学ラン刑事(デカ)アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/02〜03/06

●本文

 TOMI TVがお送りする青春特撮アクション番組「学ラン刑事(デカ)」では、ただいまキャストを募集中です。
 「学ラン刑事(デカ)」‥‥それは「学校」という特殊な場で起こる犯罪に対する特別措置として、刑事としての権限――逮捕・捜査の権限、および拳銃に匹敵する武器を含む――を与えられた高校生。ただし、警察でも一部の人間を除き、その正体を知る者はいない。
 もちろん、学生にも教師にも、真の姿は隠さなければならない。
 そんな高校生が、学園生活を蝕む敵に敢然と戦いを挑む姿を演じてみませんか?
 
 ※番組の企画上、主役は外見年齢16〜19歳位、「学ラン(詰襟の学生服)が似合うこと」を条件とさせていただきます。なおかつアクション演技が出来れば尚可。
 ※主人公の武器は、デフォルトで特殊合金製の「ブーメラン」と設定していますが、主役の方の希望・スポーツ歴によっては変更可能です。

☆ストーリー☆
 ある学園にやってきた転校生、「桐谷ヒカル」。彼の真の姿は特殊捜査のため政府から任命された学生刑事。
 彼の転校の目的は、この学園を中心に、学生の間でひそかに蔓延しつつあるという謎のドラッグの販売網を突き止めること。協力者や友情を得て、ヒカルは真実に迫ってゆく。正義のブーメランが唸りをあげる!
 やがて彼の前に立ちふさがる黒幕の正体とは!?

☆募集キャスト☆
 桐谷ヒカル‥‥主人公。運動神経と正義感を見込まれ、学生刑事に任命された
 須藤‥‥‥‥警察庁特別捜査官。ヒカルのお目付け役にして補佐役。変装が得意で、七変化で姿を変え常にヒカルの傍につきそっている
 桜子先生‥‥ヒカルの担任をしている女性教師。ヒカルのことを心配して、何かとおせっかいを焼く。本心はヒカルが気になる?

 他、黒幕を始めとする悪役、クラスメートや(桜子以外の)教師のキャストはまだ確定しておりません。
 ヒカルの友人や謎の学生食堂のおばはん(何)等、自由に設定を考案の上、応募をよろしくお願いいたします。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0914 キャンベル・公星(21歳・♀・ハムスター)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3090 辰巳 空(18歳・♂・竜)
 fa3109 リュシアン・シュラール(17歳・♂・猫)

●リプレイ本文

 私立明光学園。転校生桐谷ヒカル(=九条運(fa0378))が、駆け足で今その校門をくぐろうとしている。「生徒会」の腕章を巻いた数人の生徒が、鳴り響く始業ベルとともにその門を閉めようとしている。
 ヒカルの鼻先で閉まりかけた門を、一人の男子生徒がキィッと開きなおした。
「おっ? サンキュー」
「転校生って君だろ? 特別サービスさ」
「へぇ、寛大な先輩って好きだなあ。名前聞いていい?」
「クリス・ブラウン(=リュシアン・シュラール(fa3109))。困りごとがあったら、いつでも生徒会室に相談に来てくれ」
 碧い瞳で快活に笑う彼の腕章に、『生徒会副会長』の文字があるのをヒカルは認めた。
ブルーのスーツを着こなした美しい女性がヒカルに近づいてきた。
「転校早々遅刻寸前とはね‥‥心配して待っていたのよ。あ、私、今日からあなたの担任の速水桜子(=キャンベル・公星(fa0914))よ。教室までご案内するわ」
 桜子の横顔に目を奪われつつ、子犬のようについていくヒカル。
「いやぁこんなキレイな先生に勉強教えてもらえるなんて、幸せだなぁ」
「お上手ね。‥‥私が担任で幸せかどうかは‥‥あなた次第だわ」
 桜子の顔に微妙な翳りが浮かぶ。
 2人に向けて、突然フラッシュがたかれた。見ると、廊下に愛用のカメラを構えて立つ新聞部の部長・宮内朔(=玖條 響(fa1276))が笑顔で立っていた。
「ども。転校生って君だよね? 休み時間、ちょーっとインタビュー受けて欲しいんだけど」
「宮内君ったら仕方がないわね」
 桜子は軽く睨むが、どこか飄々とした宮内にはかなわないらしい。
 
