ザ・オーディション南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
0.4万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/04〜12/10
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●本文
ハリウッドでは何十何万という人たちが毎日様々なオーディションを受けている。それは主催者にとってまだ原石でしかない宝石を捜す機会であり、アクターにとっては夢へのチャンスをつかむ大事な機会である。
今回も、一つの合同オーディションが開催される。主な採用枠は映画のモブなどの端役だが、何事も地道な積み重ねである。
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【SF映画 Fancy Dance オーディション】
宇宙にダンス文化を広げる主人公の、苦労と戦いを描いたSF娯楽作。見所は、特殊メイクを施した宇宙人ダンサーチームの集団舞踊。主題歌のミュージッククリップの撮影も兼ねる。
【オーディション要綱】
・男女年齢性別不問。
・特殊メイクによるクリーチャー役。
・要ダンス経験。
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今回の企画としては、ダンス技能が必要ということが特記事項だろう。それを補って余りある才能があればそれをアピールするのも手だが、そういうのがオーディションを通る確立は低い。なぜなら、出来る人間のほうが圧倒的に有利で多いからだ。
まずは、受けてみよう。話はそれからだ。
●リプレイ本文
ザ・オーディション
●ご退場
豚マン(fa1807)は早々にオーディション会場を退出した。
彼は『審査員になる』ために訪れたのだが、今回のオーディションで募集したのはバックダンサーである。
映画のキャストなどのオーディションの場合、その審査を行うのはプロデューサーや監督、演出などの、製作の中核に居る人物だ。ゆえに外部の、しかも製作中枢に居るわけでもない人物が、審査員をやることなどありえないのだ。
ねじねじマフラーを巻いた小太りな男は、片手でマフラーを捻りながら去って行くのだった。
●ダンスと映画
音楽と映像は、最近はすっかり切り離すことができなくなってしまった。プロモーションビデオ(DVD)などがCDにつくのはもはや当たり前のことになり、それ専門にレーベルを出している音楽会社もあるくらいである。
音楽映画(映画音楽では無い)も古くから作られており、例えば『サウンド・オブ・ミュージック』(1964年 米)などはアカデミー賞で5部門を獲得し、1966年には映画史上最高の興行成績を記録した。本編で使用された『ドレミの歌』や『エーデルワイス』などは、義務教育課程を受けた日本人なら、一度は聞いたことのある曲だろう。
PV業界に革命を起こしたのは、キング・オブ・ポップスの名も高いマイケル・ジャクソンの『スリラー』(1984年)である。当時最先端の映画技術であった特殊メイクを効果的に使用し、アルバムは全世界で4000万枚以上を売り上げた。そこではビートの効いた音楽に乗ってゾンビがきびきびと踊りまわるという、ジョークの効いたPVを見せてくれた。
ダンスと映画を融合させた作品は、現在でも作られ続けている。多くはブロードウェイのミュージカルの映画化したもの(あるいはその逆もしかり)だが、最近では『シカゴ』(2005年 米)あたりがかなりの記録を叩きだしていた。
さて、今回の映画『Fancy Dance』である。
『宇宙にダンス文化を広げる主人公の、苦労と戦いを描いたSF娯楽作。見所は、特殊メイクを施した宇宙人ダンサーチームの集団舞踊。主題歌のミュージッククリップの撮影も兼ねる』
なにやらB級映画のにおいがぷんぷん臭うが、何事もキャリアである。最初から売れっ子な俳優や女優はまずいない。皆、地道に下積みを積んで、現在の地位を作り上げているのだ。
では、オーディション会場に目を移してみよう。
●水無瀬霖(fa0288)、ジャズダンス
「立って」
水無瀬霖は椅子から立ち上がった。
「回って」
審査員――おそらく振り付け師――の言葉の通りに、身体を右に90度回転させる。
「もう半分」
霖はさらに90度身体をまわした。
彼女が受けているテストは、基礎的な身体『操作』能力の確認である。といっても、骨折の後のリハビリ状況を確認するようなものでは無い。立つ、座る、回るなどの基本動作を、いかに奇麗に行えているかの確認である。
このテストで、半分はオーディションから撥ねられる。自在に身体を動かすことがどれだけ難しいかは、自分で気を使っている人間にしかわからない。鏡の前で何度もフォームをチェックし、何千、何万回と練習を繰り返す。獣人という『天分の才能』に頼らないのなら、地道な努力が必要なのだ。
