時代劇村へ行こう!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 小田切さほ
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/14〜10/16

●本文

●「臨海大時代劇村」パンフレットより抜粋
 青い海が打ち寄せる●●海岸に、新しいプレイスポット誕生!
 その名も「臨海大時代劇村」!!
 一歩足を踏み入れたら、そこはひとつの村がまるごと江戸時代へタイムスリップしたかのような、素朴な木造の家並みが。「二八そば」の屋台が立っていたり、天秤を肩にかついだ野菜売りが通り過ぎたり。
 横丁では、可憐な町娘が井戸で水を汲んでいる。
「ふぅ。今日もいいお天気。あら、旦那、おはようございます」
 と挨拶されると、まるで自分も江戸の町の一部になったような、うぅん、ノスタルジー。
 でもこのおねーちゃんは時代劇村の役者さんなので、帯クルクルなんてしちゃいけません。寺子屋帰りらしい子供達とすれ違いながら、ゆったりと町並みを過ぎてゆくと、立派なお城が!
 門の前には槍を持った門番がいる。きっとこの中には美しいお姫様が‥‥
 いやしかし、この中には「怪奇の間」ってのがあって、そりゃもう美人の幽霊が出るってえ噂だぜ。お姫様とどっちが美人だか、気になるところだ。
 幽霊? ああ、奥の間に出てきてなぜか瓦を数えるって話だな。
「いちま〜い、にま〜い」ってね。
 で、十枚目がそろうと、「ハアーッ!」と空手チョップで割るらしい。違うかな。
 おおっと、向こうの角から大名行列がカミングヒア!
 シットダウン、エブリバディ!!
 大名行列が通るとき、うっかり平伏するのを忘れると、お侍さんに斬られるぜ! 
「無礼者〜〜! お手打ちじゃーー!」
「ぎぇぇぇ〜!」
 といってもお侍さんも俳優さん。刀はもちろんホンモノじゃないので斬られたら10秒ぐらい死んだふりをすればOK。
 10秒立って起き上がってみれば、向こうの通りがなんだか賑やかだ!
 今度は花魁道中だ!
 先頭が金棒引き、続いて可愛らしいかむろが現れると、ホラ、美しい花魁が八の字歩きでやってくるぜ!
 お、今日の花魁はまた、いい女だねぇ‥‥昨日のムチッとした艶っぽいのも良かったが、今日のは線が細くて華奢でまた違う色気。
 この花魁道中、基本は日替わりなんだけど、日によっては時間帯別にタイプの違ういい女‥‥これも役者さんだけどな! ‥‥が出演するんで見逃せねーぜ!
「オイ、いてぇじゃねーかコルアー!」
 いけねえ!! 花魁に見とれて、目つきの悪い浪人の肩にぶつかっちまった!
 因縁付けられた! 下手こいたーー!!
 でもそんなの関係ねぇ!
 どこからか、品の良い浪人姿の若者が現れて、バッタバッタとならず者を倒してくれるぜ!
 しかし若いお侍様、あなたは一体?
「名乗るほどのものではないが、火付け盗賊改め方・長谷川ヒラ蔵とお覚えくだされぃ!」
 ってオイコラ思いっきり名乗っとるやないけー!!
 まだ新人の役者さんだな、ありゃ。
 ああいう正義の味方とならず者は、ここじゃ必ずセットになっているんだ。
 正義の味方は浪人姿に身をやつしていることが多いんだぜ。

 さあ、腹減ったし、飯食いに煮売り酒屋でも行こうかな。と思ってたら、ササッ! と黒い影が目の前をよぎる。な、なんだあの影は!!
 カカッ!
 背にした壁に、手裏剣が突き刺さる。
「‥‥え?」
 気が付くと、手裏剣は「甲賀流飯どころ『乱波』 100円割引券」と書かれた小さなビラを壁に留めていた。
 ああ、忍者が営業やってんだ。
 と思ってみれば、道を挟んだ竹林へ、先ほどの黒い影がバック宙で消えていく。
「ご苦労さーん」
「ご来店お待ちしておりまーす」
 って、だんだん非日常に馴染んできた自分が怖い。
 ――とゆー、珍しい体験が出来る、「臨海大時代劇村」へ貴方もお越し下さいませ。


