【探索】哀しき純金の声ヨーロッパ

種類 ショート
担当 大林さゆる
芸能 1Lv以上
獣人 4Lv以上
難度 やや難
報酬 17.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/23〜05/27

●本文

 アイルランドの南西部、ウイックロウ湾に続くレイトリム川。
 その川沿い近くに18世紀頃に建てられたと噂されている廃墟と化した屋敷があった。
 住む人もなく、管理人もいないが、鼠や野良猫などが数十匹住みついているらしい。
 その屋敷では、少し前から女性のすすり泣く声が聞こえてくると言う。
 人によっては幽霊という話もあったり、泣き精とも呼ばれる妖精バンシーの泣き声ではないかという噂さえ広まっている。
 アイルランドと言えば『妖精の国』とも昔から呼ばれている。地元でバンシーの話が出るのもそれほど不思議でもない。とは言え、もしかしたら‥‥?
 ナイトウォーカーがその屋敷に侵入している可能性も考えられる。だが、泣き声は屋敷内で移動しているような雰囲気さえあった。そのせいか、地元の人々は屋敷に近付こうする者はほとんどいなかった。警察さえも、ただの噂話だと聞き流していた。近くには教会があり、若い神父がいるらしい。
 だが、本当にナイトウォーカーがいたとしたら問題となる。そのため、屋敷内の探索とナイトウォーカー探し及び退治の依頼が出ることになった。とは言うものの、ナイトウォーカーの源となるものは移動している恐れもある。もしかしたら、近くに住む人々に感染していることも考えられる。
 普通の依頼とは少し違う。それだけは獣人ならば誰でも推測できる。人々には考えも及ばないが‥‥。今回は『調査員』として屋敷内及び近辺を調査することになった。慎重に行動しつつ、移動していると思われるナイトウォーカーを探し出し、それが本物であれば人々に気付かれぬよう退治して欲しいという依頼が出た。果たして、泣き声の正体は‥‥?
 それはまだ、はっきりとは分からない。現場にはすでにティル・シュヴァルツ(fz0021)が待機していた。

●今回の参加者

 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa2270 ユージン(17歳・♂・一角獣)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4554 叢雲 颯雪(14歳・♀・豹)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●情報収集
 保健所職員として地味に変装していた俳優のティル・シュヴァルツ(fz0021)から依頼場所の地図を受け取り、伊達眼鏡をかけたユージン(fa2270)と叢雲 颯雪(fa4554)は神父から話を聞くため、教会を訪れた。あまり大勢で行くと逆に怪しまれる可能性も考えられるとティルに言われ、二人だけで行くことになった。
 ベス(fa0877)とDarkUnicorn(fa3622)‥‥ヒノトは保健所職員の格好をして、ティルと一緒に教会付近に待機していた。
 ユージンと颯雪が『屋敷』のことを聞いてみると、若い神父は快く答えてくれた。
「警察も単なる噂としか考えていないようでしたが、近所の人たちが僕の所に相談に来たんですよ。で、内緒で僕一人であの屋敷に行ってみましたが、特に変わった様子はありませんでした。ですが、念の為、屋敷内の地図は書いておきました」
 そう聞いて、ユージンは「その‥‥申し訳ないですが、その地図‥‥貸していただけませんか?」と訊ねると、神父は地図のコピーを手渡してくれた。
「ありがとうございます」
 まさかの出来事に、思わずうれしそうに笑う颯雪だった。屋敷内の地図まで貰えるとは考えてもみなかったからだ。神父に礼を述べた後、二人は教会から立ち去った。
「良かった‥‥こんな展開になるなんて」
 颯雪がそう言うと、ユージンが微笑する。
「そうですね。僕も屋敷の中の地図を貰えるとは思いませんでしたよ」
 物影で待機していたベスたちが、ひょっこりとユージンたちの横に現れた。
「ねぇ、ねぇ、どうだった? ‥‥ぴょ?」
 ベスはユージンが手に持っている紙に気付き、首を傾げていた。すぐに察したヒノトは頷いていた。
「なるほどの‥‥教会で情報収集したのは大当たり、と言ったところじゃの?」
「ええ、ヒノトさんの読みは的中でした。助かりました」
 ユージンの言葉に、ティルは微かに口元を引き締めていた。


