裏方さん交流会アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/03〜10/05

●本文

 結局、僕‥‥五十嵐京。職業マネージャー、二十歳‥‥はこういう役回りなんだと思う。
 先輩達を前に、僕は完全にパシリ状態だった。
 
 ここは、古い写真館を改装したフォトスタジオ。
 黒ずんだ外壁と、雨風に晒されて読めなくなった看板が、この建物に刻まれた年月と、住まう人のものぐさっぷり(失礼)を物語っている。
 ちなみに、近所の人たちは、「オバケ屋敷」なんて呼んでいるらしい。
 ――なんでこんなとこがミニパーティーの会場になるんだ、と思わなくもないのだが。
 だだっぴろい六畳間には、どでーんとでかいテーブル。その上に各自が持ち寄ったツマミや焼酎のたぐいが雑然と置かれ、「パーティー」という洒落た雰囲気は絶えてない。
 それじゃあんまりだというので誰かが、花を飾っている‥‥のはいいが、飾った花が野菊一輪って、さみしすぎやしませんか。
 ってか、通夜?
 いや、気にしなきゃいい話なんだけど。
 ま、集まる人々が、日ごろ表舞台に立つ人に気を使いっぱなしの裏方さんばかりだから、裏方さんだけが集まる今日ぐらいは気を使わずに無礼講、ってノリなのかもしれないな、と推理してみる。
 そう、今日は言わば「裏方さんの、裏方さんによる、裏方さんのための交流会」である。
 元々、どっかの撮影技術専門学校の卒業生が始めた会だというが、詳しくは知らない。
 現状、裏方さん同士が声をかけあって、適当な場所へ適当な日時に集まり、お互いの仕事について報告したり、愚痴をこぼしあったりして、裏方ならではの気苦労のストレスを発散する会ってとこらしい。
 で、新米マネージャーの僕は、声をかけてもらって参加したのはいいが、何しろペーペーなので、いつの間にやらお運びやらテーブル拭きやら、雑用をこなしているというわけだ。
 テーブルの一角では、大物タレントのマネージャーらしき方々が噂話。
「ビール置きますよー」
 僕は声をかけて、ビール瓶とグラスを置いていく。
「お、すまんな。‥‥でさ、ドラマの若手でいいのはやっぱり○○かね」
「うん、今年入ってからすごく伸びてるよ」
「あと、▲▲もいい。スポーツで鍛えてるだけに、体のキレがいいよ」
 大物の名前が次々飛び出す会話に、恐れ多くてついていけない。
 向こうの一角では、
「メイクってさ、眉に始まって眉で終わるよね」
「ケーキタイプって今どこのがいいの?」
「ペンシルで十分よ。なぎなた形に削って、使う直前にライターで暖めて」
 ヘアメイクらしい、おしゃれな感じの女性達がわいわいおしゃべりしている。
 そっちの輪にも確実に入れない。
 ‥‥でも、いつか何かの形で使える情報かもしれないので、メモっとこ。
 少し離れたところで、舞台の大道具さんと脚本家さんが熱く語り合っている。
「次の舞台、仕掛けでお客さんを驚かすのか、背景をシンプルにして役者さんの表現力に任せるべきなのか‥‥悩むよ」
「黒カーテンで仕切って、背景を二重にするってのはどうです。ラストの幕切れで書割をどかして、ぱあっと黒カーテンが開いて、舞台は一面の麦畑になるっていう」
 ‥‥な、なんの話ですか。
 先生、僕は芸術論にもついていけません。
 ‥‥わかんないけど、とりあえずメモっとこ。
 せめてキッチンで料理でも作れたらなあと思うのだが、そこではこの家の主で写真家だという、怖い顔のおじさんが黙々と蕎麦を打っていて、入りにくい。
「片瀬さん、何か手伝うことないですか」
 恐る恐る聞いてみる。
「‥‥今のところ結構です」
 丁重に断られた。
「汗臭いわよ。シャワー借りたら」
 すれ違いざまに、ヘアメイクのお姉さんに叱られた。
 確かに、人と交流しに来たのに汗臭いじゃ申し訳ないので、シャワーを借りることにする。
 ざっと汗を流して体を拭いていると、新たな参加者の訪れを告げるドアチャイムが。
「五十嵐君、出てー」
 誰かが酔った声で怒鳴る。
 パシリの宿命って奴だろうか、反射的に体が動く。
 僕は急いでシャツを羽織り、慌てて玄関のドアを開けた。
「『裏方さん交流会』へようこそ。どうぞ、奥へ」
「‥‥‥‥‥‥」
 どうしたんだ、なぜ皆目が点になってるんだ。
 ‥‥‥‥沈黙の中で、はたと気づいた。
 僕まだズボンはいてなかったorz

