぉ?」
「俺じゃねーよ」
「じゃあ誰よ? っていうか‥‥あんた誰?」
 若者達の一人が、背後をつけてくる怪しい気配に懐中電灯を向けた。
 そのシルエットには角があった。
 悲鳴をあげて逃げ惑う若者達。
 だが翌朝、海際で、血まみれの彼らの死体が発見された。
 
 以来、島には怪しい事件が頻発するようになった。島の人々は恐怖に駆られて、本島へ逃げだす者もいた。
 だが、一人、それと逆行するように、ある人物がバイクを駆り、島に戻ってくる。
 ある事情から島を離れていた「朝吹海(あさぶき・うみ)」だった。
 海は、島の異常事態に驚くが、何かに惹きつけられるように海際の洞窟近くへ。
 海はそこでミイラを発見する。
 ミイラの口が動いた。
「封印が解かれてしまった‥‥天魔を倒してくれ‥‥我と同じ『贖罪』の魂を持つおぬしならば‥‥勝てる‥‥」
 恐怖に駆られて逃げようとする海の前に、「天界からの使い」と名乗る翼を持つ女性・ビンガが現れる。
「貴方の魂は強いわ。その強さに目覚めることが出来るように歌ってあげる‥‥」
 ビンガが海のバイクに憑依すると、バイクは翼を持つマシンとなり110キロを超える速度と、飛行能力を有するようになる。
 ビンガの導きで鷲見山に登ると、山頂の御堂に持国天・広目天・増長天・多門天の像があり、それが動き出す。
『来たか。朝吹海』
『来たぞ。我らの器となるべき人の子‥‥それがそなただ、朝吹海』
『天魔の暴虐、もはや菩薩の手には負えぬ。我らが人の子と一体となり、天魔を懲らすべしと、天界から指令をたまわったのじゃ』
『我ら四天王、天魔征伐に力を貸そうぞ!』
 海は、四天王それぞれ一体に憑依されることで天魔に対抗する力・クンダリニーを得て、天魔と戦うことになるのだった。


※設定補足
 四天王それぞれには得意とする攻撃があり、場面によって、憑依すべき四天王を選択しつつ戦います。
 憑依された時、四天王役の人は「朝吹海」役の人の声を吹きかえることになります。
 VTR上では、四天王それぞれに口癖・語尾の特徴などがあると分かりやすいと思います。

 バイクに憑依した状態のビンガは声のみの出演となります。それ以外の状態は翼を持つ女性の姿をしています。(半獣化可・鳥系獣人でなくても、特殊撮影でカバーできます)。


☆募集キャスト☆
●朝吹海(あさぶき・うみ)‥‥男女いずれでも可。
●持国天‥‥剣を使い攻撃する
●広目天‥‥巻物をムチのようにふるって攻撃する
●増長天‥‥長い鉾を使い攻撃する
●多門天‥‥宝棒を使い棒術で戦う
●ビンガ‥‥女性の姿を借りた迦陵頻伽(極楽の鳥)。歌うことで海や四天王の力を強めるらしい