●屋敷の調査
 志羽翔流(fa0422)は屋敷内に入ると、半獣化して、野良猫たちと話をしていた。最初は警戒していた猫たちだったが、志羽の愛敬のある笑みに、次第に心を許すようになった。
『ニャンか、最近、変なヤツがいるニャ。けど、そいつは何故か人は襲わないニャ』
 そう聞き出して、志羽はニヤリと笑っていた。
「そっか、そっか、俺たちが退治してやっから、安心しな。それまでは屋敷の外にいた方が良いぜ? 他の猫たちにもそう伝えておいてくれ」
『‥‥分かったニャ。そうするニャ。なんかあんた強そうニャ。頼むニャ〜』
 猫との会話が終わると、屋敷の外にいた緑川安則(fa1206)たちがやってきた。ベイル・アスト(fa5757)はローブを纏っていたが、屋敷での調査ではそれほど支障はなかった。
「今回は治癒ができる者もいるから心強いな。これで思う存分、闘えるな。なにしろ、地元の人々は屋敷には近付かないと言うし‥‥好都合だ」
 ベイルの言葉に、緑川も同意していたようだった。
「そうだな。むしろ、やり易くなかった感じか? なにしろ、屋敷内の地図までゲットできたしな」
 常盤 躑躅(fa2529)は闘えることでワクワクしていた。
「さあて‥‥最後はどんな声をするかね? 泣き声は泣き声でも、違う意味になったりしてな」
 常盤は珍しくパンダの覆面はしていなかった。やはり目立つと考えたのだろう。
「皆に『幸運付与』をかけておくぜ。これですぐに敵と遭遇‥‥なんてな」
 幸運とは何なのか‥‥少し考えさせられてしまったが、常盤の言うようにすぐに敵が見つかることを祈るばかりであった。


●天敵との戦い
 神父から貰った地図を頼りに、颯雪たちは屋敷の中を探し廻ってみた。一階にはいなかったが、3日の夜‥‥二階の奥部屋に天敵がいた。最初は女性の姿であったが、『獲物』がいると判断したのか、ナイトウォーカーへと変貌した。ちょろちょろ影で動き回っていたのは1匹ではなかった。部屋の奥にいたのは、女性と二人の男性‥‥三人とも、感染してしまっていたようだった。こうなれば手遅れだ。倒す以外、方法はない。
 理性ではそう分かっていても、ベスは気持ち的に少し迷いが出てしまった。それを察知した男のナイトウォーカーがベスに狙いを定めた。とっさに援護に入ったのは常盤だった。ソードで躊躇うことなく斬りつけた。緑川たちも冷静に退治へと集中していた。皆の姿に励まされたのか、ベスはすぐに体勢を整えた。
「迷っている暇はなんか、ないよね。こうなったら」
 半獣化したベスは自分にそう言い聞かせて、敵の攻撃を回避しつつ、コアに狙いをつけた。温存していた飛羽針撃を全力で放った。
「羽根手裏剣っ!」
 1匹目の男はコアが破壊されて、倒れこむ。残り2匹‥‥ここからが本番だ。ベスが本調子になったのを見て、ヒノトは安堵していた。
「残りは、わしたちだけでもなんとかなるじゃろ」
 とっさに幸運付与をヒノトにかけるベスであった。
「よし‥‥行くぜ!」
 緑川も志羽も、やる気満々であった。ベスが幸運付与をかけたおかげもあるが、それだけではなかったようだ。やはり二人とも『男』だった。決めるところはやはり決めたいところだ。
 幸い、今夜は満月‥‥志羽は青月円斬で攻撃しまくった。緑川は降魔刀を持ちつつ、男性‥‥天敵のコアを斬りつけた。だが、一度くらいの攻撃では破壊できない。青毒黒爪を使用すると、麻痺したのか、男のナイトウォーカーの動きが鈍った。
「隙あり!」
 完全獣化して爪でコアを攻撃したのは志羽だった。何度もコアを斬りつける。ウィンドダガーを取り出して、接近戦に切り替えのは颯雪‥‥人々が近付かない屋敷とは言え、やはり銃は使わない方が良いと判断したようだ。止めは緑川の降魔刀の一撃であった。
「よっしゃ、なんとかなったな」
 女性であったナイトウォーカーはヒノトとベイルが相手していたようだった。
「ククク‥‥何故、こんなに血が騒ぐのか? さぁ、道化の如く踊ろうじゃないか。それこそ命が果てるまで!」
 ベイルはそう言い放つと、女のナイトウォーカーに向かって全回数の虚闇撃弾を放つ!
 すると、泣く暇もなく、ナイトウォーカーは崩れ落ち、ヒノトがコアを破壊した。それを見た常盤は「ぬぉぉぉ〜!」と叫びつつ、パンダ覆面を被った。
「‥‥泣く暇もなかったか」
 こうして、屋敷内にいた天敵は、全て退治することができた。これも皆の協力があればこそだ。
「さてと、猫たちに倒したこと知らせておくか?」
 緑川がそう言うと、志羽は親指を立てた。
「おう、伝えとくぜ。猫との会話なら、俺にお任せ。なんちってな」
 治癒命光でベスとベイル、志羽、颯雪を治癒したのはヒノトだった。