演歌人生 3アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
三ノ字俊介
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
02/06〜02/08
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●本文
「歌は流れるあなたの胸に〜」の定型句で始まるCET伝統の演歌番組、『演歌華道』は、CETにおける定番歌番組の首長のようなものである。もちろん登場する歌手は、その道では大御所に分類される人たちばかりだ。
だが、それにも限界がある。というより、大御所が身を引かないと下の者たちが上がって来れないのだ。上の人間たちが幅を利かせていると、その部分で人材が固化し、煮詰まってしまう。新しい水を注ぎ新しい風を入れなければ、演歌界は発展しない。つまり、次の世代が育たない。
放送局としても、あまり良い状況では無い。大御所だっていつかは引退してしまうので、新人が育たないことには未来が無いのだ。
そこでCETのあるプロデューサーは、演歌界の新人を集めて歌を披露させ、新人を育成するための専門番組を提案した。あえて『新人』と限定することによって、大御所を出さず視聴者に新人演歌歌手を『青田買い』させる方向に仕向けたのである。
その番組が、今回の『演歌人生』であった。北は北海道から南は沖縄まで、平たく言えば「売れない演歌歌手」に全国的な露出の機会を与えるのだ。
「放送業界における演歌は、ほぼCETの独壇場だ。今後進むであろう高齢化社会において新たな視聴者をしっかり獲得するためには、演歌界の刷新が急務といえる。大御所と新人の住み分けを行い、新人演歌歌手を手厚く盛り上げることによって、それは進むだろう。心して欲しい。将来の演歌界を支えるのは、君たちスタッフと新人歌手なのだ」
プロデューサーの言葉に、スタッフは「はい!」と声を唱和させた。
●リプレイ本文
演歌人生 3
●いってみよう
「‥‥メロンパン‥‥芸能人の‥‥湯ノ花ゆくる‥‥ですッ。‥‥ゆくる‥‥全国の‥‥メロンパンFANの方に‥‥そして‥‥まだ‥‥FANでない方にも‥‥メロンパンの‥‥良さを‥‥わかって‥‥もらえる様に‥‥好きになって‥‥くれる人が‥‥ひとりでも‥‥多く‥‥増える様に‥‥想いを‥‥込めて‥‥『メロメロ☆メロンパン♪』を‥‥歌います‥‥ゆくるの歌‥‥聴いて下さい‥‥♪」
湯ノ花ゆくる(fa0640)は巻きの入ったMCのあと、持ち歌の『メロメロ☆メロンパン♪』を披露した。彼女をトップに持ってきたのは、若向け(というより児童向け)コンテンツということで、番組進行の住み分けを狙ってのことだろう。演歌という題目で番組を見てくれる高齢者は多少のことでチャンネルを変えないが、お子様はすぐに飽きてしまう。児童向け番組に採用されたとは言え、彼女の曲はほとんど児童に『しか』聞いてもらえないからだ。
ところで本気でメロンパンの良さを伝えたいならば、声高に押し付けるのではなくもっと他に考えてやるべきことがあるのではないか? と筆者は思う。いずれにせよ芸能人という身分が、おろそかになるようではいけない。
「あたいはアヤカニャ! 一生懸命がんばるニャ!」
いつものツインテールをアップにまとめ、おちついた和装で出てきたのは本番組初登場のアイドル歌手、アヤカ(fa0075)である。語尾がアイドルアイドルしていて中高齢者から見るとアイタタだが、この番組は別に中高齢者だけを対象としているわけではないのでフロアディレクターはリリースを許可した(ちなみに生真面目な視聴者から「演歌を馬鹿にしている! けしからん!」という趣旨の抗議の電話も来ていたが、プロデューサーはそれを聞き流した)。
