演歌人生 4アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 三ノ字俊介
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 03/01〜03/03

●本文

●評価が上がってはいけない
 CETで最近売り出している番組の一つに、『演歌人生』という番組がある。新人演歌歌手をピックアップして歌を披露させ、露出を増やして演歌界の底上げを狙う番組である。
 ここ数年、演歌界は冷え込んでいる。映像放送されるのは主にJ−POPと呼ばれるジャンルであり、民間放送局での演歌の露出は極端に少ない。CETでの番組構成も他局に倣いがちで、数少ない演歌放送枠も『大御所』と呼ばれる、いわゆる大物演歌歌手に取られているのが現状だ。
 しかし現実にCDショップを見れば、演歌が意外なほど多くのスペースを確保しているのに驚くだろう。その中には1曲しかCDを出していないような、非常に端っこの演歌歌手も含まれる。つまるところ、供給過多なのだ。
 需要とのバランスを取るには、客を増やすかこちらを向かせるしか無い。つまり露出の機会を増やし、既存の客や新たな客に金を落とさせる工夫が必要である。
 その結果企画されたのが、この『演歌人生』という番組だ。だがこの番組には、下ろすに下ろせない十字架が付きまとってる。
 つまり、『メジャーになってはいけない』という縛りである。
 番組の『格』が上がれば着実に視聴者も増えるが、それでは結局『新人歌手の歌を披露する』という基本コンセプトを外す可能性がある。つまり番組が歌手を選ぶような状況になってしまうのだ。
 視聴率は稼がなくてはならないが、番組自体の格が上がってはいけない。
 これは一種の禅問答である。
 が、いずれにせよ番組は作らなければならない。いずれぶち当たる壁だが、今は保留しておいてもいいだろう。ともあれ、スタッフは着実に成果の上がっている番組の制作にまい進している。

 本シナリオの募集は、『演歌歌手』である。レベルの多寡は問わないが、ジャンルは演歌限定。お茶の間に声を響かせたい、意欲のある演歌歌手を求めている。
 番組構成は、一人当たり1分程度のMCと歌の披露を基本とする。初期に行われていた有名演歌曲の合唱は行わない。
 意欲ある演歌歌手の応募を待っている。

●今回の参加者

 fa0365 死堕天(22歳・♂・竜)
 fa1512 白鷺アリス(15歳・♀・猫)
 fa2215 和山 繁人(19歳・♂・ハムスター)
 fa2472 守山千種(19歳・♀・ハムスター)
 fa2481 喜田川光(37歳・♂・狸)
 fa2492 アマラ・クラフト(16歳・♀・蝙蝠)
 fa2712 茜屋朱鷺人(29歳・♂・小鳥)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa3004 ラム・セリアディア(14歳・♀・リス)
 fa3022 雷光(18歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

演歌人生 4

●演歌人生第4回放送
 番組『演歌人生』も、4回目の放送となった。それまでに児童向け番組の歌に採用された曲が2曲、CF採用が1曲、数枚のCDプレスを実現させ、『実績ある新人披露番組』としての地位を得つつある。
 しかしこの番組の抱えている業――つまり番組が成功しても、番組の『格』が上がってはいけないという縛り――は健在である。ギャランティーをあえて抑え、普通のアルバイトのほうが割りの良いようなスタンスを取り続ける。プロデューサーとしては『売れる番組作り』と『視聴率の取れる番組作り』の塩梅をしっかり取らなければならないので、製作スタッフの難度は高い。
 通過点――この番組は、あえて言うならばそのような立場になるだろう。いや、そのような立場でなくてはならない。この番組をきっかけに、芸能界の高みへ巣立ってもらう。
 プロデューサー以下の製作スタッフは今日も、母鳥のような気持ちで未来の大御所歌手たちを見守っている。

●1番 白鷺アリス(fa1512)『冬の東京恋歌』
 1番目にステージに立ったのは、かわいい少女だった。白鷺アリス、年齢15歳。
(ふふふ、絶対プロデューサーに私を覚えさせてみせるわ!)
 清純な外見とは裏腹に、性格は真っ黒である(苦笑)。
 今回彼女は、肩を露出させたインデザインな着物で参上した。挨拶と愛嬌を振りまき、MCを終えて歌に入る。ここまでは及第点である。

