アンドロイド学園Zアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 4Lv以上
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 12.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/04〜10/06

●本文

 朝。
 その学園はいつもどおりに始まった。
「おはよー」「おはよーございまーす」
 キンコンカンコーン♪
 始業のベルが鳴る。
「やっべ、今日英単語の小テストじゃん」
「ねえ、夕べのドラマさあ‥‥」
 学生たちは屈託ない表情でおしゃべりをかわしつつ、教室に入り席に着く。
 普通の学園生活の、どこにでもある光景‥‥だがそれはここまでで終わる。
 

 ガガガガーーン!! ドォウッ!


 突然、火を噴く物体が教室の窓の外に飛来し、ガラスをぶち破って突入する。
「キャー!」
「何すんのよ!」
「弁当の上に破片落ちたじゃねーか!」
 生徒達は口々に叫びつつ、飛び込んできた物体に対抗してあるいは重力バリアを張り、あるいは腕に装備されているシールドをじゃきーんと開いて弁当をカバーし、あるいは「ムカつくー!」と叫びながらレーザービームを撃つ。
 そして、
「悪ぃ悪ぃ、遅刻寸前だったもんでついジェット噴射使って駆け込んぢまった」 
 それらの攻撃あるいは防御の中を涼しい笑顔で潜り抜けつつ、飄々とした笑顔で自分の席に着く、学ラン姿の少年。
「何それ、もうちょっと朝早く起きなさいよー!」
 せっかく髪形をキメてきたのにジェットの熱風で乱された女生徒が頭に来たのか肩甲骨部分に埋め込まれたガドリング砲をガシンと開き、「ガガガガ!」 と砲弾ツッコミを放つ。
「んだよ、だから悪かったって謝ってんだろー!!」
 遅刻寸前に来た少年は右手と左手にひとつずつ机を持ち上げてブンブン振り回し、高速移動しつつガドリング砲を撃ち落す。
「せんせー、木下クリムゾン君が遅刻寸前にジェット噴射で駆け込んで壁壊しましたー! しかも伊藤ヴァルキリーさんが逆ギレしてガドリング砲撃って騒いでますー」
 委員長タイプの眼鏡をかけた生徒が職員室に飛び込み、教師を呼んでくる。
「また木下か、しょうがないな。‥‥おい木下、ちょっと職員室来い。他の生徒達はしっかり自習しとけよ」
「はーい」
 何事もなかったかのように、自習を始めたり、雑誌を取り出して読みふけったりする学生達。
 彼らは実は、そのすべてがアンドロイドなのである。
 そして、教師陣はすべて人間。
 この学園は、人の心を理解し人間社会に適応できるアンドロイドたちを世に送り出すため創設された、いわばアンドロイドのための情操教育施設なのである。
 アンドロイド達は、テロリストなどの危険対処や災害時の人命救助に当たることを目的とし開発されているので、人間性への理解はいわば必須事項。
 一応英語や科学などの知識も伝授されるが、もとより有機的記憶装置を装備しているアンドロイドたちはほとんど皆が超優秀な生徒たちである。
 むしろそれらの授業を通して協力し合うことや謙虚に教えを請う姿勢を身に着けるというのがこの学園の眼目であった。

「わかったか木下。今後はむやみにジェット使って回りの地域住民の皆さんや他の生徒たちに面倒かけるんじゃないぞ!」
「はーい。わっかりましたー」
 木下の背中を見送りながら、教師はため息をついた。
「どうされました、篠原先生?」
 女性教師が声をかけた。
「‥‥いや‥‥彼らに本当の意味で人間らしい思いやりなんて教えられるのかどうか、最近自信がなくなってきました‥‥
 そもそも人間と人工生命体との間に、本当の理解は存在するのかと‥‥」
 人間をはるかに超える能力を持つアンドロイドに、どうやって優しさを教えればいいのか、と教師は悩んでいた。
 女性教師はかける言葉を捜して、思い悩んだ。
 でも、自分も同じ悩みを抱きつつ、日々トンデモな生徒達と奮闘する身だから、アドバイスなんて出来そうにない。
「‥‥コーヒー、淹れますね」
 女性教師は、せめてもの励ましになればと心をこめて、熱いコーヒーをコーヒーメーカーからカップに移した。
 
