THE TECHNO TOWER A3南北アメリカ

種類 シリーズ
担当 三ノ字俊介
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 4.9万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 01/13〜01/19
前回のリプレイを見る

●本文

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【タイトル】
 THE TECHNO TOWER

【内容】
 ハイテク防犯設備を装備した高層ビルの、セキュリティシステムが暴走した! 閉じ込められ、次々と防犯システムに『処分』されてしまうビルの住人たち。主人公は生き延びるため、ビルのシステムダウンに挑む!

【脚本概要(全4回中の第3回)】
 『アラゴン・システム・セキュリティー(ASS)』の防犯システムSAL−9000が暴走した。危険と判断され次々と処分されるビルの住人たち。さすがに異常事態を感じ取った主人公は、まずビルからの脱出を試みる。しかしエレベーターにヒロインと共に閉じ込められてしまい、『ダイ・ハード』のようなアクションを要求される。そこを先輩社員に助けられ、合流することになる。
 一方SE達は社長に面会し、事実関係を問い詰める。正体を現す社長。しかし今一歩の所で逃げられ、窮地に。
 SALの暴走と住人の消去は進んでゆく。

【募集】
・主人公
・ヒロイン
・主人公の先輩社員
・ヒロインの同僚
・社長
・女性産業スパイ
・メールメッセンジャー
・カフェのウエイトレス
・SE1
・SE2
・SE3
・TVレポーター
・その他、集まった人員によって脚本を調整
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よしよし、うまくまとまってきたぞ」
 栄養食品とカップめんの残骸と種々様々な撮影機材に埋もれるような部屋。おなじみB級映画監督のジョン・ブラザー・カーペンタリア君(24)の部屋である。
 『THE TECHNO TOWER』の撮影を始めてすでに15日目。起承転結の『承』の部分まで進み、あとは佳境の一つである『転』に入り込もうとしている。製作スケジュール自体は、スタッフのお陰であまりくるっていない。この辺りはスタッフの貢献が大きい。
 カーペンタリア監督も尺の長さを把握できてきたようだし、それなりのネタも仕込むことが出来ているようだ。社員の殺害方法もきちんと出てきているし、飽きの来ない作りになっている。
「さて、見せ場だな」
 役とスタッフの募集をネットにアップロードしながら、カーペンタリア監督は難しい顔をしていた。

 本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。

●今回の参加者

 fa0190 ベルシード(15歳・♀・狐)
 fa0867 朝守 黎夜(22歳・♂・獅子)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa0964 Laura(18歳・♀・小鳥)
 fa1126 MIDOH(21歳・♀・小鳥)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1359 星野・巽(23歳・♂・竜)
 fa1431 大曽根カノン(22歳・♀・一角獣)
 fa1771 由比美紀(20歳・♀・蝙蝠)
 fa2451 天羽 勇気(16歳・♀・蝙蝠)
 fa2457 マリーカ・フォルケン(22歳・♀・小鳥)
 fa2475 神代アゲハ(20歳・♂・猫)