●時代劇村の片隅で?
「せやからな。大体なんで東京の学校で外国人の友達作ってくんねん。しかもこんな、説明の難しいとこへ連れてく約束するねん」
「しょーないやん、せっかく友達できてんから、一緒に日帰り旅行したかったんやもん!」
 コテコテ関西弁で怒鳴りあっている中学生位の少女と、二十歳前後の若者。
 彼らは駆け出し女優の泉本れいらと、そのマネージャーで従兄の五十嵐京である。そして、その間に挟まれて困惑顔の、明らかにアングロサクソン系外国人の、金髪美少女。
「れいらとキョーさんは、何怒っとるがや?」 
「いや、ペヴィーは気にせんといて」とれいら。
「ほんだら、早よ行こうみゃ。花魁道中が見てゃーがや」
 れいらが東京の学校へ転向して、ようやく出来た親友は、なぜか名古屋弁の金髪ハーフ少女・ペヴァリーなのであった。
 しかも時々、日本語自体が通じない。
 常の如くマネージャー兼パシリの従兄を連れて、親友を案内させるつもりでちょっぴり遠出して遊びに来たれいらだが、れいらも京も、英語にも名古屋弁にも詳しくない。
「同じ訛るんやったら、大阪弁にしてほしかったわ」
「‥‥それ、ちょっと同感」
 

☆その他補足事項
●大名行列や忍者ショー、花魁道中に役者として参加しても、客としてデートも可。他に忍者、町娘、幽霊、姫、殿様、身分を隠して庶民を守る若様、ならず者、寺子屋の生徒、八丁堀、江戸の町にありそうな役柄ならなんでも可。
 とはいえ結構トンデモな村ですので、時代設定どおりに過ごせるとは限りませんのでご了承下さい。
●有名度の高い方も、今回芸能人推奨デーとなっており、一般客が少のうございますので比較的ゆったりとお過ごし下さい。
●村内では、泉本れいらと五十嵐京が、日本語の微妙な友達(ペヴァリー・ウォルド:愛称ペヴィー:14才)を連れてうろうろしています。彼らと行動を共にすることもできます。彼らの行動は「客」側です。

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)
 fa4764 日向みちる(26歳・♀・豹)
 fa5556 (21歳・♀・犬)