 そんな教師達の悩みを知ったこっちゃなく。
「なあなあ、帰り道チキンレースやらねえ?」
「おっしゃ、高速道路全速力で疾走!」
「対向車とかどうする、避ける?」
「踏み越えてOKじゃね?」
「OKOK、んじゃーヨーイドン!」
 どどーん!
 しゅたたた!
 ぴゅううううう!
「あっ、ずりぃーぞ落合! いつのまにか電磁浮力を足に組み込んで摩擦を減らして速度上げてやがる!」
「うらやましーだろうははは!」
 馬力を持て余しているのか、無茶しまくるアンドロイド学生達であった。
「「「うわー!! 学ラン集団に車踏まれたー!っていうか跳び越えられたー!」」」
 彼らに巻き込まれた一般市民の悲鳴が今日もこだまする。


☆特撮感動学園ドラマ「アンドロイド学園Z」募集キャスト☆
●アンドロイド生徒
●教師(人間)
 他、アンドロイドの父兄(開発した研究者)、用務員さんなど自由に考案の上、ご応募下さい。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa3831 水沢 鷹弘(35歳・♂・獅子)
 fa5196 羽生丹(17歳・♂・一角獣)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

 秋の木漏れ日が差し込む、アンドロイド学園で。
 広尾先生(=水沢 鷹弘(fa3831))は教壇の前に立つと、宣言した。
「近々、授業参観を行う。皆の父兄はもちろんご招待するが、同時に防衛庁長官をはじめ、国会議員の皆さんと世界科学発明協会の皆さんが視察も行うので、皆、くれっぐれも行儀よくするように。そこで授業参観までに、このヒヨコちゃんをキミ達に託する! 名前は君達でつけてやると良い。デリケートなので、触れる時は力加減を考える様に。皆で協力しあって育て‥‥」
 ズガガーン!! 話の途中に、突然物凄い破壊音。
「うわーっ、また梶原が遅刻寸前に窓壊して滑り込みしたー!」
 窓ガラスが割れて、大騒ぎ。
「すいませーん。寝坊しましたー」
 頭をかきつつ上空からジェット噴射で飛び込んでくる生徒は、梶原サイドワインダー。世界に冠たる科学者の手で生まれた超優秀アンドロイドのはずだが、なぜかやることなすこと破天荒。入学以来周囲に多大な迷惑をかけまくっている。
「イヤーッ、梶原君の噴射で髪がアフロー!」
 女生徒が悲鳴をあげる。
 一方、対災害時人命救助アンドロイド・織石クロム(=伝ノ助(fa0430))はグラビティシールドを張りつつ教壇に駆け寄った。
「先生、大丈夫っすか!?」
「おい、また耳と尻尾つきアンドロイドが良い子ちゃんしてるぜ!」
 梶原が言い、どっと取り巻き連中が笑い声を上げる。クロムには、開発者織石博士の、趣味‥‥げふんげふん、救助される人々に「癒し」を与えようという高邁な理想により、触感にこだわりぬいたふわもこの狸耳&尻尾が付加されているのだ。
 クロムは一瞬きっと不良生徒達を睨むが、相手にしない風に横を向く。もう耳と尻尾をからかわれるのには慣れたという風情。
 そんな中、倒れた教壇を持ち上げゆらーりと立ち上がったのは、ひよこを庇いとおした広尾先生。
「あ、ああ‥‥大丈夫だ。しかしあの子たちには生き物を育てるなんて無理な‥‥いや、育てさせるとか言う以前の問題なのか‥‥」
 ガラッ。教室のドアがいきなり開き、一人のやせぎすな女性がキンキンと怒鳴りつける。教頭の角田カツ代(=桐尾 人志(fa2341))だ。骨ばった体に一昔前の紺スーツをまとい、やたら角のとんがったメガネという典型的なざーますファッション。
「今の騒ぎは一体何ざますか、広尾先生!? まったくこんな学園にお偉方の役人まで視察に来るなんて! 1日だけでも生徒を大人しく見せかけて下さらないと困るざーます!!」
「ちっ、うぜーお局!」
 梶原が右腕に装着されたビーム砲をちゃきっとカツ代に向ける。
「ひぃあああ! な、何をするざますかー!?」
「‥‥いい加減にしろよ」
 ゆらりと立ち上がる赤原デジェル(=氷咲 華唯(fa0142))。その口調は静かだが、騒いでいた梶原とその取り巻きは一気に静まり返った。細身の美少年形でもかなりの実力者らしい。
「‥‥んだよ、赤原テメー、先公の手先かよ!」
 梶原のビーム砲が赤原に向きを変えるが、梶原は次の瞬間無様にひっくり返った。まるで透明な何か縛られたように。次の瞬間、梶原の背後に、長沼アーティ(=タブラ・ラサ(fa3802))が透明な膜を脱ぎ捨てるように一瞬で姿を現した。
「‥‥てめぇ長沼!」
 光学反射コントロールにより透明化していた長沼に電磁網で捕られた梶原は暴れるが、
 アーティは白い顔に涼しい表情を浮かべている。
「授業邪魔されるのが嫌いなのは、赤原君だけじゃないからね」
 実はアーティ、ひそかに赤原デジェルをライバル視しているらしい。
「では、授業を始める」
 ほっとした広尾の声が響き、本日の授業がようやく始まった。

