STREET FIGHTERS 3アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
2.2万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/30〜01/01
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●本文
ここはTOMITVの企画室。今日も多くのディレクターが、様々な番組を知恵を絞って作っている。
そしてここに、前途有望な新米プロデューサーB君が居た。そしてその先輩プロデューサーA氏が、B君に小言を言っている。
「だからぁ、放送コードは気にしなくていいって上が言ってるんだよ!」
「でも先輩、PTAやらなんやらから叩かれまくりじゃないですか」
「だからやるんだろう? 反応があるってことは、観られているってことなんだ」
何の会話か良く分からない人にも、分かるように説明しよう。
ある日、番組枠に穴が空いてB君はその穴埋め番組を作ることになった。その番組名は、『STREET FIGHTERS』。格闘番組という名を借りた、トンデモ暴力番組である。
が、世の中何が受けるか分からない。ガチンコバトルに限りなく近いケンカファイトが評判を呼び、第2弾まで作られた。深夜限定ながら視聴率も良く、非常にコストパフォーマンスの良い番組となった。スター選手のような人物も育ちつつある。つまり、商業的には前途有望な番組なのだ。
が、もちろん万人に受けるというものではない。過剰なまでの暴力志向に『青少年の健全なる育成』を気にする人たちのバッシングを食らい、抗議のFAXとメールと電話がじゃんじゃか来ているのである。
それが沈静化したばかりの昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか状態の現状に、再び『STREET FIGHTERS』をやれというお達しが来たのだ。A氏言うところの『上』から。
これは、油田に向かって5キロトンぐらいの核弾頭を投下するようなものである。
「どうせ抗議が来るっていう結果は分かっているんだ。なら稼げるうちに稼いで、上が許しているうちは放送を続けりゃあいい。責任は上が取ってくれる。お前さんは視聴率を稼ぐことだけ考えろ。これは命令だ!」
*
結局B君は、押し切られる形で番組の制作を承諾した。もっと過激に、もっと迫力ある映像を! というオーダー付きである。
B君が選んだ試合会場は、廃棄された映画のセットであった。西部劇か何かの、洋風の酒場である。予算が倍増強化されたとはいえ、まだまだ会場を借りるほどではない。リングはあるが、普通には組まない。今回は観客も入れるので、会場全てがリングになるように酒場のど真ん中にリングを設置する。リングサイドでビールを飲みながら観戦することもできるのである。怪我が恐くなければ。
セットは破壊してもいいと言うことで、今までよりさらに迫力ある映像が期待できる。またカメラも倍増したので、さまざまなアングルから撮影もできる。
A氏はすでに、抗議の電話に対応するマニュアルを製作済みだそうだ。あとは存分に戦っていただくだけであった。
「格闘家を募集しなきゃ」
B君の本当の仕事は、これから始まる。
●リプレイ本文
STREET FIGHTERS 3
●放送直前
「一人欠員が出たぁ?」
プロデューサーA氏が言った。
「なんか事情があって、出れないそうです」
B君は困ったように頭を掻いた。出演者のドタキャン。業界ではままあることだが、こういう対戦カード形式の場合、それは結構致命的である。
「しかたねぇ、お前その辺行って、芸人捕まえてこい! 欠員は男か? 女か?」
「女の子ですねー」
「じゃあ、女の若手芸人だ。体張ってもらえ!」
●深夜三流俗悪番組の世界
人間、悪い事には興味があるものである。
犯罪行為を肯定するわけではない。だが『STREET FIGHTERS』も、そういう部類に限りなく近いプログラムだ。限りなく真っ黒に近い、グレーゾーンにポジションする番組。製作スタッフはもちろん、確信犯だ。
「みなさん今晩は。今夜も激しいノールールバトル、STREET FIGHTERSをお送りします」
B君は、カメラの前でかしこまった。
●第1試合、南優香(fa2464)vsキティ(NPC)
「ええ? 対戦相手変わっちゃったんですか?」
優香は赤色のロングドレスの格好で、驚きを隠せなかった。
「ああ。それで急遽、身疾(みはし)のいい若手芸人を連れてきた。多分相手にはならないと思うけど、思いっきりやってくれ」
優香は、少なからず落胆を隠せなかった。キャットファイト(女性専門のショープロレス)を2本ほどやったが、ガチとは言いがたい。演出に凝るのは好きだが、それも相手がマトモ(具体的には優香ほどの力量を持っていること)であることが条件である。つまり、素人相手では本当に面白くはできないのだ。
「うーん、まあ、やってみます」
そうは言うが、今ひとつ燃えられない。
そして試合開始。といってもゴングが鳴るわけではなく、ディレクターが舞台入場の合図を出すだけである。
わっ。
会場が、沸いた。アメリカで一番売れている紅白柄のラベルのビールを片手に、テンガロンハットの荒くれ風の男たちが歓声を上げている。雰囲気は、もはや西部の酒場である。
――Sing! Sing! Sing! Sing!(歌え! 歌え! 歌え! 歌え!)