アヤカの歌った歌は、『山親父音頭』という明るい音頭調の歌である。「(ホニャララホニャララ)山親父〜♪ ニャ!」というフレーズを繰り返す、一種のどどいつだ。明らかに中高齢者を見ていない曲であるが、視聴率グラフは悪くなかった。というのも、メロンパンに続いて児童が食いついたからである。リズムの良い明るい曲調に覚えやすいフレーズを組み合わせれば、耳に残る『体感曲』になる。子供はそういうのを覚えやすい。
視聴率のグラフに気を良くしたプロデューサーは、この曲も児童向け番組への組み込みを検討しているそうである。
「皆さん初めまして、仙道愛歌です。普段は女優やってるアタシですが、聴いて下さい『拳の天女』!」
やたらと肌の露出した空手着を着て堂々と登場したのは、狐獣人の女優、仙道愛歌(fa2772)である。本人いわくマネージャーの陰謀によって登場と相成ったということだが、やる気満々なのはすでに番組を楽しんでいるとしか思えない。
――一度この世に生をうけたからにゃ
――咲かせて見せよう喧嘩華
――ふざけた奴らはぶっ飛ばす
――そいつがアタシの生き様さ
なかなかどうして、演歌初披露としては堂に入った歌声を響かせる。ノリも良くうまい具合に客席も自分も乗せている。
――誰が呼んだか拳の天女
――信じた仲間が勲章さ
――誰が呼んだか拳の天女
――刻んだ傷も戦友さ
歌が終わると、雨のように拍手が降ってきた。やってみると実際は無我夢中であったが、これはこれでけっこう気持が良い。客席も演歌らしい演歌が出てきてホッとした感がある。
――勝った。
感慨深く、愛歌が思った。何に勝ったのかは、愛歌しか知らない。
「こんにちは、観月あるると申します。皆様に愛されるよう精一杯歌って行きますので、応援よろしくお願いします」
歌手の観月あるる(fa1425)は豪奢な金髪をアップに纏め上げ、花模様の和装で舞台に挑んだ。
歌の題名は『心の丘』。鬱々とした日々に疲れると、いつも立ち寄る自分の聖域『丘』で思うことを、しっとりと歌い上げた歌だ。
――町を見渡せる丘 そこは私の秘密の場所
――寂しさに負けそうな心も 夕陽が温めてくれる
――涙する日だってある でも幸せ感じるときもある
――小雪舞う丘で 愛しい貴方を想う‥‥
なかなかの歌いっぷりである。歌い終わって深くおじぎをすると、会場から拍手が沸いた。結構演歌の世界でも、やってゆけそうな雰囲気である。
ハムスターの獣人で歌手の守山千種(fa2472)は、この番組では2度目の出場になる。今回は藤色の和服で身を包み、『冬海』という冬の日本海をイメージした激しい歌を用意した。ステージ背景もそれにあわせたイメージで青くライトアップされ、雰囲気たっぷりで歌を披露した。
新人としては声量も音楽センスもまずまずのものを持っており、歌い終わりの拍手は惜しみなく彼女に送られた。
この拍手は、彼女の芸能意欲に糧を与えることになるだろう。
「女優なんですけど、歌手もやってみようと歌を歌う事にしました。歌を歌うなら、やっぱり日本の心『演歌』が良いだろうと、演歌を歌う事にしました」
ちょっと危うげなMCを入れたのは、女優の七瀬瀬名(fa1609)である。このMCでは、「アルバイト感覚で演歌を歌われては困る」という抗議の電話が来る。実際来たのだが、フロアディレクターで止まっているのが現状である。このMCも、リハーサルではもっとひどい言い回しだったのを直しているのだ。
が、歌はなかなかどうして、結構なものだった。タイトルは『恋愛情歌』。会えない恋人になかなか伝えられない気持を伝えたいという慕情ものである。
――逢ってはくれぬと 解っていても
――一人寂しく 夜汽車に乗って
――貴方に会いに 貴方の元に
――何処に居るのか 愛しい貴方
――貴方に向けて 今日も歌う 恋愛情歌