●今回の参加者

 fa0388 有珠・円(34歳・♂・牛)
 fa0629 トシハキク(18歳・♂・熊)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa2683 織石 フルア(20歳・♀・狐)
 fa3797 四條 キリエ(26歳・♀・アライグマ)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)
 fa5615 楽子(35歳・♀・アライグマ)

●リプレイ本文

●下着姿を責めないで
「「裏方さん交流会」へようこそ。どうぞ、奥へ‥‥っ!?」
 うっかり上シャツ下ぱんつ姿で来客を迎えてしまった僕。おかげで玄関は氷河期状態。
 しかも‥‥目の前ではビデオカメラが回っていた。滝のような冷や汗が背中を滑り落ちる。
「た、高遠師匠〜〜」
 しかも撮っていたのが久しぶりに会えた僕の心の師匠、高遠・聖(fa4135)さんだなんて。なんという運命の悪戯っ。
「‥‥とりあえず、ズボンをはけ」
 一番表情が変わらなかった織石 フルア(fa2683)さんがクールに口火を切った。
 うわあああん!
 とりあえず、風呂場へ泣きダッシュ。おきっぱなしになっていたズボンをはいてそっと戻ってきたら、既に新たな来客たちは話の輪に溶け込んでいた。
「おぅ五十嵐。飲み会の招待and楽しげな出迎えサンクス」
 にやりと笑って、高遠師匠がビールのグラスを掲げた。楽しげな出迎えって、僕ぁ別にネタを提供しようと思ってあんな格好を晒したわけじゃ。‥‥あっ!! ビ、ビデオ!!
「ああ、あれな。‥‥っと、裏方交流会の記念にと思ったんだが、どうしたもんかねぇ? モザイク掛とく?」
 モザイク要りません。ってか消去してください。この先僕が一生彼女出来なかったらどう責任取ってくれるんですか。結婚も出来なかったらどうするんですか。僕の中の利己的な遺伝子が泣くんです。
「あら、京君、またそんな汗かいて。よく拭かないと、引いた時に風邪引いちゃうわよ」
「とりあえず、ユリ姐さんのお土産食えよ」
 久しぶりにお会いした中松百合子(fa2361)さん、トシハキク(fa0629)さんがお皿を差し出して笑っていた。百合子さんの持参したエビの酒蒸しとジャーマンポテトを頂く。美味しい。心に沁みる味だ。
「‥‥大げさねえ」
 悲しいことがあると、美味しいものがより美味しいんです。このアップルパイもひとつ‥‥
「あ、それ俺が切り分けるから」
 トシハさんに止められた。確かトシハさんは有名な甘いもの好き。さては自分の分を大きく切り取るつもりだな。
「ただいま。近くのスーパー、結構品揃えがいいな」
 僕が風呂場に泣きダッシュするのと入れ違いに買出しに行っていた有珠・円(fa0388)さんが、大根や甘いもののどっさり入った袋を提げて戻ってきた。
「すみません、先輩に手間かけさせて」 
 と片瀬さんが謝っていたが、後で彼は「先輩先輩強調すな!」と有珠さんにヘッドロックをかけられていたようだ。
「ぱんつ君――、納豆揚げできたから運んでー」
 蕎麦が出来上がった途端片瀬さんを追い出して台所ジャックした四條 キリエ(fa3797)さんが叫んでる。はーい。って、‥‥ぱ ん つ 君!?
 心で泣きながら料理を運んだ。手を動かした方が気がまぎれるでしょ、と四條さんはニコリ。
「四條さんもストレス解消法は料理ですか?」
「ん、まあ手を動かすのは好きだから。この仕事している理由もそれかもね」
 ストレスを感じるのはどんな時かと聞いてみると、スタイリストの仕事もしている四條さんは、メイクやスタイル助言が受け入れられない時かな、と言う。
 僕の場合、デフォルトで助言はまず受け入れてもらえません。こないだマネージメントしてる女優にたまには勉強せいと助言したらアストロ張り手が飛んできました。そんな話をすると四條さんは哀れむように僕を見て、ぽつりと言った。
「‥‥とりあえず、料理できたし飲もっか」
 ハイッ! 飲ませて頂きます!

