うさぎ幼稚園IN婆さんアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
大林さゆる
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.2万円
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参加人数 |
11人
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サポート |
0人
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期間 |
02/24〜02/28
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●本文
突然だが、婆ちゃんが主人公でも良いのではないかとプロディーサーは考えたって訳さ。カッコ良い男優・女優が主役も面白いとは思うが、婆ちゃんが主役でも良いのではないか?
という訳で、ドラマの参加者募集中。泥棒さんも登場するが、あくまでも『コメディ』路線で、視聴者も参加者も楽しめるドラマになれば幸いである。この際、芸人さんでも問題ない。何故なら、最近は芸人でもドラマに出演することもあるからだ。万が一、役が余った場合はNPCが演じることになっているが、声優さんだってドラマに出演することもある。かなり稀ではあるが、この機会にぜひどうぞ。
●ドラマの登場人物
東山 ウメ(ひがしやま・うめ)‥‥主人公。80歳くらい。特殊メイクで『婆ちゃん』になれるため、男性でも女性でも演じるのは可能。口うるさく、偏屈な婆さんだが、根は優しく、愛と友情が何気に好きらしい。が、偏屈なため、誤解されることが多い。
相田(あいだ)‥‥うさぎ幼稚園の金庫を狙おうと昼間から忍び込む泥棒。職をなくして金に困り、金庫の中にあるお金を盗もうと企んでいる。できれば男性が望ましい。
金子(かねこ)先生‥‥うさぎ幼稚園の保育師。ベテランのまとめ役で、ウメ婆さんが来ると『ここは関係者以外、立ち入り禁止ですから』と、熱く語る人。
山寺(やまでら)先生‥‥うさぎ幼稚園の保育師。中堅のムードメイカーで、ウメ婆さんの優しさに気がつく鋭い視点を持っている。園児にも人気がある。
宮崎(みやざき)先生‥‥うさぎ幼稚園にきたばかりの実習生。ウメ婆さんが苦手で、来ると逃げようとする。園児たちに励まされることが多い。
風見(かざみ)先生‥‥うさぎ幼稚園の実習生で、二ヶ月くらい経った。宮崎先生とは、それなりに仲が良いらしい。根性のある人。
エキストラ(脇役)‥‥2〜5人くらい。ご自由に役を決めて下さい。例えば、ウメ婆さんの友人、近所に住む園児の父親、母親、などなど。ちなみに園児たちは5歳前後でNPCが演じます。
●ドラマのあらすじ
時は1996年。都市化が進み、古い建物も少なくなったが、そんな中に『うさぎ幼稚園』があった。そして、近所にウメ婆さんが住んでいて、週に2〜4日の割合で暇な時に『うさぎ幼稚園』に遊びに来るのだ。だが、偏屈な性格のせいで、保育師たちとの対立も絶えない。それでも、のほほーんと、何事もなかったかの様に現れるウメ婆さん。さすがに金子先生も頭が痛くなってきた。
それを余所に、幼稚園へと忍び込もうとする泥棒が一人。とは言え、初めての盗みらしく、動きが巧みではない。言い換えれば、新人の泥棒である。ふとそれに逸早く気が付いたのはウメ婆さん。何故か野球のバットを片手に、泥棒を捕まえようとする。その間、慌てながらも先生たちは警察に電話するが、結局はウメ婆さんの策略(?)により、すでに縄跳びの紐で泥棒は捕まっていたそうな。
●補足事項
エキストラでも、プレイングの内容によっては活躍できる場合もあります。ただし、主人公たちを引き立てるような内容を心掛けて下さい。ギャクもOKですが、端から見ても分かり易い感じに書いてもらえると助かります。ちなみに大林は『御笑い』にはチェックが厳しいです。
●リプレイ本文
●うさぎ幼稚園IN婆さん〜キャスト
クッキー(fa0472)‥‥東山 ウメ(婆ちゃん)
エマ・ゴールドウィン(fa3764)‥‥北村 タケ(ウメの友人)
壱嶋 響時(fa5258)‥‥巽(たつみ)
青田ぱとす(fa0182)‥‥よし江(巽の奥さん)
雨月 彩(fa4992)‥‥茜(あかね)
グライス・シュタイン(fa4616)‥‥金子先生
蘇芳蒼緋(fa2044)‥‥山寺先生
アヤカ(fa0075)‥‥風見先生
緑川メグミ(fa1718)‥‥宮崎先生
志羽翔流(fa0422)‥‥相田賢治(新米泥棒)
名無しの演技者(fa2582)‥‥名梨那人(新人警察)
●うさぎ幼稚園の日常?!
