THE TECHNO TOWER Ｂ１南北アメリカ
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 三ノ字俊介 |
| 芸能 | 2Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | やや難 |
| 報酬 | 4万円 |
| 参加人数 | 10人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 12/20〜12/26 |
●本文
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――【タイトル】
THE TECHNO TOWER
【内容】
ハイテク防犯設備を装備した高層ビルの、セキュリティシステムが暴走した！ 閉じ込められ、次々と防犯システムに『処分』されてしまうビルの住人たち。主人公は生き延びるため、ビルのシステムダウンに挑む！
【脚本概要（全４回中の第１回）】
主人公は『アラゴン・システム・セキュリティー』という、ビルなどの防犯システムを販売している会社に就職した。職種はシステム開発。簡単に言えば、ユーザーのニーズに合わせた防犯システムの設計である。
もちろんアラゴン・システム・セキュリティーの入っているビルにも、最新最強の防犯システム『ＳＡＬ−９０００』が入っている。スーパーコンピューターを使用した新世代の防犯システムと言われる、優れものだ。
が、このシステムが些細なこと――主人公の不正規アクセスや機械の無断改造など――で主人公を『危険対象者』として認識してしまい、様々な手段でその『排除』を始める。そしてそれに、ビル全体の人たちが巻き込まれてゆくのだった‥‥。
【募集】
・製作スタッフ（ＡＤ・音声・美術・撮影・編集・ｅｔｃ）
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「全撮影期間は３０日間くらいかな‥‥」
栄養食品とカップめんの残骸と種々様々な撮影機材に埋もれるような部屋。おなじみＢ級映画監督のジョン・ブラザー・カーペンタリア君（２４）の部屋である。
彼は今回、予算と期間をＷＷＢからもらい、連続４回のテレビ映画を撮ることになった。尺は２５分×４本。その題材に選ばれたのが、『THE TECHNO TOWER』である。ハイテクビルを舞台にした、サバイバルものだ。まあ、そもそもそんな殺人ビルという設定自体がアレとかソレではあるが、そんなことは気にしないでほしい。
役とスタッフの募集をネットにアップロードしながら、さすがにカーペンタリア監督は難しい顔になっていた。なんといっても連続４回、尺で１００分間。いままでのＰＶとは仕事のレベルが違う。
「今日のディナーは、やきそば○当にしよう」
をい。
それはともかくとして、今回は連続ドラマということで『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。
本募集では『スタッフ』の応募を待っている。美術・音声・編集、その他いろいろあるが、画面に出ない、あるいは台詞の無い人たちの仕事である。
●リプレイ本文
THE TECHNO TOWER Ｂ１●脚本変更
「死亡を予定していた社長は、最後まで使おうと思う」
ジョン・Ｂ・カーペンタリア監督は、今回脚本を手がける宮尾千夏（fa1861）にそう言った。
「社長を大ボスにするんですか？」
千夏がカーペンタリア監督に問う。
「基本的な路線はそうだが、主人公に彼を殺させるわけにはいかない。主人公が人を殺していいのは、原則一般人ではないことが条件だ。例えば警察官とか。これは放送コードの問題だ。まあ、社長には自滅するほうに仕向ける」
「了解しました」
「それで今回の脚本だが‥‥」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
THE TECHNO TOWER
最新ビルセキュリティシステムが暴走し、ビルの中にいる人たちが閉じ込められ次々と殺されてゆくというパニックムービー。
主人公ラインハルトは、腕はピカイチのコンピューターエンジニア。しかしお気楽な性格で、勤勉社会とはそりが合わず会社をクビになってばかりいる。そんなある日、ラインハルトの先輩会社員ライナスが、彼の腕を買って『アラゴン・セキュリティー・サービス（ＡＳＳ）』に入社させた。個室を与えられ仕事を開始するラインハルトだが、すぐにいたずらの虫が沸き出し、コンピュータを使ったジョークやいたずらを始めてしまう。そしてそれを監視していたセキュリティーシステム『SAL−9000』は、ついにラインハルトを敵と認識し、排除を始めてしまうのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●撮影準備
映画の撮影とは、様々な準備をしてから行うものである。配役はもとより人間も機材もセットも、ある程度の準備ができていなければ映画は回らない。そういう意味で、今回の『THE TECHNO TOWER』は時間が最大の敵だった。
カーペンタリア監督は、時系列に沿って撮るのを身上としていたが、ここまで大掛かりなセットとシナリオ、そして尺に対応するには、それでは不可能である。そこで傭兵経験というタレントを持つダン・クルーガー（fa1089）（ＡＤ）に、練兵訓練スケジュールならぬ撮影スケジュールを製作させた。タイムキーパーも兼任させ、軍隊式の時間管理を行ったのである。
