ダーク・サムライ Aアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.3万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/23〜10/29

●本文

 WWBのサイトに一つの小さな広告が載った。
『第一回WWB賞プライベートフィルム募集。若い才能をぶつけてみませんか。応募条件は以下の通り。応募はxxxxxxxまで』

    ***

「きた――――――――――(゜∀゜)――――――――――っ!」
 パソコンの画面の前で、映画マニアで今は無名の監督志望の青年、ジョン・ブラザー・カーペンタリア(24)は小さくガッツポーズをした。
 言われるまでも無いが、WWBはかなり大手の放送局である。大きすぎて凝固している部分もあるが、それでも何やら動きがあるらしい。
 今回の作品応募、条件は一五分〜二五分の一品物ということ意外制約は無い。つまりネタも音声も表現も自由。公序良俗(わからない人は辞書を引こう)に反する内容でなければ、多少恣意的で反社会的でもかまわないであろう。ようはエンターテイメントとして認められるかどうかが勝負だ。
「やるぞ! とりあえず脚本はある! 機材もある! 無いのは役者とスタッフだ!」
 本人に才能があるかどうかは、この場合問題ではないらしい。
「まずはネットに人材募集っと」
 カタカタとキーボードの音が、映画マニアらしい雑然と機材やビデオ、DVDの置かれた部屋の中に響いてきた。

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【タイトル】
 ダーク・サムライ

【内容】
 舞台はサムライの国日本。船の難破で流れ着いた主人公はその土地で女性と恋に落ち、一児をもうけて平和に暮らしていた。
 それの平和な暮らしを、ノブシが破壊した。ノブシに妻を殺され子供を誘拐された主人公は、ノブシに復讐し子供を取り返すために『武士道』を学ぶ。
 四〇〇年後の現代、主人公のノブシ探しは続いていた――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ‥‥‥‥‥‥‥‥。
 (はっと気付いて)いや、申し訳ない。
 武士道を学ぶと四〇〇年も生きれるのかとか突っ込みどころ満載なのだが、J・B・カーペンタリア君は本気のようである。

 本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。
 さてさて、どのようなことになるやら‥‥。

●今回の参加者

 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0356 越野高志(35歳・♂・蛇)
 fa0430 伝ノ助(19歳・♂・狸)
 fa0637 鞘師 朱彦(21歳・♂・鷹)
 fa0677 高邑雅嵩(22歳・♂・一角獣)
 fa0935 鷲尾天斗(25歳・♂・猿)
 fa1105 月 李花(11歳・♀・猫)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1312 彩都(27歳・♂・獅子)
 fa1500 風光 明媚(24歳・♂・狐)

●リプレイ本文

■ダーク・サムライ A
●「俺は復讐を誓った‥‥妻の敵をとり、必ず娘を取り戻す! なーんてな☆」
                            (主人公ベイカーas鷲尾天斗(fa0935))
 いやー、ラッキーだね。初仕事で主役だよ、しゅ・や・く☆
 J・B・カーペンタリア監督からもらったのは悲壮感バリバリの無口な男なんだけど、俺そういうの無理っぽいし、2時間ほど協議して少し(というかかなり)キャラクターを変えさせてもらった。
 あ、俺は鷲尾天斗。職業はお笑い活劇俳優で、猿の獣人な。
 今回の役どころは日本に流れ着いた欧州人ベイカーということなので、かつらにカラーコンタクトをつけてお手軽外人に変身した。
 監督の設定によると、船の難破で戦国時代に日本に流れ着き、そこで彼女を作って子供までもうけてって話だから、りなちゃんと李花ちゃんで3ショット撮影ということになる。よき家庭を作って云々という話になるが‥‥その辺は問題ない。このあたりは主に回想シーンってことになるな。
 そして不在のところを敵役のデス・ノブシ(高邑雅嵩)に襲撃されて、妻は死亡、娘は誘拐されるって話。その後ブシドーの師匠と出会って修行して、そして刀鍛治から刀を得て400年後‥‥。
 試写会で見たけど画面にするとすごいよな、監督の感性って。服飾デザイナーもスタッフにいたのに、家は古刹だし妻と娘はベトコンみたいな格好になっている‥‥。俺も王子様ルックでまあアレな状態だが。
 ま、賞は受賞したし、よしとしよう。