●リプレイ本文

● 来(着)ちゃった☆ 
「わあっ、あれ両国橋!? あっちが新吉原かな、どこも江戸の古地図そっくりー!」
 大はしゃぎでガイドブック片手にあちこち指差す虹(fa5556)と、その後ろからゆったりまったりついて歩く都路帆乃香(fa1013)。帆乃香は無邪気な妹を見守る姉のように、
「なんだかお散歩に出て嬉しくて仕方ないワンちゃんみたいですね〜」
「えへへ、白馬の王子様より白馬の将軍様な時代劇スキーですからっ‥‥☆」
 という言葉通り、虹は目をキラキラさせている。町家の看板を指差して、
「あ、『貸衣装屋』‥‥」
 と興味を示す帆乃香だが、
「早くしないと、花魁道中見逃しますよぉ〜! 今日の花魁はなんだかいろんな意味ですごいって前評判だから、見逃したら絶対損!!」
 と、ガイドブックにしおりを挟んでチェックしてる虹に引っ張られ、吉原大通へ。
 提灯を下げた男衆、赤い着物を着た愛らしい禿達に続き、いよいよ花魁登場!
 「太夫だ!」「真子都太夫だ―!」町の人々が掛け声。
 むっちりボディを緋牡丹柄の豪華な打掛に包み噂のマコト太夫(=MAKOTO(fa0295))が歩いてくる。普通、道中の花魁は着物の重さ等で歩きにくいので肩貸しと呼ばれる男が花魁を支えるのだが、この花魁はめちゃ元気。若干15キロはあろうかというまな板帯と着物に負けず豊かな胸を張ってズンズン歩く。
「‥‥た、確かに色んな意味で『凄い』ですよね」
「ちょっとイメージ違うけど、カッコいいかも☆」
 と、二人が観察していると異変が。ビュビュッと黒装束の忍者が屋根から飛び降りてマコト太夫に襲い掛かる。
「マコト太夫、いやさその正体は公儀隠密『紅お亮』覚悟!」
「来たな伊賀者!」
 言うやバサッ! マコト太夫が着物を脱ぎ捨てた。下には着流しの男装。そしてまな板帯の下から酒徳利を取り出し、これでキン! キン! と飛来する手裏剣を受け止めると、袖から隠し刀を抜きバサバサッと忍者を切り捨てる。両手遣いアクションはカッコいいが、お蔭ではだけそうな胸が、胸がヤバイ! 片手で襟を合わせるが、その隙に乗じて忍びが斬りかかる。そこへ、なぜか涼しい笛の音が。ヒャラリリ〜♪ と笛を吹きつつ近づく笠をかぶった浪人姿の青年(=相沢 セナ(fa2478))。笠を投げ捨て、すらりと刀を抜く。
「及ばずながら、ご助勢」
 細身に色白、優しげな顔立ちと見て忍者は即座に斬りかかる。
「でやあっ!」
「はッ」
 笛で斬りかかる忍者の胴を打ち据え、右手の刀で背後に迫る忍者をグサッ。
「ったあ!」
 と斜め後ろから駆け寄る忍びには強烈な蹴り、よろめいた所に袈裟斬り。
 忍者たちを倒し、キン! と刀を納めたイケメン浪人に、三味線を背負った鳥追い女(時代劇でよく女隠密が扮装するやつだ)近づく。
「セナ殿! 裳布利城に異変が」
「何、若様に危機が?」
 キッと面を引き締めて、鳥追い女と共にどこかへ駆け去るセナ侍。
「またつまらぬものを斬ってしまった‥‥」
 言い捨てて、浪人姿のまま吉原に去ってゆくマコト太夫。いつの間にかその右目には変装のためか、刀鍔の眼帯が。
「え、えーと‥‥今の出し物は一応『花魁道中』でおっけーなんですよね」
「た、多分」
 じゃ次へ行こうというわけで二人は帆乃香が興味津々な貸し衣装屋へGO。そこでは花魁や町娘、忍者など色々な扮装が出来、そのまま時代劇村を歩いてもOKというサービスを提供する店。そこでは二人の見知った顔ぶれが、金髪の美少女相手にその店のルール説明に大汗をかいていた。
「せやから、ユーキャンウェア、キモノやねんて。ほんでウォークや」
 と大阪弁いんぐりっしゅを語る泉本れいら。
「OH、CAN I? ほんだでどこ歩くがや?」
 名古屋弁混じりの英語なれいらの親友ペヴァリー。れいらのジャーマネ、五十嵐京に引っ張られてついてきたらしいカメラマンの高遠・聖(fa4135)がすかさず英語で通訳している。
「京さーーん! あははははは☆」
 その京に手をぶんぶん振りつついきなり笑う虹。
「人の顔みていきなり笑わないで下さいっ」
「ごめんなさいー不可抗力で」
 虹は口元をチャックしつつ、メイクアーチストの母が裏方交流会でゲットしてきた写真の記憶を懸命に忘れようと務める。れいらと金髪少女の関係を聞いて、
「まあ、東京の学校で留学生とお友達に‥‥それはインターナショナルな体験でしたね」
 と帆乃香。カオスとも言うぞ。
「ああ、せっかくだし、ペヴィー嬢ちゃんに時代劇気分を満喫させてやろうと思ってな。‥‥しかし、年頃の女の子の衣装選びなんて俺達にはわからないし、れいら嬢ちゃんの分とあわせて二人で選んでやってくれないか? 良かったらこれで記念撮影もできるぜ」
 と肩にかけたカメラを指す高遠。
 女性一同、わっと盛り上がって衣装選び開始。
「わあ、虹さんかっわいー! やっぱ女の子や〜」
 と、紫色の矢絣の着物で腰元スタイルなれいら。歩きにくくって、と照れている虹は村娘風に裾短な柿色の縞柄小袖に藍染の帯を締めているが、素朴な装いが意外に似合って若々しい。
「こりゃカッコええがや」
 と虹の提案で柿色のくノ一スタイルなペヴィーは満足げ。
 京も高遠に黄のちゃんちゃんこ、栗梅色の着物と袴という、某ご老公スタイルに着替えさせられ、不思議そうに一言。
「あのー。なぜ僕は水戸のご老公なんでしょうか」
「いわゆる日本文化の粋です」
 キラリとめがねオーラで反論を封じ込む、女剣士風に茜色の小袖と桔梗色の袴姿の帆乃香。
「俺もすーーっごく着たかったんだけど京さんに譲りますね」
 と虹。
 さて時代劇の扮装で時代劇村に繰り出す一行。ただし高遠だけは別で、ジーンズ姿のまま撮影に専念。
「屋台で何か食うかね」
 高遠が「だんご」ののぼりを掲げた茶店を指差す。
「わーい♪ 団子団子」
 団子をほおばる女優達とペヴィーに、パシャリと高遠がフラッシュを焚く。
「うわぁ、たーけらしかー。今大口開けてしもたがや」
 文句を言うペヴィーに高遠は笑って応えた。
「そういう気取らない自然な表情がいいのさ。『でらまめしい』ところがね」
 なぜか短時間に方言を修得している高遠に、ペヴィーは悪くないといった表情。
「うみゃーこと言うだがね、やっぱ男前は言うこともしゃれとるでかんわ」
 そんな会話を楽しんでいる最中、柄の悪い浪人(=マコト・二役)が接近。
「そこな異国のおなご、酌でもせい。よいではないか良いではないか」
 ペヴァリーがぐいと腕をつかまれ引き寄せられ、驚いて抵抗するが、腕の立つ浪人らしく、片手で抑え込まれた。
「くらぁ、何すんねん!!」
 と立ち上がろうとしたれいらだが、若い声が割り込んだ。
「そこの柄悪いの。あまりここで悪さをしてくれんな」
「何奴!?」
「この時代劇村じゃ知れた顔だが、もふりは許しても悪は許さねぇ、もふりの優さんたぁ俺のことよ」
 と、なぜか茶髪の若衆髷に紺の着流し姿で目深に笠をかぶった小柄な若侍(=月岡優斗(fa0984))。
「ちっ、元服もしてねぇ小僧が何をいいやがる。たたんじまえ!」
「なにぃ!? こちとらこう見えてももう15歳だーー!!」
 乱闘開始。刀が閃くたびにスラッ、キーン☆ ザクッ! と効果音が加わるのは恐らく茶店の天井裏に潜むスタッフによるものだ。
 だが多勢に無勢、若侍が押され気味。
「ちょ、しっかりせんかいな!」
「優さんがんばーれー♪」
 れいらや虹が声援。高遠は機敏に刀をかわしつつ冷静に写真を撮っている。
 女剣士姿の帆乃香も芝居で覚えた見よう見まねで剣を使うが、さすがに悪役達の殺陣には及ばない。若侍はマコトの悪浪人に壁際に追い詰められた。と、戸外にぱからっぱからっと馬の蹄の音。
 駆けつけたのは、白馬に跨り総髪をなびかせた先ほどの浪人(セナ)。馬から飛び降りてしゅっと小柄をなげうつ。キィン! 小柄は悪役浪人の刀に当たり、浪人は刀を取り落とす。
「うぅぬ‥‥何奴!」
 セナ浪人は、印籠をかざす。
「もの共、このお方をどなたと心得る。裳布利城3代目城主、月岡優斗衛門なるぞ!」
「へへーっ!」
 平伏する悪役さんご一行。
「城へその者ども全員をひったてーい!」
 何がなんだかわからないまま、れいら一行も、彼によって悪役共と一緒にお城へ連れて行かれるのだった。 