青いドレスを身にまとった瀬名が歌い終わると、会場から拍手が沸いた。最初の悪い雰囲気を払拭する、いい拍手だった。
ちょっとだけ、気持いい。
「始めて会ったその時から、愛し愛され操をささげ、だけど今のあなたはおにいちゃん。それでも愛するから歌います‥‥義兄恋慕」
金髪をポニーテールにした緑川メグミ(fa1718)が歌ったのは、なにやら意味ありげな惚気ものだった。何か実生活を歌っているようにも見えて、非常に雰囲気が気まずい。『操をささげ』というようなフレーズは演歌曲でよく見られるが、近親相姦となるとお堅いCETでも二の足を踏むものである。会場もやや雰囲気が悪くなり(というよりメグミが歌に酔って会場を置いてけぼりにしているのだが)、しらけた雰囲気が漂っていた。
さもありなん、メグミの歌は自分のほうしか向いておらず、会場に向いていないからだ。歌は視聴者が自分の重ね合わせてシンパシーを得るものである(これは演歌に限らない)。特殊な題材を選べば選ぶほど、共感してくれる人は減る。つまり、聞いてもらえない。
メグミが情感を込めれば込めるほど、会場は置いてゆかれてゆく。歌い終わりに拍手は沸いたが、なにやらよそよそしげな雰囲気だったことは言うまでもない。
「こんにちは、演歌の心を磨きにやって参りました滝月玲です。どうぞよろしくお願い致します」
アーティストを自称する滝月玲(fa1405)は、白の上下に色シャツにネクタイという姿で舞台に立った。長髪はまずいと思い後に三つ編みにしてタイピンで固定してある。まあ、昨今の芸能界、多少の長髪は問題ないのだが。
歌は『始まりの空』というタイトルの、出会いと別れを描いたものである。
――一足早い 春の知らせが 町を彩る
――鮮やかな服 新たな旅立ち 恋の色
――私の春も 桜に負けない色に してみせる
――家路を急ぐ私の頬にひらひらと 雪の子が最後の接吻をする
――また来年会おうねと‥‥
先ほどのメグミと違い、さわやかに歌い上げた歌に会場の雰囲気は和らいだ。終われば拍手が鳴り、番組は持ち直したようである。
「ありがとうございました!」
さわやかに、玲は笑顔で舞台袖に降りていった。
――冷たい 氷に 閉ざされた
――私の 心に そっと触れ
――ぬくもり 教えて くれたのは
――今は去りゆく あなたでした
――「信じていいよ」 その一言を
――今でも私 覚えています
――どうせ私は 雪女
――あなたの側は 暖かすぎた
『暗黒歌手』を標榜するDESPAIRER(fa2657)の歌『雪女』が響く。暗い歌を痛く歌うのが彼女のスタイルだが、不思議と演歌ではそういう歌も結構あるので(なんといっても失恋歌がジャンルとして存在するのだ)、この業界ではわりと受け入れられている。
今回で出場は2回目なのだが前回よりもさばさばした歌を歌い、わりと一般演歌向けにシフトしたのは順当にこなれてきているからだろうか。ともあれステージ全体の緩急という意味では、いい人材であろう。
今回のトリは、女性歌手の星野宇海(fa0379)である。いろいろな歌に挑戦しているというわりには演歌系の仕事が多い彼女であるが、今回は空色と瑠璃色の和装に身を包み、本格演歌に挑戦であった。
曲目は『星の砂』。過去の幸せな恋に思いを馳せる、大人の女の慕情を歌い上げた。
――あなたの居ない 波打ち際に
――温もり探して 独り寝ころぶ
――さらさら さらら 素足をくすぐる
――泡立つ波が 幸せのようで
――さらさら さらら 肌に零れる
――星の砂が 想い出のようで
――さらさら さらさら 流れていきます
出来はなかなかのもので、締めとしては十分のものになった。
演歌人生3は、なかなかの可能性を見せて終了した。新人企画としてはけっこうな視聴率も成果も挙げている。当たり外れはあるが、それもご愛嬌。ともあれ、第4弾を見るべし、であろう。
【おわり】