THE TECHNO TOWER Ｂ２南北アメリカ
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 三ノ字俊介 |
| 芸能 | 2Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | やや難 |
| 報酬 | 4万円 |
| 参加人数 | 10人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 12/30〜01/05 |
●本文
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――【タイトル】
THE TECHNO TOWER
【内容】
ハイテク防犯設備を装備した高層ビルの、セキュリティシステムが暴走した！ 閉じ込められ、次々と防犯システムに『処分』されてしまうビルの住人たち。主人公は生き延びるため、ビルのシステムダウンに挑む！
【脚本概要（全４回中の第２回）】
『アラゴン・システム・セキュリティー（ＡＳＳ）』の防犯システムＳＡＬ−９０００が暴走した。危険と判断され次々と処分されるビルの住人たち。さすがに異常事態を感じ取った主人公は、まずビルからの脱出を試みる。
一方システムエンジニアたちは、暴走を食い止めるためにＳＡＬ−９０００との対話を試みる。が、それがＳＡＬに対する『脅威』と判断され排除対象に設定されてしまう。やむなくシステム室を脱出しようとするが、半分も脱出できない。
精密なシュレッダーマシンのように、ＳＡＬの『排除』は続いてゆく。
【募集】
・製作スタッフ（ＡＤ・音声・美術・撮影・編集・ｅｔｃ）
・ＳＡＬに殺される方法のアイデアも募集
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「意外と手間取っているなぁ」
栄養食品とカップめんの残骸と種々様々な撮影機材に埋もれるような部屋。おなじみＢ級映画監督のジョン・ブラザー・カーペンタリア君（２４）の部屋である。
『THE TECHNO TOWER』の撮影を始めてすでに８日目。起承転結の『起』の部分はうまく滑り出せた。予算もある程度温存でき、中盤での各キャラクターに与える目標（生存手段の定義など）の設定も順調に見える。動機付けもほぼ充分行うことができた。この辺りはスタッフの貢献が大きい。
しかしカーペンタリア監督には、尺の長さをもてあましている感があった。いままでの作品が、コンパクトでシンプルすぎたのだ。
「ちょっとひねりが欲しいなぁ」
役とスタッフの募集をネットにアップロードしながら、カーペンタリア監督は難しい顔をしていた。
本募集では『スタッフ』の応募を待っている。美術・音声・編集、その他いろいろあるが、画面に出ない、あるいは台詞の無い人たちの仕事である。
●リプレイ本文
THE TECHNO TOWER Ｂ２●誓いのカップめん
「それでは撮影の成功を祈って、カップめんで乾杯します。かんぱーい！！」
スタッフ一同が、おのおの持参したカップめんに湯を注いで掲げる。湯を注いで３分経たないと乾杯の本作業に移れないのはなかなか間抜けである。
これを提案したのは、監督のジョン・Ｂ・カーペンタリアだ。カーペンタリア監督が普段から食しているカップめんがスタッフに好評で（単に夜食を買いに行くのが面倒なだけかもしれないが）、監督と仕事をするとなぜか一度ならずカップめんパーティーが開かれるのだ（ちなみに監督のカップめんの在庫は、種類も数もグロス単位で有る）。
１０分ほど、会話をしながらカップめんをすする作業を皆で行い、腹ごしらえをしたところで、いよいよ本番である。
「じゃ、始めよう」
●シナリオとのセッション
『THE TECHNO TOWER』第２話の脚本は、宮尾千夏（fa1861）という日本人である。アニメ脚本畑で働く女流脚本家だが、今回はいろいろなつてを回ってこの仕事にありついた。それにはカーペンタリア監督の、ジャパニメーションに対する過大な評価も貢献したのだろう。
「今回は、主要キャラを殺さないでくれ」
絵コンテをもらい脚本化を進めるに当たって、監督から来たオーダーはこの一言だけである。（『THE TECHNO TOWER Ａ』の）１２人の以外は何百人殺してもいいが、このメインキャラたちは３回目の次回放送分から、総勢で３割ほど殺すことにするというのだ。
つまりは、予算の範囲なら何千人エキストラを使って殺してもよいという許可をいただいたわけである（無論、実際は５０人もエキストラを使えれば上々程度の予算ではあるが）。
殺し方のアイデアは、スタッフと出演者からかなりのネタを得た。それを千夏が整理し構成しなおして、カーペンタリア監督に提出する。そしてそれに監督が修正を入れて千夏が脚本化を行う――。
この作業を、千夏はなんと一晩でやり遂げた。監督を寝かせないのには問題があるが、まあご愛嬌であろう。
●ＡＤと大道具は突っ走る
本業がプロレスラーのカリン・マーブル（fa2266）と非専業マネージャーのメイヤー・Ｅ・霧島（fa2557）は、大道具チーフの紺屋明後日（fa0521）に怒鳴られて使いッパシリをさせられていた。といっても芸能界によくある拘泥ないじめなどではなく、流用できて破壊してもいい中古のセットを探させられているのである。
「寝袋持ってきて、正解やな」