● 裳布利城でドボン!
「師匠、なぜ僕たちまでお白州で裁きを受けなくちゃいけないんでしょうか」
「適応能力のテストだと思って、耐えろ五十嵐」
 京と高遠が囁きあう通り、なぜか城の中庭にある白州に悪役さんと一緒に引き出されるれいら達。
 やがて白州の前の障子が開き、茶髪の小柄なお奉行様が姿を現す。一同は反射的に平伏するが、時代劇設定を知らないペヴィーだけは顔を上げており、喜んでいる。
「OH、キュート! リトル侍!」
「今リトルっつったの誰だーー!!」 
 刀に手をかけるお奉行様。そこは怒るところじゃないと周囲の与力に止められる。
「へっ、元服もしてねぇ子供がお裁きたあ笑わせるぜい!」
 悪役共が騒ぎ立てる。
「ええい、やかましいやぃ! とっくに元服は済ませてるぜ! とくと見やがれこの裳布利吹雪!」
 ずばっとキモノを肌脱ぎにした若様の背中にはリスの刺青。
「お、恐れ入りやした!!」
 悪党達はへへーっとひれ伏す。何がなんだか。
「ひったてーぃ!」
「あれ? ゆーと? ゆーとやん? ちょんまげで何しとん、こんなとこで?」
 顔を上げた腰元姿のれいらがずかずかと若様に近づく。
「‥‥なーに名乗るほどのモンじゃ‥‥ってかあっさりバレてんじゃねーか! 仕方ねーだろ、マネージャーが取ってきた仕事なんだからっ」
 と口をとんがらす幼い顔は確かにれいらのダーリン月岡優斗だ。
「若様、そろそろ『大名行列』の時刻にござりますれば」
 セナ侍が声をかける。ちなみに彼の役どころは公儀お庭番『相沢聖名之丞』。
 悪役浪人姿で引っ立てられ、裏で着替えて正義の浪人姿で戻ってきたマコトの『紅お亮』も並んで膝をつく。
「れいらさんには先日妹がお世話になったそうですね」
 セナがれいらに笑顔を向けた。
「ええっ? セシルちゃんのお兄さんかいな。今度遊びに来て言うといて」
「ありがとう。さあ、そろそろ着替えに行ってくださいね。れいらさんが来たからには、特別の趣向を凝らさなくては」
 意味ありげにセナはにこり。