そういう意味では、ダンは有能なＡＤだった。芸能界という職能ではあまり活きてこない才能だが、使いどころによっては抜群の能力を発揮する。そういう人材の見出し方も、カーペンタリア監督の持ち味だろう。
紺屋明後日（fa0521）とＬｏｌａｎｄ＝Ｕｒｇａ（fa0614）は、大道具――主にセットの製作に携わった。たいていのシーンはロケで済むが（今回は実在のビジネスビルを借りた）、仕掛け物（シャッターとか防火扉、ＳＡＬ−９０００のシステム監視室など）は作らなければならない。
「じゃあ、ローランドはんの班はカフェのほうを頼みまっさ。俺は最初にぶっ壊すオフィスと社長室を作るさかい」
「資材の調達はすませたから、カフェはすぐできる。今回の撮影ではエレベーターでしか人が死なないが、その部分は丸々セット作らなきゃならないな」
紺屋とＬｏｌａｎｄが打ち合わせているところで、カーペンタリア監督が割り込んできた。
「社長室は後でいいから、爆破オフィスを先に作ってくれ。他のスケジュールが割り込んできて、明日午後イチでないと撮影できないんだ」
「そら難儀やなー」
紺屋が言う。徹夜確定である。
●撮影開始
雨宮巧（fa1586）は、カーペンタリア監督とは２度目の顔合わせで、前回は助監督をやった。今回は炊き出し要員ぐらいの仕事をするつもりでいたのだが、今回も助監督に抜擢された。カーペンタリア監督は、この少年に才能を見出したようである。
巧が終始気を配ったのは、スタッフの体調管理である。特に季節が季節だけあって、体調に変調を来たす者は多い。また今年は不本意ながら風邪の当たり年で、インフルエンザが猛威を振るっていた。
「風邪にはねぎがいい。ねぎを首の周りに巻きたまえ」
日本の民間療法を堂々とやるあたりがアレではあるが、まあ許容範囲であろう。
シャノー・アヴェリン（fa1412）は今回のカメラマンである。イケイケのカーペンタリア監督とは性別を含めて真反対の人間で、「‥‥では‥‥ここはこんな感じで良いでしょうか？」とか「‥‥はい‥‥お疲れ様でした‥‥」とか静かで非常におちついている。
ただ仕事は確かで、新人カメラマンらしい垢抜けなさはあるが、カーペンタリア監督の意向を汲もうと一生懸命であった。
今回の撮影ではビルのロングショットが多かったが、一部カーペンタリア監督の要請で、獣化して空を飛び撮影を行った。ＣＧでもできないような撮影が出来たので、カーペンタリア監督はご満悦であった。
「はぁ〜い、ミーシャよ〜ん。今回のメイクはあたしが担当させてもらうわぁ〜ん」
４４歳の真性オカマというのは見るに耐えないものがあるが、人種差別はいけないのでほかっとく。ともあれメイクのミーシャ（fa2450）ことミハイル・ゴルドワスキーである。今回はスーツに囲まれてうはうはの状態であった。太った身体をくねくねとくねらせて、役者の採寸と衣装合わせ、メイクを行う。男女によってやけに時間のかけかたが違うのがポイントである。もちろん男の方が妙に入念だ。特に社長役がお気に入りらしい。社長役の継続が決まって一番喜んだのは、彼である。
●音声入れ
『カーペンタリア監督のシャシンは、音楽に定評がある』
過去何作か経てきて得たカーペンタリア監督の評判は、このような感じである。というのも、カーペンタリア監督のスタッフには音楽志望が多いからだ。とにかくミュージシャンの応募が多い。お陰で音楽関連のスタッフには事欠かなかった。
今回の音楽担当は、高川くるみ（fa1584）、神楽坂紫翠（fa1420）、リドル・リドル（fa1472）の３名である。チーフはカーペンタリア監督との経験が多い、くるみが拝命した。
「今回のシーン構成は、主人公の登場から機械の暴走までを扱います。音楽は４曲用意します」
くるみが言う。
４曲の音楽の内訳は次の通り。
１．主人公登場
２．日常風景
３．ハイテクビル
４．暴走
くるみは今後の事も見込んでサントラの製作まで進みたかったようだが、時間がそれを許さなかった。とりあえず共通のフレーズや作品イメージのコンセンサスを３人の間で取り交わし、一人１曲を作曲しくるみが取りまとめを行った。最近はフルオーケストラも打ち込み一つで出来るので、ＭＩＤＩデータで曲を受け取りくるみがアレンジした。
「１．主人公登場」は紫翠が担当し、明るいポップな曲を提供した。「ラテンっぽく」と監督からオーダーがあったのでジャマイカのＣＤなどを参考に、底抜けた音楽を演奏した。
「２．日常風景」「４．暴走」はくるみが担当した。前者はＢＧＭらしい音楽になり、後者はハードロックっぽいものになった。ギターも打ち込みで遜色ない音が出せる音源があるので、より演出に凝った音楽になった。
「３．ハイテクビル」はリドルの担当になり、フルオーケストラの重厚なクラシック音楽が出てきた。曲調は現代っぽく作られているが、音の厚みは圧巻だった。
いずれも獣化し、潜在能力を引き上げて製作されたため、キャリアに見合わぬ豪勢な音楽になった。
●試写会
１ｓｔラッシュは撮影最終日に強行された。押して押して、ぎりぎりまで撮影していたためである。試写会での尺は２８分ありまだ編集しなければならなかったが、裏方の仕事としては目に見えて作品のクオリティが上がっているので結構評判が良かった。
さて、２話目の製作はすぐに始めなければならない。
【つづく】