「鬼を退治して、めでたし、めでたし〜♪」
実習生でもある宮崎先生の紙芝居が終わり、次は園児たちのお昼寝タイムの時間だ。子供にとって、昼寝とは実はとても大切なことでもあった。そして、寝付けの天才でもある山寺先生が園児たちを隣の教室へと誘導して、一人一人を寝かし始める。
「風邪引かないように、毛布はきちんと被りましょうね。毛布を被る、というのは変ですね‥‥そうそう、布団の中に入って、毛布は首まで。そうすると、身体も温まりますからね」
そう言いながら、山寺先生は子守唄を歌いつつ、なかなか寝付けない園児の傍で横になった。気がつけば、うっかりと自分まで寝てしまう始末‥‥はっと気がついた時、時計を見たらば7分くらい経っていた。男性の保育師というのはまだ珍しい時代ということもあり、やはり女性の先生が多かった。山寺先生はうさぎ幼稚園では唯一の男性の先生でもあったのだ。
とか言う、説明を余所に、そろりそろりと忍び込む男がいた。相田賢治‥‥ただ今、なにやら周囲を気にしながら、職員室へと向かっている模様。だが、外では東山 ウメという婆さんがやってきて、相変らずの話し合いというか、なんというか、とにかく何やら少しずつ騒がしくなってきたようだ。
「またあんたかい? 今は昼間の時間やで? それ分かってて来たんか?」
関西訛りでそう言うのは、近所に住む『よし江』さんであった。ウメ婆さんがなにやらウロウロしているのを見て、ずずずいっと近付いてきた。
「散歩してただけなんじゃがの? それが何か?」
杖を持ちつつ、チャンチャンコを着たウメはそのまま通り過ぎようとする。
「何かやあらへん。帰りの時間にも寄らんでもらいたいね。あんたが来ると、碌なことが起きんからね」
よし江がそう告げても、ウメは「失礼したの」とか言いつつ、とりあえずその場から離れていった。実際、友人の家へ行くところであったのだ。幼稚園の裏手には、昔ながらの一軒家があった。ウメの友人である北村 タケは一人暮らしをしていた。丁度タケが折り紙で何やら作っていると、ウメがやってきた。
「全く、ちょっと通っただけなのにの」
ウメがそう言うと、タケはいつものように溜息雑じりで自宅の茶の間へと友人を招きいれた。お茶を入れて、皿に羊羹をのせて卓に置く。一息つくと、タケは冷静に告げた。
「幼稚園には専門の先生たちがいるでしょう? アンタがしゃしゃり出たら立場ないじゃない。先生たちは資格を持っていて、それでお金も貰っている立場よ? 単に子供好きってだけでは続けられない仕事ではないと私は思うわ。それが分かっていて、余計なことを‥‥」
などと話をしている途中、ウメは窓から幼稚園の様子を窺っていた。
「もう、言ってる側から、これだもんね」
タケがそう言うと、ウメは急に外へと飛び出していった。
「ちょ、ちょっとどこ行くの?!」
「幼稚園じゃよ。なんぞ、見知らぬ男がおったようでな。若い男の先生は山寺さんだけだったはずじゃ」
そう言うウメに対して、タケも急いで後を追っていった。それでも家の鍵をかけることだけは忘れないタケであった。
●ウメ婆さんが来たってば!