●「ベイカー‥‥私を忘れないで‥‥」
                            (主人公の妻モエas愛瀬りな(fa0244))
 あたしは下着モデルの愛瀬りな。21歳の猫獣人。自分で言うのもなんですが、造形はかなりの美人の部類に入ると思います。
 今回あたしがもらった役は、主人公ベイカーの妻となる女性モエ役。監督から「役作りは不要。天然でやってくれ」と言われましたので、その通りにしました。もっとも、優しい奥さん役をしっかり演じましたけどね。死ぬ演技は自信がありませんが、それなりに泣ける展開になったと思います。試写会でみると、ちょっと扱い小さいですが。
 そして400年後の現代になり、あたしは東京でリナ・ヒメノという大学生役でベイカーと再会します。といっても私は生まれ変わり(かもしれない、と監督は言ってました)で昔の記憶なんかぜんぜん無く、現代の女として生活しています。そのうちにダーク・サムライことベイカーと出会い、ブシドーの戦いの中に巻き込まれるわけです。
 リナとしてのベイカーとの出会いと彼に惹かれるまでの展開は、ベタベタなストーリーで見ているこっちが恥ずかしくなります。ですが演技を演(や)った人は、みなさんこんな恥ずかしい気持ちになるんじゃないでしょうか。でも25分枠ですから、そんなに深い話は出来ませんでしたけど。
 今回は娘役の李花ちゃんが可愛かったかな。またこういうお仕事ができるといいですね。

●「武士道は人を斬るのではない、悪を斬るのだ」
                       (ブシドーマスター・ミフネas風光明媚(fa1500))
 僕の名前は風光明媚。24歳の狐の獣人。職業は役者だよ。
 今回僕がもらった役は、主人公にブシドーを教える師匠、ブシドーマスター・ミフネ役。24歳だけどメイクさんががんばってくれたお陰で、老後の自分の姿を明確に見る事ができたよ‥‥自分の将来の姿を見るのって、ちょっと夢が無いなぁ。
 ミフネは1000年生きている武士の役。残念ながら修行時代の6シーンしか出番がないけど、人間に厚みがあるので重厚な演技を要求された。ある意味自分とはまったく反対の人間だね。
 やったのは、主に剣術を教えたり精神修行させたりと定番な感じ。その中でいかに『自分』を出すかが勝負だと思うけど、監督は特にミフネの役を重要視していて、6シーンの約40カットの中にかなりのモノを詰め込まされた。監督のこだわりは尋常じゃなくて、鬼気迫るって感じだね。そういうの、嫌いじゃないけどさ。
 本当は、ノブシのとのチャンバラシーンも欲しかった。だけど尺が25分だし主人公追っていたら時間枠の収まらないから、フィルムは取ったけどお蔵入りしてしまったんだよねー。もし監督がデビューしてダーク・サムライをテレビか何かでやることになったら、僕の死ぬ演技を見せてあげたいな。本当はそういうの得意だから。

●「真のブシドーを忘れた今のそなたでは、このカタナの本当の力を引き出すことは出来ん」
                            (刀鍛治マゴロクas越野高志(fa0356))
 私は今回の『ダーク・サムライ』に関して、監督に『正統派ブシドー』という振りを提案しました。
 私の名は越野高志。35歳の特撮俳優で、蛇の獣人です。
 一応スタッフ諸賢と打ち合わせていろいろアイデアも出しましたが、さすがに最長25分の尺ではあまり詰め込めませんね。「ノブシに育てられた娘と主人公との対決」とかはもっと重くしたいと目論んでいたのですが。
 私の役回りは、主人公の刀を鍛える刀鍛治師マゴロク。回想シーンでの登場ということになりますが、監督から「とにかく渋く!」と要望を受けたので、一言に万の言葉を詰めたつもりです。
 ただ今回は、老鍛治師という位置づけなのでそれほどでしゃばった展開は出来ません。全体のことを考えるなら、私は鍛治師としてワンポイントを押さえるにとどめたほうがいいでしょう。
 出番は少ないですが、監督は私の演技にご満足のようでした。出来ればまた仕事がしたいですね、この人とは。

