【探検】未発掘洞窟の謎ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
大林さゆる
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
13.5万円
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参加人数 |
14人
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サポート |
0人
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期間 |
02/19〜02/25
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●本文
アイルランドは、パワー・スポットと呼ばれる遺跡や聖なる樹フェアリー・ツリーが点在している魅力溢れる国だ。数ヶ月前、アイルランドの北西部にて遺跡の調査が行われていたが、そこで撮影された資料を基に分析した結果、南西部のバレン高原にスポットが当たった。今のところ、まだ推測の域は越えていないが、巨人のテーブルという遺跡付近には未発掘の洞窟が多いことは事実であった。
現在、一般公開されているのはアーウィーの洞窟くらいで、他にも無数の洞窟があるのだ。今回は、その無数の洞窟のうち、一つの未発掘洞窟を探索することになった。
「やれやれ、撮影が終わってのんびりできると思いきや、依頼か‥WEAは相変らず人使いが荒いな」
そう呟きつつも、言葉とは裏腹に不満ではないらしい。ティル・シュヴァルツ(fz0021)が今回の依頼人となる。洞窟の入口付近で待機していると、一人の人物が姿を現した。ガードマンのイオスである。彼はヨーロッパの遺跡調査員でもあったが、今回はティルと協力態勢を取るようだ。二人は獣人の協会WEAから派遣された狼の獣人たちだった。
「さて、俺たちは本部との中継通信で最新のデータを送るため、入口付近で待機することになる。今回も他の者たちに協力してもらう必要がありそうだな」
ティルがそう告げると、イオスは携帯用のモバイルパソコンを持ちつつ、データをさらに分析中ながらも答えた。
「ええ、たった今、募集の告知を送信しました。何人か来てもらえると助かりますね」
「今回の洞窟は全くと言っていいほど、手がつけられていない状態だ。どんな構造になっているかも分からんし、ナイトウォーカーが住み着いている可能性もある」
そうなのだ。言い換えれば、地図のない発掘調査となる。言い換えれば、マッピングしながらの探索となるため、労力も半端ではない。
「なんにせよ、ケルト神話との関連性の高い遺跡ならば、稀なオーパーツでも見つかるかもしれんな」
「そうですね。まあ、オーパーツも気になりますが、最近は群れで出現するナイトウォーカーも出るようになってきましたから、危険度は高いですね。気を付けないと」
イオスの言葉に、ティルは少し眉を顰めた。
「‥‥昔から、ナイトウォーカーは俺たちの天敵だったという説もあるが‥‥ナイトウォーカーにとって、獣人は餌みたいなもんだからな。不思議なことに人間は襲わないが、人に感染して乗っ取られてたらナイトウォーカーになっちまう‥‥正直、辛いな‥‥」
「ティルさんでも‥‥辛いですか?」
「‥‥。ま、なぁ‥‥俺は好きで俳優もやってるが、できれば人とは争いたくないってのが本音だ。だが、ナイトウォーカーは人だけでなく、動物にも憑依する。これは自然界として、どういう意味があるのか、考えたことはあるか?」
「意味‥‥ですか。正直なところ、あまり考えたことはありませんね。ナイトウォーカーには人のような感情はありませんし、俺たちを主食にして生きていますから」
「問題はそこだ。ナイトウォーカーも生きるために獣人を食っているってことだ。ま、今回の依頼とは関係のない話だがな。本部からの指令では、ナイトウォーカーと遭遇した場合、殲滅しろとのことだ。洞窟内ならば半獣化だけでなく、獣化も可能との指示も出た」
今回の依頼は、先にも言った通り、地図のない発掘調査となる。調査することによって、ようやく洞窟内がどのような構造になっているのかが明らかになるのだ。洞窟の内部は暗いため、照明道具等も用意するのが無難だ。洞窟の中では半獣化、完全獣化も可能だが、外では人の姿が望ましい。ティルとイオスは洞窟の入口付近で待機しつつ、本部と遺跡内部の通信を主に、参加者のサポートをすることになっている。どこまで調査が進展するのかは、参加者の腕次第だ。皆の健闘を祈っている!