● 美しき獲物達!?
 俳優として有名どころの弥栄三十朗(fa1323)さんがいてびっくり。他の人に聞かれると、もともとは演出家ですので、と静かに答えている。だが俳優兼演出家の苦労もあったらしく。
「まだ、駆け出しもいいところだった時代ですが、突然演出家の真似事させられた事がありましたね」
 トラブルで仕事をキャンセルした演出家の代役を務めてから、演出家が本業になったそうだ。人生何がチャンスになるか、わからないものだなあ。お土産に持参されている手作りの茄子の揚げ浸しをちょっと頂く。さすが美食家との評判どおり、玄人はだしの味だ。
 撮影畑の人が多いせいか、自然と最初に話題の中心になったのは、(僕のぱんつ以外で)撮影の話。脚本家さんに、ホラー映画を一緒にやろうと誘われてたトシハさんが、
「ああ、いいですね。また何か面白いことがあるかも」
 ‥‥嫌な予感が激しくしますが、お、面白いことと言いますと? 
「以前作ったDVDでオカルトの名所を撮影したことがあるんだが、その撮影の時に、家に初めて来たはずの女優さんがいわくつきの人形の置いてある場所を理解してとってきてくれたんだよな。助かりはしたけど、今思うと不思議な話だったよな。‥‥あの人形が呼んだのかな。‥‥って京さん‥‥俺の首に抱きつくのやめてくれないか?」
 だ、だって、淡々と言うから余計怖いしーー! 僕より年下のはずなのになんでそんな落ち着いてるわけ!? こ、怖いので話題をスイッチしようと有珠さんに話を振ってみる。
「さ、最近のモデルさんってどんなタイプが多いんですか? やっぱり女王様とか?」
「んー‥‥いないわけじゃないけど、逆に自分の意志がない子が多いのが困りモノかな。こっちの意見もハイハイ聞いてくれるから楽でいいけど、自己アピールに乏しいんだよね。可愛いだけ・カッコイイだけじゃ生き難い世界だと思うんだけど」
 言いながらかけているお洒落なメガネを外し、百合子さんに差し出す。
「この型、飽きてきたんだけど、似合う眼鏡選んでくれない?」
「ああ、アリスは大学の先輩なのよ」
 百合子さんが僕に笑いながら説明する。その時、離れた席で飲んでいた、ちょい派手美人な女性がすっと近づいてきた。確か衣装デザイナー。
「あら、あたしじゃ相談に乗れない? 単なる大学の後輩よりアリスのこといつも考えてるのに」
 こ、こ、これってもしかして、この人有珠さんを口説いてる!?
「ん、選んでくれるのはありがたいけど、言うこと聞いてくれないって拗ねられると困るからね。宥めるのが面倒なんだよなぁ」
 って有珠さん、え、婉曲にお振りになった!? もったいない!!
 口説いた女性がツンとした顔で去ると、有珠さんは僕の方を見て笑った。
「ま、ああいう子も困りもん。程ほどに自己アピール出来て、柔軟な頭を持ってる子。
どんな世界でもそういう子が一番強いと思うよ」
 なるほど‥‥メモっとこう。後はなんだか専門的なカメラワークの話で、ついてけない。
 楽子(fa5615)さんの周りに人だかりが出来てるので、入ってみる。
「京君も飲まない?」
 差し出すのは様々な絵や形の有田焼の杯やコップ。
「こういうので飲むと、また気分が違いますね」
「うふふ、そうでしょう? 夫々に合ったコップで飲むだけで泡の立ち方や香りがぐっと良くなるから素敵。‥‥これはメイクも一緒ね」
 新人のメークアーティストらしき女性がそんな彼女に相談している。
「可愛い系のメークがうまくいかないんですけどどうしたらいいですか?」
「そうね‥‥メイクする相手の笑顔の時を頭に入れて、えくぼの位置とか、目の影とか意識してメイクするの。一口に可愛いといっても、それぞれの個性にあわせて魅力を引き出すにはいい方法だと思うわ」