●「ミスター・ブシドーの一番弟子、ブシドー・キッドがお相手しやす!」
                          (弟子ブシドー・キッドas伝ノ助(fa0430))
 あっしは伝ノ助。狸の獣人の役者でやんす。
 今回あっしは、役者募集で採用されてロケにきやした。んでやんすけど、なんと採用だけしてカントクは配役を考えてなかったってんだからお笑いでやんす。
 で、その場でいただいた役というのが、主人公のブシドーにほれ込んで押しかけ弟子入りしたブシドー・キッド。あっしの提案もあったんでやんすけどね。
 あっしの役どころは、現代に現れた主人公をサポートするお笑いどころでやんす。400年前の性癖のまま現代で生活する(というか、試写会冒頭で出てきた、舞台表現をするために画面を埋め尽くす巨大な富士山とかが暗示している)本当の日本とのギャップを埋めるような役どころでやんすね。一応現代に関する知識はあっしの役から得るということで、つまりは狂言回しでやんす。
 おとぼけおっちょこちょいな役どころでやんすが、人質になったりボコにされたり、それなりに見所の多い役でやんした。十全ってわけにはいきませんが、まあ及第点じゃないでやんすかね。

●「こんな街中でチャンバラですか? 人の迷惑も考えてくださいよ‥‥」
                         (現代学生協力者ナナスケas玖條響(fa1276))
 俺は玖條響、竜の獣人で学生モデルです。年齢18歳。
 今回はブシドー・キッドの友人で、彼がボコにされる原因となる人質役、というチョイ役で出ました。でも台詞もあって、ちゃんとアピールもできます。
 展開は、ノブシに遊びで捕まってそこをブシドー・キッドに助けられかけて、僕の代わりにブシドー・キッドがボコにされて捕まるというもの。キッドはそのあと、主人公をおびき寄せるための人質になります。
 俺の出番は本来そこで終了だったのですが、監督の御意向でノブシとの決戦の場に同行する役をいただきました。モデルガンを持ってノブシの配下と撃ち合い――というか、相手はなぜか全員日本刀なのでほとんど一方的な展開なのですが。
 俺は主人公と共に敵地へ乗り込み、キッドを助けあげて出番終了。初仕事としてはまずまずの出来だったと思います。

●「闇の世界にだって不文律はある。だがノブシはそれをいとも容易く破っちまう」
                            (闇ブローカー・テツas彩都(fa1312))
 俺の名は彩都。職業俳優。獅子の獣人で年齢は27。いちおうイケメンの部類です。
 俺は今回の配役で、自分から『闇ブローカー・テツ』の役を希望しました。このブローカーは主人公とノブシとの中立的な立場に立ってうまい汁を吸う間に、主人公に肩入れするようになってしまうという設定。ナナフシが決戦の場に行くときも銃を用意してやったり情報を集めてやったりと、まあなかなかに小技の利いた役どころでした。
 総カット12のほんのチョイ役でしたが、存在感は出せたと思います。もっとも白いスーツにサングラスという『いかにも』なヤクザで出されるあたり、J・B・カーペンタリア監督は外国人なんだなぁと思わせる部分もかなりあります。
 余談ですが、うちのプロダクションの所長なんですよね、主人公のベイカー役。
 ブラックホールのシュバルツシルト半径並に暗い世界感なのに、こんなに明るいエンターテインメントにしてしまったのは、うちの所長でせいですね、ほんとに。
 ま、これが俺の初仕事です。今後もこう、なにかいわくありげな人物をやってみたいですね。