●天魔王‥‥人類を苦しめその魂を悪へ落とすことを目的とする魔。


※上記以外のキャストは確定しておりません。海の友人・恋人、天魔王の側近など自由に考案の上、ご応募下さい。キャスト不足の場合は、適宜NPCが友情出演します。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3786 藤井 和泉(23歳・♂・鴉)
 fa4558 ランディ・ランドルフ(33歳・♀・豹)
 fa5412 姫川ミュウ(16歳・♀・猫)
 fa5442 瑛椰 翼(17歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●六道
 久しぶりに戻った故郷の島は狂気に満ちていた。絶え間なく鳴るパトカーのサイレン。雨戸を閉ざし家にこもる人々。
 昨日まで物静かだった男が殺人鬼と化し、真面目な高校生が同級生を刺して突然自殺。まるで島中の人間の暗い衝動が一斉に解き放たれたかのように事件が頻発しているという。
 バイクを止めた朝吹海(=九条・運(fa0378))は呟いた。
「一体どうしちまったんだ‥‥」
 「ある場所」が心配になり、海はバイクを海岸に向けた。そこは兄貴分と慕っていた従兄の空が死んだ場所。海と空はツーリングに出かけて海岸線を走っていた時津波に襲われた。空は海をかばって安全な場所へ突き飛ばし、自らは波にさらわれ死んだのだ。
 海辺に咲いた花を手向けようと暗い洞窟の前を通った時、そこから響く異様な反響に海は足を止めた。
『海‥‥朝吹海よ‥‥』
「俺の名前!?」
『封印が‥‥解かれてしまった‥‥』
 覗きこむと、ぼろぼろの僧衣をまとったミイラが。恐怖に駆られて逃げようとする海の前に、きらきらと輝く羽がこぼれた。みあげると、翼を持つ女性が舞い降りてくる。虹色の翼を背負い、花冠を頭に戴き薄絹を纏ったその女性は、優雅に海の眼前に降り立った。
「な、何だ!?」
「私はビンガ(=冬織(fa2993))、極楽浄土に住まう好音鳥。魂の戦士に力を与える使者」
 ビンガはすっと海のバイクに身を寄せた。溶けるようにその姿が着え、その代わりにバイクに虹色の両翼が生え、バイクは海を載せたままふわりと宙に浮いた。
「うああ!?」
『恐れないで、朝吹海。貴方に力をくれる場所へ参りましょう』
 翼を生やしたバイクは、鷲見山の山頂へと海を導いた。そこには今にも崩れそうな仏堂があった。
 ギシギシと朽ちかけた床を踏み鳴らし、海は再び女性の姿となったビンガと共に入った。そこにあるのは四天王の立像。立像の口が動いた。
「よう参った‥‥」
 口数少ない持国天(CV:雨堂 零慈(fa0826))は白い琵琶をビィンとかき鳴らす。
「朝吹海、私達の力をその身に受け入れて下さい。封印を解かれた天魔を、再び滅するために」と増長天(CV:藤井 和泉(fa3786))は冷静な口調で語りかける。
「天魔?」
「心の闇に働きかけ、人を悪しき獣に堕落させるもの」
 四天王の像から赤、黒、白、青の光が迸り、ビンガが差し伸べた手のひらの上に凝縮した。光は四色の勾玉となり、ビンガの手の上で連ねた首飾りとなる。
「この宝珠には其々、持国天、広目天、増長天、多門天が宿っているわ。貴方が力を必要とする時、彼等が力を貸してくれるでしょう」
 海の首に勾玉の飾りが掛けられる。
「キャー☆持国たん、そんなにくっつかないでピ」と黒の勾玉=広目天。
「確かに‥‥少々狭い」と青=持国天。
「んー‥‥まあ安心しろよ海。ヤバくなったら俺達のどれかがここから出て憑依して力貸してやっから。‥‥って面倒くせぇけどなっ」と白=多聞天。
「いずれにせよ大事の前の小事。皆、少し冷静に‥‥」と赤=増長天。
「やかましい! 耳に近いとこで騒ぐなっ! 神様ならもちっと落ち着かんかー!」
 海が怒鳴った。
 ‥‥しーん。
『‥‥恐怖セヨ』静寂の中に聞こえる囁き。
「今喋ったの誰だー! 落ち着けつっただろー!」
『海、貴方こそ落ち着きなさい。今のは明らかに我々の声ではありません!』と増長天。
『んっ? 闇の気配が‥‥くるよ、来る繰るクルル〜』
と何かの電波を受信したっぽい広目天。
 バリッと仏堂の木戸が破られ、異形の軍勢がわらわらと攻め入ってくる。狐と人間のハーフのような姿をしている。その中心にいるのは、白銀の毛並みに宝玉を連ねた冠と腰布を着けた狐。獣の姿でいながらしなやかな肢体に白銀の毛皮が艶々と光り、どこか艶かしい。
「天魔王が側近、ダキニ(=草壁 蛍(fa3072))見参。イヅナ達、あの坊やを眠らせておやり」
 ケーン‥‥人とも狐ともつかぬ声でイヅナ達が雄叫びを上げ、海へと迫る。
「野郎っ」
 海は手近にあった仏堂の心張り棒を掴み振り回す。だが、手ごたえはなく、何百体ものイヅナが入れ替わりに現れる。ダキニが幻影術を駆使しているのだ。ビンガがバイクに憑依し翼持つバイクで軍勢を突き抜けるが、やはり手ごたえはない。
「ホホ‥‥幻影術に踊らされ果てるがいいわ」ダキニがあざ笑う。
『焦ってはなりません、朝吹海。力を貸しましょう』
赤い勾玉が輝いた。輝きは海を包み込み、真紅の甲冑を纏う戦士へと変えた。
『‥‥ヤキシャヂハタエイ ソワカ‥‥行け、インドラの矢!』
 増長天=海は真言と共に鉾を投げた。鉾は空中で雷撃を帯び、白い炎のように見える凄まじい電撃がイヅナの軍勢に襲い掛かる。イヅナは一瞬にして黒焦げの塊に。
「あらら〜流石にやるもんね〜。まあ所詮は捨て駒だったんだけど。でも私はそうはいかなくってよ。だってカーリー様と約束したの。天魔王の邪魔になる者は排除する、な〜んてね」
 うふふっとダキニは笑い、軽々と天井まで跳んだ。海=増長天は再び雷撃を撃つ。
 だがダキニの動きは速い。幻影を駆使して無数の分身を作り、雷撃をかわし海に近づくと艶然と微笑みながら指先から紫色の光弾を放つ。
「いい声で鳴いてね、坊や」
「ぐあああ!」海はビンガごと弾き飛ばされる。
『もうじれった〜い! ピピピピピ‥‥替わって、増長たん!!』
 白い勾玉が輝いた。白の光輝が海を白銀の戦士に変える。巻物を投げつける。巻物は龍のようにしなりながら、縦横無尽に跳ぶダキニの動きを追い、美しい肢体をからめとり締め付けた。
『SMって胸キュン? ぴぽ〜〜!!!』
「ぐぐうっ!? もっと優しく‥‥して」
『こうかな〜?(わきわき)』
「こっこら、俺の手使って変なことするんじゃねー!」
『なっ‥‥何を戯れているのですか、今すぐ替わりなさい広目天!』
 海と増長天に叱られ、広目天は増長天と再び入れ替わる。
「南無‥‥」
 稲妻を帯びた鉾がダキニを貫く。劈くような悲鳴が上がり、やがて消えた。
 