 その日の授業終了後。
 梶原は帰宅して、生みの親たる梶原弘司博士(=河田 柾也(fa2340))に、今日の出来事を報告していた。
「‥‥でさ。赤原の奴は澄ましてて態度でかいし、長沼はちょこまかしてずっこいし、織石は正義感ぶってて気にくわねー」
 恰幅の良い、一見人のよさそうな温顔に見える梶原博士は、サイドワインダーの言い草に憎悪をたぎらせる。
「むうぅ‥‥僕の可愛いサイドワインダーをそんな目にあわせるなんて、やはりアンドロイド学園の連中はクズだ! そもそも学校で教えねばならんようなアンドロイドは世界に必要ない!」
「なあパパ。俺、劣等生なんかじゃないよな? 学園の奴らが間違ってるんだよな」
 甘えるようなサイドワインダーの問いかけに、博士はもちろんだよ、と応える。
「私の子供が一番優秀なのだ‥‥お前が一番なんだよ‥‥?」
 ゆがんだ愛情を注ぐには理由があった。博士はアンドロイド学園創設時のブレーンの一人でもあったのだが、政府の意向でテロ対策武器を強化された生徒達の武器が暴発し、博士の婚約者がそれに巻き込まれた。脳にダメージを受けた婚約者は博士についての一切に関する記憶を失い、当然博士への愛も失っていた。博士が愛を失い研究仲間たちと学園への不信を抱くようになり、自らの才能と自らが作り出すアンドロイドへの絶対的な信頼だけが残ったのはまさに皮肉だった。
「もうすぐだよ、もうすぐ‥‥それを証明してやるからな」
 博士のマッドな光を帯びた瞳は、カレンダーのある一日を見つめていた。授業参観の日を。