同じ大道具のＬｏｌａｎｄ＝Ｕｒｇａ（fa0614）に向かって、明後日が言う。それにＬｏｌａｎｄが苦笑した。というのも、今回のカーペンタリア監督のオーダーが、とんでもなかったからである。
水没させるシステム室。減圧する部屋。銃弾で破壊される清掃ロボット（これが一番手間を食った）。電気トーチを使用する危険な演出もあるので、どれ一つとして気を抜けない。
かと言って、時間は有限である。そこで大道具チーフの明後日が出した結論は、すでに存在し解体を待つのみのセットを加工し、流用することであった。
ちなみにカリンとメイヤーが選ばれたのは、偶然である。しかし体力勝負のカリンは文字通り『足で』セットを次々と探し当て、メイヤーはそのマネージメント力の一つ、『交渉力』を駆使して物件を引っ張ってきた。力の１号、技の２号であった。
「監督、１号と２号が調達してきたセットのリストだ。目を通してくれ」
「「その呼び方やめろー」」という二人の声を華麗にスルーして、カーペンタリア監督はＬｏｌａｎｄの手渡した書類を読み始める。
「エクセレント！ これだけあれば、今後はかなり楽ができるぞ！」
一度水没したり痛んでいたりするものもあるが、焼尽したもの以外はほとんど再利用が可能そうであった。新造したのはＬｏｌａｎｄの担当の非常階段３階分と、明後日が改装更新した社長室ほか数点。スケジュールの詰まった撮影では、上々の仕事量だろう。
●メイク死す
メイクと衣装選定は、それぞれ樹神（fa1099）とＳＡＮＡＫＩ（fa2545）が担当した。樹神は本来特殊メイクの技術者なので、今回はノーマルメイクのみならず焼死体や感電死体や減圧死体などの死体の特殊メイクをＳＡＮＡＫＩと共に担当した。望み得るならば、監督の以前の作品『OUTBREAK AFTER24』あたりで欲しかった人材である。
しかし会話してわかることだが、どうしてメイクにはオネェ言葉を使う人間が多いのであろう。前回のメイクもそうだったし、今回の樹神もそうである。本人達は意識しているかどうかわからないが、メイクという人種はそういうものかもしれない。『爺や』と呼ばれる職業の人間が、生まれたときから老人で髭を生やしているのと同じであろう（嘘）。
ただ、問題が無かったわけではない。今回の２話目でメイクをする人数が、半端ではなく多かったのである。何せＳＡＬの暴走で死屍累々。後半三日間は、二人とも半徹でメイクに奔走した。
「「神様！ どうか寝かせて下さい！！」」
二人の祈りは、届かなかった。あいにく、神様は留守らしい。
●音楽はがんばる
「今回は私だけなんですね」
獣化した高川くるみ（fa1584）が、録音スタジオで小首をかしげていた。というのも、もう一人来るはずだった音楽担当が、急用でこれなくなったからである。『音楽には定評のある』カーペンタリア監督のシャシンで、グレードを落とすわけにはいかない。いきおい、くるみ嬢にはプレッシャーが重くかかってきた。
もっとも、前回大きく４曲のメインテーマ（主旋律。ジョーズのテーマの定番メロディなどに相当するもの）は作られていたので、アレンジで結構どうにかなりそうである。新造するのは１曲にとどめ、後はコードやスケールを変更したアレンジに努めて、この急場を乗り切った。音響については監督が直々に手を入れてくれたので、くるみは作曲に専念できたのも幸いしている。問題は、監督がいつ寝ているかだ。
●撮影は重要です
今回も撮影はシャノー・アヴェリン（fa1412）である。前回監督に獣化しての空中撮影を指示された女性だ。今回は監督のために、レア物の『スパークリングキムチラーメン炭酸入りメンマ大盛』というカップめんを差し入れてくれた。
「‥‥これは‥‥スープが絶品、です‥‥」
だそうである。
今回は徹夜を含めた入念な打ち合わせの後、十分な休養を挟んで撮影に挑むことになった。シャノーは軽戦士型の人間なので、獣化でもしないとスタミナが持たないのだ。そしてもちろん、おおっぴらに獣化しっぱなしで作業に挑む事は出来ない。獣化は人目の無いか少ないシチュエーションで、必要ならばその措置を取るというのが、獣人の不文律の一派を成している。そしてカーペンタリア監督は、その考えに賛同する人物だった。作品のためには獣化も辞さないが、使うシチュエーションは選ぶ、というスタンスである（ゆえに密室で作業を行う音響や編集スタッフには、獣化を指示する場合が多い）。
今回は獣化での撮影というシチュは無かったが、初日のコンセンサスの共有作業が功を奏し、かなりの完成度の映像を撮ることに成功した。ただ最終日の撮影終了後、彼女はぶっ倒れて爆睡している。監督がカップめんの礼に、栄養ドリンクを差し入れたことを付記しておこう。
●次回に向けて
「セット素材はかなり集まったから、大道具はかなり楽できるようになったかな。音楽は次回物語が転調するから、今回よりは欲しいなぁ‥‥。まあ、贅沢言ったらきりが無いけど。脚本と、そろそろ助監督が欲しいなぁ‥‥こっちの身体が一つだから、１ｓｔＡＤだけじゃ完全に手が足りなくなっている。ああ‥‥長いシャシンってこんなに難しいものだったんだな‥‥」
なにやら疲れたような台詞を言っているが、くまの張った目の奥はらんらんと輝いている。ある意味もなにも、真性の映画バカだから、まあしょうがないだろう。
ともあれ、長いシャシンの難しさを、今監督は実感している。やり終えたら、カーペンタリア監督は一皮剥けるかもしれない。
さて、次回はいよいよ『転』。
物語は風雲急を告げる。
【つづく】