● 夜叉
「天魔王を倒さなければ、この世は闇に堕ちてしまうのです‥‥」
 ビンガに促され、海は再びビンガの憑依したバイクを駆る。
「なんで俺なんだよ。俺はそんなに強くない」
 弱音が口をついて出た。家族のように大切に思っていた空の命と引き換えに、生き延びた俺だからと。
「いいえ、四天王と此のビンガある限り、海が天魔を恐れる事などないわ」
 ビンガの励ましも、今の海には遠く聞こえた。
 湾岸道路を駆ける海達の前に、漆黒のバイクが現れる。跨っているのは、髑髏を連ねた首飾りをし、三叉戟をかざした黒豹獣人。
「我はカーリー(=ランディ・ランドルフ(fa4558))‥‥四天王、悪あがきは止めて天魔王に組するがいい。行け、スカンダ!」
 漆黒のバイクは命ぜられると後輪で直立し、凶暴な機械の馬のようにそのままウィリージャンプし海を轢きつぶそうとする。激突寸前にビンガの翼でふわりとバイクは宙に舞い上がる。
『んー‥‥スピード戦かぁ。短期決戦タイプだねぇ‥‥ってか俺の出番じゃん!!』
 と多聞天。黒の勾玉が輝いた。カーリーがスカンダの後輪を跳ね上げジャックナイフターンで旋回し、再び襲い掛かる。多聞天が憑依し黒甲冑の武神となった海はバイクに乗り騎馬武者のように片手でハンドルを握り風速を越えるスピードで逆方向から走り寄り、ヒュンヒュンと宝棒を振り回しながら迎え撃つ。
『旋風撃!!』
 スカンダの中心を宝棒が貫き、黒い凶バイクにビリビリと電撃が走る。次の瞬間、スカンダはバラバラに弾けとんだ。
「‥‥許さぬ‥‥」
 カーリーが狂気のように鉾を旋回させる。多聞天=海はとっさに宝棒で受け止めるが、ギリギリとカーリーは刃先を食い込ませる。
『ぐっ‥‥なんて重てぇ攻撃だ‥‥ってか、俺ピンチじゃね?』
『‥‥参る』
 持国天が言った。蒼い閃光が海を包み込み、海は青い甲冑の戦士に。持国天=海は軽々とカーリーの刃を跳ね返す。返しざまにざくりとカーリーの膝を持国天の斬魔刀が抉る。
「貴様‥‥!」
『行くぞ‥‥滅一門・壊・魔・閃!』
 必殺の「気」をまとった斬魔刀が蒼い稲妻を帯びる。
「ぐああああ!」
 斬魔刀はカーリーの心臓を貫いた。