●リプレイ本文
●遺跡調査〜初日
今回の依頼で集まったのは12人。結果、2班に分かれて調査を行うことになり、人数調整も考えて、6人ずつとなった。
A班‥ミカエラ・バラン・瀬田(fa0203)、天音(fa0204)、ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)。
LUCIFEL(fa0475)、森里時雨(fa2002)、七枷・伏姫(fa2830)。
B班‥緑川安則(fa1206)、泉 彩佳(fa1890)、パトリシア(fa3800)。
片倉 神無(fa3678)、神保原・輝璃(fa5387)、葵・サンロード(fa3017)。
作戦において、葵はA班の予定であったが、ティル・シュヴァルツ(fz0021)の薦めもあって、B班に入ることになった。葵を始め、森里や天音、七枷たちはケルト神話やアイルランドの基礎知識などを事前に調べていたようだ。その点に抜かりはなかったようだ。
「アイルランドにケルト人が来たのは紀元前の200年頃らしいですよ。それ以前にも別の人種が住んでいたっていう仮説もあって、巨石遺跡とかは先住民族が作ったという説もありますね」
そう告げたのは葵だった。森里たちは念の為、市内の図書館で調べることにしたのだ。
「なるほどのぉ。じゃとすると、バレン高原にあるドルメンはケルト人たちが作った訳ではないとも考えられるの」
天音がそう告げると、森里がこう言った。
「今回調査する洞窟がケルト神話と関連があるならば、神話に出てくる神様が祭られている可能性もあるぜ?」
そして、当日の午後になって12人が洞窟の入口に集合した。
「この国にいる間は禁煙するしかねぇか‥‥」
呟くように言う片倉に、ティルは微笑していた。
「喫煙家にとっては辛いだろうが、日本もマナーにはうるさいと聞いたが?」
「日本も、まあそうだが、まだ喫煙場所はある。電車を利用する時は禁煙なのは確かだが」
そんな会話を余所に、森里と緑川、パトリシアは洞窟付近の崩落防止の再チェックをしていた。
「どんなオーパーツがあるのか、楽しみですね♪」
そう言うパトリシアに対して、森里が応えた。
「そうだな。けど、やっぱ調査に専念した方が良いかもな」
「チェック、よーし! 準備万端だな。いつでも出れるぜ」
緑川の言葉に、イオスが頷いた。
「それじゃ、よろしく頼む。俺とティルさんはここで待機している。内部でオーパーツらしきものが見つかったら、持ち運んでもらえると助かる」
「私たちに任せておきたまえ。大船に乗った気で待っているがいい」
演技かかった口調の緑川を見て、森里は笑いを堪えていた。実はティルと片倉の会話にも内心楽しんでいたのは、ここだけの話であった。
●遺跡調査〜最終日〜A班
7日目になり、調査はやや順調に進んでいた。
「古典的な方法デスが、これならバ、マッピングも書き易いのですヨ」
ミカエラは楽しげに方眼用紙と鉛筆を利用して洞窟内部の地図を作成していた。内部では携帯電話などは圏外となり、使用できないためだった。ライトはヘッドランプ‥‥お決まりの装備であったが、だからこそ調査にもそれほど支障はなかったのだ。
「探検、探検〜♪」
鼻歌混じりにミカエラが書き綴っていた時、何かの唸り声が聞こえた。ヘヴィはとっさに銃を撃ったが、予想に反して、ナイトウォーカーは逃げていった。
「‥‥なんだ? 普通のナイトウォーカーか? まあ、ナイトウォーカーに普通も何もねえが、この間みたいのとは違うようだな」
この間とは、群れのナイトウォーカー退治のことだ。群れの場合、腕が飛ばされようが、翼を引き千切られても、獣人たちに執着するように襲ってきたのだ。正直、ヘヴィは拍子抜けしていたが、ナイトウォーカーの気配がなくなったことを確認してから、さらに先へと進んでいった。
「あまり奥ヘト進むのハ危険ですから、気をツケまショウ♪」
ミカエラは自身の獣人姿にコンプレックスを持っていたが、まるでそんなことはないとでも言うかのごとく、明るい調子であった。そして一時間が経った頃、人工的に作られたような正方形の部屋と思われるような場所へと突き当たった。ランタンをかざして見ると、壁画が刻まれていた。
「これは‥‥ケルノヌスの神?」
森里はすぐに直感した。これはケルト神話に出てくる鹿の姿をした巨大な神の姿であると‥‥それは天音も同様だった。
「巨大な鹿の周りに、ウサギ、リスなどがいるのぉ。調べたことが確かならば、ケルノヌスの神じゃろうな」
部屋は行き止まりになっていたせいか、物影に隠れていたナイトウォーカーが突然、突進してきた。すかさず獣化した森里が食い止め、ナックルで叩きまくる。
「やっと俺の出番かな?」
LUCIFELは森里から借りた『天界の声』というオーパーツのマイクを付けて歌い出した。
Awaking Awaking Awaking.Don’t afraid
Blood make noize.Instinct of struggle
Dryness of soul.Heartless feelings
Shout of soul.The world that heats up
ただでさえ音量のある歌声に『天界の声』の効果が発揮されて、ナイトウォーカーの動きが鈍くなった。ライトを照らすと、全長170センチほどの天敵であった。森里が敵から離れた瞬間、ヘヴィが銃でナイトウォーカーのコアを狙う。
