幸せは春風に乗ってアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 大林さゆる
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 28.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/25〜05/31

●本文

●人間の女性と天使の男性が結婚してできた『家族』のドラマです。
 お父さんは「すぐに帰って来るから」と言ってから、10年も経った。
 すぐって言ったのに、10年経ってから我が家に帰ってきた。
 そして、父はこう言った。
「父上から許しをもらうのに1時間かかって‥‥とは言え、人間界だと10年だからな」


●主な登場人物
坂本家の父‥‥実は天使だが、人間界では人型をしている。見た目は20代くらいだが、実年齢は150歳くらいの天使らしい。

坂本家の母‥‥人間の女性。高校生の時、天使の男性と恋に落ちて、24歳前後の時に子供を出産。二児の母親で美人で優しい性格。

坂本家の兄、または姉‥‥実の父親が「天使」だということを知っている。「父さん、久し振り〜」と明るい性格。

坂本家の弟、または妹‥‥実の父親が「天使」だということは知らなかった。父の話を聞いても「天使なら、羽根があるはずだ!」と言って、すぐには信じられなかった。


●他の登場人物
脇役、エキストラ‥‥2〜4人くらい。坂本家と関係のある者ならば、ご自由に役を決めて下さって構いません。


●主なあらすじ
 坂本家の弟、または妹(どちらでも可能)は、実の父親が「天使」だということを知らなかった。何故ならば、物心がつく前に父親がいなくなり、あまり覚えていなかったから。
 弟(または妹)は「天使なら、羽根があるはずだ!」と言い放つが、父親は「本当の天使は『羽根』なんかないんだ」と答えた。その代わり、天使としての能力はあるらしい。
『ほのぼのホームコメディ』なので、ラストはハッピーエンドとなる。


●設定補足
 坂本家は「苗字」はありますが「下の名前」もご自由に決めて下さっても構いませんし、特に決めなくても良いです。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa3411 渡会 飛鳥(17歳・♀・兎)
 fa3764 エマ・ゴールドウィン(56歳・♀・ハムスター)
 fa4776 アルヴィン・ロクサーヌ(14歳・♂・パンダ)
 fa5669 藤緒(39歳・♀・狼)
 fa5732 浦上藤乃(34歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●幸せは春風に乗って〜キャスト
志羽・武流(fa0669)‥坂本 昇(坂本家の父、天使、外見21歳)
藤緒(fa5669)‥坂本 美和(坂本家の母、人間、外見34歳の美人)
アヤカ(fa0075)‥坂本 麻里亜(坂本家の姉、17歳)
アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776)‥坂本 司(坂本家の弟、12歳)

渡会 飛鳥(fa3411)‥真理(天使マリエラ、昇の妹、外見17歳)
エマ・ゴールドウィン(fa3764)‥坂本 佐和(坂本家の祖母)

浦上藤乃(fa5732)‥村上 和葉(美和の妹、外見30歳の女性)
カナン 澪野(fa3319)‥村上 晃(坂本家の親類、和葉の子供、12歳)