●「この罪のない少年(ナナスケ)の命を救いたければ、お前の命を差し出すんだな!!」
                         (ノブシの手下ゴクドーas鞘師朱彦(fa0637))
 俺の役はやられ役だ。
 といっても、そんなに悲観したものでもない。カントクは俺の意向をよく理解してくれて、『主人公と対決し主人公を引き立てる斬られ役』、つまりノブシの手下・ゴクドーという名の端役をくれた。
 俺の名は鞘師朱彦。職業俳優で、21歳の鷹の獣人だ。
 正直演技には自信が無いので、大味な斬られ役をもらってほっとしている部分はある。ナナスケを人質に取りキッドをボコにするのも定番中の定番だ。小物ぶりは俺の外見だと抜き目がややあるが、いかにも悪人面の俳優がやるより見た目がいいかもしれない、と、俺は思っている。
 ただカントクには、「君はハム(大根)だなぁ」と苦笑交じりに言われて、ちょっと凹んだのも確かだ。悔しいがカントク、見る目はあるよ、ホント。
 で、予定通り大味に死んで俺の出番は終了。そして主人公の娘と主人公の因縁の対決へと進むわけだ。

●「ママ?どうしたの‥‥起きてよ!! 血が出て止まらないよ‥‥どうしたらいいの?」
                            (ベイカーの娘リンas月李花(fa1105))
 月李花です。猫獣人で11歳、今回はめずらしく子役やってるよ! 本業はタレントなんだけどね。
 今回李花がもらったのは、主人公の娘リンの役だよ。娘といっても現代で父である主人公に牙を剥く役なんだけどね。
 展開はこう。ノブシにさらわれて育てられて400年後、そのままの姿でノブシの腹心(ノブシは父と思っている)として本当の父である主人公ベイカーと対決し、激闘の末昏倒させられる役。昏倒させられるまでは、ベイカーがリンの名前を知っている→記憶がよみがえる→峰打ちで昏倒させられるという流れ。混乱に拍車をかけるのは、母モエの生まれ変わりのリナの声に反応して――という感じ。
 タレントやっているからリアクションは得意なんだけど、演技は正直子役レベルを脱するのは無理だったかな? 監督は何も注文つけなかったけど。
 家族団らんでかわいい役と、りりしい武者姿と、かなり楽しい仕事になったけど、本当はもっと出番が欲しかったなぁ。だって30もカットなかったんだもの。
 ま、次よね次。

●「ところで君は、妻子の復讐と称して幾人を闇に葬った?」
                             (デス・ノブシas高邑雅嵩(fa0677))
「私が君の妻子を殺した理由? ははは、それに何か理由が必要だとでも? あぁ‥‥そうだな、強いて言うなら『幸せそうだったから』かな。昔から言うじゃないか、他人の幸せは踏み躙(にじ)ってやりたい、とね」
 くーっ、決まった━━━(゜∀゜)━━━!!
 おっと失礼、俺は高邑雅嵩。22歳の俳優。ユニコーンの獣人だ。
 俺は悪役志向なので(あくまで志向であって、本当はお茶の間の若い奥様のアイドル狙い)、美形悪役として主人公ベイカーの前に立つ武士、デス・ノブシの役をもらった。公式な芸能活動ではこれが初の仕事になる。本当に、賞をもらえてよかったよ、この脚本と監督は。
 もっとも、日本人の中にはぼやくヤツも多い。なんてったってブシドーを極めると400年ぐらい軽く生きられるっていうんだから外国人の思考は驚きだ。もっともそんなことに文句いうやつはいないけどね。
 俺は最後に出てきて派手なチャンバラを行い、悪として死ぬ役。ただし、とどめをさすのはリンちゃんだ。悪行を尽くした俺が、最後に利用していた主人公の娘に殺されるという展開。昭和版『子○れ狼』に似たようなのがあったが、まあ許容範囲だと思う。
 しかし、最後に俺は一言含みを持たせる。
「ノブシは俺一人ではない」
 監督としては続編とかその辺考えているんだろうな。ま、もし機会があればオーディションに応募してみるさ。

【END】