歌姫の格好をした優香に、観客がリクエストの声をあげる。ちょっと考えて、優香は『My Fair Lady』の歌を歌おう、とした。
ボエ――――――――――――――――ッ。
すさまじい音声が、酒場に響いた。優香は姿形はけっこういけているが、歌も踊りもだめなのだ。
たたた、たん、たたん!
そこに、軽やかに前転宙返りをくれて黒い人影は飛び込んできた。羽根飾りにトマホーク、顔のペイント。インディアン風の出で立ちである。
「おばー、キティやー」
どう見てもラテンアメリカ系の少女が、きわどい衣服で挨拶した。どうやら優香の対戦相手のようである。
思わず、優香の顔に笑みがこぼれた。今の身のこなし、それなりにイケていそうだったからだ。身疾が良いという触れ込みは、嘘では無いらしい。
「闘いましょう‥‥相手に取って不足はありません」
優香がドレスの袖をちぎり、スカートのすそを剥ぎ取った。
が、ほどなく試合は終了した。相手は身のこなしはかなりのものだったが、戦うセンスはほとんど無かったからだ。避けるのは上手いが、ただそれだけ。優香のスープレックスで、あえなく轟沈した。
ちょっと、物足りなさが残った。
●第2試合、MAKOTO(fa0295)vs孫華空(fa1712)
第2試合は、巨乳女性格闘家の戦いになった。MAKOTOと孫華空の対決である。二人ともカウガール姿で、雰囲気たっぷりであった。力関係は、技で華空が勝り力でMAKOTOが勝るという関係か。一撃が決まれば瞬殺、手数で応酬するなら激闘の予感がするカードであった。ちなみに二人ともこの番組には1度ずつ出場しているが、手合わせは始めてである。
「悪いけど、勝たせてもらうよ」とMAKOTO。
「中国4000年は伊達じゃないのよね」と華空。
リングでのサークリングから、接近戦に持ち込みたいMAKOTOがじりじりと間合いを詰める。が、華空は俊敏さを活かしてうまくそれを捌く。焦れたMAKOTOが強引に間合いを詰めた瞬間、華空の足技が飛んできた。
「ネオ・レッグ・ラリアット!」
内回し蹴りから回転をつけた脚撃が、MAKOTOの胸板を狙う。ずどん! とウォーターバックを叩くような音がして、その足はMAKOTOの身体を直撃し――。
「なっ!」
華空が声をあげた。MAKOTOがその一撃を受け、止め抱え込んでいたからだ。
「軽いね!」
MAKOTOがその足を抱えたまま、投げを打つ。投げられなければ、華空の足が折れる。
華空はその流れに逆らわず、身をひねって受身を取る体勢になった。おそらく相手は、組み技か寝技にもってくるはずである。
が。
ぐわっしゃん!!
予定外の衝撃が、華空の背中に奔った。MAKOTOは華空を、リングサイドのテーブルにたたきつけたのだ。
「いただき!」
ロープで反動をつけたMAKOTOが、華空に向かってフライングエルボードロップを仕掛ける。華空は痛みを無視して、相手も目標も確認せずに後転した。客が2名ほど巻き込まれて、椅子から転げ落ちる。しかし、それは適切な判断だった。MAKOTOのエルボーは足の折れたテーブルの天板を砕いたのだ。さすがは人間形態でも虎の獣人ということだろう。
そこから場外乱闘へ移り、椅子なども含めた激しい打ち合いになる。しかし体力の差はいかんともしがたい。
最終的に勝利したのは、体力と耐久力に勝るMAKOTOだった。
MAKOTOにとっては、ちょっと嬉しい勝利だった。
●第3試合、飛鳥信(fa1460)vs泉彩佳(fa1890)
――西部劇スタイルのセットに観客付き。いよいよ本格的になってきたよな。しかし‥‥相手が15の女の子じゃ蹴れねぇって! 俺の妹と歳もそんなに違わねぇし‥‥可愛いし‥‥。
なやましい思考がぐーるぐる頭の中を回っているのは、キックボクサーの飛鳥信である。この番組には今のところ皆勤賞で、2連敗中。今回こそ必勝を期して挑む相手は‥‥まだ15歳の女の子のプロレスラー、泉彩佳であった。今回はウエイトレス役ということで、それっぽい服を着ている。
彩佳としては胸を借りるぐらいのつもりでの出場なのだが、彩佳に指名された信としてはたまらない。勝ったとしても批難轟々。負けたら赤っ恥。こんなに損なカードはめったに無いのである。
彩佳はテコンドーを主軸とした、打撃系レスラーである。自分の技が異種格闘技戦でどこまで通じるかを確かめたくて応募したが、信は相手にとって不足無しどころかお誂え向けのキックボクサー。正直、ラッキーだったと思っている。
――でも、出来れば勝ちたい‥‥かな?