●父さんが帰ってきた!
 坂本家の父である昇が帰ってきたのは、5月の半ばが過ぎてからだった。
 ある日の日曜日の昼過ぎ、ピンポーンとチャイムが鳴ると、坂本 美和は自宅の玄関ドアを開けた。
 すると、夫の昇が朗らかに笑いながら「美和さん、ただいま〜」と、彼にとっては普段通りに挨拶した。だが、美和にとっては10年の月日が流れていた。うれしさのあまり、美和の方から抱き付く。
「おかえりなさい‥‥昇君‥‥ずっと、ずっと‥‥待ってた‥‥遅かったわね」
「ごめん‥‥地上だと10年だもんね。ホントに待たせてごめん‥‥」
 二人は夫婦ではあったが、端から見ると新婚‥‥と言うよりも恋人同士にも見えなくもなかった。何故ならば、昇の外見は21歳前後の男性だったのだ。
 が、一つだけ違うことがあった。それは、父が『天使』だったと言うこと‥‥昇の妹でもある天使のマリエルもいたのだか、昇と美和は再会の喜びで抱き締めあっていた。思わず、コホンと咳払いをするマリエル‥‥地上では、真理と名乗っていた。
「初めまして〜。昇兄さんの妹で、真理って言います。愛に年の差は関係ないって聞くけど、本当なんだねぇ。兄がご迷惑をおかけしました」
 丁寧に御辞儀をするマリエルに、美和たちはふと我に返った。
「え? えっと、初めまして。昇君の妻で、美和と言うわ。こちらこそ、よろしく。迷惑だなんて、思ってないわ。よろしければ、真理さんも家へ入ってね。お茶でも出すわ。そろそろ『おやつ』の時間だし」
 15時を過ぎると、坂本家の姉である麻里亜と、弟の司が二階の部屋から降りてきた。
「あ、お父さんだ〜! おかえりなさーい」
 10年の月日も気にせず、麻里亜は一階のリビングにいた父に抱きついた。
「ただいま、麻里亜ちゃん。しばらく見ないうちに大きくなったね。抱きかかえることもできなくなったな」
 そんな風に言う昇を見て、司は警戒するように少し離れていた。
「‥‥この人‥‥。‥‥誰?」
 司の言葉に、さすがに少しショックだったのか、昇は苦笑していた。
「えーと、司君、僕だよ。父さんだよ。覚えてないのも無理ないかな。最後に会ったのは君が2歳くらいの時だしね」
「‥‥本当に‥‥お父さんなの?」
 美和の腕に手を差し伸べ、司は母に聞いてみた。すると、美和は優しそうに微笑していた。
「そうよ。あなたのお父さんよ。ちゃんと写真も残ってるから」
 そう言って、本棚の中にしまっていたアルバムを取り出して、司に見せた。だが‥‥父の姿が変わっていない。ますます疑問は増えるばかり。
「そう言えば‥‥お義母さんは?」
 昇の言葉に、美和は少し首を傾げていた。『お義母さん』とは坂本 佐和‥‥祖母のことだ。
「いつもは、この時間になると、リビングにくるのだけど‥‥最近、行方不明になることが多くなってきたの。もしかしたら‥‥」
 美和がそう言うと、昇は安心させるように美和の肩を軽く叩いた。
「僕とマリエル、じゃなかった真理に任せて。二人の力を合わせれば、すぐに見つかるから」
「私‥‥人を探せる力があるんです。兄さんはないけど、私の波動をキャッチすることができるから、なんとかなると思います」
 真理の言葉に、美和は安堵していた。麻里亜は喜んでいたが、司はまだ信じられなかった。父と真理の会話から、まだ何が起こっているのかさえ、分かっていなかったのだ。
 そんな時であった。村上 和葉と村上 晃が坂本家にやってきたのは‥‥。
「司くーん、遊びに来たよー」
 そう言って、いつものように晃が言うと、司が玄関まで走ってきた。
「丁度良かった。今ね、父さんが帰ってきたんだ。んで、お婆ちゃんもいなくなっちゃって‥‥よく分からないけど、大変なことになったみたい」
「えー? 司くんのお父さんが帰って来たの?」
 晃がそう言うと、和葉は虎のようにリビングへと向かった。
「ちょっと、今さら、何? 10年‥‥10年よ? 美和姉さんがどれだけ苦労したのか、貴方は分かっての? わたしはあなたを認めない!」
 そう言いながら、昇に詰め寄る和葉であった。
「‥‥。‥‥。‥‥謝って済む問題ではないことは僕にも分かるよ。その話だったら、お義母さんが見つかってから、ゆっくり聞くから。今はお義母さんを探すことの方が大切だから」
「まさか‥‥佐和さんがいなくなったの? 分かったわ。まずは佐和さんを探しましょう。晃、悪いけど手伝ってちょうだい」
「うん、分かった」
 和葉と晃は手を取り合い、坂本家から出ていった。



●祖母を探せ!
 和葉と晃が立ち去ると、真理は祈りを捧げるように両手を組んだ。すると、淡い光に包まれて、何かを探している様子であった。
「‥‥お婆ちゃん‥‥川の近くにいるみたい‥‥兄さん‥‥見える?」
 真理の肩に手を置くと、昇にも真理の見ているヴィジョンが浮かんできた。
「‥‥川か‥‥急いだ方が良いな。真理‥‥先に行っててくれ。僕は後から行くよ」
「ええ、先に行ってるわ」
 真理はそう言って、瞬間移動してその場から消えた。
「?! 消えた? 消えたよ? なんで?」
 司の疑問に答えたのは、麻里亜だった。
「父さんと、妹さんは‥‥実は『天使』なの。あたしは7歳くらいだったから、二人のこと覚えてたけど、司はまだ2歳だったからね〜。覚えてないのも仕方ないかな?」
「お、お父さんと、真理さんが‥‥天使〜?! 嘘でしょ? ホント? だったら、父さんもパッて消えたりできる?」
「ああ、できるよ。だけど、今は『お婆ちゃん』を探さないとね。真理の波動をキャッチして、場所まで案内するから‥‥良かったら、美和さん、麻里亜ちゃん、司くん、僕についてきてくれるかな? そうすれば、すぐに『お婆ちゃん』は見つかるはずだから」
 昇がそう言うと、もちろんと言うように美和は頷いていた。そして、麻里亜と司の手を取った。
「お婆ちゃんを探しにいきましょう。『家族』として‥‥最初の仕事よ?」
 仕事と言う割りには、どこか楽しげな美和と麻里亜であった。司は思わず母の手を握り締めた。