「首だ! 首を狙え!」
ヘヴィがとっさにそう告げると、森里は至近距離まで詰め寄り、ナックルでコアを叩きまくった。
「おらおらおらおらー!」
そして、狙いを定めて、天音と七枷・伏姫のコンビネーションが炸裂し、ナイトウォーカーは崩れ落ちた。
「やれやれ、行き止まりだと知っていて、拙者たちを食うつもりだったのか? ま、それより、壁画のある部屋を調べてみるでござるか」
罠がないかどうか慎重に調べながらも、七枷はスコップで地面を掘ってみた。数分後、古びた壷が埋まっていた。どうやら封印されているらしく、今のままでは中身は確認できなかった。
「とりあえず、これを持って行くでござるか」
「そろそろ時間デース。2時間ちょっと過ぎマシタよ」
「んじゃ、戻るか。昼の1時頃までにも戻らねえとな」
ミカエラに続き、森里がそう告げた後、LUCIFELは何かに気付いた。
「森里‥‥怪我してるな。俺のヒーリングポーション使ってもいいぞ」
「え? いや、戻ってからでも‥‥」
森里がそう言いかけた時、LUCIFELは惜しみなく飲ませた。
「なーに、これくらいお安い御用だ。怪我してるのって、見てても放っておけないしな」
「‥‥すまねえな。サンキュ」
「さて、戻るか。イオスたちには知友心話で、伝えといたぜ」
ヘヴィがそう告げると、A班全員は元来た道を戻っていった。
●遺跡調査〜最終日〜B班
「あ、こっちに反応があります」
泉が持っていたダウジングマシーンDXが反応した。簡単に言えば、オーパーツ発見装置である。二つの分岐点があり、反応する右側へと進んでいった。
「戻るのが待ち遠しいです」
パトリシアの言葉に、片倉はオーパーツを持って帰るのが待ち遠しいのかと思っていた。それもあったが、初日に渡しそびれていたものを最終日の午後に手渡そうとパトリシアはウキウキしていた。マッピングしていたのは葵であった。使用しているのはB4サイズのノートとボールペンである。それは本部から支給されたものであった。
「なんだか‥‥緊張しますね」
葵は天井や壁を気にしながら、先へと先へと歩いていった。天井が崩れ落ちてくる可能性もあるし、気を抜くことができなかった。
1時間半くらい経つと、前方に立ちはだかる全長2メートル近いナイトウォーカーが出現した。すぐに気がついたのは便利屋の神保原であった。
「これで5匹目だね。まあ、一日1匹くらいだから、なんとかなるか?」
そう言いながら、神保原は間合いを取るようにナイトウォーカーを睨みすえた。至近距離ということもあり、緑川は背負っていた一文字の斬馬刀で攻め込んだ。俊敏脚足を駆使して、蹴りを放つ神保原‥‥素早い動きに翻弄されたのか、ナイトウォーカーが後退していく。それを見逃す緑川ではなかった。斬馬刀で斬りまくっていた。
「この切れ味、最高だね。コアは神さんに任せるぜ」
「なんか楽しんでないか?」
と言いつつ、援護で片倉が温存していた飛羽針撃でコアに集中攻撃した。ソードofゾハルという剣を両手で構えて、パトリシアが俊敏脚足で走りこみ、斬り付けた。
「止めは緑川さんにお願いします!」
「よっしゃ、この時を待ってたぜ!」
緑川はコアと一緒にナイトウォーカーを一刀両断した。
「なんか癖になりそう」
「おいおい、何言ってんだ?」
片倉が思わず溜息をつくが、緑川は気にしていなかったようだ。むしろ喜んでいる。
そして、さらに奥へと進むと、長方形の小部屋らしき場所に辿り着いた。壁をランタンで照らして見ると、複数の動物たちが刻まれていた。中心には巨大な鹿が二本足で立っていた。神保原は懐中電灯で壁画を照らしつつ、何か自然の偉大さを感じて、少し感動していた。
「これはケルノヌスという森の神様のレリーフかもしれませんね。ダウジングマシーンDXも反応していますから、ここにオーパーツがあるはずです」
泉がそう告げると、葵は懐中電灯で丹念に小部屋を調べた。他の者たちも小さな灯を頼りに、慎重に周囲を見渡した。数十分後、壷と思われる古びた入れ物らしきものが発見されたが、やはり封印されており、すぐに中を見ることはできなかった。
「知友心話で、ティルさんに伝言しました。そろそろ戻る時間です。A班も何かを見つけたようです」
「そっか。それじゃ、帰るとするか」
緑川がそう言うと、うれしそうにパトリシアは頷いた。
「はい、戻りましょう」
「‥‥これで終わりってのも、ちょっと残念だな」
片倉の呟きは、暗闇へと消えていった。
●最終日〜午後
パトリシアは男性陣に一人ずつ、チョコレートを配っていた。
「バレンタインの代わりと言っては何ですが、よろしければ食べて下さいね」
何故か時雨の分だけ包装が違っていた。これは何を意味するのだろうか? 今の森里には全く分からなかったが、片倉は分かっていながらも何も言わなかった。
遅い昼食はイオスが作ったサンドイッチ、ティルが作ったコーヒーであった。和気藹々しながら、最終日が過ぎていった。簡易テントの近くには、ヘヴィの小型トラックが置いてあった。
7日間の調査であったが、思ったよりもマッピングは進んでいたようだ。まだ調べていない場所もあったが、まずまずの結果であった。今回調査した結果は、本部へと報告することになった。
完全に調査が終わっていないため、また依頼がある可能性もあるだろう。ともかく、皆さんお疲れ様でした。