 ‥‥ん? 楽子さんに似てる誰かについ最近会った気がする。いや、姿じゃなく仕草とか話し方とかが‥‥誰だろう?
「うふふふ」
 笑ってないで教えて下さいよー。
 あ、織石さんがタッパ片手に近寄ってくる。織石さん、どうもー。一度プロダクションですれ違いましたが、覚えてらっしゃらないですよね。
「‥‥すまん」
 ‥‥い、いいんですよ‥‥きっと貴方の心に残るのはどうせ僕のぱんつだけなんだ‥‥
「そう気を落とすな‥‥つまみになりそうな差し入れを持ってきたぞ。秋茄子の浅漬けと梅干とべったら漬けと‥‥」
 ありがたいけど、えらくまた地味な。そんな彼女と片瀬さんは何やら和食の話題で盛り上がっているようだ。
「梅干の食べ方? そうだな、今回みたいに酒のつまみとか、若布を和えても合うし、おにぎりの具としてはもはや殿堂入りだな」
「青い目のお嬢さんからそんな卓見が聞けるとは。握り飯といえば、蕎麦の実を味噌に混ぜたのもなかなか」
 どうでもいいけど、よくそんな地味な話題でそこまで盛り上がれますな。見てる間に、織石さんは酔ってきたみたいだ。顔色や言動は変わらないんだけど、日本酒と間違えてソバツユ飲み干したので分かる。そんな彼女はなんだかしみじみモードで、
「音響をやっていて一番嬉しかった時は、役者をやってる兄さんと同じ舞台を作る事が出来た時かな‥‥音響をはじめた時からずっと夢だったんだ。この広い芸能界で、まさか叶うとは思って無かったけれど」
 ああ‥‥お兄さん可愛い方ですよね。ついタメ口利きそうになります。あっ! か、可愛いってそういう意味じゃなく。襲ったりしませんて。僕ストレートです。その、すんごい冷ややかな視線は止めてください。
 あ、織石さん、なんか中松さんが呼んでますよ。
「服何着かもって来たけど、モデルに挑戦してみない? フリル少ないゴシック系のスーツやワンピースとか。小物もバッチリよ。スタジオ借りれるし、プロカメラマンが3人もいるんだし」
 すげー‥‥全部中松さんの手縫いですよね? 僕なんか素人だけど、このワンピースのラインとか、見るからに着た人がすらりとカッコよく見えそう。そう言うと、中松さんは嬉しそうに話してくれた。
「昔からデザインを考えたり、作ったりするの好きでね。既製品も好きよ。色々と組み合わせて何パターンのコーディネートを考えるの大好き。何年もこの仕事して、今でもダメ出しくらう事とかあって、悔しいと思う時とかあるけど、やっぱり好きなのよね」
 ダメ出しかあ‥‥あ、「ぱぱんだん」の衣装、よく担当されてるんですよね。葉月台所奉行によろしくです。
 織石さんが躊躇している間に、ササッと中松さんは彼女の身体に触れて、大体の寸法を確認したようだ。撮影に名乗りを上げたのは高遠師匠。僕もレフ板持ちで協力。織石さんはかーなーり照れていたようだが、お兄さんが喜びますよ、と兄上の名を出すと何でもやってくれる模様。
「フルア嬢ちゃんは二十歳か‥‥ちょっと落ち着きすぎの感もあるけど、こうしてワンピースなんて着ると、年相応のフレッシュさがあるな。やっぱり年相応っていうのが一番だよな」
 ファインダーを見つめながら呟く師匠。若作りや背伸びはダメですか?
「背伸びはまだしも、年齢詐称はなあ‥‥いるじゃないか、年齢は単に若く見えるんじゃなく公式に『●年生まれの●才です』と発表してる奴。 インタビューで、幼稚園の時に放送していた番組が‥‥と盛り上がって、テープおこす時になって気がつくんだ。
『待て、あれは俺が7才頃の作品だぞ。彼女まだ生まれていないじゃないか』と。
サバ6つだったかな? 再放送の有無の確認、マネージャーさんとも対応を相談して大変だった」
 ちなみに師匠、僕も二十歳なんですけど、フレッシュですか? 師匠は僕をまじまじと見つめ、呟いた。
「‥‥‥‥五十嵐、苦労が多いんだな‥‥」
 えっ???
 