●金剛
「まだ足りぬ」
 即身仏のいた洞窟と反対側の、深い洞窟内。天魔王(草壁 蛍・二役)はゆっくりと真紅の瞳を開く。人々から集めた絶望と苦悩と憎悪、狂気、あらゆる悪を吸収し力を増していた。それでもまだ足りないと、ぽってりと悩ましげな唇を開き飢えるのだ。だが、遠くにバイクの唸りを聞いた天魔王は、黄金の玉座の上でほくそ笑んだ。
「来たか‥‥」
 光り輝くバイクが翼を広げ舞い降りる。
 洞窟内に巣食う、天魔王の瘴気に引かれ集まってきた下級の魔物達がその光を浴びて焼き尽くされる。
「決着を着けに来たぜ」
『天魔調伏!』
 バイクで洞窟を駆け抜ける海が、接近戦と見て持国天モードに変身する。だが天魔王はふわりと衣を靡かせ腕を一振り、衝撃波を起こして海を弾き飛ばす。岩に背中をぶつけ倒れる持国天=海に、天魔王は妖しい笑みを送った。
「お前は‥‥心に闇を抱いている。それがとても愛しい‥‥」
 妖艶な仕草で仲間におなり、と誘いかける。
「うるせぇっ! 俺は、天魔になんか‥‥」
「お前は空を助けられなかったのではない。助けなかったのであろう。お前は嫉妬していた、自分にないすべてを持つ従兄弟に」
 愕然とする。だが絶対にありえないとは否定できなかった。確かに俺は空をうらやんでいた、と思う。だから助けられた筈の空を助けなかった‥‥
「それは悪い電波だピポ!カボスに怒られヘチマに啼くピ〜〜!!」
広目天が叫ぶが、今の海には届かない。がっくりと膝をついた海から持国天が離れ、元の人間に戻ってしまう。
「海、貴方はそんな卑怯な人間ではない。今そうして自分を責めて苦しむのがその証拠。本当に卑怯な人間は、自分をも騙し苦しみから逃げるわ!」
 ビンガは歌いかけた。

尊くも文殊菩薩の御力にて 此処に現れし神変不思議なりし

「小賢しや、妙声鳥」
天魔王が睨みつけ、衝撃波がビンガの憑依したバイクのエンジン部を貫いた。
「ビンガ!!」
 ビンガはバイクから離れ、翼のもげた鳥のように地面に倒れる。ごぼっと血の塊を吐いたビンガの喉から、尚も歌声が響いた。

