PARADISE ARMY A1南北アメリカ

種類 シリーズ
担当 三ノ字俊介
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 4.9万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 04/17〜04/23

●本文

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【タイトル】
 PARADISE ARMY

【内容】
 何をやっても中途半端。フリーターで社会からは落ちこぼれの青年ジャック・スレッジは、一念発起して幼馴染のフランク・ブレックとアメリカ陸軍へ入隊する。訓練の中で意外な適正を見せたジャックは伍長へ昇進し、中東(仮想イラク)へ派兵される。
 配属は補給部隊の給水小隊(水をろ過して飲料水にする部隊)になるが、水の輸送中にゲリラに襲われて小隊は孤立してしまう。そしてなんと、ゲリラがミサイル(仮想スカッドミサイル)を使って大規模な攻撃をしようとしている情報を入手してしまう。
 敵地に一番近いのはジャックの居る小隊。そしてジャックの小隊に、敵駐屯地を空爆するための作戦行動が指示される!
 果たして、ジャックたちは作戦を成功させることができるか!

【脚本概要(全4回中の第1回)】
 物語は主人公とその幼馴染がピザ屋のバイトをクビになるところから始まる。もちろん主人公のポカによってだ。そしてグダグダな展開で、陸軍の入隊申込所へ向かう。
 主人公は訓練所でヒロインと出会い、訓練後同じ部隊に配属される。
 訓練の成績はほとんどダメダメだが、なぜか給水ろ過装置の扱いが抜群に上手く、主人公はその腕を買われて伍長に昇進する。
 そして部隊に、出動命令が下る。配属は第5525補給小隊。部隊は中東へと向かう……。

【募集】第5525補給小隊
・主人公:ジャック・スレッジ(伍長)
・サブ主人公:フランク・ブレック(一等兵)
・ヒロイン:ホリー・ホーランド(一等兵)
・いわゆる鬼軍曹:アーネスト・ジョンストン(軍曹)
・色々と前途多難な小隊長:ロジャー・ブラックアウト(少尉)
・その他、個性的な小隊仲間など。
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「2作目ですか。やはり評価されるのはうれしいですね」
 ここに、新人監督が一人いる。名前はデビッド・ワード。軍事オタクで、軍事映画を撮るのが趣味の映像マンである。といっても真面目な軍事物ではなく、コメディ主体で映像作品をリリースしていた。そして今回の『PARADISE ARMY』は『潜望鏡下げろ!』に続き、WWBから企画原案があがりデビットにお呼びがかかったという次第である。
 作品は25分を4本。連続ドラマであるので、『継続して出演出来る者』という縛りがある。特に主人公やヒロインは必須である。

 本募集では『役者』の応募を待っている。どのような集まり方をするのか分からないので、集まった役者でシナリオや配役を調整するそうだ。一昔前の香港映画と同じである。

●今回の参加者

 fa0867 朝守 黎夜(22歳・♂・獅子)
 fa2378 佳奈歌・ソーヴィニオン(17歳・♀・猫)
 fa2552 守山脩太郎(45歳・♂・竜)
 fa2832 ウォンサマー淳平(15歳・♂・猫)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3464 金田まゆら(24歳・♀・兎)

●リプレイ本文

PARADISE ARMY A1

●クビ
「ジャック・スレ〜〜〜〜〜〜ッジ!!」
 窓ガラスが割れそうな、怒声が響き渡った。でっぷりと太ったちょびひげのイタリア人店長が、顔をピザのかまどより赤くして湯気を頭から立ち昇らせている。
「なんスか? 店長」
 ピザよりプロテインが好きそうなガタイの男が、イタリア国旗を模したエプロン姿で出てきた。本作の主人公、ジャック・スレッジ(朝守黎夜(fa0867))である。
「貴様何をやっている! さっき配達したピザをどこへやった!」
「は? お客のところに決まっているじゃないですか。やだなぁ」
 ぶち、と何かが切れる音がした。
「ばかもん! 何が『お客のところに決まっているじゃないですか』だ! 客からまだ届いていないってクレームの電話が来てるんだ! それも6件! 全部お前が配達したところだ!!」
 ここは宅配ピザの店である。ジャックはそこのバイトで、注文と配達の係であった。
 が、ジャックは入店してからまともに仕事をこなしたことは無い。一日に一度は店長に怒鳴られている。
「クビだ! 貴様のような能なしは陸軍にでも入ってろ! クビだ〜〜〜っ!」
「店長、彼をクビにするなら私もクビにしてください」
 ジャックの悪友、フランク・ブレック(ウォンサマー淳平(fa2832))が、真摯な態度で言った。平素の状況なら美談になりそうなところだが、今回は火に油どころか気化ガソリンを噴霧するような結果になった。
「なら貴様もクビだ! クビだ!! クビだ〜〜っ!!!」