 そして授業参観当日。黒い公用車が続々と学園の駐車場に入り、金バッジを胸につけた議員達・科学者協会の人々が学園に訪れた。広尾先生はどうなることかと不安だったが、意外にも梶原が授業開始前にきちんと席についていたのでほっとする。
「では、授業を開めます。テキストの35ページを開いて」
 クラスの生徒達の父兄も多くは、科学者協会の一員でもある。赤原・織石・長沼の開発者たる博士達ももちろんそのメンバー。
「今日は妙に電脳に負荷がかかってるっすね。そろそろメンテが必要でしょうか?」
 織石クロムは耳をぴこぴこさせて不安げだ。それは緊張という感情だよ、と広尾に教えられ、へえーと新鮮な表情。そんな無邪気なクロムと対照的に、赤原はいつもと変わらず端正な表情を崩さない。きっちりと上までボタンを留めた制服のシャツ、背中はぴんとまっすぐに伸びている。
(「長沼研究所のためにも、いいところを見せないとな」)
 アーティも、いつもよりちょっと緊張気味。
「では、これを読んでくれる人。えーと」
 はーい、勢いよく梶原が手を上げた。やっぱり父兄の前ではいいところを見せたいのだな、と思った広尾は彼を指名した。
「はい、梶原」
 ニヤリと梶原がゆがんだ笑みを浮かべる。
―――ズガーン!!
 爆発音。梶原の足先が銃器化されており、火を噴いている。
「忘れてた。ゆうべ足に仕込んでもらった砲、勢いよく立ち上がると暴発するんだった」
 ぬけぬけと謝る梶原。
 そして廊下から彼を見守る梶原博士。
『クックック‥‥僕と同じように、アンドロイドの武器暴発で身内を失う悲しみを知るが良い!!』
 ガガガガガ!!
 梶原の銃は暴発を続ける。ガラガラと崩れてくる教室の壁や、窓、天井。
 騒ぎに駆けつけてきた教頭の角田カツ代は、必死に取り付くろおうと甲高い声を張り上げる。
「ああ〜ら、議員のセンセ方。おりこーちゃんの生徒達がちょっとばかしオイタをしたようざますね。イイコちゃんたちも慣れ過ぎて時たまーに元気が過ぎる事も‥‥のうぁっ!?」
 ゴン! と梶原の暴走で吹っ飛んだ黒板がそのアゴに命中し、角田は昏倒した。犠牲者一名追加。
「キャーッ!?」
「何だこれは!!」
「母さん、危ない!」
 崩れる天井の下敷きになりかけた女性研究者を赤原が咄嗟に抱きかかえる。
 フン、と悪意のこもった嘲笑を投げつける梶原。
「貴様‥‥! 故意に暴発を」
 赤原はギリッと唇を噛む。だが反撃はしない。開発者たる博士の命令がなければ攻撃能力を発動しない制御装置を赤原は持っていた。そして博士は命令できない状態に陥っていた。
 額の傷から少量だが血を流し、青ざめて気を失っている。
 クロムが右手指から遠赤外線ライトを出し赤原博士の傷口を消毒しながら言った。
「デジェル、赤原博士は頭を打っておりやすよ!」
 透明化して梶原を止めようとする長沼だが、それを見越した梶原が挑発する。
「へっ、無理無理! 透明化して不意をついたってなあ、チビのお前じゃ、この銃の威力で吹っ飛んぢまうぜ!!」
 カッとなって額の音波砲を起動しかけるアーティ。そんな彼をアーティの生みの親・人工細胞開発の権威たる長沼博士が叱った。
「待ちなさい、アーティ! 反撃すればまた校舎が崩壊し、危険です。あの子の開発者を探し出し、説得して止めさせる方が得策でしょう」
「梶原君だって、彼自身の考えで暴走しているのではないはずだ」
 と、クロムの親・医学博士の織石博士。
 アンドロイド生徒で、高速演算装置を内蔵する藤木コンピュート(=羽生丹(fa5196))は、覇気の無い口調で呟く。
「梶原君の暴走が止める‥‥その行動の失敗確率は、99.999999999%(イレブンン・ナイン)です」
「行こう。0.0000000000001%でも、可能性があるのなら」
 赤原がクールに促す。
 一方、梶原は校舎裏に逃げ出していた。そこで梶原博士と落ち合い、アンドロイド学園の崩壊ぶりを高みの見物という予定だった。だが暴発しながら移動してきた梶原は、用務員の田中さん(=長瀬 匠(fa5416))が大切にしている、校庭の池の鯉を吹っ飛ばしてしまい、普段温厚な田中さんがバーサーク状態。
「な、なんてことをするんですか梶原君〜〜!」
 ホウキを振り回し、用務員必携の工具箱を開け手裏剣のように工具類を投げつける。
 その一つがカッキーン、と梶原の足元に当たり、そのせいかどうかハプニングが。
「こら、止めろ、止めるんだサイドワインダー!」
「ど、どうしたんだこれ!? と、止まらねぇ!」
 ガガガガ!
 博士がいくらリモコンスイッチを押そうとも、サイドワインダーの暴走銃は止まらない。連続発射するうちに、本当に暴走してしまったようだ。そのうちに、
「うわああ!」
「パ、パパ!? ご、ごめん!!」
 梶原博士に流れ弾が命中。
 災害救助用に音波ソナーを身につけている織石クロムが二人を発見する。
「‥‥一体どういうことなんだ、梶原?」
 続いて駆けつけたデジェルと広尾先生を含む全員に、梶原はすべてを語った。梶原博士が学園を憎んでいること、その復讐のためにサイドワインダーを利用して学園崩壊を目論んだこと。
 そしてサイドワインダーは言った。
「お願いだ、赤原、織石、長沼‥‥俺を破壊してくれ‥‥パパを殺しかけた俺には、存在する価値なんかない」
「な、何を言うんだ‥‥お前は悪くなんか、ない‥‥」
 苦しげな息の下から、梶原博士は否定する。だが梶原は、開発者たる梶原博士を殺しかけたことが人工頭脳の負荷となり「破壊してくれ」と繰り返す。
 クロムの重力バリアにより、暴走銃の被害を受けることなくアーティが電磁ネットでサイドワインダーの暴走を止めた。
「梶原博士、今のサイドワインダーの言葉、聞いただろう。アンドロイドにとって開発者は親みたいなものなんだ。そしてどんな親だって、子供は一途に信じてるんだ」
「皮肉なもんだな。同じアンドロイドの君に教わるなんて」
 梶原博士は血の気の失せた唇にうつろな笑いを浮かべた。
「某国営放送の「お母さんと一緒」で歌のお兄さんがそう言ってた」
 ドテッ(その場の全員がこけた音)。
 赤原デジェル、意外とテレビ好き。
「赤原君、お母さんが意識を取り戻されたぞ!」
 織石博士の嬉しそうな声。担架で校庭へと運ばれてくる赤原博士。
「母さん‥‥大丈夫?」
 クールなデジェルが、母親にだけは優しい声を出す。赤原博士は微笑んだ。
「ええ、大丈夫‥‥軽い脳震盪だけだったのよ。クロム君の音波振動走査で体内を診てもらったから、確かよ」
 そんな赤原博士を見て、梶原博士が目を見開いたが、その時点では誰も気が付いていなかった。

