おぜう様とお呼びっ!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 1人
期間 10/03〜10/05

●本文

 泉本れいら、14才。
 父親が座長をつとめる大衆演劇一座の子役から脱皮して、テレビや映画でも通用する女優を目指して奮闘中である。
 そして先日、ついに映画に出演(端役)。
 有名どころとも共演を果たし、ますますテンションの上がる今日この頃この頃。
 しかし今のところ関西弁が抜け切らず、コテコテな育ちから醸しだされる庶民的な持ち味もあってか、どこかギャグキャラぽい。
 そこが悩みのタネであった。
 れいら自身よりも、深く深―く悩んでいるのは、れいらの母親さくらである。
 たまにはお姫様とかやりたいなー☆ という娘の希望を聞き、れいらにとある時代劇のオーディションを受けさせた。
 しかし、結果‥‥見事落選。
「やっぱり、うちらはあんたの育て方間違うた‥‥」
 さくらは不合格通知を見て、はあっとため息をつく。
「せっかく本格女優目指すっちゅう目的で上京しとんのに、あんた、このままやったらイロモノ道極めるしかあらへんがな」
「んー、でも、れいらは、やっぱり地でいける役の方が‥‥」
「あ か ん !!」
「きひゃ!?」
 天下御免のステージママ・さくらは、娘が1.5メートルばかし吹っ飛ぶほど強い口調で言った。
「あんたな、女優ちゅうのんは、舞台次第で、妖精に化けたり春の女神の娘に化けたり、果ては梅の木の精にまでもなりきらなあかんのやで!?
 おかーちゃんが、あんたに目指してもらいたいんはな、ギャグキャラや無うて、千の仮面を持つ少女やっ!」
 どこの演劇ロマン漫画に影響されたのか、さくらは娘そっくりのつり目にキラリと光る星を浮かべて断言した。
 そして、ビシリとれいらに指をつきつけ。
「よっしゃ、決めた。おかーちゃんは決めたで」
 おもむろに、さくらは告げた。
「あんた、お嬢様になり!」
「はへっ!?」
 んな無理なー、と言い掛けたれいらの襟首は既にがっきり掴まれていたのであった。

 そして、さくらがれいらを放り込んだのは、とある高級ホテルの宿泊サービス。
 名づけて「1泊2日・セレブな休日」という。
 神戸は芦屋の優雅なマダムやお嬢様がエステやお友達とのパーティーによく利用する高級ホテルが売り出した、1泊2日でセレブになりきり身も心も洗練されちゃおうというプラン。
 噂によると、洗練された所作を身につけたいと願う芸能人もよく利用するらしい。
 その内容はといえば、一日目の昼間はみっちりと「世が世なら華族令嬢」という触れ込みのマナー講師によるマナー講習を受ける。座り方から立ち居振る舞い、言動もセレブになりきりましょうというわけだ。
 そして夜は海を見渡すレストランでフランス料理を食し、その後世界三大テノールの一人といわれるルッセリオ・ドミンゴのオペラ独唱を鑑賞(もちろん正装で。レンタル可)。
 翌朝はイギリス風朝食を楽しんだのち、庭園で自然鑑賞しつつ優雅にティータイム、その後解散。
 ‥‥という、カルチャー要素を加味したお楽しみコースなのだが。
 それなりの格のあるホテルでの、「お楽しみ」なので、参加者もそれなりの努力が要求されるわけで、お客様といえど、これは結構緊張モノなのだ。