 休み時間。早速宮内がヒカルを校庭に連れ出し、声を潜めて言った。
「それにしてもなんでこんな時期しかもこんな学校に転校なわけ? ドラッグが回ってるって凄い噂なのに」
「‥‥へえ。何、その噂って?」
 さりげない表情で聞き出すヒカル。
「急激に成績の上がった奴がいて、そいつ、冬の特別講習終わっていざ受験って時、急に暴れだしたんだ。禁断症状ってやつ? そのときの写真が部室のパソコンに入ってるんだけどさ。あんまり探るとヤバそうだしそれ、封印しようかなって」
 肩をすくめた宮内に、さらに聞き出そうとしたヒカルだが。背後から、同級の杜郷紫暮(=森里時雨(fa2002))がつかつかと近づき、ヒカルの肩をつかんだ。
「てめぇ何者だ!? うさんくせぇし、面も気に食わねぇ! 何嗅ぎまわってやがる!」
「やばっ‥‥ドラッグの噂のことになるとキレるんだよね。暴力はマジ勘弁」
 宮内が、胸倉を掴まれたヒカルを置いて、さっさと逃げる。
 喧嘩慣れしているらしい杜郷だが、学生刑事として訓練を受けたヒカルには敵わない。ヒカルは体をくるりと回転させて杜郷の攻撃を外すと、その反転の勢いを駆って腹にパンチをくれ、「うっ‥‥」とかがんだ杜郷の腕をねじりあげた。
「どういうことだか、話してもらおうか!」
 決め付けたヒカルの肩を、誰かの手がぽんぽんと叩いた。
 振り返ると、眼鏡をかけた優しげな白衣の青年が立っている。「けが人が出そう」という宮内の報せで駆けつけた、保険医の斉藤先生(=蘇芳蒼緋(fa2044))だ。
「転校早々、遅刻に暴力沙汰‥‥ある意味君は、この学校の歴史を塗り替えてくれそうな存在だな」
 杜郷と共に保健室に連れて行かれ、ヒカルは先ほどの喧嘩でついた擦り傷に消毒薬を塗られた。
「どういう意味‥‥いてっ」
 沁みる薬に、思わず声を上げると、斉藤はうっすらと端正な顔に笑みを浮かべた。
「喧嘩っ早い割にはヤワだな」
 明らかにイヤミだ。むっとしたヒカルが言い換えそうとした時。
「桐谷君、大丈夫?」
 心配そうな顔で駆けつけてきた桜子先生だ。その後ろに、同じく心配顔の少女がついてきている。
「トラブルは困るわね。桐谷君の案内は鷺沼さんにお願いするわ。彼女は生徒会の書記もしてるから、色々相談に乗ってもらえるわよ」
「私、鷺沼有紀(=悠奈(fa2726))です。わからないことがあったら、何でも聞いてね」
 桜子の紹介を受け、少女が笑顔でヒカルに言う。別人のような厳しい表情で紫暮を見る桜子。
「杜郷君。今度という今度は、ドラッグの噂だの何だの、妄想で人を襲うのはいい加減にして頂戴。貴方の処分は職員会で検討中よ」
「妄想なんかじゃねえっ! 有紀、お前だってっ‥‥こないだまで、俺の言うこと真剣に聞いてくれたじゃないかよっ!」
「な、なんのこと? あの‥‥もう授業に行かないと」
 有紀が杜郷の目から微妙に視線をそらしたことに、ヒカルだけは気づいた。