 ――この人だけは信じられると
 ――そう思えた貴方は ただ一夜の幻でしょうか

 彼女が歌ったのは、散った初恋をテーマにした『冬の東京恋歌』という歌だ。しかし本人いわく『だって悲恋とか人生のわびさびなんて意味不明だし。好きな人に置いてかれたら腹立つし、悔しくて当然でしょ?』だそうで、なにやら怨念を込めて歌い上げている。
 ま、この年齢で人の情を歌うには経験不足であろう。

 ――雪が降る 雪が降る しんしんと しんしんと
 ――支えてくれる貴方は居ない 冬の東京恋歌

 歌い終えて、拍手が降ってくる。彼女が意図したような派手さというか目立ちかたはしなかったが、歌はそれなりのものを持っていたので一定の評価は得た。
 あとは経験と場数が彼女を成長させてくれるだろう。

●2番 和山繁人(fa2215)『冬に願いを』
「作詞・作曲共に自身で行いました。作詞に際してまず考えたのは、この季節に合わせた2つのキーワード『コートを着るか着ないか』『人がいない』。皆さんには、情景を思い浮かべながら聞いて頂ければと思っています」
「ありがとうございます。では3月。春近く、待ちかねた季節。出会いの前には寂しき別れ。あの人留めよ、去り行く季節へ祈りよ届け。唄いますは‥‥『冬に願いを』」
 MCの後に司会者のリリースがあって、前奏が始る。
 和山繁人は、この番組には2回目の出場である。前回は『純情夢唄』という曲で出場し、なかなかの期待度を見せた。ルックスも有り音楽センスもある。いずれ大成、というと大げさかもしれないが、着実に進歩しているのは確かだ。

 ――雪残る道端 暖かい陽 差す中に
 ――通い慣れた アスファルトを 歩いて行きます
 ――あなたとの想い出 沁みた上着 家に置き
 ――誰も居ない いつもの場所 目指して行きます

 ――いつかは来ると 知ってはいたけど
 ――受け止められぬ 離れて行くあなた
 ――吹く風は未だ 少し寒くて
 ――上着をそっと かけてくれるあなた
 ――その優しさを また求めてしまう

「ほほう」
 と、本番組プロデュサーの猪名川一馬(いながわ・かずま)はうなった。前回の『純情夢唄』に比べて、ずいぶんとこ洒落た歌を歌っていたからだ。技術はともかく、努力面での進歩が見られる。
「次回魅せてくれたら、本格的に新人演歌歌手としてプッシュしようか」
 FDと相談しながら、猪名川が言う。当人のあずかり知らぬところで、なにやら起きそうである。

●3番 守山千種(fa2472)『巣立ち』
 ――記念写真には写らない
 ――だけど私は知っている
 ――巣立ちの日に 思うこと
 ――私はけして 忘れない

 ――思い出たくさん 胸に詰め
 ――春の木漏れ日 歩み行く
 ――だけど ここで 学んだ事は忘れない
 ――だけど ここで 培った友情を忘れない

 守山千種もまた、この番組は3回の出場になる。売れっ子というのはまだ早計だが、着実に力と名をつけている歌手だ。いまのところこの番組に限っては和服と演歌での出場になるが、基本的にジャズもポップスも歌うマルチシンガーである。
 が、マルチシンガーのほとんどが大成しないのは皆さんご存知の通りだ。あえて困難な道を行くのも良いが、千種にもどの道を行くべきか選択の時がくるだろう。芸能人としては、すでにこの番組は役不足である。選択の時は、意外と近いかもしれない。

●4番 喜田川光(fa2481)『おふくろ』
 ――家に帰れば おふくろがいる
 ――当たり前かな 疑いもしない
 ――いつも変わらぬ 変わらぬことさ
 ――それが当然 あの時までは

 本番組2回目の出場となる喜田川光の歌は、新曲『おふくろ』のお披露目となった。今は亡き母を偲ぶ思い出深い歌である(ただし光の母は存命だそうだ(苦笑))。
 土臭い、ある意味コテコテの演歌だが、新進気鋭のとんがった歌より安定感があり、定番演歌としての要件を満たした作りになっている。爆発的な燃焼力は無いが、売上げのアベレージは高い。そんな曲だった。
 光の衣装も装飾を抑えたスーツで決められており、歌のイメージを損なわない。このあたりは、番組ドレッサーの勝利であろう。
 歌い終えると、当然のように厚い拍手が降ってきた。新曲の滑り出しは、かなりの好感触であった。