 企画内容を聞いたれいらは叫んだ。
「ええ〜っ、お嬢様って、お好み焼き食べる時もナイフとフォークやろ? めんどくさ〜」
「アホやなこの子はっ! お嬢様がお好み焼きなんか庶民的なもん食べるかいな! この取材の時のゴハンはな、エスカルゴにフォアグラや!」
「そうなん!?(「ほあぐら」って何かなあと悩みつつ)わかったよっ、どうせオカーチャンは大阪パンサーズ応援する時も、ヒョウ柄のドレスで行けとか言うんやろっ!?」
「正味のアホやなこの子はっ! お嬢様はプロ野球の応援なんか下世話なことせぇへんがな! お嬢様のスポーツは乗馬とテニスや!」
「テニスぅ? いやや、体育の授業でやったとき、ホームラン打ったら怒られてんもん! そんな不条理なスポーツ、れいら嫌いやねん!」
「不条理はあんたや! ええから早よ用意しなはれ! ヒョウ柄はあかんで、ポニーテールはほどいて、この紺色のワンピースに着替えなはれ! 足元も下駄はあかん、このパンプス履きなはれ!」
「いやーっ、下駄はれいらの魂やのに〜〜〜〜」
「耐えなはれっ! これも本格女優になるための修行や修行!」

 ‥‥かくして。
 かの高級ホテル目指し、一人の少女がスーツケースを引きずって旅立つのであった。
 いつもの無造作なポニーテールを母親の手でヘアアイロンを当てられ縦巻きロールヘアにされ、履きなれないパンプスを履いて、紺のワンピース姿で、
「関西人のご馳走ちゅうたら、やっぱフランス料理よりドテ焼きやがな‥‥」
 呟く彼女の中身は、やっぱりコテコテなのであった。