園児たちの帰宅時間。ベテランの金子先生は茜の姿を見かけると感心するように告げた。
「まだ学生さんなのに、弟さんを毎日迎えに来るなんて、偉いですね」
「いえ、うちは両親が共働きで帰りが遅いですから‥‥私にできることって、これくらいしかありませんし」
茜は照れ笑いしつつ、弟の手を取った。
「さ、今のうちに帰った方が良いですよ。そろそろ来る頃ですから」
金子先生の言った意味が分かり、茜は弟と一緒に帰っていった。
「ウメ婆さんが来るんでしょうね。宮崎先生、大丈夫かしら?」
風見先生の予想は的中していた。宮崎先生はすでに防御体制に入っており、教室の中にいた。その時であった。職員室の方で、何やら微かな音がしていた。山寺先生かと思い、職員室へと行ってみると‥‥見知らぬ男だった。彼は相田という名があったが、無職で金庫を盗もうとしていたようだ。とっさに察した宮崎先生は消火器を持って、慌ててピンを外した。
「ド、ドロボー!! 誰か来て〜!!」
だがしかし、消火器のホースは相田とは別の方向へと噴射して、職員室は真っ白になってしまった。それを機に、金庫を持って走り去ろうとする相田‥‥だが、立ちはだかる者がいた。ウメ婆さんである。金子先生のガードもなんのその、ひょいと回避して、幼稚園の中へと入ってきた。
「もしもし、警察ですか?」
事態に気付いて、電話をするのは山寺先生であった。金子先生は園児たちを守るため、敢えて何も触れず、いつも通りに見送る。外で騒ぎ立てると近所迷惑になるし、泥棒が逆ギレして何をするか分からないからだ。そこまで計算しての行動であった。だが、風見先生はそんなことも知らず、楽しそうに子供たちに向かって手を振っていた。
「皆さん、気を付けて帰ってね〜。来週の月曜日にまた会いましょう♪ お歌の時間は、あたしがオルガン弾くから、楽しみにしててね」
「はーい、先生、さよーならー」
園児たちも手を振りつつ、親と一緒に帰っていった。そして、園児たちが全員帰っていくのを確認すると、金子先生は職員室へと向かった。風見先生は事態が分からず、首を傾げていた。
「あのー、なんで職員室の中が真っ白な粉まみれなんでしょうか?」
「金子先生、警察には電話しましたよ。それまでに俺が時間稼ぎをしますから」
山寺先生は飄々として普段通りにそう告げた後、モップを持って通路へと走っていった。
「えと‥‥どういうことですか〜?」
風見先生の言葉に、金子先生が恐る恐る応えた。
「あのですね‥‥どうやら、この中に、泥棒がいるようです。気を付けて下さい」
「‥‥泥棒‥‥?」
きょとんとした後、風見先生は手を打った。
「そうですか。だから、山寺先生は警察に電話を‥‥で、宮崎先生はどこに?」
「それは‥‥分からないです。泥棒もいますし‥‥何度も言いますが、気を付けて下さい。分かりましたね。風見先生はとりあえず、職員室で待機してて下さい。私もここにいますから」
と、その時であった。
「どけ! ばばあ! この女がどうなっても良いのか?!」
相田は宮崎先生を捕まえて、そのまま逃走するつもりのようだ。
「どうぞ、お好きになさって。ささ、逃げてちょうだい」
ウメ婆さんは恐怖心どころか、むしろ普通の態度だ。それが妙に癪に障ったのか、相田は宮崎先生を連れたまま、走り去った‥‥と思いきや、慌てていたせいか、下まで注意がいかなかった。通路の死角にロープが張られており、相田はまんまとそれに引っ掛かり、倒れこんだ。もちろん、宮崎先生も倒れてしまう。その隙に、山寺先生が宮崎先生を抱き起こして、モップで倒れている相田を叩いた。
「?! ‥‥ちっきしょー、ばばあの分際で、味な真似しやがって!!」
相田が叫ぶと、ウメ婆さんも杖で容赦なく叩いていた。
「カカカカカ。年寄りだからこその知恵じゃ。若いモンは、音が良いじゃね。何度も叩きたくなるの」
「あのー、ウメ婆さん、これくらいにして、この男‥‥縛った方が早いと思うんですけどねぇ」
山寺先生はまるで日常会話のごとく。ウメも、そんな感じの口調であった。
「いやいや、悪さをすれば痛い目に遭う。身を持って知るのも良いことじゃ」
などと尤もらしいことを言って、まだまだ杖で叩きまくるウメ婆さん。援護とばかりにタケもビー球を泥棒に向かって投げていた。
「二度と盗みなんかするんじゃありませんよ? 何があったのか知りませんが、警察が来たらちゃんと自白しないさいね」
タケはそう言いつつ、ビー玉を投げるを止めた。少し経つと、警察が駆けつけてきた。
「この地区所属の名梨那人(ナナシ・ナヒト)であります! 泥棒がいると聞きまして来たのですが、どこですか?」
「ここじゃ。ここにいるじゃよ」
ウメ婆さんの足元には、倒れて痛がっている男がいた。
「この男が泥棒ですか? なんだか我々の出番は捕まえることくらいですか。ご協力に感謝します!」