●リプレイ本文

THE TECHNO TOWER A3

●合流
 受付嬢に扮していた産業スパイ、ベルフラウ・ハスティコール(ベルシード(fa0190))は負傷していた。その彼女に肩を貸しているのは、つい先ほどまでメールメッセンジャー『だった』一般人、マリア・カレリーナ(MIDOH(fa1126))である。
「あんた、普通の受付嬢じゃないんでしょ」
 マリアの問いに、あばらをやられたベルフラウは、苦しい息を吐きながら自嘲するような笑みを浮かべた。汚れ仕事の専門家らしい、『本職』の貌(かお)だった。
 ベルフラウは、活動の邪魔になると判断しマリアを『切った』。単独での探索に切り替えるため、マリアを置いていったのである。
 しかしベルフラウは清掃ロボットの襲撃を受け、負傷したのだ。22口径は程度の拳銃弾では、清掃ロボットを仕留められなかった。
 追い詰められたベルフラウは、25層吹き抜けのエントランスから落下しそうになった。そこを、下層に居たマリアに救われたのである。決死のダイブを試み、手を掴んで引き上げてもらったのだ。
 ごっ、ごぎぎぎぎぎぎ。
 進路のエレベーターの扉が、異音を立てて開いた。
「あんたスゲェな」
 わりとC調っぽいフランクな声が聞こえてくる。この騒ぎの元凶である新入社員、ラインハルト・ホッジ(緑川安則(fa1206))の声だった。
「一時はどうなるかと思ったわ」
 ヒルデガルド・マリーン(マリーカ・フォルケン(fa2457))が、ラインハルトに引き上げられて通路に出る。
 エレベーターは、ベルフラウとマリアの居る27階と、その下の26階の途中で止まっているようだった。それを、紆余曲折あって同道することになった力自慢の社員、シーウォン・オックス(朝守黎夜(fa0867))の怪力を使って脱出したのである。
「もういや‥‥うちに帰りたい‥‥」
 なすすべも無くへたり込んだのは、ヨシエ・シマバラ(大曽根カノン(fa1431))だった。
 ごうっ。
 エレベーターのドアから、空気の抜けるような音がした。そして数秒後、下方からかなり派手な撃衝音が響いてくる。
「エレベーターがトラップになっている‥‥」
 ラインハルトがつぶやく。
「ライ! この子怪我してる!」
 ヒルデガルドが、ベルフラウを見て言った。
「あばらをやられただけよ。多分20分は持つわ」
 ベルフラウが言った。その言葉を聞いて、社員一同は頓狂な顔をする。普段受付で見慣れているベルフラウの雰囲気とは、まったく違ったからだ。
「この人ね、多分産業スパイ。拳銃持っていたし」
 マリアが解説する。
「何にやられたんだ?」
「清掃ロボットよ。銃と不正アクセスキーを持っている私を、SALが『敵』と認識したんだと思うわ」
 ラインハルトの問いに、ベルフラウが答える。
「俺の場合と似てるな‥‥無制限攻撃といいエレベーターといい、SALは今『どうかしている』」
 ラインハルトが、考える顔になる。
「あのぉー」
 マリアが、遠慮がちに割って入った。
「あたし、ここ出たいんだけどさー」
 マリアは一度玄関からの脱出を試み、防災シャッターなどに阻まれ戻ってきた経緯を話した。その過程で遭遇した『事故死』の死体の事も、余さずに付け加える。
「テロリストが侵入したのかと思ったが、違うな。これは、SALの暴走だ。SALは学習型の人工知能だから、ありとあらゆる『使えるモノ』を使って俺たちを排除しようとしている。例えば――」
 ヴィーッ! ヴィーッ!
 けたたましい警報と同時に、気密防災シャッターが次々と降りてゆく。このままでは閉じ込められる。そうなれば二進も三進もいかない。しかも――。
「逃げろ! 閉じ込められて『二酸化炭素消火設備』が作動したら、俺たち窒息してお陀仏だ!」
 二酸化炭素消火設備とは、火災区画を密閉し二酸化炭素ガスを充満させて火災を消火する、広域防災システムである。空気中の酸素を希釈し、またCO2ガスの冷却効果で温度を下げることで火を消すのだ。
 が、当然火も燃えないような濃度の二酸化炭素が密閉空間に充満すれば、人間は普通死ぬ。人間も生物である以上、気合と努力と根性があっても無理だろう。
 ゆえに、このシステムが起動するまでには20秒の退避時間を設けるのだが、そんなものをSALが用意するはずもない。
 次々と閉まるシャッターを、けが人を引きずって逃げるのには限界がある。しかし止まるわけにもいかない。
 そして3枚目のシャッターで、最初の脱落者が出た。ヨシエがパンプスのかかとを折って、転倒したのだ。
「くそっ!」
 速攻できびすを返したのは、シーウォンだった。シャッターの下に身体を入れて、その怪力でシャッターの閉鎖をわずかながら食い止める。その間に、ヨシエが這い出してきた。
 が、そこまでだった。4枚目のシャッターはすでに、致命的な高さまで降りていたのだ。
「いやぁ!」
 ヨシエの声が、シャッターの隙間から漏れた。
「死にたくな――」
 ズン!
 声まで遮断して、シャッターが閉まる。そして、気体の噴出音が響いた。
「止まるな!」
 ラインハルトが声をあげた。