やはり格闘家、勝負となると欲も出てくる。
――Fight! Fight! Fight! Fight!(戦え! 戦え! 戦え! 戦え!)
場内の観客から、コールが飛ぶ。
――ともあれ、戦って勝てばいいんだ。後の事は、それから考えよう。
信はそう思い、気持ちを切り替えて攻め始めた。が、結果的にそれが信の撃沈を防ぐことになる。
がつっと一撃蹴りを交し合った信は、相手の力量をかなり下に見ていたことを思い知らされたのだ。おそらく信と同等かそれ以上。彩佳のテコンドーはそこまでのものを持っていた。
一度知覚してしまえば、あとは油断などしない。壮絶な打撃戦の末、信は彩佳を撃破したが、それはかなりきわどい勝利だった。相手は少女でも戦闘種族の竜の獣人。潜在能力は高いのである。
が、勝利は満場のブーイングに彩られることになった。そりゃあ、成人男子が未成年少女を蹴り倒したら、そうなるだろう。
●第4試合、終無(fa0310)vsザビエール神父(fa2268)
「ふっふっふ、真人間に戻りたい者から掛かってくるがよい!」
身長2メートル。ブルガリアも圧巻の筋骨たくましいマッチョなレスラー・ザビエール神父が、それに比べればいかにも貧弱な坊や、と言った態の終無を見下ろして言った。
修道服を着たザビエールは黒い城砦のようにそそり立ち、「攻撃してこい」とばかりに身構えている。元レスラーのザビエールはすべての攻撃を受けきり、その上で相手をねじ伏せようというのだ。
逆転――。
プロレスでは喜ばれる展開である。
――さて、どうしようかな。
自己陶酔型で快楽主義者の終無から見ると、相手の策に乗るのは面白くない。スマートに相手を見下ろして勝つ。そうありたいと思っている。
――ならば――。
終無は攻撃を開始した。がつがつと打ち込み続け、相手のあごなどの急所を狙う。
しかしほどなく失速し、そしてザビエールの猛攻を受けることになった。篭手の受けで、ザビエールの攻撃を捌き続ける。唯一させなかったのは、相手に身体をつかまることだった。
そして、その時は来た。ザビエールの動きが、急に失速したのである。
――勝機!
終無が動いた。水月にひじを叩き込み、さらに『スタミナ』を奪う。
人間の心臓の大きさは、体格によらずそれほどサイズは変わらない。ゆえに体格の大きい者ほど、心臓にかかる負担はでかい。
それはつまり、スタミナの減りが早いということである。同じエンジンを積んだ車なら、ガタイのでかい車の方が燃費が悪いのだ。さらに言えば、エンジン――心臓にも余計に負担はかかる。
終無の武器は、格闘センスである。スマートな戦いはできないが、防御に徹すればある程度持たせる事はできる。そして、ザビエールの心肺が悲鳴をあげるのを待っていたのだ。いかにザビエールがタフネスな熊獣人でも――否、タフネスだからこそ陥る陥穽(かんせい)だった。
かつん!
あご先を、終無の拳がかすめた。脳を揺さぶられたザビエールが、すとんとひざを落とす。脳震盪である――が。
わっし!
ザビエールの手が、終無の顔をつかんだ。そして倒れる勢いに任せて床に叩きつける。
「アーメン‥‥」
ダブルノックダウン。勝敗つかず、引き分けで勝負は終わった。
●第5試合、武厳皇(fa1482)vsゼクスト・リヴァン(fa1522)
壮絶なダブルノックダウンの後の試合は、派手な乱打戦となった。元スモウ・レスラーの武厳皇(fa1482)とこちらはダンサーのゼクスト・リヴァンの戦いである。ゼクストは最初から、半獣化しての参戦だ。
試合は、カポエラスタイルのゼクスト主導で進められた。獣化で伸びた身体能力は、武厳皇の素の攻撃力と比して抜きん出ている(半獣化程度でも、それぐらいの力の差が出るのである)。文字通りカメのように防戦に徹していた武厳皇は、タフネスだけを武器に自分の勝機を待ち続けた。
しかし、勝機は訪れなかった。半獣化したゼクストが、強すぎたのである。ガツガツと打たれ続けた武厳皇は辛抱強く機会を待ちに待ったが、それはついに訪れる事は無かった。結局はセットの隅に押し込まれ、TKOとなったのである。
今回のことを教訓とするならば、獣化した相手に対しては、やはり獣化しなければまともな殴り合いにならないということであろう。
●プログラム終了
今回の優勝者は、ゼクスト・リヴァンとなった。獣化した獣人の強さを再確認することになったが、あるいは今後、いろいろな規制を設ける事になるだろう。
ともあれ、番組は成功である。おそらく、第4弾は近日あるはずである。
【END】