●後片付けは気分次第
 スタジオから居間に戻ると、楽子さんが汚れたお皿をキッチンに運ぶ姿が。
「あ、ぼ、僕やりますよ」
「アライグマ獣人だから、食器洗いは得意分野よ」
 と楽子さんはにっこり。ほろり‥‥
 気づけば有珠さんがガシガシと大根おろし作成中、中松さんが山かけ作成中。
「す、すいません、僕がやります!」
「いいのいいの、マネージャー業は辛抱する仕事だものね。京君も今ぐらいはゆっくりしたら」
「おーい五十嵐君。からみ蕎麦希望者の皿分けたいんだけど、食器棚どこ?」
 と有珠さん。
 ああ、食器のことはあの黒い服着たおじ‥‥いや、片瀬さんに聞いてください。
「んっ? 今おじさんって言った? 片瀬君でおっさんなら俺どうすりゃいいんだろ」
 有珠さんが微笑しながら‥‥心なしか、額に青筋が立ってるが‥‥聞き返す。
 あっそうか、片瀬さんまだギリギリ二十代だからおじさんって言うには早‥‥ぐはあっ! アリスさん、な、なぜ僕にいきなりコブラツイストを?
「そうか、そんなにぱんつ見せたいなら仕方がない。『実践!素敵なおねぇさん〜グラビアポーズパターン集〜』のモデルになって頂くとするか。モデル立ちから始まって『女豹のポーズ』迄フルコースだ。勿論下はズボン無し。片瀬君、スタジオ借りるよ」
 か、片瀬さん、そんな撮影、ダメですよね?!
「ダメです」
 ほらっ! やめましょう、そんな罰ゲーム。
「背景が白スクリーンのままです。その下着色なら、青い背景の方がより映えるかと」
 ってとがめ方が思い切り的外れっすよ!! 
 誰か助けて〜〜〜!
「んー、美味しい、手打ち蕎麦」
「とろろに卵落としてもらっていいか?」
「この蕎麦、美味いな。あ、べったら漬けも遠慮なくつまんでくれ」
「恐れ入ります。俺の技術はともかく蕎麦は鮮度が美味さの秘訣ですね」
 グラビア地獄に落ち往く僕の耳に、楽しげな声が遠く聞こえた。

 数日後。
 僕の所属するプロダクション「FORCE」に僕宛の郵便が届いた。差出人は「裏方さん交流会・出席者一同」。封筒を開けてみるとそこには‥‥オーマイガッ! 
 多分、当分僕は写真嫌いだ‥‥