 ――死亡:ヨシエ・シマバラ シーウォン・オックス

●SEたち
「SAL‥‥僕が‥‥僕がお前を守ってあげる‥‥。例え、どんな手段を使ってでも‥‥! お前をあいつらの好きにはさせない‥‥!」
 クリストファー・ナカマツ(天羽勇気(fa2451))が、鬱々とつぶやきながら歩いている。
 その少し前、SEたちがたどり着いた社長室に、アルバート・タツミ・アラゴン(星野巽(fa1359)は居なかった。だが会話はできた。壁面モニターに、アルバートが映っていたからである。
「社長! どこにいらっしゃるんです!」
 SE室主任のミキ・ユイ(由比美紀(fa1771))が、画面のアルバートに向かって問いかけた。
『地下だよ。SALのところだ』
「社長専用直通エレベーター‥‥」
 SEの一人、ランドウ・ヒラサカ(神代アゲハ(fa2475))が、呆然とつぶやく。その側にはジル・フロスト(シヴェル・マクスウェル(fa0898))という、社内スポーツジムのインストラクターも同道していた。
 実は、彼女も産業スパイである。この騒ぎに乗じて――のはずが、なにやら怪しい雲行きになっていた。社長室へ向かうSEたちと偶然同道できたのは良かったが、その途中では数多くの『事故死』が起こっていたからだ。
「なら話は早いです。SALをシャットダウンして下さい!」
 ミキが言った。
『それはできんな』
「何をおっしゃっているんです‥‥」
 アルバートの返答に、信じられないものを見るようにミキが言う。
「SALは暴走しています! 私も殺されかけました! これ以上被害を出さない‥‥」
「貴様、SALに何をした!」
 激昂した様子で、クリスが叫んだ。
『これは、ちょっとした実験だよ』
 アルバートが言う。
『今のままでは、SALは普通の警備システムに過ぎない。しかしあらゆる状況に対応出来てこそ価値が上がる。違うかな?』
 アルバートが言った。
『警備する側にとって、完全無人化は夢だ‥‥警備に人手を割かずに済むし、何より犠牲者も出ない‥‥良いシステムだとは思わないか? ペンタゴンは、そういう物を求めている』
「社長‥‥」
「ち‥‥、とんだクレイジー野郎だ‥‥!」
 顔面蒼白になりながらミキが言い、さらにジルが舌打ちをして悪態をつく。
『今更止める訳にはいかない。これは教育だ‥‥多種多様の障害を排除するための、ね。君達も頑張って、SALの教育に一役買ってくれたま――』
 アルバートの声が、途中で止まった。アルバートが喉を押さえてあえいでいつ。その顔は酸欠に紅潮し、目は飛び出しそうになり口は大きく開けられていた。
『うぐ‥‥がっ‥‥さ、SAL‥‥馬鹿なっ!』
「SALは、社長も『異物』と判断したようね」
 ミキが、冷ややかに言う。SALの部屋で何が起こっているのかはわからない。しかしアルバートは苦しみ、そして激しく暴れまわって絶命した。目視出来ないから、おそらくガスか何かだろう。
「クックックック‥‥」
 クリスが嘲笑(わら)っていた。
「ボクのSALに手を出すからだ‥‥これは天罰だ!」
 悪は滅びたとでも言うように、クリスが言った。そしてミキたちには一瞥もくれず、幽鬼のような足取りで外へと向かう。ミキたちは社長の端末に取り付いていたが、ほどなくそれがすでに直通端末の役割を失っていることを確認することになった。
「直接行って、強制遮断するしかないわね‥‥」
 インフェルノと化したビルから脱出するには、死ぬかSALを破壊するしかない。選択の余地は、すでに無かった。

 ――死亡:アルバート・タツミ・アラゴン

●キーパーソン
 ウエイトレスのサラ・オコナー(Laura(fa0964))は、さまよっているところをラインハルトたちと出会い合流した。ラインハルトたちも近しい人を失いともに疲弊著しかったが、双方とも人を気遣うやさしさは失っていなかった。
「兄の死は過労死だと思って、その証拠を探しているんです」
 サラが、この状況でなおこの場に踏みとどまっている理由を言った。
「事が終わったら、その捜査に協力するよ。でも、まずは生き残らないと」
 9ミリ拳銃の安全装置をはずしてやって、ラインハルトがそれをサラに渡す。ヒルデガルドは、ちょっと不満そうな表情をしている。

 物語は、最後の瞬間に向けて集約しつつある。ラインハルトたちもミキたちもクリスも、目指すは地下メインシステム室。そこにはSALの本体がある。
 破壊しようとするもの。生き延びるために戦うもの。そして、それを偏愛し守ろうとするもの。
 アルバートの倒れ付した地下の端末の画面では、SALが不気味なカウントダウンを行っていた。秒数にしては速度にばらつきがあるが、着実に減り続けている。
 それがゼロを指すとき、確実に『何か』が終わる――。

【つづく】