 オン ボダロシャニ ソワカ

「なんで俺なんかの為に‥‥」海は呻いた。
「んー‥‥お前の体借りた俺達が一番良く知ってるぜ、お前はまっすぐな人間だってな! って、照れくせーよ!」と多聞天。
「火宅にありて心は迷うが道理。だが人の心には元より仏心が備わっているのです。即心是仏‥‥惑わされず自分を信じるのです」と増長天。
 四天王達の声が海の心に記憶を呼び覚ます。違う、いくら羨んでいたとしても自分は空を見殺しにしたのではない。
「天魔王なんかに騙されてたまるかよ‥‥俺を誰だと思ってやがる!!」
 海の体を、黒・青・白・赤、すべての宝玉の光が包み、黄金に輝く武神へと変えていく。ビンガの姿がその背に吸い込まれ、武神の背負う輝く翼となる。
「「「オン シャキラヤ ソワカ 千眼天帝・帝釈天見参!」」」
「そんなっ‥‥まさか、人の子が四天王の力を統合し帝釈天の力を宿すなど」
 天魔王の美しい顔に初めて狼狽の色が過ぎる。
「いいえ、一念三千‥‥迷える人の子だからこそ、苦を乗り越え帰依に至るのよ」
ビンガの声が響くと、帝釈天の黄金の輝きがさらに増した。
「自分を信じ、畏れも迷いも惑いも総てを抱いて、越えてゆく、それが人間って奴なんだ!」
 そうだよね、空兄貴。海は心の中で、空に呼びかけていた。帝釈天が足元に火花を散らしながら翼を使って神速で駆け寄り、宙で一回転し必殺蹴りを放つ。金色の光輝が炸裂した。
「「「これが俺達の魂の光だ! ヴァジュラ・ストライク!」」」
「おおおおぉッ‥‥」
 天魔王の体が光に貫かれ、やがて光に溶かされるように、存在そのものが消滅した。

 再び海は、四天王と最初に出会った仏堂に戻っていた。
 天魔が消えた今、また生命力を取り戻したビンガがバイクから離れ、虹色の翼を広げた。
「魂強き者、海。‥‥貴方に此れからも天の加護あらんことを」
 祝福の光のように輝く羽を海の上に振りまきながら、ビンガは天に帰っていった。
四天王も、四つの勾玉からそれぞれに別れの言葉を告げた。
「天魔王を退けた今、海よ‥‥汝はこれからどうするのだ? また、この島から去るのか?」
 無口な持国天が海を気遣った。
「いや‥‥もう少しここに残って、傷ついた人達のために何か出来ないかやってみる」
 空を救えずに失って以来、心を閉ざしていた海が、今は無性に人と触れ合いたかった。
「そうか。‥‥」持国天の声は、まるで生前の空のように温かかった。
「サヨナラピポー♪」と広目天。
「んー‥‥ま、元気でな。ってか、ちょっとだけ寂しいかも」と多聞天。
「貴方は一人ではない‥‥それを忘れないよう。天界へ戻ろうとも、貴方を見守りましょう」と増長天。
 四天王達の魂は、4色の光の矢と化してそれぞれの神像に戻っていった。
 ◆
 そして時は過ぎ。
 島には平和は戻った。そして今や、訪れるとなぜか幸運に恵まれる島との噂が立ち、観光客が引きもきらない。海は白バイ警官となり、交通安全パトロールで人々を守っている。無線が鳴り、バイクを止めた海が無線機を手にする。
「こちら朝吹」
「しっかりやっているようですね、朝吹海。約束どおり見守っていますよ」
「って増長天? おいこら、神様が無線ジャックしていいのかよっ!」
 慌てる海の上に、輝く羽が降り注いで‥‥

END