ディングル半島の音ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
大林さゆる
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
4Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
5.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/24〜06/28
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●本文
アイルランドは別名『エメラルドの島』と親しまれるほど、自然豊かな国だ。
古来より様々な伝説で彩られた風土は、ケルト文化を受け継ぎながらも未だに魔法や妖精たちの話が残っている。
今回の依頼現場は、アイルランド南西部に位置するディングル半島のディングル湾付近である。ここでは、ドルフィン・ウォッチングが楽しめる。言い換えると、イルカの住む港町だ。
そんな町で不可解な声が聞こえるようになってきた。最初はイルカの鳴き声かと思っていたが、よく聞いてみると「カーン、カーン‥‥」という音なのだ。
この音を聞いて、地元の人々は妖精レプラホーンが靴を作っているのではないかとさえ噂していた。
アイルランドは『妖精の国』とも呼ばれており、田舎では未だに妖精を信じている人さえいるらしい。
妖精レプラホーンと言えば、靴屋の妖精とも知られているが、レプラホーンを捕まえると金持ちになれるという説もある。だが、その正体がナイトウォーカーだとしたら、問題だ。
まずは音を頼りに探し出し、見つけたら直ちにナイトウォーカーを退治するようにという指令が出たのだ。ただし、ナイトウォーカーの正体も、何匹いるのかさえ不明であった。故に、少し探すのが難しいかもしれない。
そして、WEAからナイトウォーカー探し、及び討伐の依頼が入った。アイルランドのクラフト村近辺にいるであろうナイトウォーカーの殲滅である。まずは敵の動きを推測して、退治する必要がある。
「一日でも早く見つけ出し、人々の安全も確保していただきたい。表向きは『観光客』または『ガードマン』として動いてもらうことになる。ガードマンならば銃を使うことも可能だが、使用する際は充分に気を付けてもらいたい」
本部から、各地へとWEAのネットワークを駆使して依頼が送信された。
●リプレイ本文
●音を頼りに‥‥
今回の依頼で参加してくれた者たちは8人であった。
ベルシード(fa0190)、ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)、湯ノ花 ゆくる(fa0640)、
緑川メグミ(fa1718)、小塚透也(fa1797)、ヴァールハイト・S(fa3308)、
各務 神無(fa3392)、伏竜(fa5054)たちだ。
実際、現場に到着して「音」を聴いてみると『鐘』の音にも似ている。
「まずは湾付近のイルカがよく見えるって所で聞き込みでもしてみるか」
そう告げたのは、小塚だった。バイクに乗りたいと思えるほどの快晴でもあったが、自然をゆっくりと眺めたい気持ちもあったのか、徒歩で周囲を巡っていた。
ガードマンとして巡回していたのはヘヴィと伏竜、ヴァールハイトであった。いかにも警備員といった格好で歩き回っていたせいか、地元の人々もほとんど気にすることはなかった。他の者たちは観光客として、クラフト村近辺を廻っていた。
結局、分かったことと言えば、村の近くに水族館と教会があることだった。『鐘の音』で連想するものと言えば、どちらかと言うと『教会』である。そう言ったのは湯ノ花 ゆくるだ。同意するように緑川メグミと各務 神無が頷いた。
「‥‥。そう‥‥教会‥‥ですね。簡単に‥‥考えると‥‥です‥が」
ゆくるの言葉に、メグミが応えた。
「昼間は目立つから、探すとしたら夜になったからの方がいいかもね。敵の習性を考えると、昼から堂々と出る訳もないし」
「それもそうね。小塚さんたちにも、そう伝えておきましょ」
神無はそう告げた後、集合場所である水族館へと向かった。
●闘いとは‥‥
ゆくるの言う通り、教会近辺が怪しかった。
「こうなれば、真夜中に動いた方が手っ取り早いかもしれんな」
小塚はそう言うと、気持ちを引き締めるため、わざと顔を叩いた。
「そうだな。とっとと済ませて、観光したい気分になってきたぜ」
ヘヴィが告げると、伏竜、ヴァールハイトは何も言わずに微笑していた。ナイトウォーカーの習性等を考えると、やはり『真夜中』の方が出現するだろうし、人々にも迷惑をかけずに処理することもできると言ったのはヘヴィだった。
「OK。俺も賛成だ。異論があるヤツはいるかい?」
念を押すように言ったのは小塚だが、反対意見はなかったようだ。
「ほんじゃ、さっさと片付けるか」
ヴァールハイトはまるで動じることもなくそう告げた。
3日目の真夜中であった。
「ようやく、出てきたか」
小塚は流星剣を構えて、間合いを取っていた。やはり教会付近の裏通りにて、4本の触手を揺らし、牙を剥き出しにした天敵‥‥ナイトウォーカーが2匹現れたのだ。
「やっぱ、コアを狙うのが一番だな」
小塚の言うことは尤もだと感じたのは、ヘヴィだけではなかったようだ。別行動していたメグミたちに知友心話で連絡した後、ヘヴィはすぐさま無双の斧で敵の触手を斬り付けた。
「コアを狙われるのが分かってるのか‥‥触手が邪魔だ」
メグミたちが駆けつけた頃には、敵の触手は2本のみになっていた。ヴァールハイトと小塚、ヘヴィたちが連携を取って、まずは触手を斬り捨てていたのだ。
「遅くなってごめんなさい」
神無はそう言いながらも白夜という日本刀で、敵の触手を一本払い切った。半獣化して、翼を広げたゆくるは空から虚闇撃弾、続いて真空風刃を放った。これで触手は全て無くなった。残るはコアを狙うのみだ。
「いくぜ!」
ヴァールハイトは接近戦に持ち込み、特殊警棒で叩き、半獣化してコア目掛けて蹴りつけた。そして、小塚が剣でコアを切り裂く。1匹目が倒れた。もう1匹が逃げようとしたのを見て、メグミが背後からコールドボウで狙った。矢は氷と化して、敵に突き刺さった。ベルシードは囮になろうと回り込んだが、敵も必死だったのか、体当たりされて通りの壁に激突した。
「?!」
ベルシードは声にならない声を発して、激痛に耐えた。だが、胸の辺りから血が流れ始めた。それに気がつき、小塚がヒーリングポーションを飲ませた。
「無茶すんなよ」
「‥‥。すまない‥‥以後、気を付ける」
ベルシードは体勢を整えてから、小塚に礼を述べた。
「この借りは、いつか‥‥」
「気にすんなって。まだまだ敵はいるんだぜ?」
小塚が片目でウィンクする。そのせいか、ベルシードの緊張が解けたようだ。飛操火玉を使おうとも考えたが、後始末のことを考えると、ベルシードはウィンドダガーでコアを狙うことにした。
「全く‥‥逃げようったって、無駄よ」
さらに矢を放つメグミ。援護するように、ゆくるがドリルアームで肉迫する。とっさに神無が俊敏脚足の踏み込みを駆使して日本刀でコアを斬って、斬って、切り捲っていた。
「かわいい顔して、やるね〜」
小塚は明るい調子でそう告げると、止めとばかりに飛羽針撃を放った。見事にコアへと命中して、敵の弱点は破壊された。
「よっしゃ、大当たり〜ってな」
4日目、最終日と8人は湾付近を巡回してみたが、案の定、他にも2匹潜んでいた。だが、皆の連携攻撃により、全てのナイトウォーカーを殲滅することができたのだった。ベルシードはそれほど無茶なことはしなかったようだ。今回に限っては‥‥。
「ゆっくりと観光する暇もなかったな」
ヴァールハイトはそう呟いたが、無事に依頼が終わって安堵していた。