【探索】海の妖精王ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
大林さゆる
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
4Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
28.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/16〜07/22
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●本文
アイルランドは別名『エメラルドの島』と親しまれるほど、自然豊かな国である。
古来より様々な伝説で彩られた風土は、ケルト文化を受け継ぎながらも未だに魔法や妖精たちの話が残っている。
今回の依頼現場は、アイルランド南部の港町ヨール。さらに南には『ケルト海』がある。
ケルト神話には「海の妖精王」と呼ばれるマナナン・マックリールがいた。妖精王の周囲には、たくさんの妖精たちがいたに違いない。その中に「音楽の妖精」が混じっていても不思議できない。
英国のウェールズ地方とアイルランドを結ぶものは『ケルト海』と言っても過言ではない。そして、アイルランドの港町ヨール付近にて、未発掘の遺跡が見つかった。今回の依頼人は俳優のティル・シュヴァルツ(fz0021)だ。彼はアイルランドにいることが多々あったせいか、本部からの指令があったようだ。そのため、遺跡探索に参加してくれる者たちを募集しているらしい。
興味のある方は、ぜひとも参加してもらいたい。とは言え、未発掘の遺跡ということもあり、どのような構造になっているのか‥‥それも現場で直接調べてみないことには何とも言えない状況だ。少し難しい依頼となるが、成功すれば、音楽や妖精に関わるオーパーツが発見できるかもしれない。どこまで調査が進展するのかは、参加者の腕次第だ。皆の健闘を祈っている!
●リプレイ本文
●アイルランドの伝説
依頼人のティル・シュヴァルツ(fz0021)と参加者との話し合いによって、2班に分かれて遺跡を調査することになった。
『1班』はダンディ・レオン(fa2859)、尾鷲由香(fa1449)、フォルテ(fa5112)、七枷・伏姫(fa2830)の4名‥‥。
『2班』は樋口 愛(fa5602)、悠闇・ワルプルギス(fa5167)、セシル・ファーレ(fa3728)、神保原和輝(fa3843)の4人となった。
遺跡を調査する前に、ある程度のケルト神話の知識が必要だということもあり、初日は港町ヨールの区内にある図書館で参考書を調べることになった。ティルは遺跡から離れることができなかったため、代わりに彼の後輩であるイオスがレンタカーを借りて、フォルテたちを連れて『観光客』を装ってヨールへと向かうことになった。
遺跡に残ったのはティルだけでなく、ダンディ、和輝、尾鷲もであった。念の為、待機することになったのだ。他の者たちはイオスと一緒にヨールへと行っていた。車でならば、片道15分程度だったため、意外と距離が近かった。それでかえって、今まで遺跡が見つかり難かったとも言えるのだ。まさか近場に遺跡が眠っているなど、地元の人々はあまり考えなかったからだ。
昼過ぎ、フォルテたちは図書館に到着して、専門書ではなく、基礎知識が書かれている本を探した。その方が、かえって調べ易いからだ。樋口は基本的なことは知っていたようだが、さらに頭に叩き込もうと本棚を見渡していた。ほとんど英語の本であったが、3冊、日本語で書かれた本もあった。フォルテやセシルは英語の本を見て、樋口、悠闇、伏姫たちは日本語の本を手分けして調べることにした。
「マナナン・マックリールの本拠地は『マン島』みたいですね。だとしたら、何故、ヨール付近のあの位置で遺跡が見つかったのかしら?」
セシルが不思議そうに言うと、樋口が答えた。
「ケルト人は、他の民族によって西へと追い込まれたという話もある。だとしたら、ヨール付近に避難した古代人もいた可能性も考えられるな」
すると、フォルテが頷きながらこう告げた。
「なるほど‥‥マナナン・マックリールを信仰していた古代ケルト人たちが、ヨールまで追い遣られた‥‥と。そういう可能性もあるなら、今回調査する遺跡は『海の妖精王』とも関係があってもおかしくないよね?」
「そうですね。『マン島』と言えば、アイルランドとイギリスの真ん中にある島ですから、そこから妖精たちの伝説がアイルランドへと流れていったとしても不思議ではないですね」
セシルはマナナン・マックリールに思いを馳せながら、そう言った。