● ツンデレ花嫁行列?
 そして大名行列‥‥という名目の、時代劇村名物仮装行列が始まった。
「下に〜、下にぃ〜。裳布利城ご城主、月岡優斗衛門様のご婚礼披露目なるぞ〜」
 行列の露払いを務める役者さんが朗々と宣言する。続く行列の中には、
「つかなんで仮装行列で大名行列で婚礼お披露目なんだか‥‥わけわかんねーよ」
 と、ほっぺを赤くして文句を言う、きらびやかな婚礼用羽織姿を着せられ駕籠に乗せられている優斗。
「こっちだってわけわからんけど、まあ、ええやん。ペヴィーもめっちゃ喜んでるし、れいらもちょっとだけ未来先取りしたみたいで、ええ気分」
 とれいら‥‥白綿帽子に白綸子打掛の花嫁衣裳姿で同じく駕籠に乗っている‥‥の言う通り、「出雲の阿国」風の巫女スタイルに着替えさせてもらったペヴィーは「レアなエクスペリエンスだでかんわ!」と興奮している。
「『金太郎』の頃と比べると、大人になったのですね。母は‥‥嬉しく思っていますよ」
 と黒地に萩模様の着物に献上柄の博多帯を締めた艶やかな芸者姿に着替えた帆乃香は舞台共演で優斗の母親役を務めた記憶を蘇らせて、ほろりと袖で目頭を押える。
「ってほのかねーちゃん‥‥ほんとに結婚したわけじゃねーから」
「帆乃香さんの芸者さんもれいらちゃんの花嫁姿も眼福〜♪」
 とにこにこな虹は、鹿鳴館時代の濃紺色の夜会服。ドレスに慣れていないため歩きづらそうだが、金モールで飾った男爵服の京が腕を貸してエスコート。巴御前風の緋色の女甲冑姿のマコト、優雅な水色の衣を紅の紐で締めた平安時代の神楽人姿のセナは大注目を浴び、きゃあきゃあ騒ぐ観光客と握手したり大忙し。
「マコト嬢といい、虹嬢ちゃんといい、服を替えるだけでずいぶん表情も変わるもんだな。そんなところは芸能人も普通の女の子ってとこかね」
 呟きつつ、巻き添えで昭和初期の書生姿になった高遠は袖をまくって忙しくシャッターを切っている。自らも時々観光客にせがまれて被写体になっていたが。
 駕籠が橋を通りがかった時、れいらは知った顔を見つけてぱっと顔を輝かせた。
「あ、みちるさん!」
 扮装は見慣れた洋装と違い、女忍者めいた裾短の絣の着物姿だが、確かに日向みちる(fa4764)である。
「こんにちはれいらさん、五十嵐さん。奇遇ですね。それと、れいらさんのお友達の方ですね。はじめまして、少女歌劇団の日向といいます。お見知りおきを。今日は歌劇団メンバーがゲスト出演するんですよ。私も出演予定ですが、『牙武者』の終演記念イベントもあって、扮装のままで駆けつけたんです」
 今日は時代劇村に歌劇団の綺麗どころを集め扮装パレードをより盛り上げるという趣向らしい。橋の上にずらりと並んだ歌劇団の美女達が腰元姿や芸者、町娘などに扮して通りを歩きつつ花吹雪をばらまく。
「若様、おめでとうございま〜〜〜す☆」
(「なんか、れいらと結婚‥‥ってのが既成事実になっちゃったみたいじゃん?」)
 内心タラーリと冷や汗をかいている優斗。
「言うとくけど、れいらの気持ちは仮装とちゃうからな? お互いが二十歳過ぎる頃になったら、覚悟しとけ☆」
 そんな彼に、れいらがこっそり耳打ち。
 優斗が照れ笑いしたか、ガクブルしたかは定かでない。