 坂本家4人の姿を見かけて、晃が立ち止まった。
「‥‥なんか、あの昇さんって人‥‥若いって言うか、変わってないって言うか」
 晃は、坂本家の写真を見たことがあった。昇は10年前と姿が変わっていない。自分はすでに12歳になったのに‥‥どういうことだろう?
「訳は後で話すわ。まずは佐和さんを探しましょう」
 すると、司も晃の姿に気付き、走り寄ってきた。
「お婆ちゃんのいる場所、分かったよ。ついてきて」
「分かった? なんで? ナビ付きの携帯電話も家に忘れちゃったんでしょ?」
 晃がそう言うと、和葉は姉たちの後を追うように走り出した。そして、晃と司も走った。


「‥‥。‥‥お義母さん?」
 川の中に入ろうとする佐和の腕を引き寄せたのは昇だった。
「あら、えーっと‥‥昇さん? ここはどこ?」
 自分のいる場所は把握できなかったようだが、昇のことは覚えていたようだ。10年前と姿が変わっていないのが幸いだったようだ。
「僕のこと‥‥覚えててくれたんですね。うれしいです。ありがとう」
「あなたのこと、忘れるはずはないわ。美和の旦那様ですもの。ささ、家へ帰りましょう」
 何事もなかったかのように言う佐和であったが、美和は実母がすぐに見つかり、一安心だった。真理の姿を見て、和葉たちが駆け寄ってきた。
「佐和さん! 無事だった? 大丈夫? 怪我してません?」
 懸命に言う和葉の姿に、晃は『相変らず真面目だな』と思いつつも、そんな母が大切だと密かに感じていたようだった。
「やっぱり、ここにいたね。だって、ここはお婆ちゃんの『思い出の場所』だもんね」
 麻里亜は、その時は7歳‥‥司は2歳だったが、よくお婆ちゃんと一緒に遊びに来ていた場所だったからだ。だからこそ、麻里亜は内心うれしかった。


●幸せの形
「最近のお婆ちゃん、なんか変わったね」
 数日後、麻里亜は溜息混じりにテレビを見ながら呟いた。
「キャー、ヒロシくーん、ステキ〜!!」
 テレビに映るアイドルの姿に、佐和は興奮気味であった。クスクスと楽しそうに笑っているのは美和‥‥そして、昇と言えば、司と話をしていた。
「それじゃ、天使と人間のハーフだってこと? ホント?」
 司がそう告げると、昇が応えた。
「そういうことになるかな。だけど、これは『家族』だけの秘密ってことで。他の人には言わない方が良いかもしれない。言っても、信じてもらえないだろうしね」
「うん‥‥だけど、不思議だな。ぼくにも天使の血が流れているなんて、お父さんみたいになれるかな?」
「別に僕みたくなる必要はないよ。司君は『司』だよ。だから、きっと司君にしかない力があるかもしれない。何かの力に目覚めたら、父さんも協力するからさ」
「麻里亜お姉ちゃんは、何か『力』があるのかな?」
「まだ麻里亜ちゃんも目覚めてないみたいだな。その時は、僕も力になるつもりだしね」
「そっか。なら、こういうのも良いってことだよね? うちみたいな『家族』があっても良いよね?」
 司が言うと、麻里亜はニッコリと微笑んでいた。
「だって、それがうちの『家族』だもんね〜。秘密は守るのが、我が家のルールってことで」
「そうね。『我が家のルール』ね‥‥麻里亜も良いこと言うわね。母さん、とってもうれしいわ」
 美和はそう言いながら、皆に紅茶を手渡していた。


 一方、マリエルと言えば、村上家に居候することになった。
 一人っ子だった晃は、姉ができたようで喜びを隠せなかった。
「真理お姉ちゃん、よろしくね♪」
 晃はそう言いつつ、真理の腕に抱きついた。
「こちらこそ、よろしくね。晃くん‥‥それから、村上家のお母さんとお父さん」
 最初は猛反対していた和葉であったが、坂本家の説得により、結局、こうなってしまった。
「ま、晃が喜ぶなら、これでも良いかな」
 真面目な性格だからこそ、真理のことを放っておけなかったのかもしれない。
 晃はそう思いつつも、敢えてそのことは言わなかった。