残念ながら霖は、その部分で撥ねられた。半獣化しての再試験も可能だが、彼女はそれを辞退した。あくまで自分の能力で勝負したいということらしい。
●横田新子(fa0402)、社交ダンス
ラジオの仕事をメインに志望している横田新子は、身体能力確認では撥ねられなかった。ダンスは社交ダンスを選択し、仮想のパートナーを思い描きながらスタジオをサークリングする。「本業からどんどん離れてゆくなー」とは思うがなんでもキャリアになるのが芸能界である。ハリウッドのフィルムに出れれば、番組を持った時の話題の一つぐらいにはなるだろう。
が、結果は不合格であった。得意のディスコダンスに到達する前に、止められてしまったのだ。
やむなく獣化して再試験をその場で行ったが、それもだめ。理由は『狸』であるということであるらしい。監督のイメージに合わないということのようだ。
人種差別と言うなかれ。現実に世間は偏見と差別に満ちている。世の中平等でも公平でもないのだ。ただ運が無かっただけ、そうあきらめるしかあるまい。
●雨堂零慈(fa0826)、オリジナルダンス
雨堂零慈は最初から獣化してオーディションに臨んだが、身体能力確認で撥ねられた。圧倒的な能力不足である。舞を披露したり自己アピールする余地も無かった。行殺で申し訳ない。
●シャミー(fa0858)、クラシックバレエ
「ダンサーでは無いのですが、踊りには自信が有ります。今日は力いっぱい頑張ります。宜しく御願いします」
シャミーはアイドル志望だが、ダンスは結構本格的に行っている。獣人種も猫ということなので適性もあり、素で合格ラインまでこぎつけた。監督と振付師は何やら打ち合わせを行い、その後の練習ではバックダンサーの2ndラインを任されることになった。ただし半獣化した上で特殊メイクを施してになる。しかし主人公と共にダンスする場面も組み込まれており、ただ映画で配役されていないというだけで、スポットライトはかなり当たる。良い評価をもらったと言えるだろう。
●ユージン(fa2270)、クラシックバレエ
オーディション2番目に合格を決めたのは、ダンサーのユージンである。元々クラシックバレエを専攻していたが、ダンスの可能性を追求するためにクラシックに囚われないスタイルを選択した。もっとも、オーディションでは信ずるに足るクラシックバレエを踊ったのだが。
ポジションは、半獣化での群舞ブロック。年齢からくる経験不足が、足かせにならないポジション配置だと言えるだろう。
●サラ・メロディ(fa2313)、ダンス――ではない。
サラ・メロディは合格した。ただしダンサーではない。
彼女の、一角獣としての『容姿』を買われたのである。
元々容姿にかなり磨きを入れていた彼女ではあるが、ダンス経験はまったく無い。完全獣化して、並のダンスができる程度。しかし彼女は、その容姿という武器で合格を勝ち取ったのである。
担当は群舞の一人だが、ワンショット、セットに寝そべる彼女のカットインが入ることになり、一種のサブリミナル効果を狙うことになった。
ただし、地獄のダンス特訓が待っていたことは彼女の誤算である。
●佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378)、ジャズダンス
佳奈歌・ソーヴィニオンの本業は女優である。ゆえに芝居はけっこういけるのだが、ダンスとなると獣化しか選択肢が無い。彼女は猫獣人となってジャズダンスらしきものを披露し、噂された『獣化枠』での採用となった。ポイントは容姿と演技力である。
演技力は『表現力』に通ずる。基本的な身体操作能力は出来ているので、つまり扱いやすい素材だったということだ。
あとは、サラ・メロディにも見られた『容姿』のポイントが高かったのもある。群舞パートしか無いが、画に映えるので採用されたということだろう。
●ヴァネッサ・シャリエ(fa2471)、ジャズダンス
ヴァネッサ・シャリエは俳優で、今回は貧乏くじを引いた。そこそこの評価を得られる素養はあったのだが、『獣人枠』がすでに埋まっていたからである。獣化しない状態での彼の能力は本当にそこそこで、悪く言えば器用貧乏なのだ。
結果、彼は合格と不合格の通知を2回ずつ聞くという、なんとも悩ましい結果になった。多分順番なりなんなり何かが違っていれば、合格もありえたかもしれない。
●選考会終了す
今回のオーディションには30名ほどが応募し、一時審査で三分の二が落ちて最終的に8名が合格した。
映画はそれから3ヵ月後に完成し放映されたが、アメリカを出ることは無かった。まあ、1枚1000円ぐらいにDVDになって出回る事はあるかもしれない。
ハリウッドでは今日も、多くの若人が様々なオーディションを受けている。
【おわり】