名梨は敬礼すると、相田に手錠を嵌めた。その瞬間、相田は泣き崩れた。実は小心者だったのだ。
「‥‥お、俺‥‥勤めてた鉄工所が、給料日前に潰れて‥‥無収入じゃ、さすがにこの先、生きていけないと思って‥‥会社が潰れなきゃ、俺だってこんなこたぁしないよ‥‥」
涙を流しながらも相田は内心『覚えてろよ、ババァ‥‥。仕返ししようものなら、どんな仕置きをされるかわかんねぇけど、いつか必ずしてやる』と密かに燃えていた。警察の名梨は相田を連れて、近所の交番へと向かっていった。
「これで一件落着じゃ。カカカカカカ」
ウメは楽しそうに笑っていた。そして、幼稚園の外へと出ると、よし江が夫の巽と二人並んで立っていた。さすがに警察の姿を見て、よし江たちも気になっていたようだ。すでに夕日が沈もうとする頃であった。
「またかいな、このババああああ!」
「なんのことかの?」
「おまわりさん来たって? ホンマにあんさんの悪戯は手当たり次第やな、善良な市民も泥棒も。相手が悪かったね、あの男も」
なんとなく、相田に同情するよし江であった。
「落ち着いて下さい! よし江さん! ウメさん、すみませんすみません!!」
どちらかと言うと、巽はウメよりもよし江の方が怖かった。
「なんで巽が謝る必要があんねん? もう! シャンっとしてや! 同期の乾さんなんかもう係長から昇給二回目なんやって?」
「う‥‥いくらなんでも、ここで言う話ではないでしょう? そういうことは自宅に帰ってからにして下さいね?」
巽は冷汗を流しつつ、よし江を宥めた。
「相変らず、尻に‥‥と言うか、それじゃ、いくらなんでも重圧で大変じゃの。同情するよ、巽さん」
ウメの言葉に、よし江は反射的に言い返した。
「太るとか言うなや! 誰のストレスやおもてんねん!」
「そんなこと、一言も言っておらんじゃよ?」
のほほーんと言うウメに、よし江は言いよどんでいた。
「う、うううう。いや、そやけども!」
「ウメさん、本当にすみません‥‥よし江さん、あまり言い争うと近所の人たちにも迷惑ですから、そろそろ帰りましょう」
「本当は優しい人とか言いますけどね、こっちもね、その暇潰しの意地悪につき合わされたら怒りますよ、それは」
なんだかんだ言いながら、巽の言葉では引き下がるよし江ではなかった。
「およしなさいよ、おウメちゃん。いくらなんでも人様が見てる前で。ご迷惑お掛けしましたわ、ホホホ」
タケはそう言いつつ、ウメの首根っこを軽く掴んだ。よし江の気持ちもようやく落ち着いたようだ。
「‥‥そ、そやな。帰るか。そんじゃ、失礼致します」
律儀に挨拶する巽とよし江であった。ウメは二人に会う度に『凸凹夫婦』と思っていたが、珍しく敢えて一度も言うことはなかった。
「おウメちゃんの機転で、今回はどうにかなったけど、あまり頻繁に幼稚園には行かない方が良いと思うわよ?」
タケの言葉に、ウメはただ黙って頷くだけだった。
●数日後
山寺先生にお茶に誘われた巽は、遠慮がちに小さな喫茶店へと入った。巽は山寺先生と話をしているうちに気持ちが楽になってきたきたのか、ふとこんなことを呟いた。
「温泉に‥‥行きたいです。疲れた心をリフレッシュしたいと言うか‥‥」
「それは良いと思いますよ。温泉でゆっくりのんびりするのは身体にも心にも良いですからねぇ」
山寺先生は休日でも、仕事中でも変わらぬ笑顔を絶やさない人であった。だからなのか、巽も彼と一緒にいる時は気持ちが自然と和むのであった。
「話変わりますが、ウメさん‥‥きっとまた幼稚園に来ると思いますよ?」
「俺は別に、良いんですけどねぇ‥‥ま、ああ見えてもウメさんも戦時中はいろいろと苦労してたって、タケさんから聞いたことがありますよ。詳しいことは分かりませんけどね」
「‥‥戦時中‥‥俺、まだ生まれてない頃ですよ。テレビとかで見たことはありますが、実際に体験した人の話を聞くと‥‥」
巽は思わず涙汲んだ。山寺先生はいつもの調子でこう告げた。
「そのうち、カカカカカカとか笑いながら、うちの幼稚園にもウメさんは来るはずですが、それって、ある意味凄いことだと思いますけどねぇ。俺なんかじゃ、まだまだ人生語れるほど生きてませんし」
「はは、まあ、俺もそうですけどね。妻のことも考えると、これからちゃんとしなきゃって思ってしまうんですよ」
穏やかな時間が流れる。
事件が解決しても、ウメ婆さんは何事もなかったかのように幼稚園へとやってくるだろう。
それもまた、裏を返せば、生きているからこそ、できる奇跡とも言えるだろう。
どんなに時は流れても、変わらないもの、変化していくものもある。
10年後も、うさぎ幼稚園があるのかどうか、今はまだ分からない。
それでも、変わらずにいて欲しい‥‥そう願うタケであった。