●今回の参加者

 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3728 セシル・ファーレ(15歳・♀・猫)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa4940 雪城かおる(23歳・♀・猫)
 fa5939 祥月 暁緒(19歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●立ち居振る舞い火事オヤジ!?
「ようこそ、いらっしゃいませ」
 臙脂色のお仕着せ姿のベルボーイに迎えられ、今回のセレブな宿泊パックに集まったのは、偶然にも芸能人ばかり。
「ゆーと、こんなとこで何してん!?」
 ロビーに入ったれいらは真っ先に月岡優斗(fa0984)の姿に反応する。今日の彼はいつもラフになびかせているだけの金色の髪をビシッ! と整髪料で固め、服装はいつものカジュアルでなくカッチリしたジュニアスーツ。
「な、何って‥‥さくら小母さんが電話よこして、れいら見張っとけって言うから‥‥どーせフランス料理なんか食えねーからって、ふりかけとかお茶漬け海苔とか持ち込んでんだろ」
 ぎくっ。ものすごくわかりやすいビビり方をするれいら。
「あ、ジュディさんとかおるさん、唯さんもおる! 久しぶり〜元気してはった?」
 れいらは力技で話をそらす。確かに、ロビーで待機する同じパック利用者の中には、共演したことのある姫乃 唯(fa1463)、雪城かおる(fa4940)、ジュディス・アドゥーベ(fa4339)がいるのだが。
「お久し振りでーすっ♪ 洗練された所作を身に付けて、素敵な女優サンを目指そうねっ!」と唯。
「れいらさんは相変わらず元気そうですね〜」とジュディ。
 そんなお嬢様修行に胸をときめかせる庶民的乙女達の集団に混じって、ちょっと困り顔なのはかおると、彼女のエスコート役日向みちる。
「かおるさんはホンモノのお嬢様らしいから、ここで練習せんでもええんちゃう?」
「一応本物のお嬢様と言って差し支えないと思いますので、皆様のお手本を示すようにしたいと思います。でも、わたくしの立場からすると、この宿泊パックには違和感がありますわ。オペラ鑑賞だなんて、大衆芸術に過ぎませんし。真の上流階級の音楽芸術は室内音楽で観客が劇場に足を運ぶのでなく、演奏者を屋敷に呼んで行うものです」
「えー、そうなんや。でも、あんまりリアルなこと言うたらせっかくに楽しみに来てる人の気ぃ削ぐし、そこはスルーしといた方がええかも」
 初対面の楊・玲花(fa0642)・セシル・ファーレ(fa3728)・ 祥月 暁緒(fa5939)とも軽く挨拶したれいらだが、早速優斗のもとへ駆け戻り。
「ちょっ、ゆーと、ツン姫がおる! あと、あのリボンの女の子とあのピンクのドレスのおねーちゃん、GANGのメンバーらしいで!」
「人を指さすなっ!」
 地声のでかいれいらの言葉が聞こえたのか、黒のドレスにシフォンのストールを羽織った玲花はさりげなく目礼をよこす。セシルは近づいてきて恥ずかしそうにぴょこんと頭を下げた。
「はじめましてー。今回は宜しくなのですっ」
「初めまして、祥月暁緒です。今回はご一緒ということで宜しくお願いしますね」と暁緒。
「うわー、アイドルやのに挨拶くれた!!」
「アイドルって‥‥まだGANGは始動したばかりですから‥‥」
 今日はドラマの役作りで来たのかとたずねられ、セシルは唇を尖らせた。
「違うです。本当はお兄ちゃんとファンタジーランドへ行くはずだったんですけど、急なお仕事とかで帰国しちゃって‥‥セシル置いてけぼりです、くすん」
 それで、暇になった分オンナを磨こうかと言うスタンスらしい。
「まあ、そう落ち込まんと。昼間はまあ怖いオバちゃんに仕込まれるらしいけど、夜はれいらとカラオケでも行こけ」
「それよりこの辺りでしたら、ケーキが有名なのではありません?」
 と 暁緒。いや、それ以前の問題。皆、勉強する気あるのか。
 てなことやってる間に、マナー講習の開始時間になる。ホールに集まった参加者達を待ち受けていたのは、上品なスーツ姿の中年女性。
「本日は「セレブな休日」にようこそお越しくださいました。講師の諏訪原珠子と申します」
「しつも〜ん」
 れいらが挙手した。
「まあ熱心なお嬢さん、何かしら?」
「せんせーはプロ野球チームどこ応援してますか」
「かっ、関係ないだろそんなもん」
 慌ててれいらの手を押える優斗。
「‥‥と、とりあえず美しい動作のレッスンを」
 気を取り直しかけた講師の目の前に、威風堂々遅刻してきた阿野次 のもじ(fa3092)が登場。しゅたっと講師が前にしていた机に飛び上がり、
「私の名前は阿野次のもじ。好きな言葉は成り上がり。これでも姫役やお嬢様役こなすことが多いから、一言あり。そちら方面の極意を伝えて差し上げよう」
「な‥‥なんですのっ、この少女は!?」
「机の上上がったらあかんねんで」
 いや、それ以前の問題パート2。
「ふっ甘いわね。お嬢様たるもの常に上からの視点を忘れてはならない! 出だしはこうでないと」
「なるほどな〜」
「形から入るっていうのも、ありかもですよね〜」
 うなずきあうれいらとジュディー。二人の盛大な勘違いに講師と他の(比較的)まともな参加者達が冷や汗をかく。スカートも構わずしゅたっと飛び降りるのもじに講師の目が点になるが、
「スパッツ装着済みだ!」
 ちらっと見せて胸を張るのもじに、講師の意識は遠のきかける。それでもなんとか立ち居振る舞いの基礎・美しい立ち姿座り方を伝授しようと務めたのは立派。まずは椅子の座り方と立ち姿のチェック、歩き方のレッスンだが、椅子の座り方にお嬢様育ちといえど和風育ちの暁緒はやや苦戦。
「必ず左側から腰掛けるようにいたしましょう」
 と言われても、つい正座すわりの癖で片足を踏み出して膝を折ってしまい椅子にぶつかったり。
「やはり和と洋の違いは大きいですね‥‥(涙目)」
 一方、ジュディーは作法は身についているものの、すわり心地がいいのか座った途端に居眠り。唯は講師の言葉をメモって緊張気味ながらしっかり動作も真似たりと優等生。
 一番の難関は言うまでもなくれいらとのもじ。れいらは大阪人の常で歩き方が早足過ぎるととがめられ、
「大阪人は動く通路でも歩くんや」
 と反撃し、優斗が思わず叫ぶ。
「こっ、こらこら! デートの時、そんな早足じゃムードがないじゃん!」
「‥‥ほほう、デートね?」
 周囲のナマ暖かい視線に固まるリス少年。
 のもじは座り方が勢い良すぎて椅子にぶつかり、
「えぇい、椅子風情がこののもじの障壁になるとは許せない! どかーん!!」
 蹴り倒したり。講師は現在、何の病かは分からないが通院中だという噂。