 ここはアンドロイド学園の保健室‥‥という仮称で呼ばれている、整備不良アンドロイド生徒を矯正治療するための研究施設。校舎とは別棟の白亜の建物である。
 暴発した挙句電磁ネットで鎮圧された梶原はここに収容されていた。赤原デジエルは時折彼を見舞いに行った。
「ロボット三原則モジュールを脳に組み込み直しやしたんで、これからはスムーズに制御がかかりやすよ」
 織石博士と赤原博士を手伝って、梶原の治療をしていた織石クロムがにっこり笑う。そんなクロムの尻尾をさりげなく、治療中にもふっているサイドワインダー。
「ちょっ、突然引っ張らないで下さいやし」
「本当にこれ、癒されるよなー」
「案外ガキっぽいところがあるんだな、梶原」
 赤原がフフッと笑う。
「おい、赤原っ。あんまり俺のこと、バカにしねー方がいいぞ。俺達、もしかすると兄弟になるかもしれねーんだからなっ!!」
「どういうことだ?」
 きょとんとする赤原。
 と、誰かが応えるヒマもなく、ばーんと扉を開けて松葉杖をついた梶原博士が登場。腕にはこぼれんばかりの花束を抱えている。
「赤原は・か・せー♪ 一応警察に事情聴取受けましたが、警察としても僕の科学発展における功績を認めないわけにはゆかず、今回のみということで厳重注意で済みましたー! お祝いにお食事付き合って頂けませんかー!?」
 どうやら梶原、赤原博士に一目ぼれしたらしく。赤原博士も決して嫌ではなさそうに、花束を受け取る。
 梶原博士が人間らしい心を取り戻すのも、きっともうすぐ‥‥