アイルランドの伝説では『ティル・ナ・ヌォーグ』という国がよく知られている。そこでは幸いしかなく、まさに楽園でもあった。西の国は『ハイ・ブラゼル』とも呼ばれ、見えない世界の象徴としても考えられていた。その場所はブラジルではないかという説まであるのだ。それが本当かどうかは分からないが、人間の想像力は古代から豊富であったことが窺える。
●遺跡の調査
本格的な調査は2日目の昼過ぎからとなった。案の定、洞窟のような入口を入り、突き進むと分岐点があった。2班に分かれて、それぞれの道を進む。『1班』は右を、『2班』は左へと歩いていった。
マッピングをしていたのは尾鷲とフォルテ、悠闇とセシルであった。他の者たちは天敵対策のため、攻撃態勢で周囲を見渡していた。尾鷲は地図作成の手伝いをしていたが、武器だけは欠かさず手に持っていた。いつ、敵が出現するのか分からないという考えもあったからだ。
3、4日目は何事もなく、マッピングに集中することができたが、さすがに5日目になると‥‥やはりナイトウォーカーが出現した。奥へ行けば行くほど危険度が増すが、昼間とは言え、遺跡内部は闇に包まれていたせいか、天敵は容赦なく襲い掛かってきた。どうやら空腹で、敵は本能で動き回っているようにも感じられた。
「‥‥我輩の出番であるな」
ダンディはプロレスラーと言うだけあって、反応が早かった。真っ先に敵の腕を狙ってナックルを叩き込む。次はコアがどこにあるのか‥‥そう悟って、ダンディはヘッドランプで敵を照らした。
「ふむ、胸の辺りであるな」
「サンキュー!」
完全獣化した鷲尾はダンディに礼を述べると、朱槍「紅」をクルクルと廻して、反動をつけた後、敵の胸付近に突き刺した。コアの半分には当たったようで、ナイトウォーカーが悲鳴をあげた。どうやら鷲尾の使っている槍は相当の威力があったようだ。とは言え、必ずしも命中するとは限らない。これもまたダンディたちの援護があった故のことであった。一人であったならば、苦戦していたかもしれない。アーチェリーで矢を放っていたのは半獣化のフォルテ‥‥伏姫は逆刃刀「仇華」を持ち、敵へと接近すると目を細めて峰打ちでコアを狙った。さらにダンディがナックルを叩き込むと、敵は息絶えた。
「‥‥本日は、このへんで戻った方が良いであろうな。我輩たちの『力』も限られている故」
「ああ、そうだな。ティルさんに知友心話で連絡したが、戻って来いって言ってたしな」
鷲尾は一息ついた後、そう告げた。
一方、2班の樋口たちは額にコアのあるナイトウォーカー2匹に挟まれていた。が、樋口の氷塵槍はただの槍ではなく、天敵の身体に氷をまとわりつかせて、動きを鈍らせる効果もあったのだ。それが幸いしたのか、1匹目はすぐに撃沈したが、2匹目はそれを見て、かえって暴走していた。どうやら本能的に逃げようか樋口たちを食おうか、迷っているようだった。
「せっかく『お宝』を見つけたんだ。そう簡単に食われるかっての」
樋口の持っていたダウジングマシーンのおかげで、いくつかのオーパーツを手に入れることができたのだ。古びた箱に入っていたため、戦闘中はセシルがオーパーツを確保していた。結果、3人で闘うことになったが、完全獣化した和輝の動きは素早く、しかもソルジャーボウの狙撃である。これではさすがに2匹目のナイトウォーカーに逃げ場はなかった。止めを刺したのは短剣アサイミーを持っていた悠闇であった。ヘッドランプの光を頼りに、コア目掛けて短剣を突き刺した。
「やれやれ、なんとか倒せましたね。これ以上深入りすると危険でしょうから戻りましょう」
●海の妖精王
遺跡の外へと出ると、テントが張られている場所が見えた。ティルとイオスが待機していたのだ。調査した結果をまとめて、掘り出したオーパーツ等も調べることになった。古びた箱の中には3つのオーパーツと、これまた埃塗れの羊皮紙が入っていた。羊皮紙を見ると、アイルランドの簡略化した地図のようで、右上に『島らしきもの』が書かれていた。現在の地図と比べると『島らしきもの』は今の『マン島』の位置になるのが分かった。
どうやら、やはり海の妖精王マナナン・マックリールと関連のある遺跡ではないかとセシルが告げた。
「マナナン・マックリール様は、別名『マナナーン・マック・リール』とも言われていたそうで、単純にマナナーン様とも呼ばれているようです」
セシルもまた、海の妖精王について調べていたようであった。3つのオーパーツのうち、1つはリュートの楽器であった。本部からの指令で、リュートの楽器はセシルが手に入れることになったようだ。
限られた期間の中で完全に調査することは不可能に近いが、おおまかな遺跡構図(入口からオーパーツを発見した場所付近まで)はマッピングのおかげで分かるようになった。