● お食事に歌とメルヘン
 レッスン後、休憩を挟んで夕食の時間。サーモンマリネの次に、出た! エスカルゴ。
 緊張に固まる参加者達。だがまだまだ日本人には馴染みのない食材なためか、暁緒は固まって目を逸らす。優斗は珍しそうに見るが、さほど抵抗はない様子。
「へー‥‥これ食えるんだ? すげー。じゃーなめくじも食え○×▲」
 言葉の後半は、何者かが彼の口にナフキンを押し込んだため聞き取れず。お育ちのよろしいかおるとみちる、玲花、セシルは慣れた風にトングで抑えた殻から細い二股フォークで身を取り出し、感想を優雅に述べ合う。
「あ、ガーリックが効いて美味しいのです〜」ほにゃーとセシル。
「小さめですわね。プティ・グリ種でしょうか」と評するかおる。
 知識はあるが食べたことはないという唯が、
「エスカルゴトングで挟むの初めて‥‥。力加減に注意して、殻が滑らない様に気をつけないと‥‥」
 と、やってみる。素直な性格のジュディーは、おっとりまったりと唯を真似ている。
「こうですか〜? んー‥‥パンに合いますね〜」
 れいらも素直にまねればいいのだが、(主に空腹のため)暴走。
「お腹すいてんのにそんなUFOキャッチャーみたいなことやっとれるかいな! こーゆー場合は空手チョップやろ!」
「いや、違うから、絶対違うから!」
 必死で押える優斗をまたしても生暖かく見守る周囲。と、そこへ、のもじが隠し持ったたこ焼き用の串をれいらに差出し、
「関西人なら、ひっくり返しはお手の物の筈だ!」
 お蔭でれいらも無事クリアーし、のもじが本日ベストアドバイス大賞(どこの)に輝いた。暁緒はガーリックソースを味見しただけで断念。
 そしてオペラ鑑賞の時間。テーブルが片付けられ、レストランの中央ステージに、しずしずと堂々たる恰幅のテノール歌手が現れる。
「こんなに間近に、ドミンゴの歌が聴けるなんて‥‥!」
 淡いラベンダー色のローブデコルテを纏い気合十分の暁緒に比べ、温度差ありすぎなれいら。
「まあまあ男前やけど、れいらのストライクゾーンちゃうわ」
 と関心なさげ。歌手が一礼し、口を開けばなめらかなテノールが響き渡る。
「『星は光りぬ』ですね‥‥ああ、次の『優しい手よ』を掛け合いで歌いたくなってしまいます‥‥」
 うっとりモードの暁緒。歌姫トスカをめぐる悲恋の歌だと解説され、
「そうなんですか〜。こうして内容を聞いて生で聴くとなかなかいいですね〜」
 興味を持ったのか、今度は眠くないらしいジュディー。
「凄いなぁ、あたしもいつかあんな風に歌える様になりたいな」と唯。
「おにーちゃんに聞かせてあげたい‥‥」とセシル。
 だが、やっぱりれいらはすやすやと寝息を立てて眠っている。
「あらら、れいら様にも仕方ありませんわね。せっかくの機会ですのに‥‥」
 既にセレブなりきり状態の玲花。そして、ここは優斗が起こせと全員でリス少年を叱咤激励する。優斗も眠くなる前提で飛行機用枕を持参していたが、そこまでして眠るのはさすがに歌手に失礼だと、周囲に叱られる。
「てか爆睡してるし‥‥」
 濡れたハンカチで鼻と口を覆い、永遠に眠らせてあげるというのはどうだとのもじが乱暴な意見。だけど人命を危険に晒す行為は、良い子ならやっちゃいけないよね。ならばとのもじはゆっさゆっさと揺さぶり起こして、
「お嬢様の眠り方はこう!」
 とお花オーラを噴出しそうな両手を頬につけるメルヘンな眠り方を指導する。
「って、眠るのはいいのかよっ!」
 ホテル従業員を含め、その場の全員が突っ込んだ。
 混乱状態のままオペラ終了後。部屋に引き上げる際にれいらが、優斗を引きとめ聞いた。
「あのさ。ゆーとは、れいらもセシルさんとか暁緒さんみたいなお嬢様になった方がええ? ‥‥そやったられいら、本気でもう一回ちゃんとお嬢様修行するから」
「あ、あのなぁ‥‥じゃなくて俺が好きなのはなっ‥‥お嬢様とか庶民とかじゃなくて、れ、れいらなんだよっ!」
 ここで先ほどのテノール歌手が「花の歌」でも歌ってくれればムード完璧だったのだが、惜しいことに聞こえてきたのは、会場を片付けるスタッフの咳払い。
 仕事の邪魔をしちゃいけないので、そそくさと宿泊フロアに移動。お互いの部屋に戻って眠る前に、恋愛初心者の中学生二人は、
「ひ、ひとつだけ言っておく。俺はー、普段のれいらも十分可愛いと思ってるからっ。今日の服装も髪型も可愛かったけどな‥‥や、やっぱ元がいいじゃん?」
「よかったー! れいらもゆーとはどんなかっこでも中身がゆーとやったられいらは好き。あ、でも時々今日みたいな服着て、オサレなとこでデートしてや。当然ゆーとのおごりで」
「なんじゃそりゃ!!」
 そんな漫才‥‥いや会話を交わしたのだった。