●5番 茜屋朱鷺人(fa2712)『若き鵬』
 茜屋朱鷺人は流しのギター弾きである。しかし今回一念発起し、演歌歌手としてのデビューを飾った。
 「若き鵬は千の翼を広げたり」で始まるデビュー曲『若き鵬』は、「千の翼に千の夢、一万の翼に一万の涙を乗せ」というフレーズを佳境に以って熱唱され、おおいに会場の共感を得た。惜しむらくは、このライブ感がブラウン管越しには伝わりにくいことであろう。
 ちなみに朱鷺人は三味線を持っているが、まだ弾けない。しかし演歌歌手としての大成を会場の観客に表明し、それを公言した。
 いい覚悟と言える。

●6番 柊ラキア(fa2847)『波』
 新人演歌歌手の出場が続く。
 柊ラキアの曲名は『波』。寄せては引く波をそのままイメージした歌だ。彼の持ち歌でバラードだったものを演歌調にアレンジしたものである。
 スーツになぜか首に下げたゴーグルとやや傾(かぶ)いた姿だが、演歌界では衣装でのアピールもありなので、文句を言うものはいない。いずれも自己責任である。

 ――遠く途切れる音が ゆるい陽光に
 ――きらめく波が啼く 引かない波のように
 ――その音だけ止めて 耳に残して
 ――刹那の永遠の中で

 過分にナルシーが入っているが、アーティストというのは自分に酔ってなんぼだ。ただ空気を読めていないのは、今後の反省点になるだろう。
 ともあれ、思いっきり歌って本人はご満悦。挨拶も明るくかつさわやかに行い、締めとしては十全の結果となった。

●7番 アマラ・クラフト(fa2492)『朱恋』
「天保三年三月弐拾九日、一人の女性が亡くなりました‥‥恋に正直になりすぎたのか過ちを犯してしまう‥‥新曲『朱恋』聞いて下さい‥‥」
 『八百屋お七』という物語をご存知だろうか? ギタリストのアマラ・クラフトの歌は、その物語をモチーフにした悲恋物である。真紅の振袖に真っ赤なエレキギターを背負い、炎をイメージしたライティングの中で歌う彼女は、冴え渡っていた。

 ――天を染める赤き華は
 ――愛しき貴方への道標
 ――もう一度貴方に逢いたいと
 ――街に華の種を蒔く
 ――種は見事に華を咲かす
 ――全てを朱に染める華の名前は『焔(ほむら)』
 ――やがて華は散り消えて
 ――私は華に包まれ天へと昇る‥‥
 ――空から貴方を見守るために‥‥
 ――空から貴方を見守るために‥‥

 舞台の演出とあいまって、なかなかの新曲お披露目となった。

●8番 ラム・セリアディア(fa3004)『朱色恋路』
 アメリカのロックシンガーの演歌デビュー。
 ラム・セリアディアの登場は、この番組の性格を如実に現している。
 白地に、小さくて細かい赤の花模様‥‥と思いきや、小さな赤い星の形の着物で登場という奇天烈ぶりは置いておいて、外見がまだ中学生ぐらいにしか見えない彼女の歌う歌は、かなり熱烈な恋歌だった。

 ――朱色に染めた唇に そっと手をあて貴方待つ
 ――裏通り 出逢う貴方の表情に
 ――艶やかに微笑めば 貴方の頬こそ紅色に

 ――今宵こそは離れない 貴方の心離さない
 ――私の身体を朱色に染めて
 ――貴方の心を朱色に染める

 ――嗚呼 今宵だけとは言わせない
 ――明日も待つの 朱色恋路で

 ちょっと意外なため息が会場から漏れる。それはそうだろう。女の歌を少女が歌っているのだ。プロデューサーが彼女をトリに持ってきたのも、このワンパンチをねらってのことだろう。
 型破りなトリを務め終え、ラムは深々とお辞儀した。
 結構、成功っぽかった。

●番組終了
 第4回演歌人生は好評のうちに終幕した。しかし舞台経験値が上がっても格を上げないスタンスに変わりは無い。
 舞台は、君たちの参加を待っている。

【おわり】