 校門を一人出てゆく杜郷。と、ヒカルが追いつき、呼び止める。
「退学処分とは惜しいぜ。拳で培う友情ってヤツもありかなって思ってたんだぜ」
 ふと杜郷が表情を緩める。
「怒ってねぇのか。妙なヤツだな‥‥」
 杜郷は語った。いなくなった親友のこと。そいつは親のプレッシャーで成績を上げようと焦っており情緒不安定にまでなった。保険医の斉藤に相談に行き、それからみるみる成績は急上昇。その矢先に失踪したーーと。ドラッグの噂が囁かれ始めたのと同時期だった。
「保険医の斉藤か‥‥あいつ絶対、一枚噛んでやがる」
「かもな‥‥俺はもう誰を信じていいのか、わからねえ」
 ふと、荒削りな横顔に寂しさを漂わせ、去っていく杜郷。
 教室に戻ると、宮内が誘う。
「謎を追うつもりなんだろ? 今から部室で見ない? 例の、極秘映像」
 新聞部室に向かう二人。だが2人の目にしたのは、ひどく荒らされた部室。
「パソコン‥‥初期化されてる。バックアップのCDも盗られた」
 呆然と、真っ先にパソコンに駆け寄った宮内が呟く。その時、ヒカルの胸ポケットの携帯電話が振動した。連絡員からの呼び出しのサインだ。
 体育倉庫に来たヒカルを、既に連絡員は待ち構えていた。体育教師として先にこの学園に潜入していた玖珂 晃(=辰巳 空(fa3090))である。
「新しい情報が入りました。例のドラッグ使用者は去年の特別講習以降、急増しています。その特別講習の主任は、君の今の担任、速水桜子です」
「まさかっ‥‥」
「同世代の仲間や尊敬すべき存在である教師を疑わねばならないつらさはわかります。だが罪を犯す彼らの内面に迫れるのも君だけだ。君は君の視点で見えたことを大事にしてください。‥‥これが君の武器、超合金製ブーメランです」
 アタッシュケースから取り出したそれを、ヒカルは表情を引き締めて受け取った。
 校庭の裏の、ごみ焼却炉の前に立つ桜子にヒカルは近づいていった。
「先生。話があるんだ−−」
 その桜子の手元に、「新聞部バックアップ」のラベルを貼ったCDロムが。その傍にはライターを手に桜子に近づこうとして、ヒカルの声に固まってしまった有紀の姿。
「先生‥‥! それをどこで‥‥」
「どうやら君は知りすぎたようだな転校生君‥‥勝負してもらおう。このエンジェルキス原液を飲んだ僕と!」
 声に振り向くと、クリスがフェンシングの剣を突きつけている。クリスは片手で薬品のアンプルを胸ポケットから取り出し、飲んだ。
 剣は信じられない速度でのど元を狙う。獣並みの反射速度である。それがドラッグの作用と気づいてヒカルは背中につめたい汗を感じた。が、剣を抜いて迫るクリスとは見当違いの上空に、ブーメラン二本を突然放り投げる。
「血迷ったか」
 冷たく笑って迫るクリスの背中に、ブーメランが直撃した! 倒れるクリス。
「わりぃな。このブーメラン、どこに投げても俺の警察手帳めがけて戻ってくるんだ。ドラッグを蔓延させた罪で逮捕‥‥ん?」
 学ランの裏の桜の大紋を示してから逮捕しようとしたヒカル。だがいつのまにか背後から近寄っていた保険医の斉藤が、クリスの手に手錠をかけていた。
「よ、ヒカル。ご苦労さん。まだ気がつかないのか?」
 笑って眼鏡を外しつつ。
「あ? ‥‥まーたお前かよ須藤!」
 斉藤の正体が変装の達人須藤捜査官と気づいたヒカルだった。桜子が両手をヒカルに差し出す。ヒカルに逮捕してもらいたい、と。
「貴方はとても似ているの。元気だった頃の弟に‥‥」
 桜子は語った。彼女はかつてドラッグの製造元でもある製薬会社の社員であり、難病に苦しむ弟の治療費と引き換えに、人体実験としてドラッグの流通に手を貸すよう脅されていたこと。
 皮肉なことに生徒に好かれ、色々相談を持ちかけられる。頼ってくる生徒を利用することになり桜子は苦しんだ。一方で、病に苦しむ弟に引き換え、安易に薬に頼る彼らを憎む気持ちもあった。
「でもそれももう終わり。とんだ計算違いね。こんなやんちゃな刑事さんがいるなんて思わなかったわ」
 クリスは、最初はいち早くドラッグに溺れた生徒会長をかばうため桜子と近くなり、次第にドラッグの魔力に溺れる他の生徒達への優越感を心の支えにするようになっていた。
 そして有紀は、その生徒会長の従妹。尊敬する従兄の禁断症状を見るのがつらさに、ドラッグ運びに手を貸していた。
 それぞれに抱いていた罪の意識と直面しヒカルに全てを語った。
「君なら‥‥生徒会長を救えたのだろうな」
 寂しく笑って連行されるクリスに、ヒカルは言った。
「他の誰かなら出来たかもなんて言う前に、もっと自分を大事にしろよ。自分にしか出来ないやり方がきっとあったはずだぜ。これからそれを探しなよ」
 フラッシュの光。振り向くと、宮内が笑って敬礼している。