●朝と昼
 翌朝は、コンチネンタル風のオートミールやパンに、温かい卵料理やソーセージといったたっぷりのサイドディッシュをプラスした朝食を堪能。
 最期にエステタイムとマナー講習のまとめとして講師のお話を聞いて、庭園に移動する。
 庭の薔薇を眺めて「懐かしい」と嬉しそうな唯。ジュディも
「なあ、さっきセシルちゃんが食べてたオートミールって何なん?」
 セシルと並んで歩くれいらだが、下駄でなくパンプスを履いているためか歩きにくそう。
「‥‥あだっ」
 ズデッとこけるれいら。ローズマリーの茂みに頭からつっこみ、せっかく母親が縦ロールにした髪型も台無し。
「やっぱあかん〜。この、パンプスちゅうのがどーも性に合わんねん。れいらお嬢様はムリや‥‥」
 えぐっと泣きそうになるれいらを、セシルは心配そうにクマさんをぎゅっと抱っこしつつ、一生懸命に励ました。
「れいらちゃん、日本のお嬢様は‥‥んーと『大和撫子』?やっぱり和服だと思うんです。れいらちゃん和服が似合いそうですよね。和服のお嬢様なら、いつもどおり足元は下駄で大丈夫じゃないでしょうか」
「違う違う、草履草履」
 優斗の小声ツッコミ。
「せっかくの背景だから、セレブな集合写真撮りましょう〜」
 セシルの呼びかけで、美しいもみの木の木陰にお嬢様全員集合。
 プチハプニングは色々あったけど、楽しかったねと口々に感想を語り合う。
「やっぱりああいったホテルの食事より、わたしにはわいわいと騒げる飲茶の方が性にあって居るみたいね。 口直しにみんなもどう?」
 玲花の誘いに、皆が同意する。南京町へとお嬢様たちの足が向かうが‥‥
 やっぱりただで済まないのは、いきなり太陽を背に、仁王立ちするのもじだ。
「みなの衆、本日の地獄の特訓を忘れるな!」
「はあ?」
「さあ、太陽に向かってダッシュだ!!」
「って、そっちは車道――! 危なーい!」
 とりあえず、淑女も紳士も元気なのが一番です