●陸軍入隊
「あ゛〜〜〜〜〜、これからどーすっかなー」
 公園で、ただいまバイト先をクビになったばかりのジャックとフランクが黄昏れている。
 ジャックはガタイは良いが能なしで、とにかくバイトにせよ仕事にせよマトモに長続きしたことが無い。何をやっても中途半端で、平たく言うと落ちこぼれ。今日ものんべんだらりと生きていて、おそらく明日ものんべんだらりと生きているだろう。
 相棒のフランクはそんなジャックとなぜかウマが合い、色々つきあっている。食品加工メーカーの御曹司で金に困っているわけではないが、むしろそれが悪友の堕落を促進している様子もあった。
「これで、この3ヶ月で7回目のクビだな」
 フランクが指折り数えて言う。
「これ以上雇ってくれるとこは無いだろーなー。これからどうしたもんか‥‥」
 さすがに途方に暮れて、ジャックが言った。何せバイト代もろくにもらったことがないのである。すかんぴんで懐も寂しく、今食べているチリドックがおそらく最後の食事だ。
「フランクはいいよな。お前は家に帰ればいいんだから」
「冗談じゃない。あんな家、御免被る」
 怠惰に時間が流れてゆく。
「よし」
 フランクが言った。
「食いっぱぐれない場所へ行こう」
 フランクが笑みを浮かべている。
 その視線の向こうには、『若人よ来たれ!』と書かれた看板があった。

    *

「マジかよ‥‥」
 ジャックが言った。
 翌日、陸軍入隊希望局(陸軍入隊窓口のことである。大きな町なら一つぐらいある)の前に、ジャックとフランクの二人は来ていた。
「親父の縁故も関係なく自分の実力で食ってゆくなら、こんな良い場所は無い。さあ、入るぞ」
「おい、待て! フランク!」

●陸軍訓練センター
 陸軍の訓練センターの研修期間は、14週間ある。基礎体力の向上から技能・射撃などの修得など、入隊し卒業すると結構いろいろなおまけがついてくるのが特徴だ。就職に有利になるからと入隊する者も少なくない。もちろん食い詰めて門戸をたたく者もいる。
 で、我らがジャックとフランクはと言うと――。
「いいかこのカボチャ頭ども! 貴様らはクズだ! 貴様たちは人間の言葉を発する必要は無い! 何を言われても『サー、イエス、サー!』とだけ答えろ! わかったか!」
「「「サー、イエス、サー!」」」
 訓練教官のアーネスト・ジョンストン軍曹(金田まゆら(fa3464))の言葉に、全員が答えた。早くもジャックは後悔し始めていた。フランクは何が楽しいのか笑っている。
 行進の仕方から始まって、体力作りに縄の結び方や測量のしかたなど、基本的な訓練が朝6時から夕方4時まで続く(後半になると夜間訓練もある)。
 朝食は早朝訓練の後にある。
「やあホリー、元気かい?」
 ジャックが声をかけたのは、彼と同期に入ったホリー・ホーランド(佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378))である。側には彼女と同期の黒人女性メリッサ・フライマン(ティタネス(fa3251))がいる。
 ホリーはジャックを一瞥すると、無視して別の席に座った。「おやおや、嫌われているねぇ」とメリッサがちゃかす。ジャックが入隊時にホリーに対して軽口をたたいたので、それ以来不仲なのだ。
 といっても、ホリーもメリッサもジャックやフランクと同じ小隊である。訓練は同時に受けるし、小隊がギスギスしているのはいただけない。
 もっとも。
「ジャック、また貴様か! お前は足し算もマトモにできないのか! 貴様の首の上に乗っているのはスイカなのか!」
「申し訳ありません軍曹殿!」
 輜重(しちょう)部隊(現在の補給部隊という認識で良い)を志望しているが、弾薬計算すらまともに出来ないジャックに、小隊一同が不安を感じていた。
 が、誰にでも一つぐらい特技があるものである。
「信じられん‥‥」
 アーネスト軍曹が、感嘆の声をあげた。それほど意外だったのだ。他の隊員たちも目を丸くしている。
「この水‥‥旨いな」
 そう、水、である。
 現在アメリカ陸軍が展開している中東では、水の問題がけっこうある。インフラもまともに機能していない現状では、水は輸送するか現地で濾過装置を使用して生産するしかなく、給水部隊はまさに軍の生命線なのだ。
 その濾過装置を使って見事に旨い水を作ってのけたのが、ジャックであった。最初はおそるおそる飲んでいた軍曹も、飲み干して思わず満足の行った息を漏らしている。
「貴様にこんな才能があるとは思わなかった。お前を伍長に任命しよう」
 不意に、ジャックは昇進を手に入れた。生まれて初めて他人に認められて、ジャックは内心動揺していた。

●出動
 なんとかアカデミーを卒業したジャックたちは、そのまま第5525給水小隊に配属され、任官された。アーネスト軍曹ごとであるのは異例であるが、まあ細かいことは気にする必要はあるまい。
「ロジャー・ブラックアウト少尉(守山脩太郎(fa2552))だ。この5525給水小隊を預かる」
 歴戦の古強者といった感じの初老の男が、小隊を見渡して言った。
「さっそくだがこの小隊に命令が下った。中東へ向かい給水小隊としての責務を全うする。出動は明朝0600時。各自準備を怠るな。説明は軍曹から受けろ」

【つづく】